【本日開幕!】清流劇場『ヘカベ、海を渡る』 ギリシア悲劇を大阪弁で上演
簡単には統一できない二面性を敢えて提示し、「人間の本質」を抉(えぐ)り出したのだと考えます。
へカベに見られるような変容は、現代社会に於いても存在します。戦火は途絶えず、新たな人間が変容し、復讐へと走ります。この作品を通じて、戦争によって虐げられた者の怒りと変容を描くことにより、「復讐の連鎖を止める手立て」を考えたいと思います。
オリジナルソングの入った大阪弁での上演ですので、これまでのギリシア悲劇作品とは、異なる面白さをご堪能いただけるものと思います。
上演に向けての演出家/田中孝弥の言葉
今回の舞台となるトロイア戦争直後の世界を想像してみる。
倒壊した家屋、くすぶる煙、ふさがった道、親を探して泣く子ども、家族や友人を救おうと瓦礫を取り除く大人たち。食べ物を探して彷徨う人、呆然としゃがみ込んでいる人。
そして、おびただしい数のけが人と亡くなった人びと。紀元前1200年頃に起きたとされる戦争だが、惨状という意味では今も昔も似たようなものだろう。少なくとも愛しい人を失った悲しみや怒りは3200年前であろうが今であろうが同じだ。そして、復讐の連鎖が続く。
──ギリシア悲劇という簡素で骨太に描かれた「人間」