ミュージカルアニーは1968年以降、日本の舞台で演じられています。30年以上続いているミュージカルで、およそ200万の人が鑑賞している、すばらしい舞台です。私も、もう50回は観ています。アニーはもともと、アメリカの新聞で連載されていた漫画でした。そして1976年にミュージカルとなり、ブロードウェイで上演され、それが日本に入ってきたのですね。ストーリーは、孤児院にいるアニーが両親を探しに行くお話です。舞台は孤児院ですから、子役が多く登場します。ダブルキャストでアニー役2名、孤児役12人です(孤児役のほかに、タップキッズやダンキッズの子役たちもいます)。子役たちは、どのような練習を積み、舞台に立つことになるのでしょうか。今回は、子役たちの教育と、学校教育の共通点について考えてみたいと思います。子どもに「教える」のか「考えさせる」のかアニーの最初の演出家の時代は、子どもでも「プロとして」「大人として」教育されていたようです。私がアニーの舞台を見始めた当時、テレビ番組でよく「メーキング映像」が放送されていました。演出家が考えた演技をうまくできるように育てられている、という印象でした。子役の子ども自身が演技を考えるのではなく、「演出家の考えている演技の意味をつかませようとしている」感じでしょうか。少なくとも、私にはそう見えました。プレゼントされたペンダントを、アニーが「いらない!」と言って投げ捨ててしまうシーンがあります。このシーンの練習風景はテレビでよく放映されていました。アニー役になった子どもたちのほとんどが、演出家が求める真意が理解ができなかったようで、うまく演技ができずに泣いていましたが、「プロとして」「大人として」なんとか頑張って、最終的には舞台に立っていたのです。しかし、2001年、演出家が日本人から外国人に変わりました。そして、先ほどのアニーがペンダントを投げるシーンの演技も変わったのです。物語の内容は同じでありながら、なぜ、アニーの演じ方が変わったと思いますか?それは、新しい演出家になってからは、子役自身にそのシーンの演じ方を考えさせているから。子役の子ども自身が、そのときのアニーの心情を考えて演技をするため、演技の仕方が子役によって変わるのです。心情の捉え方がその子によって変わるので、演技も変わってくるのですね。それについて、演出家は「その演技にその子なりの意味があればいい」と考えているようでした。アニーの子役指導のやり方について大きく分けると、「演出家が指示を出す」「子どもに考えさせる」の2つになりますね。なんだか、子どもの教育とリンクすると思いませんか?ミュージカルの演技指導と小学校での教育の比較そこで、小学校の教育についても考えてみます。小学校低学年のうちは、どうしても教師の指示が多くなりがちです。ですが、中学年、高学年になるにつれて、子どもに考えさせる場面が増えてきます。教師の指示を減らすことができるようになるのです。最近はとくに、「子どもに考えさせる教育」や「楽しい教育」が求められていますよね。どうしてこのような教育が求められるのでしょうか。学校の教科の勉強(生きていくうえでは、どんなことでも全てが勉強だと考えられますが、ここでは学校の教科の勉強に限定します)だけにフォーカスして育てると「危険」ですよ、という風潮になってきたからです。逆に、子どものときにさまざまな体験をしてきている子ほど、「困難に立ち向かう力」があるようです。StudyHackerこどもまなび☆ラボでも、たくさんの先生方が「子どもにはいろいろな体験をさせましょう」「学力だけを重視するのは危険ですよ」と言っています。なぜならば、いろいろな経験をすることで「考える力」を育むことができるからです。答えのない問題に立ち向かう力こそが「考える力」となるでしょう。子どもの自主性を伸ばすために家庭でできること今後の教育は、どうやら「教科の勉強だけをさせるのでなく、さまざまな体験をさせ、自主性を育てること」が大切になるようです。これからやってくると言われるAI時代に必要な力は「チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質」だと、大学教授などの有識者も言っています。では、実際に家庭でどのように子どもを育てていけばよいのでしょうか。ここでは、家でできることをごく簡単に紹介しておきます。子どもに選択させる親の価値観で決めてしまわずに、子どもの「やりたい」を優先させましょう。といっても、実際はなかなか難しいですよね。小さなことから始めてみませんか?「今日のお味噌汁の具は、じゃがいもとお豆腐、どっちにすればいいと思う?」など、「どちらがいい?」と選択肢を用意してみるのはどうでしょう。自分で考える習慣がつくと、「〇〇×△△はどうだろう?」と、独創的な発想もできるようになりますよ。 親は教えない子どもが助けを求めてくるまでは、なるべく「教えない」に挑戦してみませんか。「こうやったほうが早いのに……」と思っても、ぐっと我慢です。手伝わないで見守るのです。親が教えなかったり手伝ったりしないことで、子どもは、思考錯誤を繰り返しながらも問題を自分の力で解決できるようになります。そして、子どもが自分から「〇〇はどう△△すればいいの?」などと質問できるようになれば、自主性や問題解決能力はぐんぐん育っていくでしょう。 自然と触れ合う機会をつくる近所の公園に散歩に行かせるだけでもいいのです。散歩の途中、子どもが「見て!見て!」と言ってきたときに、親が驚くと子どもはとても喜びます。そして、さらに新しい何かを見つけようと、自分から動くのです。親が「もっとほかにも何か見つけてごらん」と言っているわけではないのに……。自然に触れ合い、親がその発見に反応することで、子どもの自主性を伸ばすことができるというわけです。 料理・洗濯・掃除などの家事をさせる料理のお手伝いをさせるとき「危ないから包丁を持たせない」とするのでなく、包丁を使っていることろを「見せて」あげましょう。親がやるのを見ているうちに、自分からお手伝いをしたいと言うようになるのだから不思議です。未就学児、低学年の子どもほどやりたがるよう。料理・洗濯・掃除などのお手伝いができるようになると、自分から仕事を見つけるようになりますよ。お手伝いでも、自主性を伸ばすことができるのです。 ***これからの時代の教育は、学校の教科だけを勉強させるのでなく、「さまざまな体験」を通して自主性を育てることがとても大切だと言えそうです。
2019年12月30日ミキハウス子育て総研が2018年に行なった、子どもの習い事に関する調査の結果によると、男の子・女の子ともに1番人気はスイミングなのだそう。「なんとなく楽しそうだから」「お友だちも通うから……」といった理由で、お子さんを通わせ始めたという方もいらっしゃることでしょう。スイミングスクールの楽しみのひとつといえば、進級テストに合格し、帽子の色が変わったりワッペンをもらえたりする瞬間ではないでしょうか。一方で、なかなか合格できず「やめたい」と言い出すお子さんもいるかもしれません。子どもがスイミングで進級できないとき、親はどう対処すればよいのでしょうか?習い事に通わせることの意味も視野に入れて考えてみましょう。スクールごとに異なる、進級テストの基準スイミングの進級テストの基準は、スクールによって違います。たとえば、セントラルスポーツの進級項目は、25級から1級までの全25段階(1級のさらに上には、基準タイムの突破を目指す特1~特5級がある)。「25級:ジャンプ→24級:顔つけ→23級:もぐる→22級:浮く」といった具合に、スイミングを習い始めた子どもは水中の動作をひとつひとつクリアするたび進級し、やがて泳ぎの習得へと移ります。ほかのスイミングスクールを見てみると、20~30段階程度の進級基準があるようです。比較的段階が多いところでは、基準が細分化されているぶん進級しやすいかもしれません。ですが、上級クラスに到達するまで時間がかかります。一方で段階が少ないところはひとつずつのハードルが高いため、途中までは順調に進んでも、あるタイミングで大きくつまずく可能性も。どちらも一長一短といえそうです。また、4泳法(クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ)を習う順番もまちまちです。ルネサンスのジュニアスイミングスクールでは「クロール→背泳ぎ→平泳ぎ→バタフライ」の順ですが、大宰府スイミングクラブでは「クロール→背泳ぎ→バタフライ→平泳ぎ」の順で進みます。子どもが4泳法を順序良くスムーズにマスターできるとは限らないので、順番のめぐりあわせでつまずくこともあり得ます。テストを実施する頻度もさまざまで、2か月に1回のところもあれば、3か月に1回のところも。さらにスクール独自の標準基準を突破しないと進級できないケースもあります。このように、進級テストの内容との兼ね合いで進級が思うようにいかないことは、じゅうぶん考えられるのです。スイミングでつまずくのは、どのタイミング?技術面で見ても、スイミングを習う過程でつまずくタイミングはさまざまです。まず、最初の壁は「顔に水をつけること」。日本水泳連盟会長・青木剛氏は、「水に慣れていない人は、顔を水につけるのを怖がる」といいます。しかし泳げるようになるためには、水に顔をつけて、目も開けられるようにしなければいけません。次に気をつけたいのが「水に浮くこと」。おぼれることへの恐怖心があると、体に力が入り水に浮けないことがあると青木氏はいいます。しかし、水に浮いた状態から立ち上がれるようになれば、恐怖心は一気に和らぐとのこと。スムーズに立つためには、浅いプールで練習すること、そして目を開けて上下の区別が付けられるようにすると良いそうですよ。「いつでも立ち上がれるのだ」という安心感があれば、不思議と水が怖くなくなる。怖さがなくなってしまえば、どんどんと泳ぎも上手になっていく。(引用元:青木剛 (2005),『水泳―オリンピックのスーパースイムでうまくなる! (めざせ!スーパースター)』, ポプラ社.)いよいよ泳ぎ始めるとなったら、次は「息つぎ」という壁が立ちはだかります。息つぎが上手くいかないと、進級基準の距離やタイムに届かない原因になります。青木氏によると、意外と苦労するのがクロールと平泳ぎの息つぎなのだそう。クロールでつまずく人は息つぎの際に上体を起こしてしまい、水の抵抗で体が沈んでしまうといいます。平泳ぎの息つぎはクロールより難しくないものの、うまくできないとスピードが落ちる原因になるとのこと。一方で、バタフライの息つぎはそれほど難しくないそうです。親の声かけで子どものやる気は上下するでは、進級テストになかなか合格できず、子どもがスイミングスクールに通うのを嫌そうにしていたら、親はどのように声をかければよいのでしょうか?■無理やり続けさせようとする言葉はNG「頑張るって言ったじゃない」「あと1年は続けなさい」「簡単に辞めたら癖になるからダメ」といった、習い事を無理に続けようとさせる言葉はNGだと、教育評論家の親野智可等氏はいいます。脳が急激に発達し、さまざまことを吸収する時期にある子どもにとっての1年は、大人の5年に相当するのだそう。そんな貴重な時期に、やりたくないことを無理にやらせるのは、子どもの成長を妨げると親野氏は述べています。やりたくないことを無理やりやらされると、子どもの成長にとって悪影響しかありません。嫌なことでは頑張れませんし、叱られることも増えます。能力も伸びませんし、自信もなくなります。暗い気持ちでいる時間が長くなるのは、性格形成のうえでも良くありません。(引用元:日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべき)※太字は筆者が施した■子どもの頑張りや挑戦を認める言葉はOK一方で、子どもの頑張りや挑戦を認めるほめ言葉は積極的にかけてあげましょう。教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこ氏によれば、「頑張ったね(頑張ってるね)」「ナイストライ」「いい経験をしたね」「結果を気にせず楽しもう!」などの言葉はとても有効だとのこと。こういった声かけは、進級テストの合否を問わずできるのではないでしょうか。また、これらの声かけが励みになって、目の前の壁を乗り越えられる可能性もあります。子どもはきっとやる気を取り戻すことでしょう。そもそも、なんのためのスイミング(習い事)なのか前出のとおり、子どもがスイミングスクールに通うことを嫌がっているのであれば「辞める」という選択肢も視野に入れるといいでしょう。子どものSOSサインをきっかけに、「そもそも、なんのためのスイミング(習い事)なのか」を考えてみるのも悪くありません。親野氏は、「習い事をとおして子どもの“好き”を応援してあげてほしい」といいます。子どもは夢中になる体験によって、思考力や集中力、創造力、記憶力などを総合的に発達させるからです。さらに、親がいつも応援してくれることで、子どもは感謝の気持ちを覚え、親子関係がより良いものになります。これらは、無理やり通わせていては実現しないことですよね。また、スイミングのみならず多数の習い事に通わせている場合は、詰め込みすぎという点にも注意が必要です。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、「子どもにさまざまなスキルを身につけさせようとすることは、必要かどうかもわからないアプリをスマホに入れているようなもの」といいます。アプリを入れすぎたスマートフォンが動作に不具合を起こすように、過度な負担は子どもに悪影響を及ぼすおそれがあるのです。そこでおおた氏がすすめるのは、「子どもにあれこれ習い事をさせるより、ぼーっとする時間を与える」ということ。ぼーっとする時間は子どもに考える時間を与え、自発性を育み、自分で自分の進むべき道を決められる人間に成長させるのです。習い事を辞めたり、減らしたりすることは、必ずしも悪いことではありません。***進級テストにつまずいたときは、子どもがスイミングを習う意味をじっくり考える良い機会です。無理をさせず、子どもの声に耳を傾けてあげましょう。こちらの記事「子どもがスイミングで進級できないときに “親ができる” 4つのこと」では、目標設定や練習内容の見直しのしかたをご紹介しています。練習に励むお子さんを応援するために、ぜひ参考にしていただければと思います。文/かのえかな(参考)ハッピー・ノート.com|通わせてますか?習い事セントラルスポーツ|25段階の進級項目東急スポーツオアシス広島店キッズブログ|スイミングクラス進級基準案内スポーツクラブ ルネサンス|ジュニアスイミングスクール 進級基準・レッスン大宰府スイミングクラブ|ジュニアクラス青木剛 (2005),『水泳―オリンピックのスーパースイムでうまくなる! (めざせ!スーパースター)』, ポプラ社.日経DUAL|「習い事をやめたい」と言われたら、やめさせるべきプレジデントオンライン|子供が見違える「短い声かけフレーズ10」 賢い親が繰り返し言う魔法の言葉こどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある
