Nagie Lane、時代を超える名曲に重ねた3声のハーモニー Back to the Holidayと届けた『DONUT SONGS PREMIUM』【オフィシャルレポート】
「3人組クロスオーバーコーラスグループ」と名乗り、アカペラを軸に活動を始めたNagie Lane。3人が「自分たちが表現したいものは何か」と音楽を探求する旅を続けていく中で見いだしたのが、アコースティックサウンドを軸に、ハーモニーを際立てた表現スタイルだった。その音楽性と親和性を持つのが、1960~1970年代の邦洋のポップスだったことから、Nagie Laneはオリジナル曲と並行し、さまざまなカバー曲も積極的に歌い続け、形にしてきた。10月14日にデジタルシングルとしてリリースした「切手のないおくりもの」も、財津和夫が作詞・作曲を手がけ、1977年に発表された楽曲だ。
ライブでも積極的にカバー曲を歌い続けてきたNagie Laneが、2026年より始めたシリーズライブが、Nagie Lane presents『DONUT SONGS』だった。3回目となる公演は、10月12日に下北沢440で行われた。この日は、ゲストに男女デュオのBack to the Holidayを迎え、Nagie Lane presents Acoustic Cover Live『DONUT SONGS PREMIUM』公演として行われた。
『DONUT SONGS』は、「1960~70年代のフォーク、ソフトロック、AORなど、時代を超えて愛される『ドーナツ盤』と呼ばれる7inchレコードに刻まれた名曲の数々をNagie Laneならではのアコースティックサウンドと3声のハーモニーで再構築してお届けする」(資料より抜粋)というコンセプトのもとに名付けられている。
今宵の『DONUT SONGS』も、1960~1970年代の名曲カバーを多く取り入れた構成となった。
Back to the Holiday
オープニングアクトを務めた、ゲストのBack to the Holidayのライブは、グループ名を冠した楽曲「Back to the Holiday」から幕を開けた。穏やかに流れるアコギの音色に乗せて、竹渕慶と齊藤ジョニーのハーモニーが、そよぐ風のように場内に爽やかに響き渡る。穏やかな休日の夕べのひとときに、その歌声と演奏は、観客たちの心を優しく癒していった。フロアで鳴り響く手拍子も演奏に加えながら、ふたりは「Happy Song」を通して、君と出会えた喜びを軽やかに歌い上げ、寂しい心の隙間を歌声で埋めていた。その歌声は、観客たちの心を幸せの色に染めていった。
今回のイベントの趣旨に合わせて、Back to the Holidayも2曲のカバー演奏を届けてくれた。最初に、11月にリリースする音源に収録するサイモン&ガーファンクルの「The 59th Street Bridge Song (Feelin’ Groovy)」を演奏。
アルペジオで爪弾くアコギの演奏の上で優しく響くふたりの甘いハーモニーに、穏やかな気分で聴き入っていた。続く、大槻真希がアニメ『ONE PIECE』のエンディングテーマとして歌った「memories」では、言葉の一言ひと言を大切に歌う竹渕慶の声に、齊藤ジョニーが温かい歌声や演奏で寄り添い、心を濡らす調べを届けてくれた。
甘い吐息のような歌声と演奏が魅力的な「欠けた月のワルツ」では、ふたりが描き出す、切なくも淡い恋心を綴った物語に、胸を締めつけられるような、甘酸っぱい感情を覚えていた。
後半、バスドラムが刻む軽快なビートと、タンバリンの音色に乗せて、観客たちも手拍子を鳴らしだす。速いテンポでアコギを掻き鳴らす齊藤ジョニーの演奏に乗せ、ふたりはデビュー曲の「Wayfarers」を心弾ませながら歌い奏で、この場に心躍る景色を作り上げた。低音域も生かした力強いハーモニーが、気持ちの背中を押していく。そのうえで、最後にBack to the Holidayは「フリーバード」を通して、この場にいる人たちの心に、笑顔と元気、そして明日へ向かう勇気をチャージしていった。
Nagie Lane
温かい拍手に迎え入れられ、3人がゆっくりとステージに姿を現した。
Nagie Laneのライブは、ゆったりとした、穏やかながらもしっかりと存在感を示すアコギの音色に乗せて歌い始めた「SAUNA」から幕を開けた。mayuと観客たちが、最初から「とぅーるーるるっとぅー」「とぅーるーるるっとぅー」「ととのって」「ととのって」と歌声を交わし合う。mayuと、ほかのふたりのメンバーとの歌の掛け合いに心を揺さぶられながら、サビでは「とぅーるーるるっとぅー」「ととのって」と、みんなで心を整えるような、美しいハーモニーを描いていた。「落ち着いて息を吸って、吐いて」と呼びかけたmayuの声に合わせて、曲中に観客たちが深呼吸をしながら気持ちを整えていく。そこが「SAUNA」らしいやり取りだ。でも、3人の描き出す優しいハーモニーや演奏に触れるたびに、心を整える以上に、ジワジワと高まっていく火照りを身体中に感じていた。まさに「ととノッていく」気分だ。
