reGretGirl 思いきり泣いて笑って、きみ自身を解き放ってくれ―すべてのメッセージが刺さりまくった、どうにかなってしまいそうな大阪城野外音楽堂ワンマン
(Photo:宇都宮)
Text:梶原有紀子Photo:宇都宮
reGretGirl(リグレットガール)が、4年ぶりとなる大阪城野外音楽堂ワンマンを大成功に終えた。2020年に行われた前回のワンマンは、コロナ禍で入場制限のある中での開催だったことを振り返り、平部雅洋(vo/g)は「ここにみんながいてくれてうれしい!」と心からの思いを口にした。真っ青な夏空が次第に夜の闇に包まれていく最高の時間。会場は3人の地元、大阪。特別にならないわけがない、誰もが最高の思い出を刻んだ真夏の夜の夢のようなライブをレポートする。
蝉の鳴声が降り注ぐ夕刻の空の下、平部の「大阪、どこまでもあがっていきましょう!」の声とともに「after」でライブがスタート。サポートメンバーの重永亮介(key)、三浦太郎(g)を含む5人体制で、「ピアス」「ルート26」「remind」と気持ちいいぐらいに飛ばしていく。満杯の観客による小気味よい手拍子と平部の熱い歌声が重なり会場をひとつにしていけば、十九川宗裕(b)はステージから身を乗り出して客席に笑顔を見せ、前田将司(ds)は安定感のあるドラムでどこまでも驀進していく。
振り上げられた無数の腕にreGretGirlのラバーバンドが巻き付いている光景も壮観だ。
ワンマン恒例の前田のMCを挟み、4年前に同じ場所でやったワンマンでは入場者数の制限もあり通常のライブではなかったことを振り返る。目の前に満杯の観客がいてくれることへの感謝と、「ライブが始まる前に、物販にみんなが並んでくれているのを上から見てウルッときた」(平部)と告げる。その思いを込めて、前回の野音で1曲目に歌った「テレフォン」を。「シャンプー」では、ボソリとつぶやくような歌い方が、曲が進み感情がどんどん昂まっていくにつれて歌声もサウンドも強く太くなっていく。ボーカルをふちどるコーラスもいい。
今日のライブのためにあると言っても過言ではない曲、と紹介した「純ラブ」でさらに盛り上げた後、中盤では「大阪やし、3人で鳴らすのが俺たちの原点だから」と、サポートメンバーを除き3人だけで「ロードイン」「ブロッサム」など数曲を披露。“平部の地元である和泉府中の商店街、ロードインいずみ。
アーケード。桜の下を走る自転車。”今日は野外の会場で、彼らが地元のライブハウスで演奏していた頃を自分は知る由もないけれど、まるでその頃の空気感はこんな感じだったんじゃないかと思える瞬間がいくつもあった。懐かしいのとも違って、たださびしいだけでもなくて、がむしゃらに前に向かって進んでいくことしかできなかった日々の切なさや苦さが、疾走感溢れる3人の演奏と歌声を通して生々しく伝わってくるような瞬間が……。
そんなことを考えていたら、次の「帰り道」を歌う前に平部がこんなふうに語りかけた。「ちょっと昔に戻ったつもりで歌ってもいい? その時を知る人はほとんどいないと思うけど、大丈夫。一緒にあの時の気持ちにさしたるから」と。
高校の頃に初めてギターを弾いた時から、自分の人生はバンドで成り立っていると平部は話す。
それから紆余曲折あって十九川、前田と出会いreGretGirlが誕生するのだが、reGretGirlを始めるにあたって平部が最初に書いた曲が「帰り道」。今年4月に再録音バージョンもリリースされたこの曲は、彼らにとって一番付き合いの長い曲であり、“失恋ソングといえばreGretGirl”といわれる彼らの原点となる曲だ。その後も、「大阪だから、絶対に歌おうと思って持ってきた」という「イズミフチュウ」も、告白することすらできずそれでも諦められない思いの渦中に今もいるかのように歌った「ダレヨリ」も、いつも以上に沁み渡った。
