BRADIO結成15周年『SUMMER SUMMER at HIBIYA YAON』希望に満ちたハッピーファンクサウンドが日比谷公園の森を抜けてビル街にこだました夜
Photo:イシカワハヤト
Text:宮本英夫Photo:イシカワハヤト
結成15周年おめでとう。8月2日、東京・日比谷野外大音楽堂で『BRADIO 15th Anniversary「SUMMER SUMMER at HIBIYA YAON」』を観た。2日前まで関東直撃コースだった台風9号は東にそれた。客席は様々な年代のファンが集ってお祭りムードだ。2週間前にリリースされたばかりのメジャー5thアルバム『FUNK FIRE』も好評だ。全てがBRADIOを祝福する中、さぁスーパーファンキーパーティーを始めよう。
「会いたかったぜみんな。ひとり残らず全部まとめて、パーティーの向こう側へ連れていってやるぜ」
登場するやいなや、客席に向けて笑顔でウォーターガンをぶっ放す真行寺貴秋(vo)を筆頭に、全員が気合満点ではしゃいでる。
1曲目「未来サイダー」からオーディエンスもノリノリで手振りに参加、「スパイシーマドンナ」のおなじみの振り付けも一糸乱れぬ合わせ方、一体感がハンパない。ステージ脇からウォータースプラッシュが空高く発射され、熱気のこもる野音に一瞬の涼を運ぶ。間を空けずに「Diamond Dust Popping Life」へ、ファンキーグルーヴが止まらない。「ハメ外していこうぜ」と貴秋が煽る。望むところだ。
「俺たちの夏がやってきたぜ。とんでもなく素敵なロケーションを用意していただいて、本当にありがとう」
高い空、白い雲、緑の森、浮かぶ半月、セミの声。貴秋がスウィートなファルセットで魅了するスローファンク「Switch」から、カメラを持ち出して自撮りではしゃぐ「Say Cheese!」へ。
アップテンポのダンスナンバー「Ten」から、オールディーズ感満載のポップなサマーチューン「夏のエンジェル」へ。さっぱり短髪になった大山聡一(g)のキレキレのカッティング、いつもにこやか酒井亮輔(b)のブリブリのスラップベースもばっちりクリアに聴こえる。いつメンの奥野大樹(key)、結城泰範(ds)を加えたBRADIOサウンドは音が太く隙間が多く、しつこくねばっこくそれでいて切れ味鋭く、野外の解放感によく似合う。
酒井亮輔(b)
「騒いでるか?浮かれてるか?最高の夏の思い出作ろうな」
夏イコールBRADIOだと言わせてやるぜ。灼熱モードで突き進んだ前半を経て、「ファンファーレ」から始まる中盤は清涼感マシマシのミドルチューン連発でゆったり踊らせる。貴秋が歌詞をトバして歓声を浴びている。ハッピーな包容力満点の「運命へ」は、涼しげな電子ドラムとキーボードが奏でるホーンの音色、スラップベースが一体となって心地よい音空間を作る。聡一の気持ちの入ったギターソロ、後半の会場一体となった大合唱も最高だ。
真行寺貴秋(vo)
野音だけのためにアレンジした曲を。トロピカルなサマーサマーバージョンに衣替えした「真夏の悪魔」から、ジャズ/フュージョンの香り高い「Catch A Vibe」へ。ストイックなカッティング、シンプルなクリーントーンのみで何よりも雄弁の感情を伝える聡一のギターがいい。そして美しいピアノソロから、貴秋が万感の思いを込めて歌い上げるソウルバラード「あったかい涙」へ。流れるスモークがブルーのライトに美しく映える。歌い終えた貴秋が、スポットの中で静かに頭を下げる。あったかい拍手が野音を包む。気が付けばすっかり陽は落ち、パーティーはそろそろ佳境だ。
大山聡一(g)
「バラードのあとはお祭り騒ぎしたいね。ドカンと一発、後半戦参りますか」
「ナ!」「ツ!」の掛け声で、聡一がコール&レスポンスをリードするファンキーインストナンバーを経て、ステージに戻ってきた貴秋はギラギラ黄金に輝く着流し姿。曲はみんな大好き「マツケンサンバⅡ」のカバーで、♪BRADIOサンバ、と歌詞を変えて歌えば客席はもはや無礼講のお祭り騒ぎだ。さらに派手な電飾とかがり火に灯をともして「On Fire」へ、ラテンサウンド二連発でぐいぐい盛り上げる。ミラーボールが会場いっぱいに星屑を散りばめる「DANCEHALL MAGIC」から「幸せのシャナナ」へ、狂乱必至のキラーチューンを連ねてぐんぐんぶっ飛ばす。
「野音もだいぶ佳境に入って参りました。ここから夏のパーティー、ドカンと行きますよ」
聡一の饒舌なギターがイントロを飾るラテンファンク歌謡「Boom! Boom! ヘブン」では、客席にタオル回しとペンライトの花が咲き、「生存フラグのサタデーナイト」は、ファンクでダンスでロックなリズムに乗ってミラーボールが星を降らす。フィナーレが近い。
貴秋がしみじみとオーディエンスに、そしてスタッフ全員に語り掛ける。
「今日このステージに立てたのはチームBRADIOのおかげです。あきらめなければ夢はかなうんだと教えていただきました。本当にありがとう」
毎日がうんざりだとしても、希望は捨てちゃいけないぜ。貴秋の声量豊かなアカペラが夜の野音に伸びやかに響き渡る。8年前のメジャーデビュー曲「LA PA PARADISE」の希望に満ちたハッピーファンクサウンドが、日比谷公園の森を抜けてビル街にこだまする。照明がきらめき、ミラーボールが回る。全員参加の客席の手振りが壮観だ。
同じファンクなら踊らにゃ損損、座ってなんかいられないのがBRADIOのファンキーパーティーだ。
そしてアンコールでは、聡一が魅せてくれた。ルーパーエフェクターを駆使したひとりギタープレイからバンドサウンドへ、壮大なスケールのインストでオーディエンスをうっとり魅了。あらためて、すごいギタリストだ。そして貴秋の切なげな歌声が映える「ヨルゾラTreasure」をしっとり聴かせ、「BAN BAN TONIGHT」でがっつり踊らせる。さらに最後にもうひと騒ぎ、ダブルアンコール曲「Flyers」で残ったエネルギーを使いつくして完全燃焼。パーティー・イズ・オーバー。
いや、パーティーはまだまだ続く。
『BRADIO 15th Anniversary " FUNK FIRE " Release Tour 2025』は9月にスタート。春に開催した『BRADIO Billboard Live 2025』から、ツアー用にリアレンジした代表曲を収録したライブ音源作品『Rearrange The Groove』は8月にリリース。そして15周年を締めくくるファイナル公演『BRADIO 15th Anniversary「FUNKY SET FINALE」』は2026年2月13日(金)、東京・渋谷LINE CUBE SHIBUYAに決まった。音楽って素晴らしい。とにかくパーティーを続けよう。
<公演情報>
BRADIO 15th Anniversary『SUMMER SUMMER at HIBIYA YAON』
2025年8月2日 東京・日比谷野外大音楽堂