「みんなが楽しかったなら、俺は幸せだ」──REIKOがワンマンツアー『VOICE』の最後に、豊洲PITで見せたもの
2026年7月17日、東京・豊洲PIT。REIKOが3年前にメジャーデビューを発表した場所で、2nd EP『VOICE』を携え全国8都市を回るワンマンツアー『REIKO One-man tour “VOICE”』の追加公演が行われた。これまでに受け取ってきた愛を何倍にもして返すかのような、ピースフルでいて高い音楽性を届けた公演をレポートする。
豊洲PITを埋めた、多幸感の幕開け
フロアには、開演前から落ち着かないような、そわそわとした空気でRAZE(REIKOのファンネーム)たちが待ち望んでいる。先にバンドが登場して拍手が起き、照明が落ちると期待がそのまま歓声になった。
REIKOが登場し、『LOVE DEEPER』をアカペラで歌い始める。光に包まれ、表情はほとんど見えず、歌声だけが聴こえてきて、RAZEたちが酔いしれた。姿が見えると、パープルのタキシードにシルバーのベスト、蝶ネクタイを合わせた王子様のようなファッション。
歓声のなか堂々とステージに立ち、音の響きが体に流れ込んでくるようなパフォーマンスを届けていく。“DEEPER”部分のコール&レスポンスでは、“RK”のロゴが呼応するように光る。続く『Take It Back』で妖艶な空気と得意のハイトーンを響かせ、リズムとビートが心地良い『No More』まで立て続けに畳みかけた。
「待ってたんでしょ!REIKOワンマンツアー『VOICE』へ、ようこそ!」とRAZEに嬉しそうに声をかけながら、ふっと肩の力を抜いて「なんで豊洲ピット埋まるんだよ!今日は、僕とバンドの皆さんでショーを作っていきます。すげえ、やばいですね」と満席の会場を見渡し、驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべる。
くるくると表情を変えながらバンドメンバーを爽やかかつキュートに紹介したのち、音楽に合わせて即興で今日のライブの嬉しさを歌詞に乗せて歌う。RAZEたちに「声出しをします!恥ずかしがったら、そっちまでいくからね」とちゃめっ気たっぷりに伝えつつ、声出しを一緒にしながら会場を一つにまとめあげていく。「いい感じ!REIKOワンマンツアー始めようか。
同じくらいの声の大きさで、よろしくね」と伝え、人気曲『So Good』へ。多幸感たっぷりに歌い、間奏では今回が初だという“ダンスバトル”が始まる。ダンサー二人のチームに別れてバトルをしたものの、「最後はみんなで一緒に」とREIKOが難しいダンスをすると、一生懸命ついていこうとするRAZEたち。その姿に、「全然ダメだけど、全然GOOD!」と笑顔をいっぱいに、そのままラストのサビを歌い上げた。ダンサーとともに、久保田利伸『LOVE RAIN ~恋の雨~』。ピンクの傘を操りながら大人っぽく届け、ジャケットを脱いで情熱的に『Neverland』を披露する。赤い照明とミラーボールに照らされた会場はダンスホールのようだった。
歌い終えると、会場を見渡し「ジャケット脱いじゃったんだけど」と笑いながら、この日の衣装は映画『チャーリーとチョコレート工場』のウォンカがテーマなのだと明かし、フロアからは温かい歓声が返ってきてにっこりと笑った。
“声”を自分のものにするまで
2ndEPと同じタイトル『VOICE』を冠したツアー名について、「僕が自分の声を誰かに届けるために、自分の声を自分のものにするまでの軌跡を全5曲で表したEPです」と語り、「僕の声のいろんな柔らかさ、硬さ、高さ低さ、質感、僕の顔、僕の声を、たくさんみんなに届けたいなと思っています」と、真っ直ぐに伝えた。
「スペシャルゲスト、シナモンちゃん」と言って登場したのは、ウクレレの「シナモンちゃん」。抱えて椅子に腰掛け、平井大『Slow & Easy』を弾き語る。南の島に流れ着いたようなゆるやかな音に、RAZEたちも自然と身体を揺らす。さらに、「想像力。誰かのことを理解しようとする心が大切だと思う」と静かに伝え「大好きな曲」と言い、歌い出したのは、ジョン・レノン『Imagine』だ。誰かを想う力こそ愛の入り口だと伝わってくる選曲に、フロアは静かに耳を澄ます。カバーの一曲一曲に、REIKOが何を愛して育ってきたかがにじんで見えるようだ。
ふたたび“ウォンカ風”ジャケットを着直すと、これまでライブで投げかけていた「遠くのRAZE!」という言葉について、「どんどん遠くなる!いい意味で。こんなにでかい会場を埋めてくれてありがとう。今回のツアーで、メンズレイズが増えたよね。キッズレイズもいるかな!?」と語りかけ、それぞれに声が返る。特に、キッズRAZEのときにはREIKOの声がいつもの数段高くなり、嬉しそうに子どもたちへ呼びかけていた。
改めて「僕のショーに来てくれることが、本当に本当に幸せです。ここ豊洲PITは、僕が2023年、トレーニーだった頃、メジャーデビューを発表した場所です」と語りかける。BMSGのパーカーを掲げ「BMSGは、デビューすると、パーカーがもらえるんだ。
