こたけ正義感『弁論』が“活動の軸” 日本のスタンダップコメディ“夜明け前”「流行る気運を感じます」
こたけ正義感 (C)ORICON NewS inc.
現役弁護士でありながら、お笑い芸人として活動するこたけ正義感(40)。こたけがライフワークとしているのが、2024年から始まったスタンダップコメディショー「弁論」だ。24年には袴田事件を扱い注目を集め、25年には「いのちのとりで裁判と生活保護」をテーマに1時間にわたって、たったひとりで“漫談”を披露。その様子を3週間限定でYouTube公開すると、大きな反響を集めた。注目度が高まった中で行われる今年は、11月4日からライブツアー『弁論2026』を実施するが、一般チケットは発売開始4分で全公演が即完。静かに、しかし着実に“弁護士芸人”の道を歩むこたけに、「弁論」について改めて語ってもらった。
■漫談を始めたきっかけ「体ひとつでやる芸に…」初めての『弁論』で「ホクホク感が会場に満ちていました」
こたけは2017年、お笑いコンビ「ほどよし」として芸人としてのキャリアをスタート。19年にコンビ解散後、ピン芸人としての道を歩み始めた。
2022年に『ABCお笑いグランプリ』で準優勝、翌23年には『R-1グランプリ』でも決勝に進出する中、ある思いを抱えていた。「もともと、ピン芸人になってから、フリップネタとかから始まりまして、賞レースにも出て、モニターを使うネタや音を使うネタなど、いろいろとやっていたんですが、常に“補助輪”がついているみたいな感覚があったんです。自分の体だけではない何かが常にあって、そこで派手に演出しているところがあったので、これいつまでも続けられないぞと思っていました。落語のような、体ひとつでやる芸に早めにシフトしないと、ネタが尽きてしまうなという感覚があったので、そこで漫談を始めました」。
そこから、24年の『弁論』スタートにつながっていく。「ちょっと変わったライブをして、漫談をやっていることを、みなさんに知ってもらおうみたいな気持ちがあって、作家さんに相談したところ『60分しゃべるライブやったらどう?』と言われて、ちょっと大変そうだけど面白そうだからやってみようか…というところから始まりました」。最初に行った際の感想について向けてみると、率直な感想が飛び出した。「やっぱり、最初やった時は全然しんどかったです。
無理だろうと思ってやってましたけど、やってみたらすごく楽しかったですし、お客さんも満足してくれたので、これは意外といいぞと思って、1回きりのつもりだったんですけど『やっていこう!』となりました」。
「やってみたらすごく楽しかった」という言葉が印象に残ったので、初めて『弁論』をやった時に、どこに楽しみを感じたのか改めて聞いてみると、言葉を紡いでくれた。「なんとか60分にしたぐらいの感じだったのですが、見てくれた人たちの反応が今までのライブと全然違ったと言いますか。『なんかいいものを見たな!』というホクホク感が会場に満ちていました。SNSなどの反応もすごくよくて、見ている側もやっている側も充実度がすごかったんです」。1ネタで60分間というのは、芸人としての腕はもちろん、見る側も“試されている”ような感覚になる。「おそらく、60分ぐらいが集中力の「もつギリギリだと思うんですけど、ひとりの話を聞いていると一体感が出てくるというか、気持ちがひとつになっていく感じがあって、ある種のトランス状態というか、そういう良さがあるんだなと思いました」。
■海外のスタンダップは「すごい頻度で笑いが起こる」『弁論』のさらなる広がりも視野に「まずは武道館」
『弁論』を始めるにあたって、Netflixなどで海外のスタンダップコメディに触れたというこたけ。
笑いの文化的な背景などを理解する必要があることから「本当に面白いと思えたのは最初のうちは一部だけだった」だったものの、発見があった。「すごい頻度で笑いが起こるんです。 日本人の漫談では、しっかり振ってオチのところでウケるみたいな感じですが、(海外のスタンダップコメディは)本当に10秒とか15秒に1回ぐらい、ウケ続けているみたいなのがあって。これはそもそも技術としてめちゃくちゃすごいんだなっていうことは、見ているうちにわかったというか、実は相当レベル高いことを実はやっていたんだと感じました。日本人って『日本の笑いが最高峰、海外はレベル低い』みたいな風潮もありがちですが、向こうのスタンアップのトップ芸人はレベルがとんでもないなと感じました」。
24年には自身も無罪判決の場に立ち会った「袴田事件」、25年には「いのちのとりで裁判と生活保護」をテーマにして大きな反響を集めた。改めて『弁論』に注目が集まった理由を“分析”してもらった。「テーマが一番大きいとは思います。