2019年12月29日最近、日本の子どもの「読解力」が低下したと話題になりました。その要因のひとつとして挙げられているのは、本を読む機会が減っていることです。読書習慣は、子どもの国語力を上げる一番の近道であり、子どもにも大人にも、多大な恩恵をもたらす習慣。今回は、「親子で読書習慣を身につける」と起こる “たくさんのいいこと” と、効果的な本棚について紹介します。読書量の減少で「読解力」低下経済協力開発機構(OECD)が進めている国際学習到達度調査(PISA)では、15歳児を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、3年ごとに調査を実施しています。日本の読解力の順位は、2012年で4位、2015年は8位、そして最新の2018年調査では15位と急落してしまったのだそう。じつはそのなかで、読書習慣のある生徒は、ない生徒よりも読解力の平均点が高かったのだとか。そのため、今回の「読解力」低下の背景に、読書量の減少があるのではないかと考えられています。教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんは、「賢い人は本が好き」というわけではなく、本を好きになることが賢さにつながる、と説きます。本を数多く読むと、言語的な理解力や、言語を使いこなす能力が高まるそうです。学力だけじゃない、〇〇力アップにつながる読書習慣それに、読書が影響を与えるのは学力だけではありません。『本を読む人だけが手にするもの』(日本実業出版社)の著者・藤原和博さんによれば、さまざまな人が書いた本を数多く読むことで、次に示す5つのリテラシー(理解・解釈・活用する能力)を高められるそうです。コミュニケーション(聴く・共感・伝える)力ロジック(著者の論理を理解する)力シミュレーション(先を読む、仮説を立てる)力ロールプレイング(他者の視点を得る)力プレゼンテーション(想像したり表現したりする)力日本は、経済や社会の成長がピークを迎え、精神的豊かさや生活の質の向上を重視する「成熟社会」に移行しました。これら5つのリテラシーは、「成熟社会」において必要な力なのだとか。また、仕事で成功するためには、IQ(知能指数)だけでなく、EQ(心の知能指数)がとても重要だといわれていますが、読書はそのEQを成長させてくれるそうです。EQとは、心の動きに気づいて理解し、管理する能力のこと。EQが高い人は、自己認識・自己管理・モチベーション管理・共感性・社会性などに優れているそう。先述した5つのリテラシーにも通じるところがあります。コンサルティング会社タレント・スマートの共同創業者であるトラヴィス・ブラッドベリー氏とジーン・クリーブス氏らが調査を行なったところ、仕事で高い成果を上げている人の90%はEQが高く、仕事の成果が低い人でEQが高いのは20%のみであったとのこと。脳科学者の茂木健一郎さんは、言葉が人と人をつなぎ、感情や状況の把握を可能にするからこそ、本を読むことで、自分と他者の感情をより理解できるようになる、と述べています。ちなみに、子どもの読書習慣は、親からの影響が大きいのだとか。親の読書習慣が子どもに影響厚生労働省が長年にわたって調査を行なった「第8回21世紀出生児縦断調査結果の概況」によると、親がよく本を読む家の子どもは、児童書や絵本などをたくさん読んでいるそうです。たとえば1ヵ月間、子どもの「本を読む習慣」を調べてみると――本を読んでいる母親の子どもの、本を読む割合は94.9%。本を読んでいない母親の子どもの場合は、88.0%と低くなっています。また、父親が本を読んでいる場合の、本を読む子どもは94.5%で、父親が本を読まない場合の、本を読む子どもは89.3%とのこと。そして、母親と父親が読む本の冊数が多いほど、子どもが読む本の冊数も多くなっています。先に述べたように、読書習慣は知性を高め、さまざまなリテラシーを磨き、EQ(心の知能指数)を成長させてくれます。それらの効能は、子どもだけではなく大人にも与えられるのですから、親も子どもと一緒になって積極的に読書を楽しむことを、大いにおすすめします。それに、読書がもたらす恩恵はまだあるんですよ。親も読書をはじめてみるといい理由英サセックス大学の研究によると、読書によって軽減されるストレスは68%。音楽鑑賞やコーヒーブレイク、ゲームや散歩といった、一般的な解消法のストレス軽減度を上回るそうです。そのため、英国では2013年6月に、医師が精神疾患の患者に対して「本」を処方する医療システムがはじまったそう。患者は処方箋を手に、薬局ではなく図書館へ向かうのだとか。いわゆる「ビブリオセラピー(読書療法・Bibliotherapy)」です。また、米イェール大学の研究チームが 12年間にわたって調査を行なった結果、週に3時間半以上読書をする人は、全く読まない人よりも死亡率が23%低いと結論づけられました。読書をする人は、読書をしない人に比べて2年も長生きするとのこと。臨床神経心理学者のジェニー・オグデン(Jenni Ogden)博士は、登場人物に感情移入したり、「自分ならどうするか」などと考えたりできるので、「自分自身をよりよく理解したいなら、小説を読むことだ」とアドバイスしています。なるほど、EQ(心の知能指数)を高めてくれるわけです。とはいえ、自分にも、子どもにも、読書を無理強いしてはいけません。自然に本が好きになれるように、親と子の「アラカルト本棚」を設けることをおすすめします。自然と本好きになる親子の「アラカルト本棚」偏差値35から読書習慣の改善で東大合格を果たした西岡壱誠さんは、「親が読ませたい本」を子どもに無理やり読ませることだけはしてはいけないと説きます。大人でも「この本を読みなさい!」と強引に押し付けられたら、内心では反発したり、億劫になったりするのではないでしょうか。子どもならなおさらです。それがきっかけで読書嫌いになってしまったら、元も子もありません。子どもが自分で、「読みたい本」を選べることが大切です。そこで、おすすめしたいのが「アラカルト本棚」です。“アラカルト” という呼び名どおりに、文化系、理系、雑誌、漫画、小説、絵本、世界地図など、何でも、あらゆるジャンルの「おすすめ本」を並べてしまうのです。ちなみに、子どもがたくさん本を読むご家庭の本棚の、画期的な例があります。親が子どもに「読んでくれたら嬉しいな」と思う本を図書館から借りてきた際に、まるで書店か図書館のように、面置きにするのだそう。すると、子どもが「あ、新しい本だ」とすぐに気づいてくれるのだとか。西岡壱誠さんが読書について東大生100人からアンケートをとったところ、親から本を「押し付けられる」のではなく、「さまざまな本をおすすめしてくれた」ことが良かった、と答えた東大生が多かったのだとか。「アラカルト本棚」にあった科学アドベンチャーシリーズを読んで理系に興味がわき、東大理学部に進んだ学生もいるそうです。また、約2,250件もの家庭で勉強を教えてきたという、カリスマ家庭教師の西村則康さんは、親子で本棚を共有したほうがいいと話します。子どもが、難しそうな親の本を見て、「いつか読めるようになりたい」と向上心を持つからです。その時々の興味関心に沿って、自分も子どもも自由に選べるような本棚をつくることで、子どもは自然と興味のある本に手を伸ばすようになり、ご自身も「今度はどんな本を並べてみようかな」「何を読んでみようかな」となり、親子でたくさんの恩恵にあずかることでしょう。***古代ギリシアの哲学者・アリストテレスは「すべての人間は、生まれつき、知ることを欲する」といいました。そもそも本は、人間の “もっと知りたい” 欲求を叶えて、大いに楽しませてくれるもの。ぜひ、親子で気楽に読書を楽しんでくださいね。(参考)産経ニュース|PISA調査日本の読解力低迷、読書習慣の減少も影響か国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research|OECD生徒の学習到達度調査(PISA)日本実業出版社|「本を読むこと」で磨かれる5つのリテラシーSTUDY HACKER|本を全然読まないと「3つの超重要メリット」が逃げていく。STUDY HACKER|イギリス政府公認「読書療法」がすごい。ストレス6割減も期待できる『5分だけ読書術』PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)|“心の知能指数”を訓練で伸ばす4つの方法 仕事の成功には「ものすごく影響」厚生労働省|第8回21世紀出生児縦断調査結果の概況|2 子どもの生活の状況StudyHackerこどもまなび☆ラボ|東大生に共通する「幼少期の本の読み方」。思考力を鍛える読書法があるって本当?NEWSポストセブン|頭のいい子が育つ環境本棚は親子で共有、机は大きくHugKum【小学館公式】|「リビングに本棚」で子どもが本好きになる神話は本当だった!?【本好きキッズの本棚、見せて見せて!第6回】アリストテレス著,出隆訳(1961),『形而上学〈下〉』,岩波書店.
2019年12月28日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟おやつは単なるエネルギー補給ではない人間の体は、食べたものでできています。それはもちろん、脳だって同じこと。あらためていうまでもなく、体内に入れるものはとても大切です。しかし、3度の食事には気を遣う一方で、おやつの時間はスナック菓子やジュースなど、子どもが好きなものばかりあげていませんか?「集中力が続かない……」「やる気がない……」こんな様子が子どもに見られたとき、そこにはおやつの選び方が関係しているかもしれません。短期連載最終回は、安心して与えることができる、子どもの集中力をアップさせる良質なおやつについてのお話です。「集中力が落ちてきたな」と感じたとき、大人であるわたしたちは「なにか甘いものを食べて血糖値を上げよう」と考えます。実際、甘いものやジュースを飲むと血糖値が上昇するので、集中力や気分が快復したと感じるでしょう。だからこそ、子どもに対しても同じように考え、「おやつは食事とは異なるもの。エネルギー補給するだけで大丈夫」と思うこともあるかもしれません。でも、子どもの脳の発育を考えると、この選択は正解ではない。なぜならば、集中力を高めるために必要なのは、血糖値がただ「上がる」ことではなく「安定していること」であり、それによって脳に十分なブドウ糖が供給されるからです。甘いお菓子やジュースで血糖値を上げることを繰り返すと、インスリンやアドレナリンなどのホルモンが出すぎた状態になり、血糖値が不安定になるのと同時に精神的にも不安定な状態になってしまいます。応急処置的に急激に血糖値を上げるようなものを口にするのは、その場しのぎのやり方です。長期的に考えた場合、勉強面においても精神面においても、かえってマイナスに働くでしょう。「イライラしやすい」「怒りっぽい」という様子が子どもに頻繁に見られるとき、それは本来的な性格でも環境のせいでもなく、砂糖まみれのおやつで血糖値が不安定になったことによる自律神経の乱れが原因ということも考えられるのです。注意しなければならないのは、「イライラしやすい」や「怒りっぽい」ということ以外にも、「座っていられない」「状況に関係なくほかの子にちょっかいを出す」「騒ぐ」といった問題行動ともいえるようなことにもつながってくるという点。しかし、家や外出先で、子どもにだけ甘いものを禁ずることはできませんし、いきなり「食べてはダメ」といっても子どもは受け入れないでしょう。そこでまずは、糖分をとりすぎないようにすることからはじめてください。家庭によっておやつの量は異なりますが、ケーキやプリン、アイスクリームなどであれば、「半分こして仲良くふたりで食べようね」くらいの量で十分です。個装のお菓子であれば、子ども用のサイズでひとつ、ポテトチップスやチョコレート菓子など大人向用のサイズであれば家族でひとつと考え、それぞれの体の大きさに合わせての配分を目安にすると安心です。「おやつ」から「捕食」への底上げを意識するまた、糖分のとりすぎに注意するためにも、甘い飲み物は、それ自体をおやつとしてカウントしてください。ジュースを飲んでお菓子も食べるというのは、あきらかに糖分のとりすぎです。子どもが清涼飲料水やジュースを飲みたがったら、「ジュースを飲むなら、今日のおやつはそれで終わりね。お菓子を食べるなら、飲み物は水かお茶にしようね」と伝えましょう。ひたすらに「ダメ」というのではなく、そこに選択肢があれば子どもも納得しやすいものです。そのとき、温めてもいい飲み物であれば、温かくしたほうが満足度は高まります。ただ、子どもにも子どもの世界がありますよね。みんなで楽しむ誕生日会のようなときは例外としたほうがいいでしょう。「ハレの日」と「ケの日」では、おやつは変わっていいものだと思います。その次のステップでは、間食を「おやつ」から「補食」に底上げしていくことを考えたいものです。1日を通して血糖値を安定させた状態にして集中力を保つには、前提として、1日3度の食事を規則正しくとることが必要です。それにプラスして食べるおやつには、血糖値を大きく変動させて子どもの集中力を逆に下げるものではなく、栄養を補足できる良質なものを選びたいものです。お菓子として売られているものには、糖質や脂質以外の栄養素はあまり期待できません。また、糖質だけに偏ったおやつだと、ビタミンB1が不足してエネルギー代謝がうまくいかずにだるさを感じやすくなります。これでは、子どもが「疲れた」「やる気がでない」といい出しても仕方ないでしょう。集中力をアップさせるためには、なるべく食事に近いものを選ぶということがポイントです。糖質は大切! 「糖質=悪者」ではない糖質制限ダイエットがブームになり、「糖質=悪者」と考えて炭水化物をとらない人が非常に増えているようです。でも、脳のエネルギー源として利用されるのは、穀物や果物に多く含まれるブドウ糖です。ブドウ糖が不足すると、疲れやすさを感じるのはもちろん、脳へのエネルギー補給も滞ります。でも、「砂糖まみれのお菓子ではダメ」というのがむずかしいところなのですが……脳を安定的に働かせるためにも、比較的GI値が低い全粒粉を使ったお菓子や、今回わたしが提案するような乳製品を使ったお菓子、いちごやりんごなどの果物を間食に選ぶのがいいでしょう(GI値はブドウ糖を摂取したときの血糖値の上昇度を示す指標で、避けたいのは、血糖値が上がりやすい高GI値のものです)。そして、ときには親子で一緒におやつづくりも楽しんでほしいですね。「普段食べているおやつにはこんなに砂糖が入っているんだ!」という発見をしたり、作り手の手間や気持ちを知ったりすることで、感謝の気持ちが育つからです。最初のうちは、「ひとりでつくったほうが楽」と思うかもしれませんが、親子でするおやつづくりは、子どもの生きる力を育む大切な時間になるでしょう。最後になりますが、1児の母であり栄養士であるわたしが思うおやつの時間とは、3度の食事では補いきれない栄養をとる時間です。おやつは、おかしやジュースをただ与えればいいわけではないということを意識して、これからの子育てに取り組んでいただけたらうれしいです。レシピ◆混ぜてチンして冷やすだけ!簡単牛乳ゼリー【材料】小さな型4つ分牛乳240ccゼラチン6g砂糖大さじ1水80ccバニラエッセンス(お好みで)【作り方】耐熱容器にゼラチン、水、砂糖を入れ、600Wの電子レンジで1分加熱する牛乳とバニラエッセンスを①に加えてよく混ぜ、お好きな器に注ぎ入れ、冷蔵庫で1時間以上冷やしてできあがり【主な食材に含まれる栄養素】牛乳……不足しがちなカルシウムが豊富■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは
