【元懐刀が語る森保一の眼】第2回:「カタールの残像」とチュニジア戦の罠|ワールドカップ2026

初戦の興奮冷めやらぬ中、中5日で迎えるグループステージ第2戦。日本代表が対峙するのは、カルタゴの鷲・チュニジアだ。

前回のカタール大会(2022年)、日本は初戦でドイツ相手に大金星を挙げながらも、第2戦で引いて守るコスタリカに足元をすくわれ、自らグループステージ突破を難しくしてしまった苦い記憶がある。「初戦と3戦目が強豪(オランダ、スウェーデン)で、2戦目が格下と目される相手」という今回のグループ構成は、奇妙なほど前回と酷似している。

森保監督はあの「コスタリカ戦の教訓」をどう活かすのか。サンフレッチェ広島時代に森保監督の分析官を務めた久永啓氏(現・岡山理科大学准教授)が、第2戦に潜む罠と、それをこじ開けるための鍵を紐解く。


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酷似するシチュエーション。第2戦に潜む「罠」


第2戦の舞台はメキシコのモンテレイ。久永氏は、対戦相手の戦術だけでなく「過酷な環境」と「グループの状況」が、試合を複雑にすると予想する。


「今回のチュニジア戦は、お互いの力関係や大会の状況、そしてモンテレイの蒸し暑い気候コンディションを考慮する必要があります。1戦目の結果がどうあれ、この2戦目でグループリーグの行方がほぼ決まることを踏まえると、立ち上がりから『イケイケどんどん』の展開にはまずならないでしょう。そうなると、お互いに『まずは失点しないように』と慎重に入るため、一見すると非常に膠着した、つまらない試合の入りになる可能性が高いです」

まさにサッカーファンに、あのコスタリカ戦の残像を強く思い出させるような展開――。しかし、久永氏は「森保監督は焦らない」と見る。

「森保監督は『コスタリカ戦の教訓があるから、思い切ってガンガン攻撃で行こうぜ』という話はしないと思います。まずは守備からしっかり入る。それが広島時代から変わらない森保流かなと」


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膠着を切り裂くラッキーボーイと、裏方の「分業制」


引いてブロックを敷く相手をどう崩すか。それは現代サッカーにおける最大の難問であり、分析官としても最も腕の見せ所だ。
久永氏がこの膠着状態を破るキーマンとして名指ししたのは、フランスで強烈な輝きを放つ中村敬斗だった。

「相手がブロックを敷いて、それを攻略しに行かなければならない試合では、セットプレーが大きな鍵を握ります。そこで期待したいのが中村敬斗選手です。彼の鋭いドリブル突破があれば、仮にシュートまで行けなくても、相手のファウルを誘って高い位置でセットプレーを獲得する確率がグッと上がります。そこから上田綺世選手やセンターバックの選手がヘディングで合わせるなど、仕込んだ形から1点をもぎ取るのが理想的なシナリオですね」

現代サッカーにおいて勝敗を大きく左右するセットプレー。実は広島時代から、森保監督のチーム運営には「裏方の分業制」が徹底されていたという。

「森保監督ご自身は、セットプレーの細かな戦術を自分で一から考えるタイプではありませんでした。当時はヘッドコーチの横内さんが攻撃を考え、守備の配置に関してはGKコーチの下田さんに任せていました。
そして主力選手たちとも対話を重ねて配置を決めていく。今回のW杯でも、めちゃくちゃ仕込んできているはずです」


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【元分析官のワンポイント観戦術】30秒の切り抜きではもったいない「掛け引き」の面白さ


第1回に続き、久永氏はこの難しい第2戦をファンが肩の力を抜いて楽しむためのヒントをくれた。

「今回のワールドカップで初めてちゃんとサッカーを見る人は、ぜひ『90分間のストーリー』を楽しんでほしいですね。それと、自分なりにどういう目線で楽しむか。ワールドカップはヨーロッパサッカーのような洗練された戦術の勝負ではありません。プライドや生き様をかけた意地と意地のぶつかり合いです。そのストーリーを丸ごとドラマとして楽しむのも一つの手かなと思います。それをきっかけに選手や戦術、ひいてはサッカー全体を好きになってくれれば嬉しいです。
自分が『これ楽しそう』『ワクワクする』と感じた最初の感情を大切にしてほしいですね」

「今はSNSで30秒の切り抜きゴールシーンだけを見て楽しむこともできますが、このチュニジア戦のように一見膠着した試合をそれだけで済ませてしまうのはもったいないです。90分間泥臭く積み重ねてきた布石があります。映画やドラマと同じで、その前段の駆け引きがあるからこそ、一瞬のゴールシーンが何倍もエモーショナルになる。ぜひ、ゴールという『結末』だけでなく、そこに至るストーリーの過程を楽しんでみてください」

(第3回「vsスウェーデン戦プレビュー」へ続く)


(聞き手・文:スポーツブル編集部 坂東 岳)

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