『にち10』“中澤さん”が語る安住紳一郎アナ&番組の魅力 今の時代だからこそ身につけたい“傾聴力”とは【単独インタビュー】
中澤有美子 (C)ORICON NewS inc.
「安住紳一郎の日曜天国!」。タイトルコールの後に軽快なBGMが流れ、日曜朝10時からTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』が始まる。2025年の『radikoで聴かれた番組ランキング(在京エリア)』で1位に輝くなど、不動の人気を誇る通称『にち10』。安住紳一郎アナの強烈な個、多彩なゲストと圧巻の企画、リスナーから寄せられる投稿の濃さなど、魅力をあげるとキリがないが、番組を支えるアシスタントの“中澤さん”こと、中澤有美子アナの存在も欠かせない。“忍者集団”と称されるほど、内部の情報が伝わってこない『にち10』の魅力に迫るため、中澤アナを訪ねると、柔和な笑みで迎えてくれた。
■『にち10』をピークに持っていくための心がけスタジオ入り30分の理由も
中澤アナはこのほど、自身初の書籍『口下手で、大丈夫 ~2.4秒に1回頷く、最強傾聴力~』(ワニブックス)を出版。『にち10』では、進行を担いながら、安住アナのトークに対して笑ったり、時にはツッコミを入れる一方、リスナーからの投稿に涙したりと、重要な役割を果たしている。書籍の中では、コンディションのピークを日曜日に持ってくるとの記述があるが、具体的にはどのようなことを心がけているのだろう。
「声が枯れないよう、土曜日からあまりはしゃぎすぎないようにしています。本の中で、子供との時間に日曜日がなかったという話は書いていますが、本当は土曜日もあまり彼女に良くしてあげられていなかったです。特に子供が小さかった頃は、ずっと幼児語しか1週間しゃべらずに日曜日を迎えると、なかなか言葉が出てこなくて…その頃は、子供と一度離れて、語彙力が呼び覚まされるように本を読むなどしていました。子供が中高生になってくると、普通の会話ができるので、そんなには意識しなくなってきましたが、子供が小さい時はとっさの語彙力とか瞬発力が…ということで、そこは意識していました」
謙そんしつつも、日曜日に向けた“心がけ”について明かす。「スポーツ観戦とかライブとか、そういうのはどうしても無意識に大声が出ちゃうので、土曜日は行かないようにしています。お酒も鼻が詰まるので土曜日は飲みません。こんな話も『プロなんだから当然だろ』と思われるので、あえて公表するのも…という気持ちですが、大丈夫ですか(笑)?あとは、安住さんの『THE TIME,』『情報7days ニュースキャスター』はチェックしていますし、『音楽の日』のような大型特番も見ています。そのほかには、SNSで今週何が注目を集めたのか、何が炎上してしまったのかを確認したり、ニュースだけではなく、そういったものも一応総ざらいしてはおこうかなと考えています」。
万全の体調に整えて日曜日を迎えるが、スタジオに行くのは、なんと30分前。「私がリスナーのみなさんと同じような立場でいられるように…ということで…」と理由を明かしつつ、ふっと笑みを見せた。「本当は2時間くらい前から行っておきたいな…という気持ちもあって、前は早めに行っていたこともあったんです。でも、そうするとスタッフさんが急いで隠すものがあったりして。そうか、私がいることで準備の邪魔になることもあるのかと(笑)。なので、あえて30分前に行くようにしています。前日の夜から当日の朝にかけてメールなどのやり取りはしているので、私の新鮮なリアクションが求められないところに関しては、しっかり準備しています」。
■安住アナ&にち10スタッフの魅力を熱弁ラジオは「商店街みたいなところ」
ひとたび本番を迎えると「そこから2時間、本当にあっという間に駆け抜ける感じですね」と声を弾ませる。
リスナーは声を頼りに、スタジオの様子を想像するが、実際にどのような雰囲気で進行しているのか。「安住さんは、リスナーのみなさんからいただいたお便りを、直前まで『こうした方が伝わりやすいかな』と推敲して、集中しておいでですから、私は邪魔しないようにしています(笑)」。長きにわたってアシスタントを務めている『にち10』での安住アナの魅力について聞いてみると、思いあふれるコメントが返ってきた。
「丁寧さや、人を傷つけないなど、そういった配慮は欠かさず、また、アナウンサーという立ち位置を守りつつ。すごく俯瞰して自分やその場のバランスを取りながら、できるだけ楽しませようというサービス精神。本当にすごいです。テレビとは違う面をここで見せるという覚悟があって、なかなかできないことだなと感じています。今回の書籍をお渡しした時ですか?(安住アナの声色を真似しながら)『上梓なされて。
おめでとうございます―!』『ほら、みんなにも配ってらっしゃいよ!』というような反応でした(笑)」
番組スタッフへの思いも向けてみた。「歴代、本当にたくさんの方々が関わってくれたのですが、皆さん、プライベートをうまくやりくりして、『にち10』についていこう、安住さんがうなる企画を出そうという気概を感じます。たくさんの選択肢を出して、この中に何か安住さんに響くものがあればいいなというゲスト案やプレゼント企画など、毎回たくさん用意してすごいなと思います。事務的なところでは、たくさんのお便りをちゃんと把握しているのも本当にすごくて。『この方はこういう人で、何年前まではよく送ってきてくれていたんだけど、久しぶりですね』とか『この人の子供がもう何歳になったんだ』など、私たち以上に頭に入っているんです!本当に頭が下がります。他の番組ではなかなかやらないんだろうなということを、ここでは皆さんやってくださっているなと感じます」。
