2017年11月6日 21:40
電車内に落ちていた財布の持ち去り…どんな罪になる?
今回のケースでいうと、電車の座席に財布があり、所有者と思われる人が近くにいない(既に下車してしまった)といった状況であれば、その財布を占有下においている人が誰もいないので、勝手に自分のものにすれば「遺失物横領罪」が成立することになるでしょう。
ちなみに、かなり古い判例ですが、大審院大正15年11月2日判決・大刑集5巻491頁は、列車内に乗客が置き忘れていった物(毛布1枚)につき、(列車内にあるからといって)乗務鉄道係員がそれを占有しているということにはならないから、それを自分のものにした被告人の行為は(窃盗罪ではなく)「遺失物横領罪」にあたるというべき、と判示しています」(櫻町弁護士)
■ケースによって微妙なものも存在
なお、「誰かの占有下にあったかどうか」の判断は、ケースによって微妙なものもあります。
まずは、バス待ちの行列に並んでいた人が、近くにあった台の上に写真機を置いたのを忘れ、行列が進むに従って写真機から離れていってしまい、置き忘れに気づいて引き返したときには、写真機は既に持ち去られていたというケースを紹介します。このケースでは、行列が動き始めてから引き返すまでの時間が約5分にすぎず、置き忘れた場所と引き返した地点との距離も20m弱にすぎなかったといった事情から、写真機はいまだ持主の占有下にあったとして、窃盗罪の成立が認められました(最高裁判所昭和32年11月8日判決・刑集11巻12号3061頁)。