2022年5月5日 12:00
過酷な運命を乗り越えたふたりの画家が描く牧歌的な風景の美しさ 『牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児』開催中
アンドレ・ボーシャンは1873年生まれのフランス人。父の営んでいた園芸農園を継いだ苗木職人であったものの、41歳で第一次世界大戦徴兵中に農園は破産、その心労で妻は精神に異常をきたしてしまう。
展示風景より
従軍中に測量部隊に配属され、そこで学んだ測地術をきっかけに絵画のおもしろさに興味を持っていたボーシャンは、46歳で除隊。その後は病気の妻を連れて深い森の中に隠遁、絵画制作に励みながら自給自足の生活を始めた。その後、1921年、48歳のときに、サロン・ドートンヌに作品を16点出品し、うち9点が入選。注目を集め始める。
アンドレ・ボーシャン《異国風の庭にいる人々》1950年個人蔵
アンドレ・ボーシャン《人物のいる山岳風景》1955年個人蔵
ボーシャンが生涯に描いた2000点の作品の大半が、自然の風景や、幼い頃から慣れ親しんでいた植物がモチーフ。その作品のなかには神話や歴史の登場人物が時折まぎれこみ、大胆な構図のなかに幻想的な雰囲気を作り出している。
展示風景より
そして、展覧会の締めくくりとして2人の作家の作品をあわせて展示する。時代や状況が違えど、さまざまな苦難を乗り越えた画家たちのノスタルジックな作品からは、優しい希望を感じることができるはずだ。