でもそこに魅かれて見に来てくれた人が1時間お笑いを見ることで得られる満足感みたいなも同時にあった。ただタメになる話を1時間聞くだけじゃこんなに広がらなかっただろうし、なんか両方がうまく噛み合ったのかなと思います」。反響の広がりについては「思いの外、みんなが楽しんでくれてうれしかったですし、むしろ芸人側、お笑いを見てる人たちが評価してくれたのが予想外でうれしかったです。社会問題に興味のある人とかは見てくれるかもという期待はありましたが、ちゃんと芸人の単独ライブとして面白いと思ってもらえたのがうれしかった」と語った。
今回は、全国4都市(宮城・福岡・京都・東京)で行い、ツアーの千秋楽は、収容人数約8000人を誇る「東京ガーデンシアター」で実施。ピン芸人が同会場で単独お笑いライブを行うのは史上初の快挙となる。取材時点では、ネタ作りについては「これから」と話していたこたけに、ファンへのメッセージを向けてみた。「その時の僕を信じてくださいとしか言いようがないです(笑)。
僕も、数ヶ月後の自分を信じて生きている、未来の自分に託している状態ですので、みんなも託してください(笑)。信頼関係でチケット買ってもらったので、未来の僕頑張れよと思っています」。
『弁論』のさらなる広がりも見据えている。「まずは武道館でやるのが目標です!Netflixさんでやってみるとか、海外で英語でやってみるのも面白いかもとか、いろいろなパターンは考えているので、一旦武道館を実現させた後に考えていきたいなと考えています」。自身にとって『弁論』はライフワークとなっている。「めっちゃ軸になっています。常に『弁論』のことはうっすら考えていますし、それを軸に活動が成り立っているなと。」。
■賞レース「しばらく出ないかも」スタンダップコメディを「流行らせれば成功」
賞レースとの向き合いについては「もう、しばらく出ないかもしれないです。
自分が今やっていることと賞レースが、あまり直結してないので。どっちが良い悪いというよりか、自分がやっていることが、賞レースのスタイルと合っていないので、あんまりそこに時間をかけることはできてないから、仕方ないかという感じです」とコメント。芸人としての目標としては「スタンダップというジャンルを、流行らせればかなり成功かなと思っています」との答えが返ってきて、こたけの熱い思いを聞くことができた。「スタンダップが世界中で流行っているのに、日本だけで流行っていない。こんな不自然なことおかしいって思うんですよ。『日本だけサッカーやってない』みたいな状況ですよね。それと同じぐらい、流行っていないのが変だと思っているので流行らせたいです。日本では、落語や漫才などあったりして、入る余地がなかったのかもしれないですけど、なんか今ちょうどいいタイミングな気がしています。
流行る気運を感じます。アメリカでは、Netflixやポッドキャストの配信によって、スタンダップコメディアンが一気に稼げるようになって、さらに大きなブームになったらしいので、日本でもそうなるんじゃないかなっていう気がします」
流行させるには、スタンダップコメディを行う“人”も必要だが、こたけは「芸人さんはみなさん向いていると思います」と呼びかける。「スタンダップって、こういう形式じゃないといけないっていうのがなくて、その人の本当の人間の個性からくるネタばかりになるので。面白い人であれば、誰がやっても面白くなりますし、その人なりのスタンダップになると思います。みんなやればいいなと本気で思っています。僕が弁護士で法律のネタを(スタンダップで)やっていると『こたけにしかできないものだ』と思われがちで、それはうれしい言葉ではあるんです。ですけど、反面なんか本当はそうじゃないのになって常に思っています。中身さえ変えればみんなできるから、うれしいことのようでもあり、ちょっと複雑な気持ちで受け取っています。2~3人、ちゃんとスタンダップで売れる人が出たら、一気に爆発的に増えると思います」。こたけの熱弁を聞いていると、外からどこからともなくカラスの声が聞こえてきた。“スタンダップコメディ”の夜明けが、すぐそこまで来ている。
【こたけ正義感】
1986年、京都府生まれ。香川大学法学部卒業後、立命館大学法科大学院を修了。司法試験に一発合格し、2012年東京弁護士会に登録。17年4月にワタナベエンターテインメントで芸人としてデビュー。「現役弁護士」だからこその法律ネタが好評を博し、2022年に「ABCお笑いグランプリ」にて準優勝、23年も決勝進出を果たした。23年には「R-1グランプリ」でも決勝に進出。
24年から、スタンダップコメディショー「弁論」で袴田事件を扱い注目を集め、25年には同ライブにて「いのちのとりで裁判と生活保護」をテーマに60分たった1人での漫談を披露。2025年の「弁論」をYouTubeにて3週間限定で無料公開すると166万回越えの再生と大きな反響を呼んだ。YouTube「こたけ正義感のギルティーチャンネル」では弁護士ならではの目線で行うゲーム実況も話題となり、チャンネル登録者数は50万人越え。