すみだ北斎美術館、本に仕立てた「板本」に注目し魅力を伝える 企画展「北斎ブックワールド」を9/21から11/27まで開催
2章では、板本の挿絵にみられる絵画表現や、現在から考えると少し変わった事例などの紹介、初摺(しょずり)と後摺(あとずり)などの比較など、板本の奥深さをご覧いただきます。
◎注目!後摺では濃墨(こずみ)が省略!?
上:葛飾北斎『飛騨匠物語』下、下:葛飾北斎『新板 飛騨匠物語』四 いずれもすみだ北斎美術館蔵(通期)
読本『飛騨匠物語(ひだのたくみのものがたり)』は、飛騨の名工・猪名部墨縄が、様々な機関(からくり)を作って活躍し、仙人の世界を追われた男女を結婚させるという物語です。『新板 飛騨匠物語』はその後摺にあたります。後摺とは、初摺の板木を再び使用して摺られたものを指します。
両書の挿絵を比較してみると、姫君が将来の夫たちを夢にみる場面で、初摺(上)は夢の中の夫たちの背景を濃墨にすることで、寝ている現実の姫君と対比させています。後摺(下)では濃墨が省かれ、夢と現実の境目がわからなくなっています。
◎注目!まるで絵巻物のような板本
葛飾北斎『絵本隅田川 両岸一覧』上 すみだ北斎美術館蔵(頁を替えて通期展示)
『絵本隅田川 両岸一覧』は、隅田川を下流から上流へと遡った両岸の景色が描かれた板本です。