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西川美和監督の『すばらしき世界』が、トロント映画祭で世界プレミアを迎えた。これまでオリジナルの脚本を書き下ろしてきた西川監督にとって、他人が書いた小説を映画化するのは初めてのこと。しかし、今作は、佐木隆三の『身分帳』をベースにしながらも、舞台を現代に置き換え、ストーリーにも変更を加えて、今の日本社会に訴えかける映画となっている。
物語は、殺人罪で刑務所入りをした主人公の三上正夫(役所広司)が出所するところからスタート。元ヤクザで、13年も実社会から離れていた上、病気ももつ彼は、仕事を探そうと思ってもうまくいかない。しかたなく生活保護を申請することにし、失効した免許の取り直しにも挑むのだが、そこでもまた困難にぶつかった。そんな中、身分帳と呼ばれる、彼の刑務所内での詳細な記録を入手したテレビ局のプロデューサーは、前科者の彼が世の中に適応していく姿を番組にできないかと思いつく。しかし、短気で、すぐ熱くなり、喧嘩っ早い三上は、若いディレクター(仲野太賀)の手に追えなかった。
一度レールをはずれると、本人がどんなにやり直したいと思っても、なかなか受け入れてもらえないのが、世の中の現実。