2022年4月5日 09:30
1200年の伝統ある高野山の宿坊「恵光院」に金沢箔のアートによる新しい瞑想空間が誕生
この作品は月輪観に着想を得ています。真円から湧き上がる金箔の渦が壁面いっぱいに広がり、さらに別の次元の宇宙にワープし広がっていくかのような景色を表しています。真円には光源が設置され、周囲に向かって光が放たれます。宿坊恵光院の名前に因み、また真言密教の教主である大日如来を尊び、光によって金箔を浮かび上がらせるような表現となっています。
■金箔の伝統的な美が、アートに生命を吹き込む
金箔装飾風景1
金箔装飾風景2
この作品のなかで、金箔が大きな役割を担っています。金箔は仏教美術においては古くから重要な素材とされてきました。専門書によると、「金は装飾性と聖性という両義性を有しており、そのため仏教美術では特に好まれたといえよう」(東京書籍『仏教美術事典』2002)とあります。この作品では、伝統的な素材を用いて歴史の連続性を担保しつつ、新しい技法によって現代に生きる私たちの感性に訴える表現となっています。制作の際には、決定したデザインをシルクスクリーンで転写し、ふるいで細かくした金箔をふって少しずつ模様を浮かび上がらせていきました。
金箔独特のゆらぎのある輝きや、箔の粗さ違いよる表情の変化、また箔を払う際に生じる擦れといった、職人の手作業ならではの偶然性が作品に新たな魅力を付け加えています。