RNA合成酵素は遺伝子発現に抑制的にも作用することを発見
さらに補助因子であるNtrCの存在下で同様の解析を行ったところ、約70個の遺伝子群を標的とすることが分かりました(図1)。これらの標的遺伝子群には窒素欠乏応答に関連した遺伝子群だけではなく、炭素源代謝に関連した遺伝子群も含まれており、細胞内の窒素源と炭素源のバランスを保つための役割も担っていることが示唆されました。
次に大腸菌細胞を用いて、窒素飢餓条件において、新規な標的遺伝子群に対するRpoNおよびNtrCの制御を観察したところ、多くの遺伝子はこれまでの定説通りに活性化されていましたが、いくつかの遺伝子は抑制化されていることを見出しました(図2)。この新たな現象について詳細な解析を行った結果、このRpoNホロ酵素およびNtrCによる抑制化は、細胞増殖のための遺伝子発現に必要なRpoDという別のシグマ因子のホロ酵素がプロモーターに結合することを拮抗的に阻害することにより、引き起こされていることが明らかとなりました(図3)。RNAポリメラーゼは、DNAからRNAを合成する酵素としての重要性から、研究は生物種を問わず長い歴史がありますが、本研究はRNAポリメラーゼが遺伝子発現に抑制的に働くことを実証した初の例となりました。