2019年12月28日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟脳の約7割は脂質で構成されている前回のコラム(第2回参照)では、頭がよくなるために意識したいことや、避けたいことをお伝えしました。食への意識が高い方は、「でも、大事なものが抜けている」と思われたかもしれません。そう、「DHA」の話ですよね。DHAを多く含むものといえば、やはり魚です。しかし、「魚は食べるのが苦手」という子どもも多いですし、「魚料理をするのは苦手」という大人も少なくありません。そこで連載第3回目は、頭をよくするうえでどうしてDHAが欠かせないのかということにはじまり、魚嫌いでも食べやすくなる調理のコツや、DHAの摂り方について書き進めていきます。筋肉をつくるなら「タンパク質」というように、脳をつくるには「脂質」が必要となります。実は、脳の約7割は脂肪によって構成されているのです。でも、脂質だったらなんでもいいわけではありません。肉の脂身やバターなどの乳脂肪、揚げ物などの脂質では良質な栄養補給はできないからです。それどころか、摂取しすぎると生活習慣病のリスクを高めることにつながります。脂肪酸は脂質を構成する成分の一種ですが、その構造のちがいから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわけられ、そのうち、健康にいいとされているのは植物油や魚の脂肪に多い不飽和脂肪酸です。そして、不飽和脂肪酸のうち、魚の脂に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、くるみや亜麻仁油に多いα-リノレン酸は「オメガ3脂肪酸」と言われ、子どもの脳の発育を促し、アレルギーを抑える働きを持ちます。DHAを摂るためにできる工夫そのなかでも、DHAが頭をよくするものとして特に注目される理由は、脳に欠かせない脂質であり、神経伝達をスムーズにし、記憶や学習などの脳の働きを高めるからです。でも、魚のなかでも特にDHAを多く含む、ぶり、さば、サンマ、いわしといった青魚は、子どもが好みやすい食材ではないうえに、「料理法がよくわからない」「あまり日持ちがしない」といった親側の理由からも敬遠されがち。そんな背景もあり、「家で魚を食べる機会が少ない」という家庭は増えています。ですが、DHAの大きな供給源として魚の代わりになるものはありません。そこでおすすめするのは、味噌や塩麹などに漬けておいてから調理をすること。生臭さが取れると同時に、旨味も増し、しっとりやわらかに仕上がるなどいいこと尽くしです。こうした発酵食品は免疫力を高める働きもあるため、休まず学校に通える体をつくるためにも欠かせません。今回紹介するレシピのように、味噌とヨーグルトを1対1で割ったものに漬けておくのもお手軽です。漬け込んでおけば、買ってきた状態で冷蔵保存するよりも日持ちするので、「忙しくて買い物にいけなかった」というときでも心強いストックになるでしょう。DHAを効率よく摂取するには、脂が落ちないようお刺身のように生食でいただくのが理想です。でも、乳児期に生食を与えることはできませんし、お刺身で食べたときに家族みんなが「美味しい」というお魚を購入するのもハードルが上がります。そこで、お味噌汁やスープなど、煮汁もそのままいただけるような調理法にするのもいいでしょう。また、裏技になりますが、我が家では買ってきた生魚は一度脱水シートで包んで臭み抜きをしています。最初のコストこそ多少かかりますが、手頃なお値段のお刺身でもとても美味しくいただけるので重宝しています。干物は日持ちもして便利ですが、脂肪が酸化しやすいので、DHAの摂取を目的とするならば、早めに食べるようにしましょう。また、サバ缶やツナ缶、しらす干しなどを常備しておけば、ご飯と一緒に炊き込んだり、サラダに加えたり、トマト缶と一緒に煮込んでパスタソースにしたりといろいろな応用ができます。「魚が丸ごと出てくるのが苦手」という子どもには、こうした加工食品も上手に使ってください。炭水化物が太るのではなく、食べすぎたら太るそして、脳にいい食材を意識したら、その脳をちゃんと働かせることも意識したいものです。最近はダイエットの低年齢化が進み、小学生でも「炭水化物=太る」と考えている子どもたちもいます。でも、脳を働かせるためには糖分をしっかり摂る必要があるので、ご飯も欠かさないようにしましょう。炭水化物を食べると太るのではなく、食べすぎたら太るということ、炭水化物は三大栄養素のひとつで脳にとっても大事なエネルギー源であることをしっかり教えるのも、親が子どもにできる大事な「食育」です。「早く出かける準備をしないと」「早く寝かさないと」なんてことを思うと、つい「早く食べて!」とせかしてしまいがちになります。でも、しっかり食材を噛むことは、脳に刺激を与え脳の血流を増加させる効果があると言われています。子どもがよく噛んでごはんを食べることができるような「ゆとり」も意識したいものですね。レシピ◆あとは焼くだけ!1分で準備できるぶりの味噌漬け焼き【材料】ぶり(お好きな魚で)味噌大さじ1ヨーグルト大さじ1【作り方】ジップロックに味噌とヨーグルトを入れて混ぜたら、ブリを入れてからませる冷蔵庫で2時間以上おく(このまま2日程は冷蔵庫で保存できる)グリルで7分ほど加熱してできあがり【主な食材に含まれる栄養素】ぶり……冬に旬を迎える寒ぶりは脂が多いのでDHAを摂りたいときにはおすすめ味噌……腸内環境を整える発酵食品ヨーグルト……整腸作用がある乳酸菌が豊富■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは(※近日公開)
2019年12月27日自分自身を肯定的にとらえる感覚を表す言葉、「自己肯定感」。最近では、Twitter日本語版でトレンド入りするなど、その重要性を多くの方が実感していることがうかがえます。「我が子を自己肯定感の高い子に育てたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。実際、自己肯定感の高め方に関する情報は本やインターネットにあふれています。とはいえ、それらをひとつひとつ実践するのは簡単なことではありません。そこで今回は、自己肯定感を高めることの重要性を改めてお伝えしつつ、あらゆる方法のなかから家庭で取り入れやすいものを10個選んでご紹介します。自己肯定感の有無は人生を左右する!?「自己肯定感」は、なぜこんなにも重要視されているのでしょうか。自己肯定感の高い子と低い子の違いを踏まえて考えてみましょう。児童養護施設に勤務後、行政機関にて0~18歳の子ども相談を担当していた横山知己氏は、自己肯定感の高い子と低い子の特徴について、以下のように述べています。自己肯定感の高い子自信に満ちあふれ、何事にも前向きにチャレンジするたとえ失敗しても、その経験を次のチャレンジに生かすことができるため、ぐんぐん成長していける自分を大切にし、自己主張もしっかりするため、友人たちとも対等な関係を築くことができる 自己肯定感の低い子自分に自信がなく、失敗を恐れてしまうことから、新しいことになかなかチャレンジできない極端に人の顔色をうかがってしまう自分を抑えて我慢しすぎたり、相手の言いなりになったりしてしまい、人間関係をうまく築けないさらに、自己肯定感の高さは、学力にも影響を及ぼすことがわかっています。文部科学省が実施した「平成30年度全国学力テスト」と、児童生徒アンケートの結果によると、「自分にはよいところがあると思いますか」との質問に肯定的に回答した児童のほうが、平均正答率も高かったのだそう。つまり、子どもの自己肯定感を高めることは、その子がさまざまなチャレンジを通して成長していく力や、より良い人間関係を築いていく力、そして学力を高めていくことにもつながるといえるのです。親が子どもにしてあげられる10のことでは、どうすれば子どもの自己肯定感を高められるのでしょうか。親が子どもにしてあげられる10のことをご紹介しましょう。お手伝いをさせる国立青少年教育振興機構が行なった調査により、食器をそろえたり、片付けたりといったお手伝いをたくさんしている子ほど自己肯定感が高いことがわかりました。お手伝いをさせることによって、「家の中に役割や居場所がある」こと、「自分は必要とされている」ことを感じさせられるのです。「大好きだよ」と伝える内閣総理大臣、内閣官房長官及び文部科学大臣兼教育再生担当大臣ならびに有識者で構成される教育再生実行会議の第十次提言には、「親から理解されている、愛されているという感覚を持っている子供は自己肯定感が高い」という記述があります。自分の子どもにそのような感覚を持たせる方法のひとつは、言葉で伝えること。「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」などの言葉を日常的にかけることで、子どもは愛されていることを自覚できるのです。話を聴くビジネスコーチの石川尚子氏いわく、親が子どもの話をしっかり聴くと、子どもの存在を認めていることが伝わり、自己肯定感を高められるのだそう。ポイントは、しっかり目を見て、耳を傾けて「聴く」ということ。途中で口を挟んだり、他のことをしながら聞き流したりしないよう、意識して子どもに向き合いましょう。おこづかいの与え方を変えるマネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生は、おこづかいは定額ではなく、「掃除を何回したらいくら」というように、家庭内で仕事を与え、その対価としてわたすことをすすめています。そうすると、子どもに達成感や、人の役に立つ実感を与えることができ、自己肯定感を高めることにつながるのだそう。その際、事前に親子でルールを話し合い、書面を作成するなど、子どもを「大人扱い」するとより効果が高まります。親子で一緒に外遊びする外に出て、自然のなかに身を置くと、子どもは自分で試行錯誤しながら工夫して遊びます。心理学者・石﨑一記氏いわく、自分で工夫した遊びをやり遂げることによって達成感を得られ、自己肯定感を高められるそう。その際、できれば親も一緒に外へ出て楽しみましょう。注意点は、あれこれ口出ししないこと。あくまでも、一緒になって楽しみ、子どもが誇らしげに「見て!」「こんなのできた!」と言ってきたら、「すごいねえ!」と褒めてあげることが大切です。プロセスをほめる褒めることによって自己肯定感が高まることはよく知られています。しかし、特定非営利活動法人・放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰氏いわく、「縄跳びができた」「テストで良い点数をとった」など、能力や成果ばかり褒めるのは逆効果。子どもに「成果を出さないと認めてもらえない」という焦りや不安を刷り込むことになるのだとか。子どもの自己肯定感を高めるには、「毎日、縄跳びを練習してすごいね!」「毎晩、自分から勉強してえらいね」など、成果よりプロセスを褒めましょう。写真を飾る自宅に子どもの写真を飾ると自己肯定感が高まることがわかっています。教育評論家・親野智可等氏らは、習い事や勉強など、何かを成し遂げたときの写真を飾ることをすすめています。子どもはその写真を見て、「親は自分を気にしてくれている」「自分は頑張れる」という思いを強めるのだそう。また、写真をきっかけに愛情を表現するのも効果的です。旅行の目標を立てる小さな目標を立て、それを達成する喜びは、自己肯定感を高めることにつながります。そのような機会を作りやすいのが、「旅行」です。たとえば、「新幹線では静かにしよう」「旅館の方に挨拶をしよう」といった約束事を事前に決めておきましょう。それらが達成できると、親だけでなく、旅先で出会った初対面の人から褒められることがあるのも、旅行の醍醐味です。教えすぎない日頃、子どもの行動に先回りして、「これして」「あれして」と指示していませんか?子どもは、「自分でできた!」という体験がないと、自己肯定感を高めることができません。子どもが何かやろうとしているとき、すぐにはやり方を教えず、「どうすればいいと思う?まず自分なりに考えてやってごらん」と促してみましょう。ネガティブな感情も受け入れる子どもがネガティブな感情に陥っていると、「自己肯定感が下がってしまうのではないか」と不安になってしまいませんか?脳科学者の中野信子さんは、「ネガティブな感情を無下に否定せず、しっかりと受け止めて活用していけるからこそ、健全な自己肯定感が育まれる」と述べています。親として、どんなときでもありのままの子どもを受け止めてあげましょう。***ご覧いただいたように、子どもの自己肯定感を高める方法はたくさんあります。だからこそ、そのすべてをやろうとするのではなく、家庭に取り入れやすいものからひとつずつ試してみてはいかがでしょうか。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「『大好きだよ!』で勉強ができる子どもに☆」ゆるクス漫画家 木下晋也のマンガ Ready Study Go!【第34回】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもに揺るぎないパワーを与える、親が子どもの話を「聴く」ということStudyHackerこどもまなび☆ラボ|「会議・交渉・契約書」で自己肯定感が育つ。子どもをぐんと伸ばす“おこづかい”のあげ方StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばす――でも、効果のほどは「親次第」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|無理やりポジティブにならなくていい――“ネガティブな感情”を利用して自己肯定感を育むマイナビニュース|自己肯定感、Twitterトレンドで議論 – 誰かに自分の在り方を委ねず、いかに自己を受け止めていくかAll About|子供の未来が変わる!自己肯定感を育もうベネッセ教育情報サイト|自己肯定感の向上、家庭が大きな役割ベネッセ教育情報サイト|子どもの自己肯定感を育む「教え過ぎない」子育て[やる気を引き出すコーチング]東洋経済ONLINE|「自己肯定感の低い子」に親ができる1つのこと学研キッズネット|自己肯定感を高めるには、写真をかざるのがいい!親野先生流「ほめ写」NAVITIME Travel|実践!旅育メソッド:役割や目標を設定、褒めて成功体験に文部科学省|平成30年度全国学力・学習状況調査の結果首相官邸|自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)
