2023年8月29日 17:00
天国で100歳迎えたラローチャへ 恒例の熊本マリ「夜会」
カーネギーホールの隣のアパートのお宅にうかがいました。『ああ、あの時のマリだ!』。一緒にお茶を飲みながら、いま何を弾いているの?シューマン?あなた手が小さいのにどうやって弾くの?と私の成長を気にかけてくれました」
師匠と弟子ではない。巨匠とこれから羽ばたこうとするピアニストの卵が年齢の離れた友人同士という、ちょっと不思議な関係が築かれた。
「教えるのは好きじゃなかったようです。とくに現役の頃は、本当のコツは秘密だから教えたくないと言っていました。自分の演奏活動に集中したかったのでしょうね。気持ちはわかります。
その後彼女が身体を壊してからはレッスンもしていましたけれども」
熊本が日本に帰って、ピアニストとして華々しい活躍をするようになってからも、二人の関係はずっと続いた。
「2年に一度来日する彼女をアテンドして、通訳したり一緒に食事したり。彼女は私が日本でスペイン音楽を広めていることを知っていて、それをとても喜んでくれました。来日のたびに私の新しいCDをプレゼントすると、次は何を録音するの?と楽しみにしてくれて。でも一番褒めてくれのは、スペイン音楽ではなくて《ゴルトベルク変奏曲》だったんですよ。