【MLB MVP】大谷翔平とPCA 記者投票とWARで評価が分かれる理由
ナ・リーグのMVPをめぐって、二つの評価が食い違っている。記者による模擬投票では大谷翔平が首位に立ち、選手の貢献度を数値化するWARではカブスのピート・クロウ=アームストロングが上回る。
同じシーズンを見ているのに、順序が入れ替わる。なぜそうなるのかを、投票の仕組みと指標の性質から整理する。
※以下、成績と投票結果は各時点のものとして記載。集計時点はそれぞれ本文に記す。
MVPの選出方法は、成績の一覧を眺めて決めるものではない。全米野球記者協会(BBWAA)の記者による投票で、各リーグ30人が投票権を持つ。
投票者は1人につき10位まで順位をつける。1位票が14点、2位票が9点、3位票が8点と続き、10位票が1点。全員のポイントを合計して受賞者が決まる。
配点で目を引くのは1位と2位の差である。14点と9点で5点開くのに対し、2位と3位は1点しか違わない。1位票をどれだけ集めるかが、結果を大きく左右する設計になっている。
30人が同じ基準で投票するわけでもない。何を「価値」と見るかは記者ごとに違う。
投票用紙に評価基準の指定はない。所属チームが優勝したかどうかを重視するか、個人成績だけで判断するかも、投票者に委ねられている。長く議論が続いてきた論点でもある。
そのため、統計上の数値が最も高い選手が必ず選ばれるとは限らない。数値はあくまで判断材料の一つで、最終的には人が順位をつける。
MLB公式サイトは2026年7月28日、専門家34人による模擬投票の結果を発表した。
ナ・リーグでは大谷翔平が1位票23票を集め、158ポイントで首位に立っている。
2位はクロウ=アームストロングで1位票11票、140ポイント。3位のジェームズ・ウッドが74ポイントだったことを考えると、上位2人が抜けた構図である。
ポイント差は18。ただし1位票の数は23対11で、倍以上の開きがある。配点の設計上、1位票の差はポイント差以上の意味を持つ。
この投票は本番のMVP投票そのものではない。
BBWAAの投票が30人であるのに対し、模擬投票は34人の専門家によるもので、時期も投票者も異なる。
一方、選手の貢献度を1つの数値にまとめるWARでは、順序が入れ替わる。8月時点で公表されている複数の算出方式で、いずれもクロウ=アームストロングが大谷を上回っている。
WARには複数の計算方法があり、同じ選手でも値が違う。守備の評価にどの指標を使うか、投手をどう評価するかで差が出るためだ。値そのものは方式によって変わるが、両者の順序は変わっていない。
差が生まれる理由は、守備と出場機会にある。クロウ=アームストロングは中堅手として毎試合守備につく。
対する大谷は指名打者として出場しており、守備での加点がない。投手としての登板が加われば別だが、7月上旬を最後にマウンドから遠ざかっている。
WARは「その選手がいなければチームは何勝減っていたか」を推定する指標である。守備につかない選手は、守備の場面での貢献がゼロとして扱われる。打撃で同等なら、守る選手のほうが数値は伸びる。
この構造は大谷に限った話ではない。指名打者として出場する選手は、打撃成績が突出していてもWARが伸びにくい。
では打撃の差はどうか。8月上旬の時点で、両者の本塁打数は並んでいた。打率、出塁率、長打率を組み合わせた指標でも、差はごくわずかである。
つまり打撃だけを比べれば、決め手にならない。打者としての評価が拮抗しているからこそ、守備と登板という打撃以外の要素が順位を分けている。
ここに、MVPという賞の性格が表れている。最も打った選手を選ぶ賞ではなく、最も価値があった選手を選ぶ賞である。
評価を動かす要素として指摘されているのが、大谷が投手として復帰するかどうかである。大谷は2026年シーズン、投手として14試合に先発し、85回3分の2を投げて防御率1.79を記録している。この数字は登板を止めた時点のもので、以降は積み上がっていない。
投手としての貢献が止まったまま終われば、指名打者としての打撃だけで評価されることになる。逆に登板が再開されれば、WARの計算に投手分が加算される。
クロウ=アームストロングの側から見れば、毎日守備につき続けることが貢献を積み上げる手段になる。
守備での加点は、試合数に比例して増えていく性質を持つ。
ただし、投票する記者がWARの順序をそのまま採用するとは限らない。
7月28日時点の模擬投票で大谷が首位に立っていたこと自体が、記者の評価軸がWARと同じではないことを示している。
投票が行われるのはレギュラーシーズン終了後である。それまでに何が積み上がるかで、二つの評価が近づくのか、さらに離れるのかが決まる。
数値が示す答えと、人が選ぶ答え。両方が並んで見えることが、2026年のMVPレースを分かりにくく、同時に面白くしている。
※成績と投票結果の集計時点は本文に記載の通り。
文:SPORTS BULL(スポーツブル)編集部
同じシーズンを見ているのに、順序が入れ替わる。なぜそうなるのかを、投票の仕組みと指標の性質から整理する。
※以下、成績と投票結果は各時点のものとして記載。集計時点はそれぞれ本文に記す。