2019年12月26日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟乳幼児期に脳はグッと成長していく身長は思春期にグッと伸びますが、気になる「脳」がグッと成長するのはいつなのでしょうか?実は、脳は3歳にして成人の約80%、6歳で約90%の大きさに達します。つまり、乳幼児期に大きな成長を遂げるということ。ほかの臓器と同じように、脳も食べものの影響を大きく受けますから、この時期になにを食べていたかはとても重要です。とはいえ、発育曲線がゆるやかになるだけで、脳はその後も成長していきます。ですから、食を改善するのに遅いということはありません。勉強や運動そのものは本人にしかできなくても、食事ならばわたしたち親がしっかりサポートできます。脳の働きをよくする食材や食べ方を、この機会に学んでいきましょう。近年、注目を集める「ブレインフード」近年、脳をよくする食べものとして「ブレインフード」が注目されるようになってきました。脳は神経細胞同士がつながって発達していきますが、その働きを担っているのは神経伝達物質です。そして、この神経伝達物質が食べたものからつくられるからこそ、食事をおろそかにはできないのです。たとえば、「幸せホルモン」とも言われる神経伝達物質「セロトニン」はアミノ酸を材料としますが、記憶力に関わる神経伝達物質「アセチルコリン」は「コリン」というビタミン様物質を材料とします。アミノ酸はタンパク質の構成成分なので、いわゆる魚や肉などのメインのおかずをしっかり食べていることが大切。「朝は時間がなくてパンだけ」「麺類などお腹を満たす炭水化物がメインになりやすい」という食生活は要注意ということになります。多くの方が、野菜をとることは意識しても、「タンパク質=筋肉」と思いがちで、積極的に摂る方はそう多くないように見受けられます。「タンパク質が不足すると、脳の神経伝達物質の原料も不足する」と認識しておいてください。では、「コリン」はどうでしょう?実は、コリンはとても身近な食材である卵に多く含まれています。卵の場合、卵黄に含まれるレシチンも記憶力や集中力の向上に役立つので、実に優秀なブレインフードです。「子どもが卵アレルギーで……」という方も安心してください。卵に続いてコリンを多く含むのは、日本人にはとても身近な食材である大豆です。大豆ならば、納豆、豆腐、豆乳、きな粉など様々な加工がされているので、毎日飽きずに食事に取り入れることができますよね。調理いらずでもっと手軽にとれるブレインフードと言えば、ナッツが代表的な食材です。くるみ、アーモンド、ピーナッツなど、種類によって栄養成分は異なるものの、これらに含まれるビタミンEは細胞膜の酸化を予防し、不飽和脂肪酸が脳の働きをサポートするという点は共通しています。ただ、ナッツ類はカロリーが高いので、食べすぎには注意したいところです。サラダやヨーグルトなどにトッピングする、または、少量ずつ食べることを推奨します。おやつは栄養を補う「補食」になる逆に、子どもの食生活から遠ざけたいのはお菓子とジュースです。単に「太るから……」「将来、生活習慣病になる可能性が高まるから……」という理由だけではありません。糖質はエネルギーになる一方で、その代謝の過程でビタミンB1を必要とします。ですから、ごはんとおかずを一緒に食べるならまだいいのですが、糖質だけを単品で食べるとビタミンB1が不足して、かえって疲労感を感じ集中できなくなってしまうのです。もちろん、「おやつは絶対に食べさせてはいけない」ということではなく、目的と量を間違えないようにすべきです。「甘いものを食べたら元気になって集中できる」という短絡的な考えは間違いであって、いいものを少量、時間を決めて食べるのがいちばんです。子どもにとってのおやつは、食事で不足しやすい栄養を補う「補食」の役割を果たすもの。ですから、具沢山のたきこみごはんをおにぎりにしたものや、むかしながらの焼き芋、ヨーグルトなどでいいのです。共働き家庭においては、どうしても夕食の時間が遅くなりがち。そうなると、お腹を満たすためにおやつを大量に食べてしまうということも起こり得るでしょう。その対策としても、食事の一部になり得るおやつのレパートリーを考えましょう。また、日々の積み重ねが子どもこれからの人生に大きな影響をもたらすことを考えると、「主食を見直す」ことも大切なポイントでしょう。脳のエネルギー源として炭水化物を摂ることは重要ですが、そこでもなにを選ぶかで差がつくからです。目安としたいのは、「GI(グリセミック・インデックス)値」。血糖値が上がりやすい食品は高GI食品、上がりにくい食品は低GI食品と言いますが、子どもの記憶力や集中力をサポートしたいなら、選ぶのは低GI食品です。朝、甘いシリアルを食べているのであればオートミールに、白いパンを食べているならライ麦パンや全粒粉パンに、白米を食べているならば雑穀を加えるなど、選択を変えていきましょう。高GI食品は、集中力を下げたり「もっと甘いものが食べたい!」という欲求を引き起こしたりしてしまうので注意してください。そして、頭をよくするためにも、日頃から子どもたちが楽しく食事をする環境づくりも心がけてほしいことです。楽しく食べると副交感神経が活性化し、消化吸収がスムーズになります。またなにより、神経伝達物質であるドーパミンが分泌されて脳の活性化にもつながります。子どもの消化能力は、大人ほどではありません。学習能力を上げるには良質な睡眠をとることも欠かせませんから、良質な睡眠を妨げる要因となる寝る直前の食べすぎや、遅い時間の夕食は避けたいものです。「ちゃんとごはんをつくると遅くなってしまいそう……」というときには、今回ご紹介するレシピのように、1品に栄養を詰め込んで、あとは具沢山お味噌汁を添えるだけというような組み合わせでもいいのです。「手抜き」と思わずに知識を上手に活用してください。レシピ◆5分でできる!ブレインフードチャーハン【材料】ひとり分卵1個納豆1パック(タレも使用)雑穀ごはん軽く茶碗1杯分小ねぎお好みごま油小さじ2水小さじ1鶏ガラスープの素小さじ1/2【作り方】フライパンにごま油をしいて火にかけるボウルにごま油以外のすべての材料をいれてかき混ぜ、1に入れる3分ほど、パラリとするまで炒めてできあがり(大人用には胡椒をふってもOK)【主な食材に含まれる栄養素】卵……免疫力を高めるビタミンAなど成長期にとりたい栄養が豊富納豆……ねぎとあわせると、納豆に含まれるビタミンB1の吸収が高まる雑穀……食物繊維■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法(※近日公開)第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは(※近日公開)
2019年12月26日子どものお小遣いには、「毎月決まった額を渡す定額制」と、「何かの報酬としてお小遣いを与える報酬制」がありますよね。皆さんのご家庭はどちらの方法をとっているでしょうか。じつは、お小遣いの与え方によっては、子どもの金銭感覚に悪影響を与える可能性があるのです。今回は、子どものお小遣いについての考え方や、マネー教育についてご紹介しましょう。日本のマネー教育は遅れている!?従来の日本では「お金の話は大っぴらにすることではない」「子どもは家計のことなんて知らなくてもいい」という考えがあったせいか、マネー教育に消極的な親が少なくありませんでした。しかし最近は、事情が変わってきています。ここ数十年で、日本でもキャッシュレス化が進み、クレジットカードや電子マネーといった決済ツールが飛躍的に普及しました。また、2022年4月から、成人年齢が18歳に引き下げられるため、たとえ高校生でも、18歳になれば自分のクレジットカードを持ったり、ローンを組んだりできる時代になっていきます。「子どもにお金の話なんて」「まだ子どもなんだからマネー教育は必要ない」と避けていては、子ども達が将来困ることになるかもしれないのです。そうした背景もあり、マネー教育の第一人者である横浜国立大学名誉教授の西村隆男先生は、「子どものマネー教育は早ければ早いほど良い」と述べています。具体的には、小学校入学前から、家庭でもマネー教育をするのが良いそう。定額制のお小遣いに潜むリスクマネー教育として、「お小遣いを毎月定額で与えている」「学年×100円として、年齢が上がるごとにお小遣いの金額を増やしていく」といったルールを決めているご家庭も多いのではないでしょうか。しかし、このような定額制のお小遣いには、じつはリスクがあるのです。『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)の著者で元メガバンク支店長の菅井敏之氏によると、「毎月定額性でお小遣いを渡し、年齢が上がるごとに金額を増やす」という方法は、「年次が上がれば、自動的に給料も上がるという典型的な年功序列型の考え」と同じだそう。これは、30年前の日本の考え方であり、仕事のパフォーマンスに応じた対価が給料としてもらえる現代では通用しないと言います。菅井氏いわく、学年が上がるたびに自動的に金額が上がるお小遣いシステムに慣れた子どもは、「とりあえず従順に働いていれば、給料はもらえる。年齢を重ねれば、なんとなく給料は上がる。だから、命令されれば残業もする」といった社畜的な社員になってしまう恐れがあるのだとか。これでは、子どもの「稼ぐ力」は育ちませんよね。また、『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』(アスコム)の著者である酒井レオ氏も、定額制のお小遣いについて、「もらう前から『次のお小遣いが入ったらアレを買おう』と、頭の中が物欲に支配されてしまう」と警鐘を鳴らします。定額制のお小遣いは、子どもにとって、定期的にもらえるのが当たり前のもの。自分で働いて得たお金だという重みがないために、好き放題に使えてしまうのだそう。そのため、ただお小遣いをもらうだけでは、マネー教育にはならず、物欲が刺激されるだけになってしまうのだとか。家庭でできるマネー教育子どもの金銭感覚を養うために、以下のようなマネー教育を取り入れてみましょう。定額制ではなく報酬制にするお小遣いは定額制ではなく、報酬制にするのがおすすめです。前出の菅井氏は、「お金」を「困りごとを自分の経営資源で解決したときにもらえる対価」と称しています。そのため、お小遣いが欲しいときは、庭の草むしりをする、汚れた網戸を掃除する。祖父母の手伝いをするなど、誰かが困っていることを自ら発見・解決して “お駄賃” という形で、お金を稼ぐのが良いとのこと。こうすることで、これからの社会で必要とされる「稼ぐ力」を養うことにつながります。ただし、普段の家庭でのお手伝いは家族の一員として当然のことであるために報酬対象外としましょう。家庭でのお手伝いには、「普段のお手伝いよりも時間のかかる作業をしたら○円」「言われる前にできたら○円」などのルールを作ると良いそうです。 欲しいものがあったら「1カ月考える」前出の酒井氏いわく、子どもがおもちゃなどをねだったときは、「1カ月経っても欲しい気持ちが変わらなければ、そのときに考えよう」と答えるのが良いそう。そうすることで、子どもが「本当に必要なのかな?」と冷静に考えられるといいます。大人でも、一時期「どうしても欲しい!」と思っていたものを、後になって「どうしてこんなものが欲しかったのだろう」と疑問に思った経験はあるのではないでしょうか。欲しいものがあったときに、本当に必要かどうかを考え続けていると、自分が何に価値を感じ、どんなものを手に入れたいと思うかが明確になっていきます。やがて、物欲に振り回されることがなく、物事の本質をシンプルに見極められる人生が手に入る可能性が高まるそう。 イベントの買い物を任せるファイナンシャル・プランナーの中上直子氏によると、旅行やお祭り、ホームパーティーといったイベントの買い物を子どもに任せることも、マネー教育として効果的だそう。予算やルールを決めて、ホームパーティー用の飾り付けの買い物を頼んだり、旅行用のおやつの買い物を頼んだりしてみましょう。金融庁らで組織される金融経済教育推進会議は、「小学生で最低限身につけるべき金融リテラシー」として、「必要なものと欲しいものを区別し、計画を立てて買い物ができる」「お金の役割、勤労、生活への備えを理解し、貯蓄する態度を身に付ける」「お金の貸し借りをはじめとする金融トラブルを知り、調べて商品を選択する。困った時は相談する」を挙げています。予算内で満足できるようによく考えて、時には親に相談しながら買い物をする「イベントの買い物」は、これらの金融リテラシーを身につけるのにぴったりなのです。 ***子どものうちに正しい金銭感覚を身につけることは、将来の「稼ぐ力」や自立にもつながります。子どもの将来のためにも、マネー教育について今一度考えてみてはいかがでしょうか。文/田口るい(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「子どもにお金はまだ早い」ではなぜダメなのか。マネー教育不足はこんなにも危険だ酒井レオ(2019), 『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』, アスコム.プレジデントオンライン|毎月小遣いをもらう子供はいずれ”社畜”になるマネー現代|わが子が将来お金に困らなくなる「おこづかいのあげ方」とは?ベネッセ教育情報サイト|小学生のお金教育は「定額のおこづかい」「イベント」「お手伝い」で磨こう
