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「ジャニーズファンクラブ規約」問題…変更を求められた3項目は法的に何が抵触?

ジャニーズファンクラブに加入しているファンから「会費を払っているメリットが見えない」という声が上がり、NPO法人「消費者被害防止ネットワーク東海」が、運営元である「ジャニーズファミリークラブ(JFC)」に対し、今年10月に会員規約の変更を求める事態へと発展したようです。

この申し入れを受けて、ジャニーズ事務所は来年にも見直す予定だと作業を進めていると、11月23日には新聞などのメディアで報じられました。

具体的に変更を求められている項目は「利用規約の変更」「強制的な退会」「入会金及び年会費の不返還」の3点となります。では実際「消費者契約法」などの法律に抵触していたのでしょうか?また、抵触している場合はどの点が問題となっているのでしょうか?

「ジャニーズファンクラブ規約」問題…変更を求められた3項目は法的に何が抵触?

*画像はイメージです:http://www.shutterstock.com/


 

■消費者契約法とは


市場取引においては、企業などの事業者と、商品・サービスを購入する一般消費者との間に、情報格差があり、企業側の商品広告や説明に対し、消費者側がその真偽・正確性、品質を十分に検討できない場合があります。

民法の原則では、契約当事者間で、合意がした以上、原則として合意の内容を守らなければならないことになっていますが、このような場合に、一律に合意があったことを重視し、修正を加えないと、消費者側が不当な不利益を被るケースが生じてきます。

そこで、民法上の契約取消や違約金の定め、私人間で本来自由に合意できる規定を、消費者契約法において、消費者を保護するために、一部特別規定が設けられています。

消費者契約法は、強行規定の性格を有しており、これと異なる約定を事業者が消費者と結んでも、無効となり、消費者契約法の規定が優先されます。

したがって、消費者契約法の消費者保護条項に抵触するようなサービス約款は、無効あるいは取消可能となる場合があります。


今回のジャニーズのファンクラブ会員規約にも、消費者契約法の適用があります。

 

■問題となっている会員規約とは


以下、問題となっている会員規約をみていきましょう。

①利用規約の変更について


第2条
4.JFCは、本規約を予告なく改訂することがあります。改訂された本規約については、JFCより告知されるものとし閲覧可能となった時点から効力を有するものとします。


事業者と消費者の合意内容は、本来、その都度合意があった時点で成立するはずですが、多数の消費者を相手とするサービスにおいては、統一の利用規約を用意し、サービス利用申込時に統一的に利用規約を適用することになります。

利用規約は、一切変更できないわけではないため、事業者による変更も可能ですが、その場合は、一般的に、最新のサービス利用時に、再度、利用規約への同意を求める手続きをしてはじめて、変更後の利用規約が適用されます。

ただ、黙示の同意でも変更後の規約を適用することは可能であるため、個別の同意まではなくとも変更後の規約を従前のサービス利用者に十分に周知した段階で、黙示の同意があったものとして変更後の利用規約を適用できる可能性はあります。

他方、閲覧可能となった段階、というだけでは、現実的に利用者が変更後の内容を認識することが困難であり、特に不利益変更がある場合には、変更後の規約を全利用者に適用できるかどうかは、仮に裁判になった場合には問題となるでしょう。


この会員規約の規定は、それ自体が無効というより、不利益変更があった場合の規約の適用の有無を巡って、争われる可能性があります。

 

②強制的な退会について


第4条

2.強制的な会員資格の抹消

以下の項目に該当する場合、会員は催告無く即時に会員の地位や一切の権利・債権を自動的に失うものとします。

(1)(2)略

(3)会員もしくは入会申込をした者が、各条件を満たしている場合でも、会員を退会処分とする場合があります。

3.・・・退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません。

第5条

1.「タレント」およびジャニーズ事務所は、タレントファンクラブのサービスに関し、いかなる責任も負わないものとします。


何ら帰責性がない場合でも、事業者側が恣意的に強制的に退会させることができるとする条項は、消費者の利益を一方的に害するものとして、消費契約法10条により無効とされる可能性があります。

事業者都合による強制的な退会は、見方を変えれば事業者の債務不履行によるサービス停止を自由にでき、かつ、何らの補償もしなくてもよいという条項であり、実質的には事業者の債務不履行責任の全部の免除を定めたものであって、やはり、消費者契約法8条で無効とされる可能性があります。ジャニーズ側がファンクラブのサービスに関しいかなる責任も負わないという規約も同様です。


 

③入会金及び年会費の不返還


第4条

3.会員が資格を喪失した場合、理由の如何を問わず、支払済みの入会金および年会費の返還はできません。また、退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません。


入会金及び年会費の不返還は、実質的には、退会時の違約金を定めたものといえます。

まず、事業者側の都合によるサービス終了の場合にまで適用するのは、消費者契約法10条もしくは8条で無効となる可能性があります。

会員が事情の如何によらず、一切の損害賠償請求ができないという規定も、消費者契約法8条に抵触する疑いがあります。

 

■自主改訂が望ましい


不当な会員規約が存在していたとしても、基本的には、裁判で具体的に年会費や損害賠償を求める中で、問題となる規約が消費者契約法に抵触しないかが争われることになります。

ただ、金額が少ない場合には、消費者が個人で裁判までするケースは現実には難しいことも多いですから、今回の問題提起をきっかけに、事業者側で、柔軟な自主改定が望まれるところです。

 

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。
不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

【参考リンク】

産経ニュース「ジャニーズ会員規約改定へ消費者団体「不適切」指摘」

ジャニーズファンクラブ会員規約

【画像】イメージです

*majivecka / Shutterstock

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