【ライブレポート】Dannie May、“ベスト・オブ・ベスト”なワンマン開催 ここにしかない親密さと一体感
写真:小澤彩聖
質量ともに大満足の、怒涛のリリースラッシュとライブ三昧で駆け抜けたDannie Mayの2023年。10月26日、渋谷WWWでのワンマンライブ『SURPRISE』は、充実の1年を象徴する特別な一夜になった。過去の定番曲と代表曲、現在進行形の新曲たち、そして新たな未来予想図までも詰め込んだ、ベスト・オブ・ベストなライブの模様を振り返ろう。
およそ3カ月ぶりの東京ワンマン、チケットは瞬時にソールドアウト。盛り上がる気満々のオーディエンスの意気込みをもみほぐすように、オープニングはスローでメロウな「アサヤケ」でスタート。ハンドマイクで歌うマサを中心に、田中タリラとYunoの三声ハーモニーをうっとりと優しく響かせたあと、一転して「笑わせらぁ」はガツンとハードでアップテンポ。マサはエレクトリックギターをかき鳴らし、七色の照明はきらきらぴかぴか。さらにスピードを上げて「黄ノ歌」へ、サポートドラマー成瀬太智を加えたバンドサウンドは、実にアグレッシヴ。
それに全力の手振りで応える、オーディエンスも気合十分だ。
「Dannie May『SURPRISE』へようこそ!めちゃくちゃ人がおる。すごいね。先行でソールドアウトということで、本当にありがとうございます」(マサ)
今日から初めてイヤーモニターを着用するというマサを「プロっぽいね」とひやかすYuno。和やかなムードの中、8月に出た新曲「Boom Boom Boom」から初期の代表曲「灰々」へ、明るいサマーチューンからノスタルジックなマイナー調のダンスチューンへ、Dannie Mayの得意技を連ねてぐんぐん飛ばす。
マイクを掴んだYunoが「行けるかみんな!」と叫び、ステージ前方へ飛び出して「もういいって」「待ツ宵」と、2曲続けてリードを取る。タリラの弾く低音のベースラインが最高にかっこいい。メンバー全員がハイレベルで歌って演奏して曲を作れる、Dannie Mayの強みはライブでこそよくわかる。
ミラーボールがぐるぐる回り、オーディエンスも一緒に歌う。会場内の一体感も上々だ。
「みなさん、田中タリラ作曲といえば、どんなイメージがあるでしょうか?」(タリラ)
ライブ中盤、「たぶん、80年」と「if you イフユー」で主役になるのはタリラだ。前者はゴスペルを思わせる美しいメロディのミドルバラードに、独特の揺らぎを持つスウィートボイスがよく似合う。3人のハーモニーにも愛が溢れてる。
対照的に、後者は暗く深く沈み込むメロディとスローな曲調が、ダークファンタジーの世界へと聴き手を誘う。呪文のようなコーラスも、アウトロのカオティックな即興演奏も、非日常のイマジネーションに溢れてる。さらに、得意のマイナーポップチューン「適切でいたい」で踊らせ、一気にギアを上げて「玄ノ歌」へ。
サーキットをぶっ飛ばすF1マシンのように、緩急自在のシフトコントロールでオーディエンスをぐいぐいリードする。
「盛り上がってますか?僕たち、盛り上げに来ました。みんな、日々生きるのが大変だから、今日ぐらいは叫んで、歌って、酒飲んで帰ろうぜ。なぁ?」(Yuno)
今日のYunoのMCは、いつも以上にフレンドリーで自然体だ。心理的にもオーディエンスとの距離をさらに縮めながら、悲しくも美しいフォークソング調の「異郷の地に咲かせる花は」をしっとり聴かせたあと、2週間前に配信リリースされたばかりの最新曲、TVアニメ『ビックリメン』オープニングテーマ主題歌「コレクション」で、夢を追うことの素晴らしさを高らかに歌い上げる。コンセプトもアイデアも超えて、たぶんDannie May史上最もストレートな熱いメッセージが、力強いバンドサウンドに乗ってまっすぐに心の中に飛び込んで来る。
ここからのライブ後半は、怒涛のキラーチューンの連打で一気に加速。ディスコビートのダンスロックでクラップとジャンプにまみれた「KAMIKAZE」、本日最速BPMの「OFFSIDE」、マサとオーディエンスがタオルを振り回して騒ぎまくる「ええじゃないか」、そして熱狂のお祭りダンスロック「ぐーぐーぐー」。
スロットル全開で最終コーナーを立ち上がると、残すはあと1曲。
「今日のライブができたことは、僕にとってすごく特別な日になりました。今日ここに来てくれたみなさんのおかげです。本当にありがとうございます」(マサ)
最後の曲を歌う前、マサのMCは、少し前に心の調子を崩して苦しんだ日々のことを語る、とても個人的で率直なものだった。小さなストレスが積もり積もって心を乱す、「そういう人って多いと思うんです」と、同じような思いをした人を思いやる言葉がマサらしい。不器用でもいい、自分の居場所を作ろうと歌うエモーショナルなバラード「朱ノ歌」の、限りない優しさが今こそ身に沁みる。エンディングの直前、マイクを外して「ありがとうございました!」とマサが叫ぶ。Dannie Mayの歌は成長する。
メンバーの経験とともに、ファンの共感とともに。
そしてアンコール。タリラがリードを取る、彼らしいひねったユーモアをトッピングしたハッピーソング「メロディが浮かばなくても」から、クラップと手振りで明るく盛り上がる「めいびー」へ。MCではYunoが、「朱ノ歌」はマサの気持ちを思って本編最後に置いたという裏話を教えてくれた。3人が3人を助け合っている。メンバー、ファン、スタッフが同じ気持ちで前を向いている。
「前はコロナで歌えなかったけど、最後はみんなでこの曲を歌って、“楽しかったね”って心から思いたいと思います。今日は本当にありがとうございました」(マサ)
Dannie Mayのライブのラストには欠かせない、「御蘇 -Gosu-」の伸びやかなメロディに合わせてミラーボールが回り、全員のコーラスが会場を包み込む。
マサがひとりひとりの顔を覚えておくかのように、客席を隅々まで見渡してる。Dannie Mayのライブにはいつも、ここにしかない親密さと一体感がある。過去も、今日も、そして未来も。
「コレクション」の歌詞のままに、Dannie Mayは進む。青写真の向こうにどんな現実の風景が待っているのか、メンバーとファンとともに見に行きたいと強く思う。
文:宮本英夫写真:小澤彩聖
Dannie May ONEMAN LIVE「SURPRISE」
10月26日(木) 東京・渋谷WWW