2019年12月25日文・レシピ写真/栄養士・幼児食インストラクター笠井奈津子構成/岩川 悟子どもの発達過程において、食の影響は計り知れないはじめまして、栄養士・幼児食インストラクターの笠井奈津子です。「子どもの好き嫌いが多いのは、わたしの料理が下手だからですよね?」「子どもがよく風邪をひくのは、栄養が足りていないのでしょうか?」「普段の生活で落ち着きがないのは、食事が乱れているからでしょうか?」わたしのところには、子どもの食に悩むお母さんたちがたくさん相談にきます。言うまでもなく、子どもの体と脳は食べたものでつくられます。食事から摂取する栄養は、間違いなく子どもの体と脳の発達を担うもの。それが十分にわかっているから、お母さんたちは日々の食事づくりに悩みます。せっかくつくったごはんを食べてもらえなくてイライラしたり、子ども優先で自分の食事は後回しにしたり……なんてことは誰しもが経験していることはでないでしょうか。1児の母であるわたし自身も、もちろん経験済みです。子どもの発達の過程において、食の影響は計り知れません。集中力を上げるのも、免疫力を上げるのも、体力をつけるのも、そのベースには栄養が不可欠。ですが、ライフスタイルの変化とともに食生活が乱れているのは、いまや大人だけではありません。「高コレステロール」や「肥満」の子どもたちが増え、生活習慣病予備軍とされる子も増えています。それに、「うちの子どもは太っていないから大丈夫」とも言い切れません。日本では「痩せ」の子どもも多く、疲れやすいとか、学力が伸びないといったことの背景には、鉄が不足している可能性もあります。ここまで書いたように、食は生活の重要な一部です。でも、頑張りすぎてしまったら、お母さんたちの大事な睡眠時間や生活、仕事にも支障が出ます。最低限のポイントをおさえながら、食と生活のバランスを上手に取っていただきたいなと思います。朝ごはんをルーティン化することも一手たとえば、今回のテーマとなる朝ごはんがそう。「毎日同じものではいけない」と頑張っていたり、それに疲れ「もうパンと牛乳だけでいいや……」となったりしていませんか?書店に行けば、朝ごはんの内容が書かれたものだけでもたくさんのレシピ本があります。もちろんインターネット上にも情報があふれていますよね。選択肢が多いぶん、朝ごはんですら頭を悩ませてしまうもの。でも、料理は「つくる時間」だけではなく、「献立を考える」「買い物をする」という工程にも時間がかかります。ですから、時間との戦いになる朝は、思い切ってルーティン化するのもひとつの手ですよ。我が家のルーティンは次のようなものです。〈和食の場合〉ごはん+味噌汁+納豆/鮭/しらす/卵料理(単品もしくは組み合わせ)+温野菜+果物〈洋食の場合〉食パン+卵料理(チーズ、ソーセージ、ヨーグルトなどはその日次第)+温野菜+果物+牛乳ポイントは、朝も必ずタンパク質を摂取すること。「脳へのエネルギー補給で炭水化物をなにかしら食べさせればOK」と思われがちですが、朝からしっかり体温を上げるために、または、筋肉をつくる、鉄の大きな補給源としてもタンパク質が必要だからです。朝は忙しくてパンかおにぎりの二択という方は、ツナ缶を常備しておいて、パンの上にチーズと一緒にのせてトーストしたり、前夜にゆで卵を仕込んでおいたりして、なにかしらタンパク質を足すといいでしょう。朝から野菜もしっかりとれるとベストですが、子どもが小さいと朝は特に気分のムラがあって思うように食べ進めてくれないこともあるはずです。お味噌汁に入れたらなんでも食べてくれるという場合は、メインになるくらい具沢山にするといいでしょうし、ビタミン補給は果物を食べれば良しというくらいの気構えでもいいと思います。また、朝の洗い物があまり増えないように、納豆は深みのあるカップ入りのものにして廃棄しやすくしたり、魚はくっつかないシートを敷いて焼いたりと、できるだけ手間を省く導線を整えることもポイントです。ルーティンになると完成形がわかっているので、夫や子どもに盛り付けや配膳をお願いするということもしやすくなります。「ダメなものはダメ」と言える勇気も必要日々の食事(栄養)と同じくらい大事なのは、大人になったときに困らない食習慣をつくることです。将来、「お腹が満たされればなんでもいい」「お菓子を食事代わりにする」なんてことにならないように、子どもたちが食への興味関心を持てるような食事時間も大切です。そのためには、「急かしたり怒ったりしながら食べさせる」「ひとりで食べさせる」「朝から殺気だって支度をする」というような「食卓の戦場化」は避けたいものです。そして、子どもが将来ダイエットなどで悩まないように、食事と飲み物・嗜好品には一線をひきましょう。たとえば、「バターやジャムを毎朝のパンに添えるのは控える」「ジュースを買い置きしない」などです。食が細いと親は心配になって、パンをお菓子みたいに食べやすくアレンジしたり、せめてジュースや牛乳くらい飲ませようとしたりしがちですが、それで満たされてしまって食事をおろそかにするというパターンに陥っている子も少なからずいます。これでは栄養不足。子どもが本来持っている力を発揮できないばかりか、血糖値を上げようとアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されることで興奮したり、感情コントロールが難しくなったりします。とはいえ、いきなり食事量を増やしたり、内容を思いっ切り変えたりというのも難しいもの。まずは、今回ご紹介するレシピのように、甘いだけのパンから、食事パンへの移行をはじめましょう。甘い朝食や夕食前のお菓子など、大人になったときに困る食習慣をつくってしまうことは避けるべき。おやつの時間以外にもおやつを欲しがるようになると、結果として食事量そのものが減ってしまうものです。「お菓子を食べるからごはんが食べられなくなるのよ!」などと怒るよりも前に、そうならなくていい環境を親が率先してつくってあげましょう。そして、要求に対して、「ダメなものはダメ」とはっきり言っていいと思います。子どもが小学生くらいになると、「パパが食べないから僕(わたし)も食べない」などと親の食べ方を真似するようになります。ダイエット目的などで朝ごはんを抜かれる方もいらっしゃると思いますが、朝ごはんを含めて3度の食事を規則正しくとることは、1日の血糖値を安定させて、太りにくい体や集中できるコンディションをつくります。子どもが元気に体を動かして遊び、または勉強にも集中できるように、ぜひご家族で朝ごはんを見直してみてください。レシピ◆のせて焼くだけ!和風チーズトースト【材料】全粒粉パン1枚スライスチーズ1枚海苔適宜しらす適宜ごま適宜【作り方】パンにそのほかの食材を好きな順に重ね、いつも通りトーストしたらできあがり【主な食材に含まれる栄養素】全粒粉パン……糖質をエネルギーにかえるために欠かせないビタミンB1を通常の白いパンより多く含むスライスチーズ……カルシウムやビタミンAの補給もできるタンパク源海苔……不足しがちな食物繊維を手軽に補給しらす……カルシウムの吸収を助けるビタミンDも多く含むごま……血中コレステロールの上昇をおさえる不飽和脂肪酸を多く含む■ 栄養士・幼児食インストラクター 笠井奈津子さん 連載記事一覧第1回:子どもが食べやすく、親の準備もしやすい。勉強に集中できる「良質な朝ごはん」のつくり方第2回:“タンパク質不足”に要注意。子どもの頭をよくしてくれる、実は身近な「ブレインフード」(※近日公開)第3回:脳を発達させる食材といえば、やっぱりコレ!苦手な子でも食べやすくなる、魚の調理法(※近日公開)第4回:「子どもの集中力がない」それ、おやつのせいかも?甘いお菓子が脳に良くない理由とは(※近日公開)
2019年12月25日国が変われば教育制度も変わり、通知表も異なります。結果よりも努力を評価したり、人間力を重視したり、積極性を称えたり、そもそも評価しなかったり……!?そこで今回は、いろんな国の「通知表」にフォーカスして、各国の評価基準やユニークな点を紹介します。まずは、日本の通知表事情から。進化する日本の通知表教育研究家で、家庭教師歴が40年を超える西村則康さんによれば、現在(2019年時点)の日本の小学校の通知表には、次の傾向があるそうです。1年生の1学期は差をつけない1年生の2学期から「よくできる・できる・もう少し」の3段階に段階評価はせず、児童のいい部分を書きこむ場合もある西村さんいわく、以前は「テストの点数が成績に直結」していましたが、今では児童の行動を先生が観察したうえで、評価をつけるかたちに変わってきているとのこと。また、熊本県熊本市立白川小学校教諭の大久保弘子さんによれば、日本の小学校1年生の通知表の狙いや評価法は次のようなものです。【通知表の目的】目標をどれだけ達成できたか知ってもらう(今後の成長へとつなげる)こと。【評価の方法】多面的に評価(発言・行動・意欲・ノート・思い・工夫・表現・テスト・家庭学習への取り組みなど)。他者との比較ではなく、ひとりひとりの達成状況を評価(※)。そして大久保さんは、保護者が通知表を見る際は、「子どもができるようになったことや頑張ったことは褒め、改善点は励ます材料にするとよい」といいます。(※)文部科学省の資料によると、2000年以降は児童生徒の評価が「集団に準拠した評価(相対評価・集団のなかでどう位置づけられるか)」から、「目標に準拠した評価(絶対評価・設定された目標を達成できたかどうか)」に改められている。日本も、昔の1~5段階評価からだいぶ様子が変わりましたが、世界にはまだまだ驚くような通知表があります。ニュージーランドの通知表:努力を評価オンライン英会話レッスンを手がける「ほうかごEnglish」代表で、ニュージーランド・オークランド在住の奥村優子さんによれば、ニュージーランドの小学校1年生の科目は、「Reading(読む)」「Writing(書く)」「Maths(算数)」の3つだけ。通知表には、各科目ごとに、次の3段階で評価が記されています。Of Concern(懸念される)On track to meet standard(標準を満たすべく順調に進んでいる)Already meeting standard(すでに標準を満たしている)なかには、学びのヒントや注意点のほか、たとえば子どもが日常生活で楽しく算数と接することができるよう、「一緒に買いものをして値段を見てみましょう」などと、保護者にアドバイスを書いてくれる先生もいるそう。また、いかに「Effort(努力)」したかを、各科目ごとに以下5段階で評価する欄もあります。Of Concern(懸念される)Needs More(もっと頑張ろう)Satisfactory(良好)Very Good(とても良い)Out Standing(とびぬけている)子育ち研究家でライターの長岡真意子さんも、結果に注目するより、子どもの努力を認めてあげるほうが「次はがんばろう!」という気持ちにつながると説いています。ニュージーランドの通知表は、親と子ども両方の意欲を高めてくれそうですね。オランダの通知表:人間力を評価『世界一幸せな子どもに親がしていること』の共著者であるミッシェル・ハッチソンさんは、モンテッソーリ教育(自発的な活動を促して成長させる教育)を行なうオランダの小学校に息子を入学させたそうです。そこで初めて通知表をもらったとき、大きなショックを受けたのだとか。通知表のなかに、イギリス生まれのハッチソンさんがよく知る「10段階評価」や「ABC評価」がなく、自分の子どもがクラスのなかで優秀なのか下位なのか明確にされていなかったからです。記されていたのは、社交能力や個性に重きを置いた、以下5項目に対する評価だったそう。一般的な態度環境に対する配慮先生との関係性ほかの子どもとの関係性勉強に対する態度ハッチソンさんによれば、モンテッソーリ教育の学校のみならず、オランダの主な学校では、こうした人間力を評価するような項目を使っているとのことです。ただし、4歳の最年少学年(Groep1)やすぐ上(Groep2)の場合は、評価項目自体がない場合もあるようです。そう述べるのは、オランダ企業でクリエイティブディレクションなどを行なう吉田和充さん。吉田さんによれば、オランダの小学校の通知表は、4歳で小学校に入学してからの記録がずっと残されている分厚いバインダーなのだとか。そのなかには、担任の先生からの細やかな総評のほか、子ども自身のコメントも書かれているそうです。子どものコメントは、仲の良い友だち、コミュニケーション、好きな活動や遊びなどについて。また、評価は「何段階」と表現しない絶対評価で行なわれ、個々に設定された目標(基準)に対して上であったか下であったか(※吉田さんは“平均”と表現)、前回からどのくらい伸びたか、といった内容が記されているそうです。つまりオランダの小学校は、学業的に優れた子どもというよりも、人間力の高い子ども、かつ自律的に成長しようとする子どもを育てようとしているわけです。ユニセフが2013年に発表した「子どもの幸福度調査」では、オランダが第1位となりました。なんだかその結果に納得してしまう、心の知能指数(EQ)が高まりそうなオランダの通知表です。アメリカの通知表:積極性が評価されるアメリカ在住の日本人の子どもたちへ教育サポートを行なう在米現地教育コンサルタント、高橋純子さんによると、アメリカの通知表はレポートカードと呼ばれるもので、地域や学校によってフォーマットが異なるそうです。