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アンジャッシュ渡部、活動自粛を経て初めて気付いた“芸人”としての原点「今、お笑いをやれている」 『チャンスの時間』が芸人たちにもたらすもの

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アンジャッシュ渡部、活動自粛を経て初めて気付いた“芸人”としての原点「今、お笑いをやれている」 『チャンスの時間』が芸人たちにもたらすもの

アンジャッシュ・渡部建 (C)ORICON NewS inc.


2018年4月からABEMAで放送がスタートしたバラエティー『チャンスの時間』。MCにはお笑いコンビ・千鳥を迎え、独自の企画が人気を集めているが、近年、番組内で存在感を増しているのが、お笑いコンビ・アンジャッシュの渡部建(53)だ。長年、人気芸人として活躍するも、不祥事で活動自粛。多くのものを失い、再起を誓ってもがき続ける渡部は番組と出会い、初めて「お笑いをやれている」と語る。番組の持つ力を、文字通り“チャンス”を見いだした男の軌跡とともに迫る。

渡部は高校の同級生だった児嶋一哉とコンビを組み、1994年にアンジャッシュとしてデビュー。『爆笑オンエアバトル』(NHK)で頭角を現すと、『エンタの神様』(日本テレビ系)で見せた「すれ違いコント」で人気を博し、売れっ子芸人の仲間入りを果たした。その後はグルメキャラとしての地位も確立するなど、芸人の枠を超えた活躍を見せていたが、2020年に不倫騒動が発覚。
長年積み上げたキャリアはあっけなく崩れ去った。

騒動後に開いた記者会見では反省の言葉を口にするも、世間からバッシングの声がやむことはなく、1年7ヶ月の活動自粛期間を経ても、仕事が戻ることはなかった。しかし、そんな渡部の姿に“笑い”の可能性を見いだしたのが『チャンスの時間』だった。

■大きな反響を呼んだ“伝説”の復帰回の裏側謝罪会見を見て「大至急オファー」

番組に渡部が出演したのは、22年11月6日の放送回。20年6月にスキャンダルを報じられ、1年7ヶ月ぶりに活動を再開してから、9ヶ月後のことだった。この舞台裏について、番組の放送開始当初から総合演出を手掛ける斉藤崇氏(51)は「オファーはかなり前から出していた」と明かす。

その理由は20年9月の『チャンスの時間』4時間生放送SPで当時、“ペットボトル投げつけ事件”を理由にテレビ出演が激減していたTKO・木下隆行の出演が大きな反響を呼んだことにあった。この日番組では千鳥・ノブが木下に、騒動の真偽を確かめるべく生インタビューを敢行したのだが、木下はなんとスタジオにサンダルでスタジオ入り。
その様子を見た千鳥の2人は木下に痛烈なツッコミを浴びせ続け、最後には「まだ、早くないですか?」との名言が生まれたという。斉藤氏は「反省しているはずなのに、それを大悟さんが見逃さなかった。そこがすべての始まりでした」と振り返る。

番組の生放送が成功に終わる一方、騒動の渦中にあった渡部は12月に謝罪会見を実施。終始、険しい表情で釈明を続けていた渡部を見た斉藤氏は、「あの時の反省の顔を見て、これはもう大至急オファーしようと」と即決した。当時、大バッシングを受けていた渡部の起用について、周囲からは心配する声もあったというが「千鳥がいれば絶対に大丈夫だと思っていた。来てくれさえすればよいとさえ思っていた」と語った。

■事前打ち合わせ“一切なし”で臨んだ収録千鳥のスキルの高さが生んだ名言

渡部は番組出演を「もう、3年も前ですか…」とつぶやくと、「もう、(オファー)を受ける、受けないではなく、ありがたいお話だから絶対やろうって」と回顧。
収録内容に関しても特に説明を受ける機会を設けなかった。「もちろん不安だったんですけど、もうなるようにしかならない。とにかく反省している部分を出していくしかなかった。計算できなかった企画だったんです」と明かした。

また当日も事前の打ち合わせは特になかったという。現場に姿を現した渡部について斉藤氏は「明らかに反省していて、緊張もしていた。その顔を見た瞬間に『もう大丈夫』だと。当日は『来ていただいてありがとうございます。
後は任せてください』としか伝えませんでした」と笑った。

そして迎えた収録。千鳥、渡部ともに探り合いが続き、緊張感が漂う中、千鳥は渡部の衣装に目を付け、渡部が履いていたスニーカーに違和感の匂いを感じ取ると一気に責め立てた。さらに予備に用意していたスニーカーがより派手だったという奇跡も起こり、序盤から大盛り上がりの展開に。その後も、渡部が少しでも気を抜いた発言をすれば、ノブが即座にツッコみ、食レポ企画では伝説の“6Pチーズ”発言も飛び出すなど、SNS上でも大きな反響を呼んだ。これには斉藤氏は「思い描いていた以上のものがそこにはありましたね」と手ごたえを語った。

渡部はハイライトとなったスニーカーについて、自粛明けの活動の中で最もウケた瞬間だったと振り返り、「もちろん計算はしていないし、予測もしてないんですけど、あそこで企画をつかんだなと。今思うと、ちょっとだけ運があったなと」と笑った。
またその反響はすさまじく、「この番組の影響力を僕が一番体感していると思います」と断言した。相対することとなった千鳥とは自粛前も特に接点はなかったが、「自分のバラエティーのレンジを広げてくれた」とスキルの高さを絶賛。一方で「今は逆に、ちょっとでも僕が普通の芸人っぽいことをすると、首根っこをつかむように『まだ早いだろう』と逃がさない…」と苦笑いを浮かべた。しかし芸歴で言えば渡部の方が先輩にあたる中、撮影後には「2人の優しい面、先輩に対する対応はすごく見せてくれます。ズタボロになった日ほど、『今日は大丈夫でしたか』って。いまだにですよ」と後輩芸人としての“裏の顔”も明かした。