軽快に駆け出したmikakoのアコギの演奏の上で、mayuが、印象深いイントロを鍵盤ハーモニカで吹き鳴らすのを合図に、カーペンターズの「Top of the World」へ。
心を弾ませて歌うmayuの声に、mikakoとbarattiが音で寄り添えば、場内からも、気持ちを弾ませた手拍子が、3人に寄り添うように響いていた。スキップをするように軽やかに弾む歌声やハーモニーと演奏が、時空を超えた音楽の旅へと観客たちを連れ出した。
MCでは、ライブに積極的に参加し、一緒に温かい空気を作り出してくれるファンたちに感謝を述べていた。そのうえで、「思うように、好きなように声を出して、一緒にライブに参加してください」と、mikakoが改めて呼びかけた。
Nagie Laneは、いろんな時代を彩った音楽を通して、観客たちをそれぞれの時代の空気や思い出の景色へ連れていく。軽快に跳ねたシャッフルビートに乗せて、mayuとmikakoのダブルボーカルを中心に、3人は、胸躍る美しい歌声を響かせながら、スプリームスの「You Can’t Hurry Love」を歌いだした。軽やかに跳ねる演奏に乗せて、場内から熱い手拍子が響き渡る。その手拍子も心を躍らせる力に変え、3人は力強く、でも、気持ちがはしゃぐままに歌い奏でていた。
ときに声を唸らせるなど、表情豊かに歌うmayu。その歌声に甘い声で寄り添うmikakoとbaratti。mikakoが弾くギタレレとbarattiが奏でるアコギの音色も折り重なり、3人は心躍る景色をこの場に作り出していった。
力強くアコギをストロークするmikakoの演奏に乗せて、3人は冒頭から美しく澄み渡るハーモニーを響かせ、ビートルズの「This Boy」を歌っていた。芯の太いmayuの歌声へ、透明感のあるmikakoとbarattiのハーモニーが彩りを与えていく。ふたりへの信頼があるからこそ、mayuは巧みに声を唸らせ、澄み渡る楽曲にさまざまな歌の表情と深みを与えていった。
MCでは、配ったパンフレットに、今日の演目と、どういう思いで曲を選んだのかを記していることを伝えていた。他にも、mikakoがテレビで流れているCMの話題を取り上げ、「今は人との心の距離が難しい」という話もしながら、次に奏でる曲の導入部にしていった。
mayuの吹いたハーモニカの音色が、哀愁を呼び起こす。ゆっくりと音を爪弾くアコギの演奏に乗せて、mikakoが言葉の一つひとつを探し、そこに思いを込めて吐きだすように、イーグルスの「Desperado」を歌い始めた。とてもシンプルな演奏だからこそ、感情の揺れをそのまま歌にするmikakoの声の絵筆が、曲に起伏豊かな表情を描きだす。mikakoの感情の高ぶりに合わせて演奏も力を増せば、寄り添うふたりのハーモニーも表情を豊かにしていく。なんて哀愁に溺れる歌声と演奏だろう。巧みに感情の強弱を付けながら、3人は観客たちの心を惹き付けていった。
重く響くギターの音色に、barattiが、同じくギターで繊細な彩りを加えだす。その演奏へ導かれるように、mikakoが澄み渡りながらも、少し切なさを帯びた声でオリジナル曲の「Won’t You Call My Name?」を歌いだした。
次第に感情を明瞭にするmikakoの歌声。その気持ちを支えるように、mayuとbarattiが歌声や演奏を重ねていった。確かな存在感を放つ歌声に心が惹かれれば、そこに観客たちのハーモニーも加えながら、3人は歌声と演奏で心を揺さぶっていった。
mayuがハーモニカで吹いた、哀愁を帯びたビリー・ジョエルの「Piano Man」のイントロの演奏に乗せて、barattiが同じく哀愁を帯びた、でも、強い意志を持った歌声を響かせる。場末のバーで、悲しみを酒で飲み干す人たちの気持ちを代弁し、自身にも重ね合わせて歌うピアノマンの心模様を、baratti、mayu、mikakoがそれぞれリードを取り、歌のバトンを繋いでは、それぞれの解釈で、彼の心の機微を歌にしていた。ひとりの男性の心模様を3人がそれぞれの解釈で歌うことで、さまざまな感情を宿した歌声が生まれる。それが、カバーする面白さであり、そこへ新たなドラマを与えてゆくところがNagie Laneらしい。鍵盤で和音を奏でるように、それぞれに異なる色を持つ声を重ね合わせたハーモニーも、この曲に表情豊かな物語を与えていた。
