石丸幹二「描かれているのは人ごとではないと気づいてもらえたら」―ミュージカル『パレード』再演への思い
撮影:源賀津己
20世紀初頭のアメリカで実際に起こった冤罪事件を題材に、夫婦愛を主軸にさまざまな人々の思いが交錯する様を描いたブロードウェイ発のミュージカル『パレード』。2017年、石丸幹二主演、森新太郎演出で開幕した日本版初演は、多くの観客の心に深い余韻と問いを刻み込んで話題となった。その究極の人間ドラマが、2021年の幕開けに再登場する。実在した人物レオ・フランク役に再び挑む石丸に、作品への思いを聞いた。
日本では馴染みのなかった社会派ミュージカル
――3年前の初演では、終演後の客席がとてもミュージカルを観た後とは思えない、深い衝撃に包まれていたことを思い出します。
そうですね。森さんの演出があったからこそ、ああいう衝撃が起きたのだと思います。照明が落ちて真っ暗になった時に、お客さんがシーンとしていて……。
これはいったい何だと最初は思いましたが、何かがお客さんの心に刺さったんでしょうね、どう反応していいのかわからないほどに。あの時は、私自身が社会派ミュージカルに挑戦したいと思い始めた頃でした。ミュージカルといっても歌って踊って、華やかなものや、文芸作品の舞台化ばかりじゃない。実話をもとにしたシリアスなものも作られているのに、日本にはあまり入って来ていなかった。