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高齢者だからって説明もなしに高価なガス給湯器を販売…法的な問題は?

高齢者だからって説明もなしに高価なガス給湯器を販売…法的な問題は?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/


離れて暮らす実家の両親、なかには、もう父母のどちらかが亡くなって気丈に一人暮らしをされているケースも少なくないでしょう。祖父や祖母が健在の場合も、後期高齢者のみの暮らしで、心配事は尽きません。

高齢者であることを利用して金を余分に巻き上げようとする業者も少なくないからです。

たとえば、こんなケース。子どもが働きはじめて家を出て、退職金で終の棲家を郊外に購入したUさん夫婦。田舎に移り住んで、もう間もなく25年になろうとします。

となると、家の壁など、さまざまなものが壊れ始めます。購入時からセットされていたガス給湯器が壊れ、追い焚きができなくなってしまいました。


地元のガス会社に修理してもらおうと問い合わせると、若い社員がやってきて、25年前の機種で部品がなく修理できず、全交換になるとか。彼が出した見積もりは本体のみで40万円超え!クレジットカードは使えないそうです。

このことを、息子さんが実家に電話した時、はじめて聞かされたそうです。

「その人も若いのに難しいことをよく覚えていてね、一生懸命話してたわ」

と褒めるお母さん。

しかし、息子さんは激怒しました。

「褒めてる場合か、そんなの詐欺じゃないか!絶対そこで買うな!」

 

■息子が激怒した「悪徳なやり口」


なぜ息子さんは激怒したのでしょう?

実は母親は、業者から機種の説明を一切受けていませんでした。機能により、値段がだいぶ違うのです。

ところが、選択肢を示さずに説明もなく前と同じ最上位機種をもっとも高価な機種を高い代金のまま値引きなしで売ろうとしていました。
これも調べてみると値切り交渉で、半額近くまで値が下がることがわかりました。

このように、業者が説明を怠り、高い値段で売りつけようとしたことに息子さんは激怒したのです。それを褒めるなんて、というわけです。

 

■情報格差の罠を考慮した法律がある!


しかし、ここで疑問が湧きます。聞かなかった母親のほうが悪いのでしょうか?

星野法律事務所の弁護士、星野宏明先生にお伺いしました。

「このケースでは事業者と一般消費者の情報格差がはっきりしています。このような情報格差を考慮して、一定の場合に契約取消ができる“消費者契約法”が用意されています。

虚偽の事実を説明して誤信させて購入契約させている場合には、たとえ商品を提供していても刑法上の詐欺罪になるケースはあります。


その他、契約取消の場合は、代金返還義務があります。

ただ、この場合は虚偽の事実を説明していないので、詐欺罪には問われないでしょうが、説明不足は否めません」(星野弁護士)

25年もガス給湯器を使っていれば、使っていない機能もあるはずで、ほかに安い選択肢があるとわかれば、そちらを選ぶこともできたでしょう。

息子さんが電話をしなければ、その見積もりでお願いしていたようですが、事前で回避、別の良心的な業者で安く交換を済ませました。

しかし、そのまま業者の見積もりだけを鵜呑みにして、後から分かったとしたら、キャンセルできるのでしょうか?

 

■業者に落ち度があるならば代金変換も


「消費者を保護するために、訪問販売等によって契約した商品を業者に落ち度があるかどうかにかかわらず無条件解約できるのが“クーリングオフ”です。思わず契約してしまっても、あとから不要だとおもったら取り消しはできます。

法律で定められた事項が書かれた契約書面(法定書面)を受け取った日を1日目として起算して、クーリング・オフ期間は8日間です。この期間内なら無条件で解約ができます。

また、クーリングオフ期間を過ぎた場合でも、“不実告知”(事実と異なることを告げる、確実ではないことを確実であるように言う、リスクを告げない)など“消費者契約法”が定める取消事由があれば取消の上、代金返還が可能です」(星野弁護士)

なぜ機種について一切説明をしなかったのかを業者に迫り、クーリングオフも辞さないという態度で息子さんが交渉をすることで、仮に契約していたとしても戦うことは可能でしょう。


修理で済むかどうか見てもらうために業者を呼んで、その場で全交換といわれた場合はともかく、最初に「買い替えたい」と呼んだ場合はクーリングオフ適応外になる場合もあると星野弁護士は指摘します

 

■実際に裁判になるケースはある?


「刑事事件は、詐欺罪の構成要件を満たしていれば立件もありえます。

クーリングオフや契約取消代金返金だけの場合、消費者事件は金額は少ないことが多く、弁護士に相談して裁判を起こすのは費用倒れに終わることが多いので、よほど高額な被害でない限り裁判までというケースは少ないのが実情です。

被害額が少額の場合、実際には消費者生活センターなどに相談して解決することも多く、妥当ともいえます」(星野弁護士)

手を打つのが遅く、購入されていた場合は、あきらめずに業者と消費者センターへの交渉を。また、弁護士の知人がいれば、内容証明を出してみると悪徳業者も態度を豹変させるかもしれません。

ちなみに、件の業者に改めて機種についての説明と見積もりの出し直しを電話で問い合わせたところ、例の若者は担当を外れているの一点張りで少しお待ち下さい、と下手に出てきたそうです。短期の契約営業マンだったのかもしれません。

こうした営業マンは近隣に飛び込みで営業をかける場合もあり、老人家庭と見るや丸め込みにかかります。この場合は紛うことなき訪問販売ですから、誤って購入した場合はクーリングオフを!

 

*取材対応弁護士:星野宏明(星野法律事務所。
不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)

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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

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