INORAN、ビルボードツアー開幕 真矢のレガシーを受け継ぎ「LUNA SEAもソロも全力で続けていく」【オフィシャルレポート】
Photo:石井麻木
LUNA SEAのギタリストINORANが、2月23日、Billboard Live YOKOHAMAで『INORAN Determine 2026 -CLASSICAL ニライカナイ-』をスタートさせた。この日の未明、かねてより闘病中だったLUNA SEAのドラマー真矢が2月17日に急逝した、という悲報が発表されたばかり。ファンの間には計り知れない大きなショックと悲しみが広がる中、INORANは「真ちゃんの為に、みんなの為に、playするからね!」と午前9時13分にSNSに投稿。予定通りライブを決行した。
15時30分、1stステージが開幕すると、INORANはひとり客席エリアを通ってステージに上がり、こう挨拶した。
「2月17日、真矢くんが僕たちに情熱と愛を託して旅立ちました。真ちゃんは、楽しいことが大好きだし、そしてみんなの笑顔を見ることも大好きだし。だから今日はいつも通りのBillboard Liveをやらせていただきます。
皆さん、最後まで楽しんでいってください」
客席からはすすり泣く声が聴こえていたが、INORANが語り終えて深いお辞儀をすると、ファンは大きな拍手で包み込んだ。SEが鳴り、葉山 拓亮(pf)、菰口 雄矢(g)、Yui(vn)、荒井 桃子(vn)、河村 泉(vla)、島津 由美(vc)がステージへ。ストリングス・カルテットが厳かに奏でるイントロに、ギター、ピアノが加わっていき、INORANが歌い始める。ツアーは始まったばかりなので、オープニング曲はあえて明かさないが、力のこもった熱唱だった。いつも通りにライブを届けるのだ、というINORANの覚悟が伝わってくる。
2007年に発表した4thアルバムの再録『ニライカナイ–Rerecorded-』を昨年リリース。同作を携えたリヴァイヴツアー『TOUR Determine』が好評だったため、「おかわりしたいな」(INORAN)との想いから、アンコール・ライブとして実現したのが今回の『CLASSICAL ニライカナイ』である。『ニライカナイ』は日本語詞が中心だった時期の作品で、この状況にピッタリと重なって聴こえる言葉が奇遇にも多くて驚かされる。
INORANは、「時の色」で<失うことで大人になる>というフレーズを、「なる」とは歌わず「……ならないよ!」と叫ぶ場面もあった。曲によっては、ヒートアップして感情のダムが決壊しそうに見えた危うい瞬間もあったが、INORANは歌い遂げた。客席には涙を流すファンの姿も多数。INORANは歌唱に没入する一方で、観客ひとりひとりの顔をしっかりと見ており、そこから感じ取れる想いを受け止めようとしているようだった。
Billboard Live YOKOHAMAは、2022年にソロデビュー25周年を記念してリリースしたアルバム『IN MY OASIS Billboard Session』のレコーディング及びシューティングを行なった、INORANにとって縁の深い会場である。その場所でこの日にライブをする巡り合わせにも、きっと何か意味があるのだろう。葉山、Yui、島津はお馴染みのメンバーだが、今回は荒井、河村を迎えたストリングス・カルテット編成にスケールアップし、ギターの菰口も加わった。葉山が年末から手掛け始めたというアレンジは、驚きと新鮮さに満ち、『ニライカナイ』の曲たちが秘めていた魅力を存分に引き出していく。
18時30分から始まった2ndステージは、少し落ち着いてリラックスした雰囲気で繰り広げられた。INORANの歌唱表現は、より自由でバリエーション豊かになった印象も受ける。1曲披露し終えるごとにグラスのお酒を飲み、ステージを歩き回ってマイクを通さずに歌ったり、観客と目を合わせたり、メンバーの演奏を讃えて笑顔でサムズアップしたり。より伸びやかにライブの空気を味わっているように見えた。
「僕、来年ソロデビュー30周年なんです。すごくないですか?みんなよく付き合っていただいて、ありがとうございます」とファンに感謝を述べると、辿り着いた今の“歌”について想いを巡らせる。「歌というのは、上手ければ伝わるわけでもないし、パッションで伝わるもあるし。どっちなんだろう?って。
1stも2ndも歌い方が違うしね。でも、そういうことじゃなかった」と考えを打ち消して、「今日君たちと一緒に、この空間にいることが全てだと思う。こうやって心が動いたのは、君らの“せい”だと言いたいし、仲間だから」と語り掛けた。
