時間をかけて描かれる進化と成長。『ファンタスティック・ビースト』監督が語る
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“ハリー・ポッター”シリーズの原作者J・K・ローリングが自ら脚本を手がける新作映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が明日から公開になる。監督を務めるのは“ハリポタ”シリーズからメガホンをとり続けているデイヴィッド・イェーツで、彼は常に「同じことを繰り返すのではなく新しいものに挑戦したい」と語る。同じ世界、同じキャラクターが登場するシリーズに“新しさ”をもたらし続ける秘訣はどこにあるのだろうか? イェーツ監督に話を聞いた。
本シリーズは“ハリポタ”と同じ世界観を共有しており、魔法動物を研究しているニュート・スキャマンダーが主人公。最新作では、タイトルにもなっている“黒い魔法使い”ことグリンデルバルドが脱獄し、ニュートはホグワーツ魔法魔術学校を率いるダンブルドアから黒い魔法使いの追跡を託される。
シリーズ1作目『…魔法使いの旅』では1920年代のアメリカが舞台だったが、新作では英国とフランスが主な舞台になり、作品のトーンも大きく変化している。「1作目は遊び心が満載で、とてもやさしくて軽やかな感じがしたのですが、今回はどちらかというとスリリングな展開になっています。キャラクターのバックストーリーを膨らませて、より掘り下げていった結果、より奥深い仕上がりになりました。
JKはかなり壮大なストーリーを練っているようで、少なくとも彼女の中では5作品分のストーリーがあるようです」
つまり、本作は5つある物語の2作目で、まだ見ぬ3作品が控えている。こう書くと“続きもの”のようだが、イェーツ監督は本作から観ても楽しめるよう映画を設計し、待機している作品への期待が大きく膨らむよう演出している。「みんなで話し合って1作ずつバランスを取りながら取り組んでいます。本作から新登場するキャラクターの何人かはおそらく引き続きシリーズに登場するでしょうから、彼らのストーリーラインを膨らませなければならない。と同時に、最後まで説明せずに“どうなるんだろう?”と観客に思わせて、次の『ファンタスティック・ビースト』の世界に戻りたくなるようなものにしなければならない。そのバランスはなかなか難しいものがありました。しかし、スタジオのみなさんやJK、プロデューサー、脚本家が綿密に話し合ってくれますから、最良のバランスを見つけ出し、壮大な物語を紐解きながらも1作ごとに楽しめる作品に仕上げていきました」
1作ごとに物語の舞台やカラーは異なるものの、真の意味で観客を魅了し、新鮮さを感じさせているのは、エディ・レッドメインらメインキャストが表現する“成長のドラマ”だ。ハリポタの場合はシリーズ開始時にキャストが幼かったので、新作が登場するごとに彼らが“目に見えて変化”していることが伺えたが、ファンタビの場合はキャストの“内面の進化と成長”が大きなカギになっている。
「先日、ニュート役のエディ・レッドメインに会ったのですが、彼は『1作目を撮り終えてから役がなかなか抜けなくて自分の皮膚の下に入り込んできたような、自分の体の中に息づいているような感覚があった』と言っていました。2作目の撮影が始まるまで彼の体内にはずっとニュートがいて、外に出たくてウズウズしているような状態です。さらに作品と作品の間は1年ほど空きますから、例えばエディに子供が生まれたりだとか俳優それぞれの状況の変化があり、人間としても変わっていきますし、俳優同士の関係もダイナミックに変化していくわけです」
小さな子供が成長するのと同じぐらい、大人も時間を経て変化し、成長していく。そこで重要なのは“ゆとり=時間”だ。「作品と作品の間に時間がありますから、役に対する考え方などが醸成されていく。そういったゆとりがあるんですよね。キャストもスタッフもそれぞれが、前作の芝居を思い返したり、次はこうやろうかなって考えたりするんです。エディも2作目ではあれこれやってみたいと考えているんだろうな、というのが伺えました。
それがシリーズでやっていくことの利点ですね。自分のキャラクターと長い時間付き合っていくわけですから、キャラクターの新しい一面を発見するなど、多面的にとらえることのできる余裕があるんです」
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、本作から飛び込むことのできる間口の広さを備えながら、キャラクター描写やドラマは時間をかけたからこそ実現できた“深み”がある。単にド派手なだけでも、単にダークなわけでもない、ワクワクと予測不可能な展開が同居する新たな物語が明日、幕を開ける。『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
11月23日(金・祝)より全国公開
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