評価対象となるのは、国語や算数といった教科だけでなく、協調性ルール取り組む姿勢解決力持続力応用力――などもあるそう。それらに対し、1~5(もしくは4)、A~Fの文字、あるいは Excellent、Good、Satisfactory、Needs improvement、Unsatisfactory の頭文字をとって評価をつけます。加えて先生が、子どもの良い部分や努力が必要な部分などを書いてくれるそうです。ちなみに、開成学園の校長・柳沢幸雄さんによれば、アメリカの小学校で通知表に「He is quiet in the class(彼はクラスで静かです)」と書かれていたら要注意なのだそう。日本人の感覚だと「大人しくていい子だと褒められている」と思ってしまいそうですが、じつは「知的刺激に反応していない」ことを意味しているのだとか。柳沢さんはアメリカで子育てをした際に、意見を言ったら加点、レポートを頑張ったら加点といった、アメリカの加点主義を実感したといいます。これが、チャンスさえあれば自分の意見を述べるアメリカ人の根源だと同氏は述べています。通知表の評価項目からもわかるように、アメリカでは、小学校から自分で考え行動できているかどうか、しっかりと自己主張できているかどうかが重視されているようです。デンマークの通知表:評価してはいけない!?最後は、北欧の代表的な福祉国家として知られるデンマークの通知表です。文教大学教授の太田和敬さんによれば、デンマークの義務教育は9年間。一般的には小学校と中学校が一緒になっている学校で行なわれますが、子どもを就学させずに家庭で教育することも認められています。もちろん児童の学力などはその都度先生らによって確認され、教育に生かされているとのことですが、じつは法律によって7年生までは試験を行なうことが禁じられており、通知表も存在しないそうです。8年生からやっと13段階の絶対評価で、成績がつけられるようになるとのこと。ただし、それも点数化された通知表ではないのだとか。しかし、9年間の義務教育を終える時点で、就学・家庭教育関係なく学力テストを受け、義務教育修了の認定を獲得しなければならないのだそう。つまり、試験がなくても、点数化された通知表がなくても、学びを蓄積していく必要があるわけです。太田さんは、日本の受験体制や評価制度が、日本の子どもを「勉強嫌い」にしていると述べます。一方で、受験や評価がほとんどないデンマーク人は、国際的に見てもかなりの勉強好きなのだとか。2019年版の「世界競争力ランキング」では、日本が30位であるのに対し、デンマークは8位。「政治汚職度調査(クリーンな政治が行なわれているかどうか)」や「生活満足度調査」においても、日本とは違いデンマークは常にトップか上位です。評価制度がある日本の世界的な評価が低く、評価制度をおおむね排除したデンマークの世界的な評価が高い――何とも興味深く、皮肉な事実です。***ニュージーランド、オランダ、アメリカ、デンマークの通知表事情を紹介しました。個人の力で教育制度を変えることはできませんが、各国の “いいとこどり” はできるはず。子どもが通知表を持ち帰ったとき、「そういえばあの国は、努力を評価していたな……」などと思い出し、子どもに声をかけてみてくださいね。(参考)Forbes JAPAN|小学校の評価、親はどう受け止めたらいいのかベテラン家庭教師に聞くみんなの教育技術(小学館)|1年生 はじめての通知表 子どもと保護者が喜び合えるものにしよう!文部科学省|教育課程部会総則・評価特別部会|資料6-2学習評価に関する資料Glolea![グローリア]|子連れニュージーランド移住日記 子どもの通知表All About|子供の褒め方5つのNG例とは?リナ・マエ・アコスタ著, ミッシェル・ハッチソン著, 吉見・ホフストラ・真紀子訳(2018),『世界一幸せな子どもに親がしていること』,日経BP.日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)|先進国における子どもの幸福度 日本との比較特別編集版 2013年12月こどもまなび☆ラボ|モンテッソーリ教育とシュタイナー教育の違いは?理念と方法論を徹底比較FINDERS|「通知表」が変われば教育が変わる?オランダの通知表に見る世界一子どもが幸せな理由【連載】オランダ発スロージャーナリズム(11)リダックくらぶ|第3回「成績表の評価の捉え方について」浜田宏一著(2015),『日米の教育の違いから見えた グローバル・エリートの条件 何が「本物の人材」を生むのか?』,PHP研究所.新興出版社啓林館|CS研レポート Vol.52諸外国の教育評価Sustainable Japan|【国際】IMD世界競争力ランキング2019、首位シンガポール。日本は30位で凋落止まらず
2019年12月24日私たちはよく、優秀な人に対してひとくくりに「頭がいい」と言います。頭の良さとは一般的に「テストの点数がいい」「偏差値が高い学校に通っている」といった、目に見えるかたちで表されることが多いのではないでしょうか。しかし、本当の意味で「頭がいい」とは、学校の成績だけでは判断できないものなのです。今回は専門家の見解をもとに、“頭がいい子ってどんな子?”というテーマでお送りします。知能が高くても“頭がいい”とは限らない!?私たちが考える「頭の良さ」は、勉強ができる=テストの点数が高い=良い学校に通っている、というイメージに集約されがちです。でも近頃は、少し違った視点で『頭がいい子』『賢い子』を見極めている専門家や教育関係者も増えてきています。脳科学者の西剛志先生もそのひとり。西先生は、“ただ知能が高い”ことを「頭がいい」としてもてはやすことに疑問を呈しています。その理由として、次のことが挙げられます。小さいうちからもてはやされ続けることで、本人が努力することを怠ってしまう。先々のことを予測しすぎて、リスクをともなうチャレンジをしないいわゆる「安定志向」になってしまう。相手が考えていることが聞く前からわかってしまったり、自分の考えを伝えても理解してもらえないだろう、などと考えたりすることで、人とコミュニケーションを取らなくなる。 いくら学校の成績が良いからといって、それだけで子どもの将来が明るくなるわけではないのです。むしろ、知能の高さだけを誇っていても、その他の能力を伸ばす努力をしなければ意味がありません。東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、「単に成績が良い子というのは、必ずどこかで限界がくる」と述べています。そういった子は、ある程度まで伸びても、そこから先は伸びにくくなる傾向があるそう。「知りたい」「学びたい」という気持ちがともなっていないため、試験が終わったとたんに無気力になってしまうこともあるといいます。このように、知能の高さだけで「頭がいい」と判断することは、何よりも子ども自身を苦しめることにもつながるのです。では、本当の意味で「頭がいい子」「賢い子」とは、いったいどのような子なのでしょうか?専門家に聞く!頭がいい子・賢い子ってどんな子?「頭がいい子・賢い子ってどんな子?」という疑問に対して、脳科学者や心理学者、教育のプロである専門家の見解をご紹介します。■知的好奇心が旺盛である前出の瀧靖之教授は、「賢い子とは?」との問いに、「自分から『知りたい』と思える知的好奇心が旺盛な子どもです」と答えています。瀧教授によると、企業のトップや仕事ができる優秀な人は、たいてい好奇心旺盛で多趣味という共通点があるそう。反対に、何事にも無関心な人は、たとえ学力が高くて地位のある役職についていても、自分で考えたり創造したりする力に欠けていることがわかっています。瀧教授は、「好きなことに一生懸命取り組んだ子は、自分で自分の力を伸ばしていくことができる」と断言します。つまり、興味があることに対して努力とも思わず夢中になることができる子は、たとえ学校の成績に反映されなくても、いずれ必ず大きく成長できるのです。■物事を論理的に考えることができる文教大学教育学部教授で小児科専門医の成田奈緒子先生は、「親はつい学校の成績だけで頭の良し悪しを判断しがちですが、日々の生活の中で前頭葉が活性化されているかなど、脳の成長を確認することが大事です」と指摘しています。ある論文では、本当の頭の良さを「前頭葉をうまく使って、もっている知識を統合したり、何通りもの場合を考えたりして、漏れのない推論をつくり上げる論理的思考力」と定義していることから、成田先生は『論理的思考力』こそが真の頭の良さにつながっているといいます。同様に『論理的思考力』の重要性を説くのは、東進ハイスクールの現代文講師として活躍し、論理的な国語術に関する著書を多く執筆している出口汪先生。出口先生は「現代は世界中のありとあらゆる情報から、自分が本当に必要なものを選び、その真偽を確かめ、将来起こる事態を予想し、その対処法を考える力が求められる」ことから、論理的に考える力が必要不可欠だと断言しています。■自分で課題を見つける粘り強さがあるマニュアル重視の時代から、急速に「創造の時代」へと変貌を遂げた現代社会。「これからは自分で課題を見つけて、独自の解決策を編み出さないといけない」と強く主張するのは、『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』(PHP研究所)の著者・上田正仁先生です。自分で課題を見つけるには、ひとつのことをじっくり考える力が必要。つまり、粘り強く考えることができる子が、これからの「賢い子」だといえるでしょう。ほとんどの人は、人から与えられた課題をこなすことに終始します。それは、課題をもらうほうがラクだと考えているから。子どもたちの中にもそういうタイプは多く、上田先生いわく「自分で考えない回路」ができてしまっているそうです。「考える回路」を強くするには、知的に興奮する経験が欠かせません。そのためにも、たくさんの挑戦と失敗を繰り返して、自分で課題を発見できるようになりましょう。■物事を多面的にとらえる柔らかい思考をもっている心理学博士の榎本博明先生は、「本当の頭のよさって?」と聞かれて、「自分なりに思考し、物事を様々な角度からとらえることができ、認知能力、非認知能力ともに高いことです」と答えています。榎本先生によると、IQに代表される認知能力を高めるためには、「認知的複雑性」を高めることが大事だそう。認知的複雑性の低い子は、矛盾した情報を前にして混乱したり、考え方の違う相手に反発したりと、ものの見方が単純です。一方、認知的複雑性の高い子は、物事を多面的にとらえられるので、総合的な判断ができ、考え方の違う相手のことも理解できます。さらに、EQと呼ばれる非認知能力の高さも求められるとのこと。非認知能力とは、粘る力や自分の感情をコントロールする力、また人の気持ちや立場に対する共感性などを指し、この能力は勉強ではなく遊びや人間関係を通して身につくといわれています。■生きるために必要な力がしっかりと身についている脳科学者の茂木健一郎先生は、学力よりも大切なのは『地頭力』だと述べています。茂木先生いわく、地頭力とは「なにかに挑戦したり、問題を解決したり、変化に対応したりという、いわば生きるために必要な力」だそう。私たちを取り巻く環境など、変化の激しい時代だからこそ、新しいことにチャレンジしたり、柔軟な発想で変化に対応する力が求められるというわけです。また茂木先生は、「地頭力を育てずして学力だけを育てようとするのは、かなりリスクの高い戦略だということは、さまざまなデータでも明らかになっている」とも述べています。地頭力を身につけるには、早いに越したことはないのです。地頭力は、好きなものをとことん突き詰める場を与えたり、探求学習をさせたりと、日常生活でも充分鍛えることができるので、ぜひ取り入れていきたいですね。本当の「頭のよさ」ってなんだろう?最後にご紹介するのは、明治大学教授の齋藤孝先生による『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』(誠文堂新光社)という一冊。この本では、一生使えるものの考え方を身につけて、“頭のよさ” を磨いていく方法を子どもたちに伝授しています。『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』齋藤孝 著/誠文堂新光社(2019)齋藤先生はこの本の中で、「どんなに勉強ができても、人としてやっていいことといけないことの判断がつかないのは、本質的なところで頭がよくない」と述べています。さらに、子どもたちが学校を出てからの人生で求められる “頭のよさ” とは「社会的適応性」であり、現実社会の中でどう適応していくかが重要だとも説いています。そのためには、自分で考えて表現できる力や、自分の現状を把握して先を読む力、断片的な知識をつなげて考える力など、「生きるために必要な力」を身につける必要があります。本書ではより詳しく、今求められている「本当の頭のよさ」について解説しているので、ぜひお子さんと一緒に読んでみましょう。きっとこれまで思い描いてきた「頭がいい子・賢い子」のイメージが大きく変わるはずですよ。***学校の成績はもちろん大事です。しかし、テストで高得点をとることばかりに気を取られ、本当に身につけなければならない力をおろそかにすると、いずれ子ども自身が自分の道を見失ってしまうかもしれません。目先の点数や評価ではなく、もっと先の長い人生を見据えて子どもたちと向き合っていけたらいいですね。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|家の中に生活感を!子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること瀧靖之(2016),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.ベネッセ 教育情報サイト|世界最先端の脳研究が解き明かした!「賢い子」の育て方とは?洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.出口汪(2015),『子どもの頭がグンと良くなる!国語の力』,水王舎.洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.PHPファミリー|頭のいい子の土台は家庭がつくる齋藤孝(2019),『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』,誠文堂新光社.
