「おにぎり早食い競争」で参加者が死亡…遺族は主催者を訴えることができる?
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11月13日、滋賀県彦根市で開催された農産物PRイベント「ふれあいフェスティバル」で「おにぎりの早食い競争」に参加した男性がおにぎりを喉に詰まらせて救急搬送され、3日後に死亡したことがわかりました。
主催者側は喉に詰まらせないようにお茶を用意するなど、参加者に対する安全配慮義務は怠っていなかったと認識をしているようですが、本当にそれだけで安全配慮義務を果たしたといえるのでしょうか。また、今回のような事故の場合、遺族は主催者を訴えることができるのでしょうか。
そこで、今回の事故について桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に見解を伺いました。
■今回の事故について責任の所在はどうなる?
まず、今回のような早食い競争における事故の場合、主催者側にはどのような責任が発生するのでしょうか?
「早食い競争の主催者が参加者に対し、安全配慮義務をしっかりと果たしていないということであれば、主催者側が法的責任を負うことになるでしょう」(大窪弁護士)
主催者の安全配慮義務とは、具体的にはどのような内容を指しますか。
今回の事故では、主催者は喉に詰まらないようにお茶を用意したということですが…。
「安全配慮義務とは、事故を予見して回避する注意をする義務のことです。
早食いについては、喉に食物を詰まらせて呼吸困難になる事故が過去にも発生しており、事故の危険が高いものと言えます。主催者側がそうした事故発生のリスクを把握し、事故を防止するために必要な措置をしっかりと講じていたかどうかが問題となります。
今回の場合であれば、お茶を用意するといったこともそうですが、その他にも参加者に対して危険性の告知や、食べ方のルール、早食いで食べる食べ物の種類など、早食いを行う上で事故がおきないよう、さまざまな面で安全性に配慮していたかどうかが重要となります。」(大窪弁護士)
確かに今回の事故を考えると、お茶を用意するだけでなく、喉に詰まりづらい食材を選ぶなど他の視点からも安全性についての配慮はできたのかもしれません。事故が起きないようにどれだけ安全性に配慮できていたのかという点が重要なのですね。
■遺族はどこに損害賠償請求ができる?
今回の事故を受けて遺族は損害賠償など、主催者であるJA東びわ湖に請求することができるのでしょうか?
「主催者であるJA東びわ湖が安全配慮義務を果たしていないということであれば、損害賠償請求を行うことは可能です
ただし、参加者側の側に過失がある場合(例えば、主催者側がつくったルールに反する危険な食べ方をしていた場合など)には、主催者側に安全配慮義務違反があったとしても損害賠償額は減額されるのではないかと思われます。」(大窪弁護士)
大窪先生の見解を伺う限り、喉が詰まらないようお茶を用意していたというだけでは、主催者側が安全性配慮義務は果たしていると主張するのは厳しいのではないかと感じます。
早食いの食材や食べ方のルールなど、もう少し安全面に配慮していればこのような事故は防げたのかもしれません。
いずれにせよ、今回の事故だけでなく「早食い競争」は過去にも死亡者が出ており、事故発生のリスクが非常に高いものだということが今回改めて浮き彫りとなりました。たとえ安全配慮義務を十分に果たしていたとしても、「早食い競争」自体が危険であるということを、主催者側が認識する必要があったのだと思います。
取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)
取材・文:伊藤あきら(フリーライター、AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。
同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。オフィシャルサイト「いとうノート」)
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*Hungry Works / PIXTA(ピクスタ)