実際の事件を基にしたロマンスコメディが心地の良い余韻を残す『役者になったスパイ』
イラストレーション:高松啓二
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
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1989年、スイス。警察官のヴィクトールは反体制派の情報収集をしていた。ある日、上司から役者に化けて反体制の疑いのある劇団へ潜入捜査を命ぜられるが……。
実際に起こった警察による国民監視事件“フィシュ・スキャンダル”をからめたロマンスコメディである。ヴィクトールはお堅い警察官だが、潜入捜査のために部屋にゲバラのポスターを貼って模様替えしたり、ライダースの革ジャンにジーンズのファッションにして反体制派っぽく偽装する。演劇の知識がないために演技法で知られるスタニスラフスキーを過激思想家などと勘違いするのが可笑しい。
そんな中、劇団の看板女優オディールと親しくなり、仲間との交流で捜査に疑問を持ちはじめる。
また、この年はベルリンの壁が崩壊しソ連の影響力も弱体化した年でもある。当時のスイス社会情勢を折込み、ロマンス&軽いサスペンスも入りまじった地味だけどスジの通ったコメディとなっている。笑って考えさせられ、心地の良い余韻を残す。それでも劇中、膨大な監視ファイルが倉庫にしまいこんであるシーンにはゾッとさせられた。
<作品情報>
『役者になったスパイ』
1月23日(金)公開
公式サイト:
https://culturallife.co.jp/yakushaspy/
(C) Langfilm / Bernard Lang AG 2020