MVPは30人の記者が10位まで順位をつけて決まる
MVPの選出方法は、成績の一覧を眺めて決めるものではない。全米野球記者協会(BBWAA)の記者による投票で、各リーグ30人が投票権を持つ。
投票者は1人につき10位まで順位をつける。1位票が14点、2位票が9点、3位票が8点と続き、10位票が1点。全員のポイントを合計して受賞者が決まる。
配点で目を引くのは1位と2位の差である。14点と9点で5点開くのに対し、2位と3位は1点しか違わない。1位票をどれだけ集めるかが、結果を大きく左右する設計になっている。
30人が同じ基準で投票するわけでもない。何を「価値」と見るかは記者ごとに違う。
打撃成績を重く見る投票者もいれば、守備や走塁を含めた総合的な貢献を測る投票者もいる。この幅が、そのまま議論の幅になる。
投票用紙に評価基準の指定はない。所属チームが優勝したかどうかを重視するか、個人成績だけで判断するかも、投票者に委ねられている。長く議論が続いてきた論点でもある。
そのため、統計上の数値が最も高い選手が必ず選ばれるとは限らない。数値はあくまで判断材料の一つで、最終的には人が順位をつける。
公式サイトの模擬投票では大谷が首位
MLB公式サイトは2026年7月28日、専門家34人による模擬投票の結果を発表した。
ナ・リーグでは大谷翔平が1位票23票を集め、158ポイントで首位に立っている。
2位はクロウ=アームストロングで1位票11票、140ポイント。3位のジェームズ・ウッドが74ポイントだったことを考えると、上位2人が抜けた構図である。
ポイント差は18。ただし1位票の数は23対11で、倍以上の開きがある。配点の設計上、1位票の差はポイント差以上の意味を持つ。
この投票は本番のMVP投票そのものではない。
BBWAAの投票が30人であるのに対し、模擬投票は34人の専門家によるもので、時期も投票者も異なる。
あくまで、その時点で記者たちがどう見ていたかを示す参考値である。
WARでは評価が逆転する
一方、選手の貢献度を1つの数値にまとめるWARでは、順序が入れ替わる。8月時点で公表されている複数の算出方式で、いずれもクロウ=アームストロングが大谷を上回っている。
WARには複数の計算方法があり、同じ選手でも値が違う。守備の評価にどの指標を使うか、投手をどう評価するかで差が出るためだ。値そのものは方式によって変わるが、両者の順序は変わっていない。
差が生まれる理由は、守備と出場機会にある。クロウ=アームストロングは中堅手として毎試合守備につく。
守備範囲の広さは高く評価されており、そこで積み上げた貢献がWARに反映される。
対する大谷は指名打者として出場しており、守備での加点がない。投手としての登板が加われば別だが、7月上旬を最後にマウンドから遠ざかっている。
WARは「その選手がいなければチームは何勝減っていたか」を推定する指標である。守備につかない選手は、守備の場面での貢献がゼロとして扱われる。打撃で同等なら、守る選手のほうが数値は伸びる。
この構造は大谷に限った話ではない。指名打者として出場する選手は、打撃成績が突出していてもWARが伸びにくい。
指標の設計上そうなる、というだけのことである。
打撃はほぼ互角
では打撃の差はどうか。8月上旬の時点で、両者の本塁打数は並んでいた。打率、出塁率、長打率を組み合わせた指標でも、差はごくわずかである。
つまり打撃だけを比べれば、決め手にならない。打者としての評価が拮抗しているからこそ、守備と登板という打撃以外の要素が順位を分けている。
ここに、MVPという賞の性格が表れている。最も打った選手を選ぶ賞ではなく、最も価値があった選手を選ぶ賞である。
何を価値と見るかで答えが変わる以上、記者投票とWARが違う答えを出すこと自体は矛盾ではない。
残りシーズンの焦点
評価を動かす要素として指摘されているのが、大谷が投手として復帰するかどうかである。大谷は2026年シーズン、投手として14試合に先発し、85回3分の2を投げて防御率1.79を記録している。この数字は登板を止めた時点のもので、以降は積み上がっていない。
投手としての貢献が止まったまま終われば、指名打者としての打撃だけで評価されることになる。逆に登板が再開されれば、WARの計算に投手分が加算される。
クロウ=アームストロングの側から見れば、毎日守備につき続けることが貢献を積み上げる手段になる。
守備での加点は、試合数に比例して増えていく性質を持つ。
ただし、投票する記者がWARの順序をそのまま採用するとは限らない。
7月28日時点の模擬投票で大谷が首位に立っていたこと自体が、記者の評価軸がWARと同じではないことを示している。
投票が行われるのはレギュラーシーズン終了後である。それまでに何が積み上がるかで、二つの評価が近づくのか、さらに離れるのかが決まる。
数値が示す答えと、人が選ぶ答え。両方が並んで見えることが、2026年のMVPレースを分かりにくく、同時に面白くしている。
※成績と投票結果の集計時点は本文に記載の通り。
文:SPORTS BULL(スポーツブル)編集部