川島海荷「演劇の枠を超えて新しい感覚で楽しんでもらえると」 演劇&TVドラマで描く『君しか見えないよ』始動
が現在の自分に話しかけてきたり、暑苦しく厚かましいロケクルーの存在(浜名・岩崎)に戸惑ったりしながら、在りし日の家族に想いを馳せていく。
物語は、亜寿が舞台上に登場しない「君」へ向かって語りかけるようにして進む。ヒロインにして狂言回しでもある多彩な役どころを、川島は清廉な魅力を振りまきながら形にしてみせた。父親役の岩谷はとぼけたおかしみを折々に滲ませ、客席の笑いを誘う。母親役の郡山はミステリアスな一面を覗かせ、祖父役のベンガルは「元役者」という設定で立ち回りを披露するシーンも。ロケ芸人・タランチュラ米櫃(浜名)による寒々しいギャグに、すぐさま乾いた笑い声を挟むディレクター役・岩崎の“哲学”ぶりにも注目だ。
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客席にいるとされる不在の「君」へ健気に語りかける亜寿の姿に、コロナ禍で無観客だった頃の寂しい客席を思い浮かべて切なくなる側面も。このようにタイトル『君しか見えないよ』の「君」が何のメタファー(隠喩)か考えながら観ると、より豊かな観劇時間になるかもしれない。また壁やドアなどがゴムや紐で表現されている亜寿の実家がどのような行方をたどるのか、そのビフォーアフターに想いを巡らせるのも鑑賞のポイントだろう。