MCではbarattiが、今年の夏にフジロックフェスティバルに出演し、忌野清志郎のトリビュート企画でさまざまな楽曲を歌ったこと、その経験を通して心を動かされたことを語っていた。そのうえでNagie Laneは、この曲をカバーしてくれた。
「愛しあってるかい、いえー」と叫ぶ声を合図に、気持ちを明るく弾ませて忌野清志郎の「JUMP」を演奏し始めるや、観客たちも立ち上がり、3人の演奏に合わせて一緒に身体を揺らし始めた。沸き立つ思いを騒がせるように歌う3人の力強い声に刺激を受け、観客たちも気持ちを熱くすれば、「JUMP もう一度高く JUMPするよ」の声に合わせて、膝を大きく屈伸しながら身体を揺らしていた。3人も感情を露わにした力強い声で、大きく手を振り上げ、ロックンロールすることを楽しんでいた。歌い終えた後の「イエーって言えー!」という煽りも最高だ。
そこからハートフルなハーモニーを描きながら、フォーキーでピースフルな香りを放つ「Hummingbird(愛のうた)」に演奏は繋がっていった。フットストンプが刻むビートに心のリズムも重ね合わせ、3人は気持ちを弾ませながら、心を解き放つように歌っていた。みずからの歌声に翼を授け、軽やかに羽ばたかせ、Nagie Laneはこの場に心躍る景色を描きだす。とても親しみやすく、胸にスーッと響く歌声とハーモニーに、ドキドキした胸の高鳴りをずっと抑えられなかった。「聴かせて Hummingbird 愛のうた」と、3人と観客たちが一緒にハーモニーを描き出していた姿も、とても印象的だった。
ここで、「私からあなたへ この歌を届けよう」と、10月14日に配信リリースした財津和夫の「切手のないおくりもの」を歌ってくれた。3人は歌詞に綴られた真心を、温かな歌声で届けていた。この曲では、それぞれの歌声に、ほかのふたりが澄み渡るハーモニーを重ねていた。場内から響く手拍子からも、弾む心模様が伝わってきた。巧みに転調を織り交ぜながら、3人は観客たちに歌声の手を笑顔で差し伸べ、繋がりあう喜びを一緒に分かち合っていた。
軽やかに流れるmikakoのアルペジオの音色に乗せて3人が美しいハーモニーを響かせ、最後に歌ったのが、ベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」だった。澄み渡る歌声の中から滲み出る、郷愁を誘う淡い香りに心が引き寄せられる。3人の描き出す透明感のある歌声とハーモニーが、一人ひとりの心を無垢な少年や少女の頃へ戻していくと言えば良いだろうか。3人の美しくも優しい歌声にずっと心を揺らし、甘く、でもどこか淡い気持ちや記憶に、ずっと浸り続けていたかった。
アンコールでは、ゲストのBack to the Holidayを迎えたコラボステージが行われた。2組が最初にカバーしたのが、はっぴいえんどの「風をあつめて」だ。齊藤ジョニーのアコギの演奏を始まりに、他の楽器陣も音の風を重ねながら、まるで早足で散歩するように次々と歌声のバトンをリレーし、重ね合わせては、1曲の中でさまざまな歌声やハーモニーの風を起こし、心はしゃぐ楽しさをこの場に描きだしていった。リードを取る人が替わるたびに歌声の表情が変われば、みんなで重ね合わせたハーモニーにも、ハミングなどさまざまな要素を加え、胸を弾ませ、気持ちをときめかせる、表情豊かな歌と演奏を描き出していった。歌声の風を集めて響かせるたびに、駆け出したい気分に心が染まっていた。
「みんなの故郷を思い浮かべながら聴いてください」。Nagie LaneとBack to the Holidayのコラボステージの最後の曲として、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズの「Take Me Home, Country Roads」を歌いだした。芯の太い竹渕慶とmikakoの歌声に寄り添う、澄み渡る優しいそよ風のようなコーラス。まるで、大自然の中で歌声に包まれていく気分だ。大勢の人たちが郷愁を覚え、胸の中のスクリーンに懐かしい思い出を映しながら、手拍子をしていた。一人ひとりが心の中にある故郷の景色に思いを馳せ、温かい歌声に包まれながら、それぞれの思いや思い出に浸っていた。終盤、転調してからの熱を抱いたセッションにも、心がずっと躍っていた。
Nagie Laneは、2027年春頃に関東近郊を巡る『DONUT SONGS TOUR 2027』(仮題)を予定している。東京公演は3月14日(日)、下北沢440で開催。いろんな時代の匂いを、Nagie Laneが届ける音楽の旅を通して、あなたも感じてほしい。
Text:長澤智典
<公演概要>
Nagie Lane presents Acoustic Cover Live『DONUT SONGS PREMIUM』
10月12日 下北沢440