「手元に届ける」ことをしたかった 海宝直人×西川大貴 コンセプトアルバム『雨が止まない世界なら』発売記念インタビュー【前編】
俳優、クリエイター、YouTube「クロネコチャンネル」のホスト……とマルチに活躍する西川大貴が、コロナ禍に書き上げたソングサイクル・ミュージカル『雨が止まない世界なら』。昨年4月の朗読動画公開、7月のワークショップを経て、この度コンセプトアルバムを発売する運びとなり、21名の豪華キャストが集結した。ぴあアプリでは、キャストのひとりである海宝直人と西川をレコーディング現場でキャッチ! ディープな対談の模様を、前編・後編に分けてお届けする。
初共演時の印象は「持ってこい骨」
――「クロネコチャンネル」の対談動画などからも仲の良さが窺えるおふたりですが、そもそもの出会いは?
西川初共演は、たぶん恋ブロ(『恋するブロードウェイ♪vol.3』/2014)ですね。
海宝そっか、あれが初めましてだったんだ。でも俺、仲良くなったのは『氷刀火伝(カムイレラⅡ)』(2015)だった記憶がある。
西川そうそう、恋ブロの時は俺も、「歌のうまい真面目な青年」って印象で終わってて。
海宝俺の印象は、「持ってこい骨」。
西川それ俺が恋ブロで歌った歌ね(笑)!
海宝千秋楽に、♪千秋楽だぜ~いOh yeah!みたいなことやってた人……ってイメージです(笑)。
西川俺が若気の至りでアドリブ入れたこと、海宝くんずっとイジってくるんですよ(笑)。しかも、恋ブロの時は「いいね」とか言ってたのに、『氷刀火伝』に入ってからイジるっていう。
海宝恋ブロの時はほら、まだイジれるほどの仲じゃなかったから(笑)。
西川『氷刀火伝』では、幼馴染みたいな役どころだったんだよね。それで自然と仲良くなって。
海宝そこからは、よくご飯食べに行ったりもしてるよね。
西川仕事のこととか業界のことを、ディープなところまで話せる相手ってそんなにいないんですよ。
同じ業界にはいても、住んでるエリアというかジャンルは微妙に違ったりもしてるから、海宝くんと話すのはすごく面白いんです。
――役者として、お互いに尊敬しているところ、魅力的だなと思うところは?
海宝いやいやいや……(照)。大貴くんは、ものを見る視点がすごく面白いなって。芝居をする時もそうだけど、脚本とか詞を書く時も、普通の人とは違う角度からものを見て、それを言語化していくというか。そういう気質、感覚みたいなものは唯一無二だなと思います。
……恥ずかしいなこれ(笑)。本人がいないところだったらいくらでも褒められるんですけど。
西川分かるわ~(笑)。
海宝でも今回もね、コロナ禍のこの状況を“雨”ってものに重ね合わせて表現していて。色んな人がなんとなく共有してるモヤモヤみたいなものを、言語化して視覚化して音にしてるっていうのが、なかなかできることじゃないからすごいなあと思います。
西川ありがたいですね~。まさにそういうことがしたいと思ってたので嬉しいです!
海宝いやいや、すみません私なんかが(笑)。この作品については、どういう形で世に出していくのがいいんだろうね、みたいなことをけっこう前からふたりでよく話してたんですよ。
でも、話すだけなら誰でもできること。こうやって形にした、大貴くんの行動力とかエネルギーはやっぱりすごいなと思いますし、声をかけてもらって嬉しかったですね。
CDという形の“上演”
――今日のレコーディングの感想をお聞かせください。全16曲のうち、海宝さんはソロ曲《狐雨の頃》と、オールキャストによる《世界は変わってない》に参加されたそうですね。
海宝楽しかったですけど……30分以上巻いたから、「大丈夫ですか?」って感じです(笑)。
西川それずっと言ってたよね(笑)。「本当に後悔はないんですか!?」とか言うからこっちが不安になったけど(笑)、何回も録ればいいってもんでもないので。
海宝まあそうだね(笑)。
海宝それは大貴くんが、宅録を送ったら20分くらいの“ビデオレター”をくれたからです(笑)。宅録した時は、音楽的な魅力を押し出すのと、緩急をつける演劇的なアプローチのどっちがいいのかな、っていうのが自分の中であって。でもあのムービーから、物語を膨らませたいっていう大貴くんのメッセージがガッツリ伝わってきたから、じゃあそっちで深めようって。
西川そこまで上げた状態で来てくれたから、今日は細かい部分をすり合わせるだけで良かったんですよ。《世界は変わってない》のほうは、「僕らの小さな《We Are The World》」をテーマに作った、この作品の締めの曲。
今は一堂に会して歌うことはできないですけど、バラバラに録った声をミックスすることで、「バラバラでも肩組めるじゃん」ってなったらいいなと。
海宝大貴くんからは、みんなで歌うとなったら普通は抑える自分の癖とか個性を、あえて出してほしいというディレクションがあって。こういう録り方をしてるからこそ、合わさった時のエネルギーがすごそうだなと思いますね。一緒に歌うと、どうしても聴き合っちゃうから。
西川それ、我々のサガだよね(笑)。全員の声が合わさってるんだけど“コーラス”にはなってない、面白い曲が出来上がりつつあるので、楽しみにしてていただけたらと思います。
――聴きたくなった読者の方がたくさんいらっしゃると思いますが、この配信全盛の時代、もしかしたらCDという形態に馴染みのない方もいるのかなと。あえてCDとして出すことにした理由、CDの魅力などお話しいただけますでしょうか?