ライブ終盤、客席に視線を注ぎながら平部は、「自分がどういう人間でありたいか、ずっと考えてます」と話し始め、「僕はこのバンドをやって、誰よりも暖かく優しい人間であれたらと思う。reGretGirlは、“努力した/成功しました/やったー!”じゃなくて、結果とかどうでもよくて、そこに至るまでの道筋を讃えたい。だから前向いて行こうな? たまには後ろを振り返っていいし。それがreGretGirl流や」と。さらに、「俺は本当のことしか歌わへんぞ!」と熱を込めて吐き、その場にいる全員の自己肯定感を爆上げする「KAWAII」を全力プレイ。
「Shunari」では、シンガロングの大きさに応えるように、十九川も平部もステージ前方へせり出す。日も暮れて風が心地良くなってきた本編最後は、会場全体を包みこんでしまえるような「ホワイトアウト」の大大大合唱が響き渡る。途中、感極まった表情を隠すかのように、平部が手で顔を覆う場面もあった。この曲を歌う前に平部は、「泣きたくても泣けないこと、笑いたくても笑えないことがすごく多くて。だから俺たちの前では思う存分泣いてほしいし、いっぱい笑って泣いてくれよ。ずっとみんなと一緒にいたいから」と、一人ひとりに呼びかけるように言った。本気で泣けて、笑えて、そういうことができる相手は決して多くないはずで、そんな関係になりたいんやとreGretGirlは本気で伝えてくる。誰よりも近くで、かけがえのない存在になりたいのだと。
アンコールでは、まだリリース情報も出ていない新曲をどこよりも早く会場に集まったお客さんにプレゼント。「ド直球の失恋ソングを書きました。ノリ方とか絶対分からんと思うから“新曲聴けた。やったー!”だけで大丈夫やから」(平部)と聴かせた新曲は、失くしたものを胸に抱えながらも顔を上げ前に向かって突き進む力を湛えたreGretGirlそのものな曲。
「終わりたくないなー」と名残を惜しみ、あと2曲を残したところで、「ほんまはこの話するつもりなかったけど、大阪やからちょっと話したくて」と真剣な表情で平部が語り始めた。ライブの時は必ずアンプのそばに1本の使わないギターを置いていて、それは友人が遺書で「このギターを平部に託す」としたものであること。誰よりも優しい人だった彼の分も、そのギターにいろんな景色を見せたい。その目の前にみんながずっといてくれることを願っているのだと。
「誰よりも優しい奴がもういなくならないように、reGretGirlが歌う。お前らはひとりじゃないってでっかい声で歌う」と宣言。「reGretGirlの一番優しい歌」と前置きし「tear」を。歌詞を「もう二度と会えないけど」と変え、続く「居酒屋で流した涙を思い出した」の一節は声を詰まらせ歌うことができなかった。
平部は「何回も言わしてくれよ。ここにいるすべての人が俺にとって大事な人や」「また絶対会えるように、絶対に死ぬなよ!」と思いを振り絞る。最後の「soak」ではマイクを手に平部がステージ前方に降り、「誰よりも優しく温かい心を持っていたい。そのために音楽を続ける」「だから何かあったときはreGretGirlを頼ってくれよ!」と熱いメッセージを投げかけた。
そのまま全力疾走で「soak」を高らかに鳴らし、この夜に幕を下ろした。
「純ラブ」の歌詞をもじり、「このまま今日は帰りたくない人も、ちゃんと家に帰りや!風邪ひくなよ!」と呼びかける声は人情味たっぷり。8月29日には昭和女子大学 人見記念講堂で『reGretGirl presents SUMMER ONEMAN LIVE 2024 “ひとりだと思わないためのホール編”』が開催。12月から始まる対バンツアー『LOVE × CALL TOUR 2024-2025』は年を跨いでの開催となることも発表。等身大のままで、さらに輝かしく大きな存在へとreGretGirlが進化を遂げる過程を見続けていたい。
<公演情報>
『reGretGirl presents SUMMER ONEMAN LIVE 2024 “どうにかなってしまいそうな野音編”』
2024年8月11日(日・祝) 大阪城野外音楽堂