2019年12月23日うちの子は、どうして我慢ができないのかな?そう感じる親御さんは多いようです。けれど、お子さまは本当に我慢ができないのでしょうか。その我慢の先にどんな“よいこと”があるのか丁寧に説明したり、子どもの言い分にも耳を傾けたりすることで、子どもはすんなり納得してくれるかもしれませんよ。■参照コラム記事はこちら↓我慢ができない子どもは “親の愛” を試してる!?「自制心」が育つ親の言葉
2019年12月22日子どもにはしっかり勉強をしてほしい――。ほとんどの親が持つ願望だと思います。ただ、その願望は実際には空回りしてしまうことも多いもの。常日頃、多くの子どもたちと接している一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生は、「勉強にしっかり取り組む子どもにするためにも、まずは子どもが好きなことを目一杯やらせることが大切」とアドバイスをしてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)好きなことを通じて学ぶ楽しさを知ることが最重要親として、子どもに勉強の大切さを理解してほしいと願うのは当然でしょう。でも、子どもにただ「勉強は大事だよ、勉強しなさい」といったところで勉強をしてくれる子どもは、そうはいないはず。子どものときに「きちんと勉強していい大学に入ったほうがいい」なんていわれても全然ピンとこないことは、自分が子どもだった頃を想像すればすぐに理解できるのではないでしょうか。そこで大切となるのは、やはり子どもが好きなことと勉強をつなげてあげることでしょう。ゲームが好きな子どもだったら、ゲームと勉強をつなげてあげる。いまなら、ゲーム感覚でできるさまざまな勉強アプリがあります。そういったものをやらせてみるのもひとつの手ですよね。2019年にはラグビーのワールドカップが大きな話題を集めました。もし、子どもがラグビーに興味を持ったのなら、そこから勉強に展開してみるのです。たとえば、日本代表の対戦相手が南アフリカに決まったときに子どもと一緒に地図で南アフリカを探してみたり、どんな国なのかを調べたりするのです。そうするなかで、子どもが楽しみを見出してラグビーを通じて自発的にいろいろなことを調べて学びはじめることが理想的なかたちでしょう。それは、学校での勉強とは少しちがうものかもしれません。でも、いろいろなことを調べて知識が広がることを楽しいと思えることこそが、学校での勉強にも通じる学びの姿勢をかたちづくっていくはずです。勉強することの大切さなんて、大人でもわかっていない人は少なくないでしょう。そんなことを無理やり頭でわからせようとしても無理というものです。子ども自身が体験を通じて知識を得ることの楽しさを知る――そういうことが大切なのではないでしょうか。むかしとちがい、個性を問われる時代になりつつあるもちろん、子どもにきちんと勉強してほしいと思う、つい学力主義に走ってしまう保護者の気持ちもわかります。そういう親御さんの多くは、人生を学力によって勝ち抜いてきた人でしょう。だからこそ、「学力は裏切らない」という思考が強く刷り込まれ、その人たちのアイデンティティーをつくっているのです。でも、いまとむかしとは時代がちがいます。大学入試にしても、2020年には大きな改革が行われます。これまでの認知能力を問うテストではなく、その子が生きてきた人生をプレゼンテーションして推薦で入学を勝ち取るといったことも出てきます。そう考えると、それこそ子どもの好きなことをきちんと見つけて、熱中させてあげることが大切なのではないでしょうか。それは個性を伸ばすといういい方もできるはずです。そういう意味では、アスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)もひとつの個性といえます。じつは、たくさんの子どもたちと接するなかで、そういった特徴を持つ子どもこそ将来は大物になるのではないかと感じることも少なくないのです。アスペルガー症候群の子の、ひとつの遊びだけをひたすらずっと続けられるという特徴からは、学者のようななにかを突き詰めていくような仕事への適性があると考えられます。ADHDの子のいろいろなことを並行して休みなくやれる力は、経営者に必要な力といえるでしょう。もちろん、そういった特徴を持つ子どもたちの親には、大変なことがたくさんあるはずです。でも、なるべくその個性が育つ芽を摘まずに見守って伸ばしてほしいと思うのです。これからのグローバル化社会に重要となる自己肯定感さて、これからはただの学力ではなく、子どもが好きなことや個性を伸ばすべきだと述べましたが、わたしのなかで「これだけはきちんと伸ばしてあげてほしい」と思うものがあります。それは、「自己肯定感」です。いまの日本は、グローバル化や少子高齢化がどんどん進んでいます。労働力不足が叫ばれるなか、外国人とも一緒に仕事をすることがあたりまえになっていくでしょう。外国人とチームを組んで、自分が持っているものとはちがう多様な価値観を受け入れ、しっかりと仕事を成功に導いていけるのか――そういう力が求められるはずです。そうなったとき、もし自己肯定感を持てていなかったとしたら……?自分とは異なる価値観に出会って、「これはちがうんじゃないか」と思うようなこともやらなければならないとき、自分に核となる部分がないとすごくつらいのではないでしょうか。そして、その核になるものこそ、「自分は自分であっていい」という揺るぎない気持ち、すなわち自己肯定感だと思うのです。そして、その自己肯定感を育むためにも、子どもが好きなことを見つけて、それを親が認めてあげることが大切です。親としては、その好きなことが勉強になったら安心なのでしょうけれど、そうではない場合が多いでしょう。そのときも、その好きなことを目一杯やっていくことを親が認めることが、子どもの自己肯定感という人生の土台をつくることになるはずです。■一般社団法人キッズコンサルタント協会■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる【プロフィール】野上美希(のがみ・みき)1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月22日共働き世帯なら、子どもをいわゆる「学童」に通わせている家庭も多いでしょう。そんな学童について、ただ子どもを預かってもらうサービスのように考えている人もいるかもしれません。でも、民間学童であるアフタースクール久我山キッズの運営に携わる一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生は、「子どもの成長にとって、学童で過ごす時間は非常に重要」だといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)小学校で過ごす時間以上に長い放課後と長期休みをどう過ごすか一般的に、子どもが小学校で過ごす時間は年間1,200時間くらいです。一方で、子どもが主に「学童」で過ごす放課後と長期休みを合わせた時間は約1,600時間。そう考えると、この1,600時間をどのように過ごすかは、子どもの成長にとって非常に重要だといえます。しかも、小学生の時期は、自分の強みを発揮する力や自発性、主体性など、いわゆる「非認知能力」に磨きをかける時期でもあります。でも、小学校でやっている勉強はどういうものかといえば、知識を得て、教えられたことをテストで再現する認知能力を高めるというものですよね。つまり、それこそ放課後や長期休みをどのように過ごして非認知能力を高めるかがとても大切だといえるのです。とはいえ、学童とひとことでいってもさまざまなタイプがあるのが現実です。わたしたちが運営する学童では、アフタースクールという呼称を使っていますが、学童保育や放課後児童クラブと呼んでいる自治体も。また、その内容もまちまち。その中には、非認知能力を高めるためのさまざまなイベントを行なっている民間の学童もあります。視野が狭い子どもだからこそ、さまざまな経験が必要ここでは、わたしたちが運営するアフタースクールで、子どもたちがどのような活動をしているのかをご紹介しましょう。たとえば、外国人の講師を招いてその時間は英語だけを使う活動や、料理体験、科学実験、造形教室、プログラミング教室、茶道など。3、4年生くらいになると、子ども新聞をスクラップして、その記事に対して自分がどう感じたのかをみんなの前でプレゼンテーションしたり、友だち同士でディベートをしたりすることもあります。そのテーマは本当に身近なもの。たとえば、「『ドラえもん』の主人公は、のび太君かドラえもんか」というものとか(笑)。そのテーマに対して、2チームに分かれて議論をするのです。子どもは、大人に比べると視野が狭いものです。だからこそ、たくさんのさまざまな経験をする必要がある。ですから、ここで紹介したようなイベントは、なにか特別なときに行なうものではなく、「今日は科学実験、明日は造形教室」というふうに、じつは毎日行なっているものなのです。とはいっても、そういったカリキュラムで子どもたちを縛りつけているわけではありません。子どもたちがアフタースクールで過ごす時間は、それらのイベント活動をする時間、学校の宿題をやる時間、自由に過ごす時間の大きく3パターンに分けられます。その自由時間には、元気にひたすら遊び回っている子どももいれば、テラスに椅子を持ち出して風を感じながら読書をしている子どももいます。そのように、自分が快適に過ごせるようにそれぞれが工夫をしているのです。学童の縦割り社会が子どもに与えるメリットまた、学童のメリットという点でいうと、縦割りというところも大きなものだと考えています。時期によって組み合わせを変えていくのですが、いま、わたしたちのアフタースクールでは、1、2年生と5、6年生が一緒に活動するようにしています。上の子たちは、下の子に遊びを教えてお膳立てをしてくれたり、ひとりでいる下の子に話しかけてくれたりします。季節の大きなパーティーのときには、上の子たちがダンスを披露しようと考えたのですが、すると、下の子たちも「わたしたちもやりたい」といって一緒に取り組むことになりました。そういったシナジーが起きて新しいイベントが生まれることもあるのです。いまはひとりっ子がとても多いですから、年齢がちがう子ども同士のかかわりが希薄です。でも、学童でなら、年齢がちがう相手とのコミュニケーションをしっかり学ぶことができるのです。また、大事に育てられている子はわがままがいえる環境にあることも多いのですが、自分の思いが必ず通るわけではないのが実際の社会です。そういった現実を小学生のときから学べるメリットもあるでしょう。学童に限らず、もっとさまざまな経験ができる放課後の居場所が増えて、そのなかで子どもたちが生き生き、伸び伸びと過ごせるようになることが理想です。いずれにせよ、小学生のときに小学校以外で過ごす時間の大切さ、その時間をどのように過ごさせるべきかということを、保護者のみなさんにはいま一度考えてほしいと思います。■一般社団法人キッズコンサルタント協会■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる【プロフィール】野上美希(のがみ・みき)1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月21日クリスマスが近づくと、楽しみにしている子どもはもちろん、パパ・ママも「プレゼントはどうしよう」とそわそわしてしまいますよね。子どもに「今年は、サンタさんに何をお願いするの?」と聞いてみても、「どうしてサンタさんが持ってきてくれるプレゼントをママが知りたいの?」なんて不審に思われてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。また、クラスのお友だちから「本当はサンタクロースっていないんだって」などと聞いて心配になったお子さんに「ねえママ、サンタさんはいないの?」と尋ねられて答えに詰まった経験がある方も多いでしょう。「サンタさんは本当にいるの?」と聞かれたとき、私たちはどのように答えるのが正しいのでしょうか。子どもの成長にあわせた適切な答え方を、「学び」の視点から考えてみました。「サンタさんはいるの?」と聞くのは小学校低学年ごろ「サンタさんはいるの?」と聞いてくる年頃は、6歳から8歳の小学校低学年が多いよう。三重大学教育学部幼児教育講座の富田昌平教授は、子どもたちに「サンタさんに会ったことがあるか」「どこで、どんなふうにして会ったか」「そのサンタさんは本物だと思うか」「本物のサンタさんに会えると思うか」などの質問を投げかけて、その子どもがサンタクロースをどのくらい信じているかを調査しました。富田教授は、調査結果を以下のように述べています。幼稚園の年中さん、小学校1年生、3年生を対象にしたんですけれど、幼児期の子どもはサンタクロースを大体信じているんですね。小学校1年生でもほとんど信じていて、それが小学校3年生になると急に信じる子どもが減っていくという結果が出ています。(引用元:三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達※太字は筆者が施した)また、アメリカの矯正精神医学専門誌で1978年に紹介された調査によると、サンタクロースの存在を信じる子どもの割合は、4歳児で85%、6歳児で65%、8歳児で25%にまで減るのだそう。この数字は、30年以上経った現在でも、それほど変化はないと言われています。世界中の子どもたちが、6〜8歳頃にサンタの存在を疑い始めるようですが、これには子どもの発達プロセスが関係していると考えられています。この年頃の子どもは、物事を論理的に考え始めるようになります。そのため、「たった一晩で世界中の家にプレゼントを届けられるはずがない」「トナカイのそりに乗って空を飛べるわけがない」「家には煙突もないし、ましてや玄関のカギがかかっているのにどこから入ってくるんだろう」と、ファンタジーの中の矛盾点を疑問に思うようになるのです。たとえ、クラスのお友だちに「サンタさんはいないよ、お姉ちゃんに聞いたもの」と言われたとしても、お子さんがサンタを信じなくなった理由は、その言葉に感化されたというより、物事を筋道立てて考えられるようになったからと言えそうです。サンタクロースは空想上の人物ではないって知ってた?そもそも、サンタクロースは実在した人物だということをご存じですか?その起源は、3世紀後半にギリシアで生まれた司教、聖ニコラウスだと言われています。キリスト教が迫害されていた時代に教会の教えを頑なに守った聖人として、名声を得た人物です。その後13世紀に入るころには、ニコラウスは、魔法の使い手であり贈り物をくれる、子どもたちの守護聖人として知られるようになりました。現在、サンタクロースは、フィンランドに住んでいると知られていますが、この由来は1920年代にアメリカに伝わった「サンタクロースの故郷は北極である」という話にさかのぼることができます。これが次第に、北極圏のあるフィンランドのラップランドが故郷であるとされ、1927年にはフィンランド国営放送局によってラップランド東部にあるコルヴァトゥントゥリがサンタクロースの正式な住まいと宣言されるに至りました。「サンタクロースが本当にいるかどうか」という点では、「サンタクロースと呼ばれた人は本当にいた」と答えても間違いではないでしょう。ただ、「トナカイが引くそりに乗って、空を飛んでくる」とか「家の煙突から入ってくる」という話は、やはりファンタジーには違いありません。そこを問いただされたときには、どのように答えればよいのでしょうか?