直木賞作家が謎多き「小西マンショ」を描く歴史長編 川越宗一の最新刊『パシヨン』を発売
『パシヨン』について
「パシヨン」とは、キリストの受難を指す語です。本書は、迫害という厳しい現実に翻弄されながら生きるマンショと、キリシタン弾圧を取り仕切った幕府重臣の井上政重を軸とした歴史長編で、「人はなぜ争うのか」を現代人に問いかけます。
【著者のことば】
徳川氏に敗れた大名の孫であり、その幕府によって弾圧される信徒とともに生きた彼は、新しい時代に排除される側に在り続けた人といえるかもしれない。ただマンショについて残る記録は少ない。先人の多大な努力がありつつも事績は詳らかでなく、本作では私の想像が多くなる。
いっぽうで、新しい時代を作った側にも何らかの苦悩があったように思う。敵と味方、あるいは悪いやつと善いやつに二分できるほど、人間も社会も単純ではないはずだ。
そのため、井上政重という人物にも登場してもらうことにした。
(新聞連載開始時に配信[【寄稿】小説「パシヨン」連載にあたって]より)
【あらすじ】
キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。