【ライブレポート】 ゆず、11年ぶりの日本武道館公演を皮切りにデビュー25周年記念イヤー突入! ふたりだけの特別なステージで19曲を熱唱
デビュー25周年突入記念ライブと題したスペシャル・ワンマッチの舞台として、ゆずが立ったのは日本武道館のステージだった。約11年半ぶり。少しだけ歴史を紐解くと、前回の武道館公演は、2010年3月に行ったアルバム『FURUSATO』のツアーファイナルだった。さらにその前が初の武道館だったのだが、それが2004年12月で、体育館ツアー『1 〜ONE〜 FINAL AT BUDOKAN』だった。
暗転後、「夏色」のイントロが鳴り出し、明転とともに現れたのは、ステージ後方のバックスタンドに座るゆずのふたり。そのままステージまで降りて来て、ギターのストラップに腕を通し、地明かりのままこの日のライブがスタートした。1曲目は「わだち」。初の武道館公演での1曲目も「わだち」だった。
《他の誰でもない 僕だけのわだち》と歌われるこの曲のメッセージと、ゆずのこれまでの歩み、そして武道館へのリスペクトまで含んだ選曲に、この日のライブの特別感があふれていた。
驚いたことに、ライブは地明かりのまま進んでいく。感染症対策で収容人数が制限された中であっても、大きな会場にオーディエンスが集結している様子が見渡せる光景は、何よりの演出となってライブを盛り上げる。
そして、「シャララン」「ウソっぱち」「くず星」など、今ではライブで披露するのがレアとなった楽曲で構成される前半のセットリストや、その場でチューニングを確かめて「行きますよ」と声を掛け合って演奏を始める姿に、彼らが最初にライブを始めた路上の光景を重ねて見ているようだった。
前半を締めくくったのは「虹」。この楽曲で初めて照明を使った演出がなされ、だんだんステージが七色に染まっていき、背景のLEDには大きな虹がかかった。
「地下街」の演奏の前に、路上時代を振り返るMCがあった。「最初は、ゆずって名前が恥ずかしくて、友達にもあんまり言ってなかったんだけど、それでも来てくれるようになって」(北川)。
その友人たちの中に、今は芸人として活動している、あべこうじがいたと言う。当時、映像制作も行なっていた彼がつくった映像を特別に使用して「地下街」がパフォーマンスされた。
「40代の僕たちが歌うこの曲を聴いてください」と言って披露したのは、「ワンダフルワールド」だった。30代前半で発表したこの曲は、命の尊さについて歌った、当時のゆずとしては比較的重たいテーマの曲だった。この日、エモーショナルな中にも余裕としなやかさを感じさせ、そこから生まれる表現力で曲の深い部分まで描き切れたのは、彼らが年齢とキャリアを重ねたから、だけではない。予期せぬコロナ禍という日常を皆が同じようにくぐり抜けている最中で、この曲の響き方はより一層リアリティを増している。曲が終わってもしばらく鳴り止まない拍手がそれを証明していた。
「今日、この時にしかできない『ワンダフルワールド』を聴いてもらえてよかったです」
「タッタ」「イマサラ」とアップテンポなナンバーで畳み掛けた後に、うれしいサプライズが待っていた。
2022年春にニュー・アルバムのリリースが!さらに、3月26日から、さいたまスーパーアリーナを皮切りに全国アリーナツアーが決定した。日常は確実に戻りつつある。
ライブの締めは、もちろんこの2曲。「夏色」と「栄光の架橋」だ。「夏色」のパフォーマンスの後、北川が言った「今日は集まってくれてありがとう」という何でもない一言に、様々な想いが詰まっているのを感じた。ラストの「栄光の架橋」では、サビをオフマイクで熱唱。渾身のパフォーマンスで全19曲を締めくくった。
ここから25周年に突入していくゆず。
次につながる道が確実に見えた気がした。
Text:谷岡正浩
Photo:中島たくみ、石井健
<公演情報>
ゆず デビュー25周年突入記念ライブ YUZU TOUR 2021 謳おう× FUTARI in 日本武道館
2021年10月25日(月) 開催