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飲み放題の「グラス交換制」は無視してOK!? 忘年会シーズンに知っておくべきポイント

飲み放題の「グラス交換制」は無視してOK!? 忘年会シーズンに知っておくべきポイント

*画像はイメージです:https://pixta.jp/


今年も師走が訪れ、木枯らしが吹きすさぶ頃になりました。

「ボーナスちゃんと出るのかな?」なんて憂いながら、身も心もはたまた懐までも震えている方も少なくないかもしれません。そんなことをも忘れてしまうために、今日も日々居酒屋などで忘年会の賑やかな声が聞こえてくる頃でもありますね。

そんな飲み会でお世話になっている方も多いであろう飲み放題。そして、飲み放題において必ずと言ってもいいほど存在する「グラス交換制」ルール。

ふと、「飲み放題なのにグラス交換制って?」と疑問を持った方もいらっしゃると思います。

そこで今回は「グラス交換制」という“お店のルール”はどこまで拘束力があるのかを、両者に発生する契約関係をもとに解説してみたいと思います。

 

■お店とお客さん……そもそもどんな契約関係が?


飲食店とお客さんとの間には、お店がお客さんに対し、飲食物を提供し、飲食する場所を提供する「飲食物提供契約」が成立します。


お客さんとお店の間にどのような意思の合致があるか、すなわち、どのような「申込み」と「承諾」があるかどうかが重要になります。

具体的には、お客さんの「飲食物を提供して下さい」という「申込み」と、お店側の「提供します」という「承諾」があって、初めて契約が成立することになるのです。

 

■では、お店側のルールに拘束力は?


民法の大原則として「契約自由の原則」というものがあります。これは読んで字のごとく、「私人と私人の間の契約は、(公序良俗や強行法規に反しない限り)自由である」という原則のことです。

つまり、お店は、いつ、誰と、どのような契約を締結するか決める自由があり、お客さんもいつ、どの店と、どのような契約を締結するか決める自由があります。

そのため、お店側が「グラス交換制の飲み放題を提供します」という申込みの誘引をし、客側が「それで構わないので飲み放題をお願いします」と申込みをし、お店側が「かしこまりました」と承諾をした場合には、お店とお客さんとの間には「グラス交換制という条件での飲み放題を提供する契約」が成立することになります。そして、契約が発生した以上は、契約上の拘束力が生じることになり、お客さん側がグラス交換制を拒絶して、「じゃんじゃん持って来い!」などとおかわりを要求しても、お店側として応じる義務はないことになります。

 

■強硬におかわりを要求するようなお客さんを追い出すことはできる?


お店とお客さんとの間に「グラス交換制の飲み放題」という内容の契約が成立している場合、お客さんもその契約に拘束されます。


そして、民法上、一方がその契約を守らない場合、他方は、契約を守るよう催告をした上で契約を解除することができます(民法541条)。

つまり、「ルールを守らないのであれば出ていってもらいます」という忠告をお店側がしたにもかかわらず、お客さんが従わなければ契約を解除するとともに、それまでの飲食代金は損害賠償(民法415条)として請求することが可能です。

そして、お店側は飲食物提供契約を履行するため、自身の施設管理権に基づき、客に立入りを許しているわけですから、契約が解除された以上、お客さんに退店いただくことは可能になるわけです。

ええっ!?厳しくない?と思う方もいるかもしれませんが、お客さんもその店に行くかどうかはまったくの自由。その店のルールが嫌ならば、その店に行かなければいいだけの話なのですから、必ずしも厳しいとも言い切れません。

なお、お客さんがお店から退店を指示されたにもかかわらず退店しない場合には、不退去罪(刑法130条)に該当したり、大声をあげたりすると、場合によっては威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性がありますので、ご注意ください。

 

グラス交換制って、確かに立て続けに飲みたいのに、持ってきてもらうまでのタイムラグが生じてしまったり、逆にそのタイムラグを見越して早めに飲みほして結果的に飲みすぎてしまったりするなどのリスクもありますね。(自分だけ?)

居酒屋さんもグラスが足りなくなってしまうことを防ぐ必要もありますので、事前にルールを確認し、楽しい忘年会を過ごしてくださいね。


 

*著者 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
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*NOBU / PIXTA(ピクスタ)

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