西川こういう時期に作ったこの作品にとって、「形に残す」ってことが大きな意味を持つ気がしたんですよね。
雨がずっと降り続いているような今のこの空気感を、みんなが共有しているうちに、それを感じながらレコーディングして形に残したかった。というのと、まだまだ劇場に来られない方がたくさんいると思うので、「手元に届ける」ことをしたかったというのがあります。
海宝舞台と違って、CDは一度買えばずっと聴き続けられますからね。気軽に触れられるものが形としてあるって、すごく大きいと僕も思います。CDを聴くことで、いつか上演されたら舞台を観に行こう、って思うようになる確率もものすごく上がるだろうし。
西川特に、日本オリジナル作品って形に残ることが少ないからね。
海宝そうなんだよね! CDは、作品の“名刺”みたいなものなんだと思います。
西川そうそう。この作品は、最初にポエトリーリーディングをして、ワークショップをやって、今アルバムにしようとしてるわけですけど、どれも本番に向けた“お試し”とか“経過”ではなく、それぞれがその時点での“完成形”というつもりでいて。そういう意味で今回のアルバムは、CDという形の“上演”とも言えると思います。作品を育てながら色んな形でアウトプットしていくというのは、海外とは色んな意味で環境が違う日本でオリジナル作品を作る、ひとつの方法なんじゃないかな。
海宝そうだね。1曲ごとに物語が完結するソングサイクルは、CDとすごく相性がいいと思う。まずはこの形での“上演”を、皆さんに楽しんでいただきたいですね。
世界に発信できるオリジナル作品を作らなきゃいけない
――日本オリジナルミュージカルの話が出ましたが、それも最初におっしゃっていた、おふたりの“ディープな話題”のひとつだったりしますか?
西川そうですね。「オリジナル作りました!」ってだけですごいみたいなフェーズはもう終わって、これからは「いい作品ができました!」って普通に言えるようにならなきゃいけないと僕は思ってて。確かに海外作品はすごいけど、レプリカばかりの業界というのは、カバーソングしか歌わないようなもの。どんなに突き詰めても、オリジナルソングを持ってるアーティストに敵わないと思うんですよ。……っていう暑苦しいLINEを、ついこの間も海宝くんに送ったばっかりです(笑)。
海宝ははは! 僕は4回くらいレスしたところで、文字で伝えるのに限界を感じてやめちゃったんですけど(笑)。言いたかったのは……僕個人としては、“両輪”っていうのがすごく必要なことだと思ってて。ディズニー作品とか映画化された作品で、まずミュージカルに興味を持ってもらうことは絶対的に必要。その上で、オリジナルもできる限り頑張っていきたいってずっと思ってきたから、今回参加させてもらえて本当に嬉しいんですよね。
――オリジナルに対してそこまでの思いをお持ちだったとは、少し意外な感じもします。
海宝これはでも、みんなあると思いますよ。ない人なんていないと思う。
西川そうなんだよね。世界に発信できるオリジナル作品を作らなきゃ自分たちの首を絞めることになるっていうのは、俳優もプロデューサーも多くの人が思ってるはず。特に最近は。
海宝確実に実現してきてもいるよね。日本の漫画とかアニメを原作に、海外のクリエイターと一緒に作るってことも増えてるし。
西川これからは、ミュージカル俳優と2.5次元俳優がより"混ざって"いく気がします。作品やテイストの幅が広がって、そのふたつがもっともっとグラデーションになっていくような。「J-ミュージカルってアニメ・漫画原作のミュージカルのことだよね!」という世界的認知にどんどんなっていくのかも。それで業界が盛り上がるのは喜ばしいことだけど、そうじゃないオリジナル作品も作らなきゃいけないと僕は思います。ちなみに海宝さんは、クリエイター活動に興味はないんですか?
海宝いやぁ、どうだろう……。ないわけではないけど。
西川海宝直人が何か作るって言ったら、興味持ってくれる人がたくさん出てきて、面白いことができるかもしれないって思うんだよね。ぜひご検討ください(笑)。
~後半に続く~
取材・文=町田麻子
※海宝直人さん、西川大貴さんが共演する ミュージカル『ミス・サイゴン』への想いもお話しいただいた【後編】記事は コチラ(https://lp.p.pia.jp/article/news/235346/index.html) !
<リリース情報>
ミュージカル『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバム
2022年6月30日(木) リリース
4,200円(税込)
『雨が止まない世界なら』コンセプトアルバム ジャケット
作詞:西川大貴
作曲:桑原あい
参加キャスト:
伊藤広祥 / 小此木麻里 / 海宝直人 / 昆夏美 / 咲妃みゆ / 清水彩花 / 鈴木壮麻 / spi / 田中秀哉 / 田村芽実 / 塚本直 / 土居裕子 / 豊原江理佳 / 内藤大希 / 七尾旅人 / 西川大貴 / 畠中洋 / 松原凜子 / 山野靖博 / 吉沢梨絵(五十音順)
内海啓貴(語り)
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