愛あるセレクトをしたいママのみかた

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ

ぴあ
加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ

(撮影:藤田亜弓)



2021年にロンドンで初演されて以来、その斬新なストーリーが話題を呼び、世界各地で上演されている大ヒット作の日本オリジナル演出版となる『2時22分 ゴーストストーリー』が2026年2月より東京、名古屋、大阪で上演される。引っ越したばかりの家で毎晩、2時22分に不可解な現象に悩まされる妻のジェニーと、それを信じない夫のサム。果たしてその正体は――? サムとジェニー、そしてもう一組のカップルであるローレンとベンの4名の男女の会話を軸に物語が進んでいく。伏線が散りばめられたホラーサスペンスであり、予想外の結末も大きな話題の本作。2組のカップルを演じる加藤シゲアキ、葵わかな、南沢奈央、松尾諭がその魅力について語り合った。

予想外の結末だけではない、読むほど深まる“会話劇ホラー”の魅力


――最初に戯曲を読まれての印象を聞かせてください。

加藤最初に“ホラー演劇”と聞いて、演劇でホラーってあんまりピンとこなくて、どういうことなんだろう? と思いました。台本を読むと、作者による前書きがあったりして、あまりいままで読んだことないタイプの戯曲だなと。
ただ、2時22分に何かが起こるという設定自体はわかりやすいところもあって、引き込まれていくんだけど、何も信用できないまま展開が進んでいくというのが、入り込みやすくもあり、新しくもあり、演じる上ではとても難しいところもたくさんあって……。演じ甲斐があるとも言えるし、この4人でどうなるんだろう……? と楽しみでもあり、自分にとってはすごく挑戦でもあるなと思いました。

――結末に関しては衝撃を受けましたか?

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ


加藤「なるほど」と思いましたね。「ああ、そうか!」「だからか!」という感じで、衝撃ももちろんあったんですけど、何となく「そうかもな……」という思いもよぎりましたし……。みんな、びっくりはしますよね。大どんでん返しみたいなところはあるので。ただ、そこに至るまでも面白い話で、ただ単に予想外の結末があるだけじゃないので、何度か読んだんですけど、読むたびに発見があります。これを森(新太郎)さんがどうされるのか? 楽しみです。


葵私は最初に脚本を読んだのが夜で、怖くて途中で断念しちゃって(苦笑)、明るい時間に読み直したんですけど、最後まで読んだら前半の見え方がすごく変わりました。加えて、加藤さんもおっしゃっていましたけど、冒頭に前書きみたいなものがあって、作者のホラーに対する思いみたいなものが書かれていて。面白い方だなと思って読み出したんですけど、(最後まで読むと)その前書きも含めて、ホラーに対する印象が変わるような感じがありました。ホラーが苦手で読むのに苦労したんですけど、それ以降「ホラーって結構面白いかも」と思えて、ホラー映画を観るようになりました(笑)。

加藤これで目覚めたんだ(笑)!?

葵目覚めました!観られるようになって、この間、松尾さんが出てるホラーも観ました。

松尾俺が惨殺されるやつね(笑)。

葵ホラーってただ脅かしたり、怖いだけじゃなくて、ホラーの面白さを作者の方が訴えているというのをすごく感じたので、これが上演されたらどんな雰囲気になるのか? 挑戦だし、楽しみだなと思いました。

南沢私は怖くて……(苦笑)。
もともとホラーが得意じゃないんですけど、読んでいてもやっぱり怖くて、刻一刻と2時22分に近づいていくところで「どうなっちゃうの?」みたいな……。

加藤メッチャ想像力豊か! (作者の)ダニー・ロビンズの思うツボ(笑)。

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ


南沢ワンシチュエーションだからこそ、4人の人間関係が会話だけでいろいろ見えてきて。最初は「幽霊がいる」、「いや、いない」みたいな会話だったのが、4人の関係性が揺らいでいく感じとかも見えてきて、ホラー的な内容だけでなく、人間の本心というか本質みたいなところがどんどん出てくるのもまたちょっと怖かったり、面白かったりして、ストーリーとしてすごい怖くもあるけど、どうなっていくんだろうっていう好奇心でグイグイ引き込まれていきました。で、最後は「えぇ!?」って言いました(笑)。そこから、もう1回、最初から読み直したくなるという。これは1回観たら「もう1回観て、あそこを確かめたい!」という気持ちが湧いてくるんじゃないかと思いますね。ただ怖いだけじゃなく、ストーリーとしての面白さが詰まってるなと思いました。
松尾これもう、僕は話すことないですよね(笑)。やはり2時22分が近づいてくるというのが、わかりやすく面白いし、そこに至るまでの伏線の置き方がバランスよくて、人間関係も絡めているところが、大人のドラマになっているなと思いました。読み物としても面白いですし、ラストのドーンというのもあるんですけど、それを踏まえた上でやっぱりもう1回読むと、また発見があったりして面白いですね。(ホラーだけど)あんまり残酷なシーンはないので、年齢層広く観てもらえるなと思いますし、ヒットする理由がわかりますね。

“vs森新太郎”の稽古現場へ


――演出を務める森新太郎さんの作品に、葵さんと南沢さんは出演経験がありますが、加藤さんと松尾さんは初めてですね?

