蜷川幸雄の半生を描く幻の戯曲『蜷の綿』がついにベールを脱ぐ
蜷川幸雄がこの世を去って早3年。2016年には、マームとジプシーの藤田貴大が蜷川の半生を描いた戯曲を、蜷川、藤田両者が演出する公演『蜷の綿 -Nina’s Cotton-』が予定されていた。蜷川の体調不良によって延期されたこの作品が、本日10月13日より彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにてリーディングという形で披露される。
その舞台に立つのは、さいたまゴールドシアターとさいたまネクストシアターの面々。主宰の蜷川と共に長い年月を過ごしてきたふたつの団体から総勢44人が彼の半生を紡ぐ。演出は、こちらも長く蜷川の片腕として演出助手を務めてきた井上尊晶が担当する。
蜷川はその最晩年、50歳年下の藤田に新作戯曲を依頼した。藤田はその要請を受け、蜷川自身を描くことに決めた。
彼の少年時代から俳優をやっていた頃、アングラ時代、そして誰もが認める日本トップの演出家として活躍する姿……。彼の死によって一度は途切れたそのバトンを受け取り、蜷川に対する並々ならぬ思いをもったメンバーが、彼のベースであった彩の国さいたま芸術劇場で上演をする。ここはかつて、蜷川のライフワークとも言えるシェイクスピアシリーズをはじめとして、彼の演出作が数え切れないほど生まれた場所だ。わずか3日間の公演だが、改めて蜷川幸雄という演出家の遺したもの、失った存在の大きさに気づく作品になることだろう。
同時期にこの公演の関連企画として、藤田自らが演出を手がける『まなざし』も上演される。こちらは蜷川が演出家として見つめ続けてきたもの、その「まなざし」を藤田が探る作品となりそうだ。出演者にはマームとジプシーの俳優である成田亜佑美、吉田聡子のふたりがクレジットされている。その名もNINAGAWA STUDIOと名付けられた大稽古場で上演されるこの作品で、藤田から見た演出家・蜷川の姿が垣間見えるだろう。
文:釣木文恵
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