そんな中澤アナだが“ラジオ”という場所の魅力について、どのように考えているのか。「今の時代、SNSを見る時間はすごく増えていると思いますが、ラジオはあまり荒れることのない安心の場所という印象です。
スタッフが事前に目を通すという作業もありますし『ここの空気感が好きだ』という人が集ってくれる。周波数を合わせたり、radikoやpodcastなどのプラットフォームを使って能動的に来てくれる場所。感性が似ている方々が集まっていますし、もちろん安住さんのお力もあって、治安のいい場所になっていると感じます。ラジオって、商店街みたいなところだなって思うんです。すごくゆるいつながりで、お互いに伝え合ったり、励まし合ったりしながら、生きているということをうっすら感じ合う、そんなコミュニティーかなと感じています」。
■今の時代だからこそ求められる「傾聴力」娘への思いを語る時には涙も
書籍では、中澤アナが自身の半生を振り返りながら、いかに“傾聴力”を身に着けてきたのかがわかる。“実践編”も充実しており「聴く姿勢」「声を伴うリアクション」「問いかけ」などの項目に分かれて、具体的かつわかりやすく記されている。「話す力」の重要性を説く本は世の中にあふれているが、コミュニケーションとは、話す側だけでなく“聞く側”もいて成り立つもの。
書籍の「はじめに」でも「“聞き手”は一見地味なようですが、実はその場の空気を左右するなかなかの重責を担っています」との文言がある。SNSでのやり取りや“論破”など、一方通行のコミュニケーションに注目が集まる今だからこそ、読みたい1冊になっているが、中澤アナ自身はどういった思いを持っているのか。
「やはり人は聞きたいことしか聞かない傾向にありますよね。日本語の特性もあると思うのですが、最後の最後まで来ないとその人の言いたいことがわからない構造になっていて、最後まで待てないから、途中で『きっと、この人はこういうことを言うんだろうな』と想像して『こういうことだよね』と、勝手にまとめてしまいがちな面があるのかなと。また、SNSなどでも、すごく思慮深く投稿しているものに対して、そこを汲み取らず、一部を切り取って反論して、書き込んだ人の真意が全然伝わってないようなこともよく見られる気がします。よく聞いて、受け入れて、咀嚼した上でリアクションすることは、スピード感が求められるこの時代では難しいのですが、すごく大事で、それができれば、逆にとても光る技術になるはずです。もしも誰かと心を通わせたい、もう一歩深いコメントがほしい、力を合わせてなにかをしたいなどの願いが、ご自分の中にあるとしたら、聞くというアクションに重きを置くと、コマを進められるのかなと思います」
書籍の中には、娘のありささんによる、愛とセンスにあふれるコメントが寄せられているパートもある。その話題では、これまでとはまた違った表情を見せた。
「(娘からのコメントは)うれしかったです。『日曜日いなくても全然大丈夫だったよ』という風に言われたことは、本当にホッとしてよかったと思った反面、実はちょっと複雑なところもあって。『私がいれば、もっといい日曜日だったよ、もっと楽しませられたよ』という(笑)」。トークを続けているうち、思いがこみ上げ、気づけば涙を流しながら言葉を紡いでいた。
「(夫と娘の)2人が『きょうはディズニーランドに行ってきた』とか『サンリオピューロランドに行ってきた』と話しているのを聞いて、うらやましかったり、私もそこにいられたらよかったなと、無念を感じていたのは…(涙で声を詰まらせる)実は自分の方だったのかもしれないということは改めて感じました。(娘からのコメントを書籍に掲載するという)提案をいただいた時に、娘に『どうかな?』って確認したら『いいよ!』って即答で(笑)。私のように屈折していないなと(笑)」
「聞く力」をテーマにした書籍を出版した人物に対してインタビューするとなると、どうしても「実践できているのだろうか」と不安な気持ちになるが、そんなことを忘れさせるようなやわらかい雰囲気で、気づけばこちらのコミュニケーションの悩みを相談してしまうほど、中澤アナの魅力を存分に感じる時間になった。もっともっと聞いてみたいこともたくさんあったが、安住アナが書籍の帯に「中澤さんの本質には触れない方がいいよ、知りたくなる気持ちもわかるけど…」と書いてあることを思い出し、すっとその場を後にした。
【中澤有美子】(なかざわ・ゆみこ)
1975年4月26日生まれ。千葉県出身。趣味はゴルフ、ピアノ、水泳。東京女子大学卒業後、テレビ信州へアナウンサーとして入社。『信州ニュースプラス1』などで活躍後、フリーに転向。TBS『JNNニュースバード』『JNNニュースの森』やBS-TBS『JNNモーニング i-NEWSキャスター』など各ニュース番組を担当してきた。現在は、TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』のアシスタントのほか、『週間ミヤリサン製薬!腸から始まる健康ライフ』、J:COM『こちら浦安情報局』に出演中。