「存在のカケラ」では、赤い照明の世界の中、葉山のピアノの後方からミラーボールが輝きを放ち、神秘的な光景を立ち上げた。INORANのライブはいつもそうだが、今回も美しい光の演出に心を奪われることだろう。両手でマイクを握り締め、渾身の歌を届け終えると、「皆さん、オリンピック(ミラノ・コルティナ冬季五輪)観てました?アスリートと同じで、ミュージシャンもいわゆるゾーンに入るんですよ」と語り始めたINORAN。共通項がある一方で、点差で勝敗が決まるからこそ生まれるスポーツの感動に「ジェラシーを覚える」とも明かし、「『1点』とか『逆転』っていう曲つくろうかな?って」と笑った。表現に対しては常に真剣だが、シリアスなムードになり過ぎないよう、笑いを絶妙に織り込んでいく。
後半は、ライブ定番の名曲たちを披露。「盛り上がって行きましょう。参加型でお願いします」とINORANは呼び掛け、ファンはクラップして身体を揺らしながらコーラス。ひとりひとりの表情が少しずつ晴れたことで、開演当初よりも、客席から放たれるムードは明るくなっていた。
INORANは、「今日来る時暖かかったでしょ?この後またもう一回寒さが来たり、気候もそうだし、人生も上がったり下がったりして、そんな時も“しょうがねえな”って笑いながら仲間と話せる、過ごせることが貴重だと思う」と語った。自身のファンクラブ『NO NAME?』の仲間はもちろん、ライブという場もそうである、との想いを明かした。メールなど文字を通したやり取りだけではなく、直接集まることの大切さにも改めて触れた。「ロックバンドの“キャー!”というのもいいけど、こういう穏やかな場所も必要。
そうじゃないと、人には性格があるから、躊躇っちゃうやつもいる。今日集まったみんなは仲間だと思うし、僕はそういう場をこれからも作り続けていきたい」と決意表明。「本当に今日はみんなどうもありがとう!」と感謝を述べ、最後の曲を届けた。曲間でメンバー紹介と共に披露される迫真のソロ演奏が素晴らしく、INORANも「ブラボー!」と喝采を送っていた。
メンバーを拍手で送り出すと、ひとり最後に残ったINORANは、「今日はこんな状況の中、僕のわがままに付き合ってくれて、本当にどうもありがとう。真ちゃんの残してくれたレガシー…情熱や愛を持って、僕はこれからも、LUNA SEAもソロも、全力で続けていくつもりなので、これからもINORANを、そしてLUNA SEAをよろしくお願いします。今日は本当に……来てくれてどうもありがとうございました」と挨拶し、深くお辞儀をした。INORANがこれほどまでに長いお辞儀をするのを見たのは、初めてのことだった。
1stも2ndも、終演後のINORANは笑顔だった。このような状況でステージに立ったことを労っても、ネガティブな言葉は出てこない。「俺が真ちゃんのお笑い担当を継がなきゃいけないから」との使命感もあるようで、早速その発言で一同を笑わせてくれた。取材を終えて会場の外に出ると、泣きながら身を寄せ合う観客たちの姿があった。INORANがこの日ライブを中止や延期しても、何も不思議はなかった。それでも予定通り開催したことは、やり場のない悲しみを抱えた人たちにとって、想いを分かち合える居場所をもたらした。先陣を切って勇気ある決断をしたINORANに、尊敬の想いが募る1日だった。
『CLASSICAL ニライカナイ』は3月8日(日)Billboard Live OSAKA、3月13日(金)Billboard Live TOKYOにて、いずれも2部制で行なわれる。
Text:大前多恵Photo:石井麻木
<公演情報>
『INORAN Determine 2026-CLASSICAL ニライカナイ-』
2月23日 神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
<ツアー情報>
『INORAN Determine 2026-CLASSICAL ニライカナイ-』
3月8日(日) 大阪・ Billboard Live OSAKA
●1stステージ 開場14:30 / 開演15:30
●2ndステージ開場17:30 / 開演18:30
詳細はこちら: https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-21194
3月13日(金) 東京・Billboard Live TOKYO
●1stステージ 開場16:00 / 開演17:00
●2ndステージ開場19:00 / 開演20:00
詳細はこちら: https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-21195
INORANオフィシャルサイト
https://inoran.org/