フットサルも世界レベルに!タイに続きベトナムがW杯出場!
先月、FIFAフットサルワールドカップ(以下、ワールドカップ)の出場権をかけたAFCフットサルアジア選手権(以下、アジア選手権)が行われ、日本は上位5カ国に与えられるワールドカップ出場権を逃した。
日本は前回まで同大会2連覇中で、ワールドカップにも3大会連続で出場していた。今大会へ向けては「史上最強の日本代表」の声も聞かれただけに、まさかの敗退となった。
日本の歯車を狂わせたのは、東南アジアの新興勢力であるベトナムだった。ワールドカップ出場をかけた大一番の準々決勝で、日本は格下と思われたベトナムにPK戦の末に敗戦。ショックを払拭できないままに臨んだ翌日のキルギスタン戦にも敗れて、ワールドカップへの道は閉ざされた。対照的に、「史上最強の日本」を下して初のワールドカップ出場を決めたベトナムにとっては、歴史的な快挙となった。
ベトナムのフットサルは近年、アジアレベルの大会で結果を残し始めていた。
アジア選手権では2014年に自国で開催された前回大会で、初めて決勝トーナメントに進出してベスト8入り。クラブチームのアジア王者を決めるAFCフットサルアジアクラブ選手権(以下、アジアクラブ選手権)では昨年、ベトナムのタイソンナムが3位に入る快挙を果たした。近年力をつけてきたなかで、ついに手にしたワールドカップ初出場だった。
そして、東南アジアにはそのベトナムをはるかに上回る実績を持つ国がある。サッカーでも東南アジアを力強くリードするタイだ。東南アジアのフットサル王者を決めるAFFフットサル東南アジア選手権では、出場した全11大会の全てに優勝している絶対的な存在。2013年からは強豪のオーストラリアがAFF(ASEANサッカー連盟)に加盟したことでタイトル争いが激化しているが、未だ一度もタイトルを明け渡していない。
フットサルにおけるタイの実力は、「東南アジアの王者」にとどまらない。
アジア選手権では2008年と2012年に準優勝、アジアクラブ選手権ではタイのチョンブリー・ブルーウェーブが2013年に優勝、2014年に準優勝している。最新の世界ランキングで、タイは14位。アジアの中では、世界レベルのイラン(5位)、そして日本(12位)に続く3番目のポジションにいる。急成長が始まったサッカーは今、ようやくアジアレベルで脚光を浴び始めたところだが、フットサルではすでに立派なアジアの強豪だ。
フットサルのタイ代表が最初の国際試合を行ったのは1992年。アジアの他の強豪国も、ほぼ同時期にナショナルチームの歴史をスタートさせている。1999年にアジア選手権がスタートすると、第1回大会こそグループリーグで敗退したものの、翌年の第2回大会で3位。第4回大会からは3大会連続で3位に入っており、2000年からは5大会連続でワールドカップ出場中だ。
安定してアジアトップレベルの力を見せてきた強さの秘密は、どこにあるのだろう。
大きな要因のひとつとして考えられるのが、足でボールを扱う点が共通する競技であるセパタクローが古くから行われており、文化として定着していること。さらに、サッカー王国のブラジルのように道端でボールを蹴り合うストリートサッカーも広く行われているため、もともとサッカーにおいても細かなボール扱いの巧さには定評があった。これはタイだけでなく、ベトナムなど他の東南アジア諸国にも少なからず当てはまる要素といえる。
国の発展とともに、多様なスポーツ文化が花開きつつある昨今の東南アジア。そのなかで、まずは伝統的に得意とする「足ワザ」競技であり、局地戦のためサッカー以上に細やかなテクニックが生かされやすいフットサルにおいて、アジアトップレベルの力をつけてきたということだろう。タイとベトナムのフットサルワールドカップへの「アベック出場」は、東南アジアスポーツ界が迎えようとしている明るい未来のシグナルのようにも思える。
(text & photo : 本多 辰成 )
スポーツコラム「スポーツが繋ぐ! 東南アジアと日本の新時代」
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