コロナ禍を深刻にした真因は何か 與那覇潤が見えすぎてやばい『過剰可視化社会』に警告
そんなコロナ禍の日本について、著者は「先進国で最低レベルの死亡率と最高レベルの社会崩壊」とバッサリ。「日本のコロナ禍をかくも深刻化させた最大の背景は、2010年代以降に本格化してきた“過剰可視化社会”にある」と断言しています。本書の前半では、この「過剰可視化社会」の形成過程と問題点を検討し、対策を提示します。
あまりにもプライベートが可視化された状態に慣れすぎた結果、私たちは「見せる」ことに伴う副作用の存在を忘れ、逆に「見えない」ものが持っている価値を感じ取れなくなってはいないでしょうか。コロナ禍では目に映る「街路に人影がない」「全員がマスクをしている」といった光景からしか安心感を得られず、なんらかの事情で自粛やマスクの着用が難しい人もいるかもしれないといった、他者への想像力が消えていた。(本文より)
ファクト至上主義に意義あり――3名の有識者と対話
本書後半では、「自粛最優先」の風潮に異議申し立てをしてきた3名の有識者と対話。ファクトやデータを「可視化」さえすれば自ずと世の中がよくなるといった未熟な発想を批判します。●東畑開人氏……心の病名がプロフィールに記されるカジュアルなものになっても、消えない切実な悩みをどうケアしてゆくのか
●千葉雅也氏……「見える」