デビューから3年経って、辛いこと、『もう動けない!』って思うときがあっても、その時期を頑張った先に、今日みたいな日があるってみんなが証明してくれた」と、胸いっぱいといった面持ちで感謝を伝える。「曲を聴いてくれるみんな、イベントで会ってくれるみんな、こうやって足を運んでくれるみんな、SNSで発信してくれるみんなのおかげで、REIKOが存在しています」とまっすぐに頭を下げると、フロアは大きな拍手で応える。
オーディションで「俺なんて選ばれない」と思っていた頃の自分と、今日を懸命に生きている誰かへ届けると告げて、『まだ』へ。スタンドマイクの前に立った瞬間、会場の物音が消える。夢へ手を伸ばし続ける切実さを、声の芯だけで届ける歌に、RAZEたちは息をのんで聴き入った。『Lullaby』ではやわらかな余韻を残し、続く『君のせい』ではフェイクからしなやかに滑り出す。伸びやかなファルセットに鳥肌が立つほど、歌声は自在だ。クールで大人びた表情まで、振れ幅を描いてみせた。
ルーツをたどり、もらった愛を返す
後半戦では、自身のルーツを辿っていくような楽曲へ。「みんなを、フィリピンに連れていこうと思います。(会場が)“飛行機”ってていだから、座っていいよ。キャビンアテンダント、僕のみ!」といたずらっぽくうながし、タガログ語の『Hanggang kailan pa』『Tadhana』『Multo』を続けて披露し、フィリピンへと誘う。
ライブでは、フィリピンの名曲をカバーしたデジタルシングル『Folklore Vol.1 – Tadhana / Multo』(7月27日配信)も発表した。いずれも、フィリピンのアーティストながら国を超えて長く愛されてきた名曲を、REIKOバージョンでカバーした楽曲。ルーツへの敬意と、音楽で世界をつなぐことへの喜びが伝わってきた。
「もうラストスパートですね」と名残惜しそうに話しながら、バンドメンバーやダンサー、スタッフ、そして、RAZEたちへの感謝の言葉を改めてゆっくりとかみしめるように伝え、「こんなに愛をもらっていいのかっていうくらい、もらってるんです。
だから倍にして、倍にして返したい」と話す。
会場にスマホのライトを灯すように促すと、季節を超えて愛されている曲『First Christmas』を披露。真冬の星屑のように揺れるライトの中で爽やかに歌い上げる。ブルーノ・マーズ『Just the Way You Are』では、ステージを大きく使い、“ありのままのあなたで”という肯定をフロアいっぱいに広げていくと、メジャーデビュー曲『BUTTERFLY』へ。時に客席へマイクを向けて一緒に歌いながら、ここまで歩いてきた道のりの原点となる一曲を、誇らしさをまとって届ける。この場所でデビューを発表した日を思うと、いっそう眩しく映った。『CHECK』では、ビートを軽やかに乗りこなし、キレのある特徴的な振り付けで会場を沸かせる。ビートがそのまま体を持っていくようで、フロアの縦ノリとREIKOのステップが一つになる。余裕と貫禄すら漂わせるパフォーマンスに、曲が終わるとひときわ大きな歓声が上がった。
「ラスト!一緒に歌って、一緒に踊ろう。悔い残すなよ」と煽って始まった『maybe』では、ダンサーと肩を組み、「飛ぶよ!」の合図で会場ごと跳ね上がる。歌うREIKOも、応えるRAZEも、同じくらい幸せそうだった。
最後は、ステージにひとり残って『まだ』をアカペラで届けるサプライズ。声一つで会場を満たしていき、歌い終えても余韻は途切れない。大きな歓声ののち、アンコールの声ではなく会場に広がったのは、RAZEたちによる『まだ』のアカペラだった。
アンコールではツアーTに着替え、「また呼び込んだからには、俺に負けないくらい声をちょうだいよ」とラスト『So Good』へ。“good”の掛け合いを何度も往復し、「みんなが楽しかったなら、俺は幸せだ!」と伝えた。
「せっかくだから、写真撮ろう!」と客席との記念撮影に。「初めてのツアーのアンコールは(ズボンの)チャック開けてたから……成長したよ、俺」と笑いながら「はい、チーズ!」。おどけた表情に、会場も温かくほどける。12月15日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催される『REIKO’s Winterland Vol.3』を告げ、「また、次会う日まで。でも明日は『音楽の日』だから、見てね!ありがとう〜!」と出演番組を知らせて、軽やかにステージを去っていった。
これまでたくさん涙を見せてきたREIKOが、泣かずにステージを終えた。受け取った愛を倍にして返し、求める自分ごと肯定する。“声”を信じて歩き通したツアーの終着点で、REIKOはたしかに、与えることの豊かさを体現してみせた。彼の声はきっとこれからも、より多くの人の心をあたためていくのだろう。