上演時間は約1時間30分。切り取られたような、この街の約1時間30分をただただ観つめる作品だ。大きな出来事は起きない。でもドラマは時々起きる。例えば、ラジオを聴いている男性が急に怒り出したり、スタッフが店長のために歌を歌ったり、車椅子の女性が客引きの男性にレインコートを差し入れしたり、男が雨漏りに気付いて気を利かせたり、お代の代わりにゲームをしたり。同時多発的にいろんなことが起きながら時間は進んでいく。
どれもありふれた、とりとめもない出来事なのだが、それをこうして客席からじっくりと観ていると、心が震えたり、可笑しかったり、愛おしさを感じたりして、もしかすると自分の生活もそういうものなのかもしれないと、あたたかいような切ないような気持ちになった。また、いろいろな言語がまじりあっているのも面白い。
その言語がわかる人にはまた違ったふうに見えるのだろうか。通常は舞台で台詞がわからないとストレスを感じるものだが、そういうことは全くなかった。
終演後はセットを見学できる時間もある。細部までつくり上げられたセットは見れば見るほどリアルで面白かった。ぜひ劇場で、『虹む街』の時間を過ごしてほしい。