【ライブレポート】Wienners、奇跡の一夜となったツアーファイナルで“完全覚醒”
(Photo:かい)
「えっ、これがあのWienners!?」とライブ中に何度も心の中で首を傾げた。
このバンドが持つごった煮ミクスチャーがより色濃く、より鮮明に、よりわかりやすく伝わるアプローチで、ドラスティックに変貌を遂げていたのだ。その変貌ぶりがバンドを”完全覚醒”させた奇跡の一夜となった。
4人組ロックバンド・Wienners(ウィーナーズ)が東名阪の3カ所にわたるツアー『Welcome to the FACTION』を開催。そのファイナルにあたる渋谷クアトロ公演を観てきた。今回のツアー内容をバンドHPから引用すると、「現実と妄想の狭間=FANTION(FACT +FICTION)をコンセプトに、今ツアーでは我々Wiennersが奇妙奇天烈な世界へみなさんをお連れ致します。」と説明されている。一体どんな内容になるのか、予想も付かなかったけれど、蓋を開けてみて、ビックリ仰天。
∴560∵(Ba/Cho)
開演前BGMにClarence Clarityの「Alive In The Septic Tank」、Hifanaの「ToycutFeat.DJ Uppercut」、Shpongleの「Around The World In A Tea Daze」、JUNO REACTORの「God Is Dead」、Eelの「Noel」、MONAKAの「血を吸うわよ?」などが流れ、天井には三角旗まで吊り下げられ、また、影アナ(終演後の二度目の影アナでアサミサエが担当していることを自ら告白)による注意事項もあり、お祭りムード溢れる選曲や演出に気分も高揚。
アサミサエ(Vo/Key/Sampler)、∴560∵(B/Cho)、KOZO(Dr)、ステージ中央にジャケットを羽織った玉屋2060%(Vo/G)が現れ、「ジュリアナディスコゾンビーズ」で本編開始。ハイパーダンサブルな曲調を見舞うと、観客はジュリアナよろしく手扇子を繰り広げ、ド頭から途轍もない盛り上がりを記録。「RAISE A RIOT」に入ると、異国情緒溢れる極彩色のパンクで攻め立て、3曲目「TOKYO concert session」の頃には完全に会場の空気は出来上がっていた。
玉屋2060%(Vo/Gt)
「異空間の玄関、潜る準備できてますか?」と玉屋が叫び、今年10月20日にリリースした配信シングル「FACTION」を披露。前半は玉屋、後半はアサミサエとボーカルを分け合い、ノリのいい曲調で観客をさらに焚きつけていく。次の「恋のバングラビート」では曲間に前奏SEを付けて、楽曲に突入。このアイデアも効果てきめんで、曲が持つお祭り感を増幅させ、底なしの狂騒ワールドへと観客を誘う。何だ、この無類の楽しさは!今回のコンセプト仕立ての内容は、オモチャ箱をひっくり返したようなWiennersの音楽性と見事に融合し、こちらの楽しい感情を雪ダルマ式に増幅させていく。
KOZO(Dr)
それから中国風味の「カンフーモンキー」を経て、ゲーム音を配した「BECAUSE I LOVE IT」においてはコロコロ表情が変わるトーテムポール的な曲調で駆け抜け、ここではないどこか=異空間へ放り出されたような感覚に襲われた。これが現実と妄想の狭間なのかと思いながら、喜怒哀楽雨あられ状態の音色に頭が追いつかないレベルだ。再びここで祭囃子的な前奏SEを挟み、「おおるないとじゃっぷせっしょん」をプレイ。曲が始まるや、今日で何度目かわからないほど、渋谷クアトロの床は激しく揺れていた。玉屋がハンドマイクで「座頭市」をラップすれば、麦わら帽子を被ったアサミサエがハンドマイクで松田サエ子(?)になり切って「片瀬江ノ島」を堂々披露し、会場をひとつに束ねていく。楽曲の振れ幅はもちろん、変幻自在のバンド・スタイルも痛快の一語に尽きる。
「コンセプト決めたから、めっちゃ楽しい!」と∴560∵も興奮を隠せない様子である。そうした演者の胸の高鳴りが音に直結し、観客全員の心に火を付けているのだろう。
「一緒に大航海に出ましょう。地平線の先に行こうぜ!」と玉屋は言い放ち、「DEAR MY OCEAN」では爽快なポップネスを振り撒き、「さよなら浦島太郎」、「姫」とストーリー性豊かな曲調に繋ぐ流れも良かった。
アサミサエ(Vo/Key/Sampler)
そして、心が動くこと=生きることではないかと問いかける新曲「LIFE IS MY LANGUAGE」を皮切りにラスト・スパートを掛けていく。「LOVE ME TENDER」、「LIFE IS BEAUTIFUL」でさらなる熱狂を生み出して本編終了。アンコールでジャケットを脱いだ玉屋に対し、「プライベートでジャケット着ないでしょ!」と∴560∵にツッコまれる場面もあった。その後もコンセプトありきの本編の余韻を受け継ぎ、「子供の心」、「MY LAND」、「GOD SAVE THE MUSIC」とプレイ。演奏を終えると、玉屋の誕生日を祝福するバースデーケーキが持ち込まれるシーンもあり、ラストは「蒼天ディライト」で大団円を結んだ。
そう言えば、ライブ中に玉屋は「音楽を通じて、いろんな景色を見たい。
いろんな所に行きたい。俺たちはどこだって行ける!」と熱く語っていた。今回のコンセプトありきのライブは音楽で世界一周どころか、まだ見ぬ異次元に連れ出すマジカル・カオス・ポップ・ワールドを展開してくれた。Wiennersの音楽性は現実と妄想を突破した”夢の国”である。それをコンセプトありきのライブで具現化した素晴らしい内容であった。声を大にして、今のWiennersを生で体感してもらいたい。
Wienners
Text:荒金良介 / Photo:かい
<公演情報>
Wienners『Welcome to the FACTION』
2021年11月12日(金) 渋谷CLUB QUATTRO