■復帰から準レギュラー級の活躍渡部が語る今「お笑いをやれている」

そんな“伝説回”から3年。渡部は『チャンスの時間』で準レギュラーばりの活躍を見せている。
渡部の起用に斉藤氏は「僕もやっぱり皆さんと同じように、騒動前はやっぱ鼻についていました(笑)」とぶっちゃけつつも、「これまで、しっかりとした形で向き合ってこなかったですけど、やっぱり実力、ちゃんとしたスキルを持ってのし上がってきたんだということを改めて感じました。自分の役割を最後まで全うするという覚悟がある」と芸人としての魅力を語る。

その言葉を体現するかのように、今年9月には、5年前の“謝罪会見”に再挑戦する禁断の企画が放送された。斉藤氏は「やっぱり後輩にあの会見をイジられるのは嫌じゃないですか。一番恥ずかしかったわけだし、思い出したくもない。だからそれくらいの覚悟で来てくれているのだと思っている」と信頼関係の強さをにじませた。

一方の渡部は「もう現場で起きたこと、言われたことを一生懸命やろうと思っているだけです」と一言。続けて「与えられている環境にすごく恵まれているだけ。
今、テレビのど真ん中にいる千鳥の2人のフィールドで、僕は走り回らせてもらっているだけなんです」と謙虚な姿勢だ。

渡部といえば、アンジャッシュとしてコント番組でブレイクすると、活躍の場はお笑いのフィールドにとどまらず、情報番組のMCやグルメ業界でも大きな存在感を放っていた。しかし「僕はずっとお笑いをやってこなかったんです。芸歴だけは重ねてきましたけど、お笑いをやっていること自体が初めてに近い。(自粛前は)誰からも怒られないし、誰からも褒められないみたいな。そんな活動を10年ぐらいやっていたんですよね」とこれまでを振り返る。

そんな中、予期せぬ転機を迎えた今、「身も心もボロボロだけど、誰かに面白いって言われることで全部消化される。そういった刺激というか、『今、お笑いをやれているよな』って」と笑みを浮かべた。

■『チャンスの時間』がもたらす可能性芸人たちの魅力発掘の場に

18年の放送開始以来、多彩な企画で多くの芸人・タレントの才能を開花させてきた『チャンスの時間』。TBS系バラエティー『水曜日のダウンタウン』(毎週水曜後10:00)などでも活躍が目覚ましいお笑いコンビ・きしたかのの高野などは、番組から羽ばたいた芸人の筆頭格とも言える。番組制作で心がけている点について斉藤氏は「ネタ以外で生きていく力を培う場所にしてくれたら、それでいいんじゃないかな」と話す。

続けて「人間力、芸人力みたいなものをこの番組で探してもらいたい。こっちも見つけたいしね」と笑顔。その上で「こちらは高額なギャラが払えないんで、一旦リリースします(笑)。それで、また大きくなって帰ってきてくれたらうれしいですよね」と冗談交じりに語った。

そんな中、『チャンスの時間』について渡部は「本当に反響がやっぱり大きいと感じますね。若者たちやお笑い好き、あとは同業者にすごく愛されているし、注目されている番組だと体感していますね」と芸人側として感じる魅力を語る。

さらに近年コンプライアンスという言葉の存在感が増し、地上波バラエティーは厳しい規制の中で、力を発揮するしかないのが実情だ。一方で同番組については「ボクシングで伝えるとパンチがもう重い。やっぱり本気で触れ合っているシーンがいっぱいある番組」と表現する。また「地上波は大きなグローブつけて、当たっても痛くないボクシングしなきゃいけないようになってきたけど、ここだったら鉛、なんなら素手だろうがいい。(地上波と)同じようなことをやっているようで質は違う」と同番組で戦う心構えを語った。

インタビューを通して、『チャンスの時間』でのこれまでの軌跡を振り返った渡部。最後は「この番組に関しては、呼ばれた企画を本当に全力でやる。もうそれだけですよね。色気は一切出しません」と自身に言い聞かせるように語り、襟を正してスタジオに向かっていった。

なお、ABEMAでは、今回インタビューした渡部が出演する「#329 アンジャッシュ渡部が5年前のあの謝罪会見をやり直す!? 」ほか、2025年視聴ランキングNo.1~3の過去作品を12月28日まで無料公開している。

さいとう・たかし/1974年7月15日生まれ、静岡県浜松市出身。大学卒業後、97年にクリエイティブオフィスなび入社。『リングの魂』(テレビ朝日)、『リンカーン』(TBS)、『大人のコンソメ』(テレビ東京)などを担当した。現在はシオプロに所属し、『チャンスの時間』(ABEMA)の総合演出などを手掛ける。

わたべ・けん/1972年9月23日生まれ、東京都出身。プロダクション人力舎所属。スクールJCA1期生。児嶋一哉と93年にアンジャッシュを結成した。94年デビュー。その後はコント番組を中心に人気を博した。現在は2児の父。

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