「第26回東京フィルメックス」受賞結果発表 最優秀作品賞は『サボテンの実』に決定
「第26回東京フィルメックス」が11月30日に閉幕し、29日に授賞式が行われた。コンペティション10作品から、〈最優秀作品賞〉〈審査員特別賞〉〈学生審査員賞〉が選出され、併せて〈観客賞〉の発表も行われた。
本映画祭は、アジアを中心に世界から新進気鋭の監督たちの作品を集め、どこよりも早く、ここでしか観られない注目作品がラインナップされる国際映画祭だ。
最優秀作品賞は、ローハン・パラシュラム・カナワデ監督の『サボテンの実』が受賞した。カナワデ監督の登壇は叶わなかったが、滞在先のLAから喜びのメッセージが到着。
「たった今『サボテンの実』が最優秀賞を受賞したと、すばらしい知らせを聞きました。私はちょうど明日から映画の公開のためロサンジェルスにいるのですが、受賞の知らせにとても喜んでいます。審査員のみなさん、『サボテンの実』を最優秀賞に選んでいただきありがとうございます。
この栄誉を謹んでお受けします。映画祭にもこの作品を上映くださりありがとうございます。観客のみなさんが、この映画で私たちの作品の体験を楽しんでいただけたらと願います。映画祭、審査員、観客のみなさん、ありがとうございます!」とコメント。
審査員特別賞は、内山拓也監督『しびれ』が受賞。会場に登壇していた内山監督は、「まずは撮影の光岡さん、照明の阿部さん、録音の白取さん、美術の福島さん。全員の名前をあげる時間をいただけないので、それが大変悔しいというか心苦しいのですが、全てのスタッフ、キャストの美しい仕事を誇りに思っています。また、これまで私の人生に携わってくれた全ての方々に感謝申し上げます。
この映画は私の個人的な経験に根差している映画で、田舎の貧困層に生きるひとりの少年の姿を映し出しながら、経済的なことのみならず、社会のあらゆる階級に生きる心の貧困の存在、その存在に光をあて、祝福することを目指しました。国内外問わず、様々な状況下の中であらゆる方々が生きていると思うけれども、そういった方々が心穏やかに映画を楽しめる世の中に少しでもなることを心から願っています」と語った。
内山拓也監督
学生審査員賞、スペシャルメンションはアレクサンドレ・コベリゼ監督『枯れ葉』に。コベリゼ監督は、ビデオメッセージで学生審査員賞について「学生審査員のみなさん、ありがとうございます。私自身少し前まで学生だったので大変光栄です。卒業したのは2020年前ですから5年前です。今も学生時代とは何も変わっていません。映画について何か知っているという気がしています。
ある意味学生のように映画について学び続けています。ですからよいつながりだと思います。そして若い人たちが私の作品を気に入ってくれたのはよかったです。ありがとうございます!」とコメント。
スペシャルメンションについては、「まず、私の映画をこの映画祭で上映していただきありがとうございます。これは嬉しい恒例になってきました。もし次回作がフィルメックスで上映されることになれば、今度は私もその場に行けるように願っています。もちろん、審査員のみなさんスペシャルメンションありがとうございます。
光栄です。みなさん良い夕べを!」と、喜びのメッセージを送った。
観客賞は、ツォウ・シーチン監督『左利きの少女(原題)』が選出。シーチン監督も登壇が叶わなかったが、ビデオメッセージで「まずは東京フィルメックスに感謝します。そして、『左利きの少女』を受け入れてくださった観客の皆様にも感謝いたします。この物語は台北での思い出から生まれました。東京でも共感していただけたことに、心から感謝しています。どうもありがとうございます」と喜びを述べた。
国際審査員(左より)マティアス・ピニェイロ、ラモン・チャルヒャー、ソン・ファン
最後に、国際審査員を代表して、ラモン・チュルヒャーから総評が行われた。「素晴らしい時間を我々も過ごすことができ、非常に豊かな多様性を持ったアジア映画を旅することができました。また、本当に、それぞれの作品のユニークな声、アーティスティックな個性と出会ったことも素晴らしく、人生における光のみならず、闇や影、両方が描かれている作品が多かったように思います。これもまた非常に重要なことだと思う。授賞式がもうすぐ終わるということで、あとはクロージング映画を楽しみながら、そしてまた来年ここで会えることを楽しみにしつつ、やっぱり最高の芸術であるこの“シネマ”というのを共に祝福できれば、という風に思います。今宵も楽しんでいただいて、そして明日も、そしてこれからも何年も続くフィルメックス、そして映画というものを、一緒に楽しみたいと思います」と話し、すべての映画作品と集まった観客と喜びを分かち合う、温かいメッセージとともに、今年の授賞式を締めくくった。