忘年会シーズン到来…「タクシー内で嘔吐」した場合に法的な責任は発生する?
12月に入り、忘年会シーズンがやってまいりました。この時期決まって起こる事の一つとして終電を逃した場合などによるタクシーでの帰宅。しかしながら、仕事納めやストレス発散のため、ついつい飲み過ぎてしまうことも多々あるかと思います。
そこで、今回はそんな忘年会などで飲み過ぎてしまい「タクシー内で嘔吐してしまった場合」、法的な責任は発生するのかを説明してまいります。
*画像はイメージです:https://pixta.jp/
タクシーに乗るということは、両名の間で旅客運送契約が締結されていることになり、運転手は、お客さんを安全に目的地まで運送し、お客さんは運賃を支払う義務を負うことになります。このことはご存じの方も多いでしょう。
実は、このこと以外にも“互いに損害を生じさせないための善良なる管理者としての義務”(善管注意義務)が発生するのです。
自身の嘔吐の可能性を考慮に入れず、タクシーの座席を嘔吐により汚損してしまうということは、この「善管注意義務」に違反したということになります。
善管注意義務違反があった場合、乗客はそれにより生じた損害を賠償する必要がありますが、その賠償の範囲は、社会通念上生じる内容に限られます。
そこで、その賠償にあたるのが「逸失利益」によるものです。
「逸失利益」とは、「本来であれば得られるはずだった利益」が得られない場合にそれを損害として賠償請求の対象とする概念をいいます。
ですから、嘔吐したことによって、タクシー会社が本来得られたであろう利益を損なったか否か、という観点から考えることになります。
タクシーの座席を嘔吐によって汚損してしまった場合、そのタクシーが座席交換ないしクリーニングを終えるまで、他の乗客を乗せることはできず、タクシーとしての営業ができなくなってしまうことは、社会通念上相当のことと言えます。
とすると、理屈としては、このタクシーが稼働できなかった間に得られるべき利益を、逸失利益として損害賠償請求することはできると言いやすいのではないでしょうか。
もっとも、逸失利益の存在は、請求をする側に立証責任が課せられます。その場合、その汚損したタクシーが稼働するはずであったこと、それによって得られた利益の具体的金額を含めて立証する必要が出てきます。
そうすると、たとえば保有台数が何十台にも上るタクシー会社の場合には、配車を工夫するなどして逸失利益の拡大をある程度防止できる反面、個人タクシーの場合にはそれが難しいという点があり、請求できる逸失利益の額が異なってくる可能性もあるように思われます。
なお、タクシーは正当な理由がない限り基本的に乗車拒否ができないとされており(道路運送法13条)、正当な理由の一例として、泥酔者が挙げられております(自動車運送事業等運輸規則第13条3号)。
とはいえ、忘年会が終わって帰る足もなくなれば、必然的にお世話になりたいのもまたタクシー。飲みすぎてしまうとお金も記憶も、ときには理性も遥か彼方へ消えてゆきます。
せっかく乗せてくれたタクシーの運転手さんに不愉快な思いをさせないためにも、これからの忘年会シーズン、飲みすぎにはくれぐれもご注意を!
*著者 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
【画像】
*BLACKY / PIXTA(ピクスタ)
そこで、今回はそんな忘年会などで飲み過ぎてしまい「タクシー内で嘔吐してしまった場合」、法的な責任は発生するのかを説明してまいります。
*画像はイメージです:https://pixta.jp/
■タクシー内での嘔吐は「善管注意義務違反」!
タクシーに乗るということは、両名の間で旅客運送契約が締結されていることになり、運転手は、お客さんを安全に目的地まで運送し、お客さんは運賃を支払う義務を負うことになります。このことはご存じの方も多いでしょう。
実は、このこと以外にも“互いに損害を生じさせないための善良なる管理者としての義務”(善管注意義務)が発生するのです。
自身の嘔吐の可能性を考慮に入れず、タクシーの座席を嘔吐により汚損してしまうということは、この「善管注意義務」に違反したということになります。
善管注意義務違反があった場合、乗客はそれにより生じた損害を賠償する必要がありますが、その賠償の範囲は、社会通念上生じる内容に限られます。
■タクシー側の「逸失利益」を賠償しなければならない
そこで、その賠償にあたるのが「逸失利益」によるものです。
「逸失利益」とは、「本来であれば得られるはずだった利益」が得られない場合にそれを損害として賠償請求の対象とする概念をいいます。
ですから、嘔吐したことによって、タクシー会社が本来得られたであろう利益を損なったか否か、という観点から考えることになります。
タクシーの座席を嘔吐によって汚損してしまった場合、そのタクシーが座席交換ないしクリーニングを終えるまで、他の乗客を乗せることはできず、タクシーとしての営業ができなくなってしまうことは、社会通念上相当のことと言えます。
とすると、理屈としては、このタクシーが稼働できなかった間に得られるべき利益を、逸失利益として損害賠償請求することはできると言いやすいのではないでしょうか。
■タクシー側には全く責任がない?
もっとも、逸失利益の存在は、請求をする側に立証責任が課せられます。その場合、その汚損したタクシーが稼働するはずであったこと、それによって得られた利益の具体的金額を含めて立証する必要が出てきます。
そうすると、たとえば保有台数が何十台にも上るタクシー会社の場合には、配車を工夫するなどして逸失利益の拡大をある程度防止できる反面、個人タクシーの場合にはそれが難しいという点があり、請求できる逸失利益の額が異なってくる可能性もあるように思われます。
なお、タクシーは正当な理由がない限り基本的に乗車拒否ができないとされており(道路運送法13条)、正当な理由の一例として、泥酔者が挙げられております(自動車運送事業等運輸規則第13条3号)。
とはいえ、忘年会が終わって帰る足もなくなれば、必然的にお世話になりたいのもまたタクシー。飲みすぎてしまうとお金も記憶も、ときには理性も遥か彼方へ消えてゆきます。
せっかく乗せてくれたタクシーの運転手さんに不愉快な思いをさせないためにも、これからの忘年会シーズン、飲みすぎにはくれぐれもご注意を!
*著者 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
【画像】
*BLACKY / PIXTA(ピクスタ)