坂東玉三郎、42年ぶりに生まれ変わった主演映画『夜叉ヶ池』に「映画を観る喜びを感じられる作品です」
7月10日、松竹の映画製作100周年を記念したプロジェクトの締めくくりとなるユーロスペースでの特集上映「篠田正浩監督生誕90周年祭『夜叉ヶ池』への道モダニズムポップアートそしてニッポン」にて、『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』の初日舞台挨拶が行われ、坂東玉三郎と篠田正浩監督が登壇。当時の撮影エピソードを語った。
本作は、泉鏡花が1913年に発表した小説を、1979年に歌舞伎俳優の坂東玉三郎主演で映画化した『夜叉ヶ池』の4Kデジタルリマスター版。越前・三国嶽にある、竜神が止め込められているという夜叉ヶ池を舞台に、壮大なスペクタクルファンタジーが繰り広げられる。
42年ぶりに劇場での上映となった『夜叉ヶ池』。篠田監督は昨年2月に「どうしてもまた劇場で観てもらいたい」という思いから、玉三郎に「会いましょう」と声を掛けたという。玉三郎自身は「当時の撮影では私も若く、かなりのわがままを言ってしまった記憶がありました。きっと監督も御立腹なのかなと思っていたのですが、こうしてお声を掛けていただき、今日公開に至りました。
40年以上たっていますが、僕にとっては撮影中の日々をほとんど覚えているぐらい印象に残っている作品です」と感無量な表情を浮かべる。村に暮らす女性・百合と夜叉ヶ池の龍神・白雪姫の二役を演じた玉三郎。篠田監督は「僕は映画監督として育ったのは、松竹大船撮影所。当時松竹には特撮も、女形の映画の映画はなかった」と語ると「坂東玉三郎という才能と、彼の情熱がなければ、この作品を完成に持っていけなかった。特撮と女形という日本の伝統技術が、この映画で結実した」と大いなる感謝を述べる。
玉三郎も「いろいろな意味で、映画という概念から外れた作品だった気がする」と本作の持つ意味を述べると「演者としては、映画を撮り終わってから自分の芝居を見ると、もっとこうすればよかった……と思うことばかりなのですが、やっぱりこうして映画館で作品を観ていただけることが、本当の意味で喜びです」と客席に向かって語り掛けていた。
4Kデジタルリマスター版として蘇った『夜叉ヶ池』。篠田監督は「自分のなかにあった技術が簡単に再現されていて、がっかりした」とユーモアを交えて技術の進歩に舌を巻いたというと、玉三郎も「どんな役の俳優さんもみんな素晴らしく、映画を観る喜びを感じられる作品だなと思いました」としみじみ語っていた。
取材・文・写真=磯部正和
篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道
モダニズム ポップアート そしてニッポン
7月10日(土)〜30日(金)
劇場:ユーロスペース
『夜叉ヶ池〈4Kデジタルリマスター版〉』
公開中
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