2021年6月29日 12:00
桐谷健太、『醉いどれ天使』で12年ぶり舞台出演 「戦後の獣のような感覚を舞台で見せることができたら」
自分の予期しない感覚も出てくると思うので、それを止めずに、素直に――もしかしたら、稽古で感じなかったものを本番で感じたりもするかもしれないし、想像していない松永が自分の中から出てきて止まらなくなるかもしれないけど、そこは自由にさせたいと思っています」。
自分が変われば世界の見え方が変わってくる
松永は、若くして闇市を仕切るやくざの男。傷の手当てで、町医者・真田の元を訪れた際に結核を患っていることを指摘され、療養を勧められるも言うことを聞こうとはしない。
「松永がどうして闇市という場所にたどり着き、どんな思いでやくざ稼業をしているのか? 結核に侵されながらもなぜここまで生きることへの執着を持っているのか? そこは今回の舞台で大切な部分だと思っています」
舞台版では、時代的な背景を含め、松永の人物像がさらに深く掘り下げられることになりそうだ。そして、そこにこそ、令和のいま、この作品を上演する意味があるとも。
「松永という男の哀しさ、不器用さは結局、戦争という不可抗力に近い経験があって、なぜ自分は生かされているのか? なぜ生きるのか? と思っている男の葛藤にあると思います。戦争に行かされて、“帰ってきてしまった“ことへの後ろめたさ――本当ならば生きて帰ってきて、みんなに『よかったね』と言われて然るべきなのに、恥を抱えて帰ってきてしまったという思いがあって……。