加藤僕の周りは(森さんの作品に)出演されたことのある方が多くて、他人事みたいに「大変そうだね」って言われました(笑)。演劇仲間で飲んでいると、よく森さんの話になるんですけど「自分はやることはないんだろうな」と思っていたら、声がかかったんです。少し前に、僕の後輩の正門(良規)が主演のシェイクスピアの『十二夜』をやられていて、正門に「どんな人?」と聞いたら「とにかく、しつこい」と(苦笑)。作品を良くするためには妥協しないし、演劇愛が本当に強いので、みんなからも脅されました。
「覚悟しておきなさい」と(笑)。

松尾でも「やった方がいい」って言われるよね。

加藤言われますね。

南沢私は本当に森さんとご一緒するたびに、新しいものを引き出していただくという経験をしています。たしかにしつこい(笑)。でも、本当に誰よりも演劇に対する愛と作品への思いが強いから、「ここに喰らいついていったら間違いない!」という信頼感もあるし、そこにちゃんと応えたいという思い――「vs 森」みたいな感じで(笑)。

葵「vs」になりますね(笑)。森さんにOK出してもらいたい――「勝負!」って感じになりますよね。


加藤ただ、この「2時22分~」を森さんがやるというのは、ちょっと意外というか、想像がつかなくて……。こんな言い方して良いのかわからないけど、これは自分が出るんじゃなくて、客席から観たかったなって思いますね。

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ

葵私は初めてのストレートプレイの時に森さんと初めてご一緒したので、わからないことだらけの中で、かなりビシバシやっていただいて「部活かな?」みたいな感じの思い出がたくさんありますね。本番中も毎日観に来てくださる演出家さんなので毎日ダメ出しと直し稽古があって、かなりハードな日々を送っていましたし、森さんにダメを出されないように、必死で森さんが作りたい世界を森さんの手となり足となり表現するみたいな感覚が私は強かったです。厳しい方ですけど、稽古期間中、誰よりも日に日に疲れた顔になっていくのは森さんだし、毎日毎日、クマが濃くなっていくのも森さんでした。本当に作品愛のある方なんだなっていうのを感じていましたね。

――加藤さんが演じるサムと葵さんが演じるジェニーは夫婦で、南沢さんが演じるローレンはサムの古くからの友人であり、松尾さんが演じるベンはローレンのボーイフレンドという間柄ですが、それぞれの関係性がどうなっていくのかも楽しみです。

葵この夫婦、意見がずっと食い違っているんですけど、夫婦という絆があるから破綻しないし、何とか説得を試みようとするのも夫婦という基盤があるからかなと思います。
その居心地の悪さもあるんですけど、女友達と2人になったら、ちょっとホッとする感じもありつつ、こちらはこちらでいろいろあるから、ちょっとトゲもあって……(笑)。私の演じるジェニーと松尾さんのベンはそんなに近しい役じゃないけど、そこに“他人”というラインがあるからこそ、逆にホッとする瞬間もあったり……。夫婦もそうなんですけど、4人の人間がいると、いろんな方向に矢印が飛んでいくっていうのが面白くて、今度はこの人とこの人が舞台の上で2人になったり、3人になったり、それでもう完全に空気が変わるというか、パワーバランスとか人間関係がすごく面白いし、よくできていると思う部分で、メッチャ難しそうですけど、面白い部分だと思います。

――サムとジェニーの意見の食い違いは、「幽霊がいるか? いないか?」という部分ですね?

加藤そうです。でも、愛し合って結婚して、子どもがいるということで、子どもに対する愛情という部分は同じ方向を向いていて、だからこそ、より摩擦がね……。

葵“家”についてもいろいろありますよね(苦笑)。

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ

松尾夫婦ってすごい特殊な関係じゃないですか。もちろんね、大半が愛し合って一緒になっているけど、どこかでお互いの「ここが嫌」とかあって、でも一緒にいるからという……こんな特殊な人間関係って夫婦以外はなかなかないんじゃないかな。わかなちゃんが言ったみたいな、(ジェニーとローレン、ジェニーとベンなどの)斜めの方向性の関係もあるのは、すごく物語に深みを与えてると思いますね。

葵意外とその斜めが面白いと思いました。

加藤全員に明確な思いがあるんでね。

南沢ここ(サムとローレンの関係)も長年の……(笑)。

加藤実は……みたいな(笑)。

南沢過去の話が出てきたりして、いろんな関係性の交わりがあるので……。

松尾それがまた想像力を掻き立てられるんですよね、読んでいると「もしかして……」って。

加藤ホラーというのは、ジャンルとして一応あるんですけど、やっぱり人間関係の面白さ、人間の面白さですよね。

加藤シゲアキ×葵わかな×南沢奈央×松尾諭 『2時22分 ゴーストストーリー』で2組のカップルを演じる4人が語る“恐怖”と“人間ドラマ”の面白さ



取材・文:黒豆直樹撮影:藤田亜弓
加藤シゲアキ:ヘアメイク/KEIKO(sublimation)スタイリング/吉田幸弘
葵わかな:ヘアメイク/masakiスタイリスト/岡本純子
南沢奈央:ヘアメイク/高畑奈月スタイリング/加藤暢子
松尾諭:ヘアメイク/小泉美智子スタイリスト/結城藍

<公演情報>
『2時22分 ゴーストストーリー』

作:ダニー・ロビンズ
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎

【キャスト】
サム:加藤シゲアキ
ジェニー:葵わかな
ローレン:南沢奈央
ベン:松尾諭

ミラー巡査:岡崎さつきスターリング巡査:駒井健介

【東京公演】
2026年2月6日(金)~3月1日(日)
会場:シアタークリエ

【愛知公演】
2026年3月6日(金)~8日(日)
会場:東海市芸術劇場

【大阪公演】
2026年3月12日(木)~16日(月)
会場:SkyシアターMBS

関連リンク
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/2-22/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563937&afid=P66)

公式サイト:
https://www.tohostage.com/ghost-story/

提供元の記事

提供:

ぴあ

この記事のキーワード