2024年1月8日 12:00
『カラオケ行こ!』──中学生に歌を教わる綾野剛のヤクザが醸し出す、不思議な魅力【おとなの映画ガイド】
古くは横山やすし主演で映画化された小林信彦原作の『唐獅子株式会社』シリーズや、最近では今野敏の人気小説任侠シリーズが西島秀俊主演で『任侠学園』になった。こちらは社会奉仕をモットーとするヤクザで、経営不振の高校の再建がテーマだった。草彅剛のテレビドラマ『任侠ヘルパー』なんてのもあった。この映画もその系譜。
ヤクザも含め、ちょっと時代から取り残された感のある存在をうまく盛り込んで、ドラマが巧みに重層化されている。
実は、映画のメインはヤクザに歌唱指導を行う羽目になる中学生・岡聡実の青春物語だ。演じている齋藤潤は、映画『正欲』で磯村勇斗演じる男の中学時代を演じた16歳。
聡実クンは中学3年、歴史のある合唱部の部長で、秋には引退を控えている。
変声期でそろそろ声がでない。次のコンクールで歌えるかどうか、心配だけど、それを誰にも言えないでいる。やさしい性格の男の子だ。
それが、こともあろうに、変なヤクザに声をかけられ、カラオケを教える羽目になり、LINE友だちになってしまう。下校時には、黒塗りのセンチュリーが学校の校門近くに横付けされ……。
聡実の指導に感服した狂児が、他の組員たちを連れてきて歌わせ、「聴いてひとこと感想をいってやってくれ」