2022年8月12日 12:00
ヨーロッパで伝統的にコナダニをチーズの熟成に用いる、3つの遠く離れたチーズ工房において、「蔵付き酵母」ならぬ「蔵付きダニ」は同種のチーズコナダニであることを発見
から直接ダニを採集し、形態情報と遺伝子解析によって調べた。
すると伝統的にダニを熟成に用いている遠く離れた3つのチーズ産地の5つのチーズのダニは全てチーズコナダニTyrolichus casei(Oudemans, 1910)という同一種であった。学名のcaseiは「チーズ」という意味である。パリの市場(マルシェ)のチーズ屋さんで購入したチーズのダニは、別種のアシブトコナダニなどであった。フランスでも熟成されたチーズには、意図せずダニが付くことも普通だが、アシブトコナダニ等が多い。
遠く離れた伝統のある3つのチーズの産地のチーズ熟成庫では唯一、チーズコナダニという種が熟成に使われていることになるが、もちろん人間が意図して本種を選んで使っていたわけではない。なぜか、伝統的なチーズの熟成に用いられていたダニが、いずれのチーズ工房でも、結果的に本種チーズコナダニであったということになる。この理由は良く解かっていない。
ダニを使う熟成方法を丁寧に、何百年もおこなっている伝統的なチーズ工房ではチーズコナダニに置き換わるのかもしれない。裏を返せば、チーズコナダニがいるチーズ工房は、何百年も伝統が続いているダニを熟成に用いるチーズ工房と同じように、丁寧な管理が行われているといえるのかもしれない。