残業代のトラブル! 事前申請を超えた分は支払われない? イケメン弁護士が答えます
今回は刈谷弁護士
私の会社では、残業をする場合、本人の事前申請と上司の承認が必要です。
これまでは、申請時間を越えても、実際に働いた分の残業代が支払われていたんですが、今月からは、事前申請の時間を超えた分の残業代は、支払われないことになりました。
これって違法ではないのでしょうか?
残業代って働く人にとっても企業にとっても永遠のテーマですよね。私自身も先日、タクシーの運転手さんと話をしたとき、運転手さんが「いや~、●●時までに洗車も終わらせて帰宅しないと始末書書かされちゃうんですよ。最近厳しくなって…」と言っていました。その運転手さんは「もっと働かせて欲しい。」と思っていたようですが、企業が労働基準法や36協定に沿って適切な労働時間を守るよう、従業員に対して指導監督しているなんて、いい会社だと思います。
今回の相談者さんの会社のように、企業の中には、従業員の適切な労働時間を把握し、管理するための手段として、残業することについて事前承認制を導入しているところがあります。これは、承認制にすることにより、本当に必要な残業以外をさせないという効果があるといえます。
ただ、到底定時では終わらないほど多くの仕事を任せておきながら、いざ残業の申請をすると承認しない会社もあるようですから注意が必要です。制度を悪用してしまっているんですね。
従業員からすると、残業の申請をしても許可されないけど仕事は終わらないから、申請をせず残業したり、家に持ち帰って処理したりせざるを得なくなります。結果、その仕事をするために費やした時間に対する残業代は払われません。
というのも、残業代が発生するべき労働時間というためには、使用者の指揮命令下に置かれていたと言えなければならないのですが、承認制の下では、残業に対する承認があって初めて指揮命令下に置かれていたものと評価されることになるからです。
ただ、先ほどのケースのように時間内では到底終わらない量の仕事を振られていた場合には、それによって残業を余儀なくされたことが証明できれば、承認がなくとも指揮命令によって残業をしていたことになりますから、諦めてはいけません。
今回の相談者さんのケースでは、事前申請を超えた時間について、会社はいきなり残業代を支払わなくなったということですが、このケースでは、「いきなり」というところがポイントとなります。これまでは申請時間を超えた時間についても支払われていたということは、その超過時間について、会社が指揮命令していたと認めていたということです。
それが急に支払われなくなった、すなわち指揮命令下ではなくなったというためには、それなりに合理的な理由が必要とされるでしょう。
しかしながら、どうやらそんな理由はなさそうです。そうすると、超過時間分についてもやっぱり残業代を支払わなければならないでしょう。
このように、このケースの場合は、きちんと給与を支払わないと残業代が未払いであるとして違法となる可能性が高いといえます。無用な問題を起こさないためにも、このくらいの時間はかかるかもしれないと、あらかじめ少し多めの申告をしておくのはどうでしょうか。
アディーレ法律事務所
刈谷龍太弁護士(東京弁護士会所属)
中央大学法科大学院卒業。司法修習第64期。弁護士法人アディーレ法律事務所で、パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を専門に扱う部署に所属。
問題点を的確につく仕事ぶりは、評価が高い。趣味はサッカー・フットサル。特技はモノマネ。テレビも大好きで、ニュースだけでなくドラマからバラエティ番組まで幅広くチェックしている。公式ブログ「こちら弁護士刈谷龍太の労働相談所」では、労働問題などの気になる記事を「実おもニュース」(実におもしろいニュース)として、独自の視点から解説している。
●刈谷龍太プロフィールページ
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