ケアの役割とその担い手の存在を、現代美術を手掛かりに浮き彫りにする『ケアリング/マザーフッド』開催
「ケアをする行為」を意味する「ケアリング」と、「母親である期間や状態」を意味する「マザーフッド」。このふたつの言葉を解きほぐすところから出発して、社会におけるケアの役割を、「ひとり」の仕事から「つながり」のなかへとひらいていく意欲的な展覧会が、茨城県の水戸芸術館現代美術ギャラリーで、2月18日(土)から5月7日(日)まで開催される。
自分以外に関心を向け、気を配り、世話をし、維持し、あるいは修復するといったケアに関わる営み。人間社会を支える根源的な営みである一方で、誰もが必要とする活動であるからこそ、あたかも「誰か」の本質的な仕事のように当然視され、不可視化され、あるいは自己責任化されてきたのではないか。そうした問題意識をもつ同展は、現代美術作品を手がかりに、ケアを担うその「誰か」をひとりの人間としてとらえ直すとともに、ケアの役割を他者のものとしない社会をどのように指向するかを考える試みとなる。
出品作家は、1960年代から70年代の第2波フェミニズムの動きに共鳴し、ケアに関わる行為を家庭内へ抑圧することに異議を唱えた米国の作家から、現代の日本や国際的なアートシーンで活躍する同時代のアーティストまで。社会のなかで見過ごされてきたものごとや当然視されてきたことを問い直す作品や、ケアの担い手の葛藤や自己の変化といった人間の心の機微をとらえた作品など、多様な表現が様々な気づきをもたらしてくれることだろう。
ケアを「ひとり」から「つながり」へとひらく目的をもつ同展では、展示に加え、参加型の関連プログラムにも力を入れている。
通常のギャラリーツアーやトーク、3年ぶりに開催される「高校生ウィーク」のほか、託児付きのアーティストトーク、個人の記録としての育児日記を再読した出品作品に関連する読書会、「子育てアーティストの声をきく」という活動に関連して来場者からの「声」を募る掲示板の運営、ワークショップ、ケアに関するトピックスを扱う連続座談会など、プログラムは実に盛りだくさんだ。個々のスケジュールについては、美術館の公式サイトでご確認を。
出品作家:青木陵子/AHA![Archive for Human Activities] /石内 都/出光真子/碓井ゆい/ラグナル・キャルタンソン/二藤建人/マリア・ファーラ/リーゼル・ブリッシュ/ホン・ヨンイン/本間メイ/ヨアンナ・ライコフスカ/マーサ・ロスラー/ミエレル・レーダーマン・ユケレス/ユン・ソクナム
<開催情報>
『ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術 ―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―』
会期:2023年2月18日(土)~5月7日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜
料金:一般900円
公式サイト:
https://www.arttowermito.or.jp/