ひとつには、「空は飛んでこないよ」「煙突からは入ってこないよ」と正直に答えても良いのだそう。私たち大人は、子どもが嘘をつかれていたことを知ってショックを受けるのではと心配しがちですが、子どもは(やっぱりそうか。いくらサンタさんでも空は飛べないし、煙突からは入らないんだな)と納得するのだそう。むしろ、嘘を見破ったことで、ロジカル思考に自信を持つきっかけになるかもしれません。さらに、子どもたちが大きくなって高学年になるころには、わざわざ親が「サンタクロースはいないよ」と教えなくても、お友だち同士で情報共有して、サンタクロースが実際に家に来ていたわけではないことを自然な形で知るようになります。学識者が答える「サンタはいるの?」への正しい答え方そうはいっても、小学校低学年のうちに「サンタはいるの?」と聞かれたときは、どのように答えてあげたらよいのでしょうか。3人の学識者の意見をご紹介しましょう。心理学者の内藤誼人先生は、わざわざ真実を教える必要はなく、夢のある話はそのままにしておいたほうが楽しめると言います。幼いうちから現実の厳しさを教えすぎると、かえって疑り深い大人に成長する可能性があるのだそう。「例え後々サンタさんが実はお父さんだったとバレるとしても、サンタさんはいないと告げてしまうのではなく、夢を与えた方がいいと思います。ディズニーランドは、本当のことを言うと『夢の国』でも何でもないのですが、『夢の国なのだ』と思っていた方が、ずっと楽しめるのと一緒です」(引用元:教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方)教育研究家の親野智可等さんは、子どもの心理面の発達に寄り添いながら、それぞれの段階に応じた対応をすることをすすめています。同氏いわく、子どもが「サンタさんは本当にいるの?」質問してきたら、まず「あなたはどう思う?」と聞いてみるのが良いのだとか。本人が「絶対にいると思う」と答えるのであれば「ママも絶対にいると思うよ」。「いると思うけどなあ」と迷っているのであれば「ママもいると思うけどなあ」。「いないと思う」ならば「いないのかなあ」のように、対話の中で本人がどのように感じているのかを探り、本人の気持ちに同調してあげれば良いのだそう。子ども自身が少しずつ真実を悟っていくのに任せましょう。また、サンタクロースがいるかどうかを親子で話し合う様子をユーモラスに描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」の作家で経済学者の暉峻淑子さんは、「子どもはきっと『いるよ』という答えを欲しがっているんだと思います」と述べています。サンタクロースは、家族でも親戚でもない、いわば赤の他人でありながら、子どもたちの幸せを願い、プレゼントを配っている存在。暉峻さんいわく、子どもは、サンタクロースを信じることで、知らない人も自分の幸せを願い、愛してくれているという社会の善意を感じ取ることができるのだそう。***実際に「サンタさんはいるの?」と聞かれた親御さんのなかには、「サンタさんはいるけれど、一晩ですべての子どものところにプレゼントを届けられないから、パパが預かったんだよ」と答えたというアンケート結果も。子どもひとりひとりの発達段階や個性に合わせて、夢を壊さないような答えを返してあげられるといいですね。(参考)三重大Rナビ|サンタクロースからわかる子どもの想像力・ファンタジーの発達CNN|子どもがサンタを信じるのはいつまで?研究者らの報告中日新聞 オピ・リーナ|子どもに「サンタっているの?」と聞かれたらNATIONAL GEOGRAPHIC|サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまでサンタクロース村 オフィシャルサイト|サンタクロースの基礎知識ベネッセ 教育情報サイト|「サンタさん」は何歳まで?サンタクロース&クリスマスの最新事情ベネッセ教育情報サイト|「サンタクロースは本当にいるの?」と聞かれたら[教えて!親野先生]教えて!goo|サンタさんって本当にいるの?――という問いかけへの正しい答え方
2019年12月21日3歳の壁、小4の壁、13歳の壁――。子育てにはいくつもの「壁」があるといわれます。なかでも、親にとっても子どもにとっても大きな壁とされるのが、「小1の壁」。その壁をどうすればきちんと乗り越えられるのでしょうか。民間学童であるアフタースクール久我山キッズの運営に携わる、一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの就学と同時に親の前に立ちはだかる「小1の壁」「小1の壁」という言葉は、ケースによってさまざまな意味が含まれますが、本来の意味でいえば、子どもが小学生になると同時に親の側がさまざまなことに適応できなくなることを指します。子どもが通う場所が、厚労省管轄の福祉施設である保育所から、文科省管轄の教育施設である小学校に変わる。すると、これは幼稚園にもいえることですが、それまでは「子育てって大変ですよね。一緒に頑張りましょう」と、福祉の観点から寄り添ってくれていた保育所の対応とは大きく変わって、たとえば平日の昼間からPTAの会合に出席しなければならないために親が無理をするということも出てきます。あるいは、いわゆる「学童」に子どもを入れることができなくて、共働き世帯の親が仕事と子育てを両立させることが難しくなるということも大きな壁のひとつ。これは、学童の需要に対して供給が足りていないことが要因です。いま、保育所は増えているのですが、学童は足りていません。というのも、子どもが就学前には専業主婦をしていた親のなかで、子どもの小学校入学と同時に働こうと考える人が多いために、学童の需要は保育所以上に大きくなるからです。この問題に関しては、親自身で解決できることではありませんから、国や自治体による整備を待たなければならないところであるのが難しい点です。環境の変化により子どもがぶつかる「小1プロブレム」一方、小学生になった子ども自身にも「小1の壁」はあります。これには、一般的には「小1プロブレム」という別の名称がつけられています。たとえば、子どもが学校に慣れることができなくて授業を抜け出したり、授業に集中できなくて騒いだりして学級崩壊が起こるというようなことがその内容です。親もそうですが、子ども自身も小学校に行くことになれば、当然、自分が身を置く環境は大きく変わります。幼稚園や保育所では元気に走り回って楽しく遊んでいられたのに、いきなり授業を1日に4コマも5コマも受けることになる。もちろん、それは子どもにとって大きなストレスとなり得ます。そのストレスは、個人的にはかつてより大きくなっているのではないかと感じています。なぜなら、集団でなにかをすることに抵抗を感じる子が以前より増えているように思うからです。最近、幼稚園や保育所でも、先生が課題を出して集団で活動に取り組む保育ではなく、自由保育という子どもが主体的に遊びに取り組む保育が増えてきています。個々が好きなことに没頭できる時間がたっぷり取れる良い面がある一方で、幼児の時期に座って先生の話を聞くことに慣れていないことが、集団でなにかをすることに抵抗を感じる子どもが増加している要因のひとつであると感じています。最初は戸惑いながらも徐々に小学校の生活に慣れていく子もいれば、なかなかなじめない子がいるのも事実です。ただ、そういう子たちがうまく学校生活を営めるように支援するための方法を、学校の先生たちも勉強しているので、いずれはそのストレスも軽減されていくのかもしれません。子どもの言葉を字面通りに受け取ってはならない場合もあるとはいえ、小学生になったばかりの子どもが大きなストレスを感じていることにちがいはありません。では、子どものストレスを少しでも減らすために、親としてできることはどんなことでしょうか。わたしは、まずは子どもの不安を受け止めることを考えてほしいと思います。1年生の子どもは小学校という新しい環境のなかに身を置くのですから、当然、たくさんの不安を抱えています。また、新しい環境に身を置けば、それだけ新しい出来事を経験する。それらの不安や経験を親がしっかり聞いてあげることが大切なのだと思います。そのときに注意してほしいのは、子どもの話を字面通りに受け取ってはならない場合もあるということ。幼いときには感じたことをそのまま口に出していた子どもも、小学生くらいになれば本当のことをいわないということも出てきます。悪くいえば嘘をつくということになりますが、子どもが成長して「心配させたくない」というふうに親に気を使ってうそをつくケースもあるのです。ただ、「心配させたくない」と感じるのは、たとえば友だちと喧嘩をしたとか、子どもにとってあまりいいことではない経験をした場合が多いものです。だとしたら、親として、やはり子どもの本心をきちんと受け止めてあげるとよいでしょう。子どもの言葉をそのまま受け取るのではなく、表情やしぐさなどもしっかり観察して、その子が本当はどんなことを感じているのか、なにを求めているのか――わたしも含めて、心の奥にあるニーズにしっかり気づいてあげる親になりたいものですね。■一般社団法人キッズコンサルタント協会■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる【プロフィール】野上美希(のがみ・みき)1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月20日12月も半ばを過ぎると、日本でもクリスマスが気になり始めるのではないでしょうか。小さな子どもがいる家庭にとっては、大きなイベントですね。忙しい師走。年末のあれこれに加えて、年越しの準備に、もうひとつ加わるビッグイベントです。親はちょっと大変ですが、子どもの喜ぶ顔を見るために、えい!と頑張りたくなるものです。今日は、日本とは違うイギリスのクリスマスの風習にふれてみましょう。イギリスのクリスマスは、日本で感じるよりもずっと長く続く、大きなお祭りです。10月31日のハロウィンが終わると、すぐにクリスマスの支度が街に並び始めます。そして、クリスマスツリーは、1月の6日まで飾っておきます。サンタさんがやってきて家族でご馳走を食べるのは日本と同じですが、日本よりずっと大きなイベントなので、ちょっとびっくりするような違いがあるかもしれません。子どもから家族にクリスマスプレゼント?思いやりの心を育むイギリスではクリスマスに、子どもから家族へプレゼントをあげることがよくあります。子どもが用意するのは、自分で描いた絵や自分で作った工作の品のような、ささやかなものですが、クリスマス前のそわそわした時期に「自分が欲しいもの」だけを考えるのではなく、ほかの人にあげるものを考えるのは良い風習だと思います。上の子どもが8歳ぐらいの頃、秋口にガーデンセンターに並ぶヒヤシンスの球根を見て「買ってくれる?」とねだられたことがありました。何週間もかかりますが、寒くて暗い場所に入れて調整すればクリスマス頃に花が咲くように栽培できるというのをどこかで聞いてきて、やってみたいと思ったようです。たしかに冬になると、ヒヤシンスはきれいに飾られて店頭に並びます。店先に並ぶヒヤシンスの鉢植えは、ひとつ8ポンド(約1,100円)前後でしょうか。クリスマスから新年にかけて、室内で咲く数少ない花です。高級な鉢植えと比べて、そのお店で売っていた球根は10個で3ポンド前後(約400円)。子どものお小遣いでも十分に買える金額です。さっそく購入して、一緒に育て方を調べました。栽培容器を買うお金は彼にはなかったので、トマトソースの空き缶を綺麗に洗って使うことにしました。しばらく冷蔵庫に入れておいたあと、家のあちらこちらを歩き回って寒くて暗い場所を探し、最後に戸外の自転車小屋の隅に決めました。週に一度、芽が出ているかどうか学校に行く前に確認し、芽が出てきたら、暖かい室内の窓辺で光に当てます。ちょうどつぼみが出てきたくらいの頃が、クリスマスイブでした。空き缶には粗い麻の布をくるっと巻き、細い赤いリボンをかけました。クリスマスの日には、それは祖父母や叔母、父親への彼からのプレゼントになったのです。その年は思いがけない長丁場になりましたが、毎年、クリスマス前に我が家の子どもたちはいそいそと準備をします。自分たちだけで準備はできませんから、親の私も手伝うことになります。頼まれて一緒にクッキーを焼いたり、チャリティショップで古本や古いおもちゃを探すのにつきあったり。「これが30ペンスで、これが1ポンド99ペンスで……」と暗算するのも真剣です。植物の成長を観察したり、料理に挑戦したり、買い物に出かけて金額を計算したり。親にとってはちょっと大変ですが、子どもにとってはとてもワクワクする出来事です。他人を思いやる心が育まれ、さまざまな学びの機会も得られるイベントだと言えるでしょう。カード、リスト、感謝状。クリスマスは読み書きを練習する良い機会誕生日も同様ですが、クリスマスもまた、字を覚え始めた子どもたちにとって、たくさん文章を読んだり書いたりするためのまたとない機会です。12月に入ると、小学校では小さなクリスマスカードのやり取りが始まります。元旦まで目にすることのない日本の年賀状と違い、イギリスのクリスマスカードは12月に入ったら届き始めてもおかしくないものです。クリスマスに向けて、あちらこちらから届いたカードが何日も、部屋を飾るのです。また、イギリスでは多くの家庭で、家族とサンタクロース(ファーザー・クリスマスと呼ばれます)の両方からクリスマスプレゼントがもらえます。そして豪華なプレゼントは、サンタクロースではなく、家族からもらえることが多いのです。サンタさんが持ってくるプレゼントは、英語でストッキングフィラー(stocking filler)と言います。クリスマスの靴下、つまりストッキングに入っている小さなプレゼントのことです。サンタさんがコンピュータゲームを持ってくるようなことは、イギリスではあまりありません。そういったものはお父さんやお母さんからのプレゼントでやってきます。それでは、サンタさんはいったい何を持ってくるのでしょう。サンタさんが靴下の中に入れるのは、コインやみかん、チョコレートに小さな塗り絵、迷路、ジョークの本だったりします。それこそ靴下に入ってもおかしくないような小さなおもちゃ──たとえば、ビー玉や紙飛行機のキットが入っていることもあります。小さな子どもだと、いい匂いの消しゴムや鉛筆も定番です。年齢が上がると、女の子だったらリップクリームや素敵な匂いのシャンプー、男の子だと初めての髭剃りのセットが入っていた、なんていうこともあります。入っているのは、必ずしもお店で売っているようなものとは限りません。お菓子やサンドイッチが入っている場合もあります。クリスマスの朝、大興奮で早く起きてしまった小さな子どもたちは、サンタさんにもらったサンドイッチやみかんを食べながら、お父さんやお母さんが起きてきてクリスマスの忙しい1日が始まるまで、ストッキングの中のおもちゃで遊ぶのです。流行のおもちゃは両親や祖父母・叔父叔母からもらうこともあり、イギリスの子どもたちは、サンタクロースを信じている時期が日本の子どもよりずっと長いように思います。そして、お金は余計にかかりますが、この2段がさね、じつは思いがけない効果もあります。そもそも高価な市販のおもちゃはサンタクロースが持ってくるものではないので、クリスマスに本当にほしかったら、お父さんとお母さんときちんと話をする必要があります。「サンタさんに頼んだのに持ってきてくれなかった!」とがっかりすることはありません。そのため、お父さんやお母さんがいつでも見られるように、クリスマスの前には欲しい物のリストを作るのも、子どもたちの大事な準備のひとつです。もちろん、サンタさんからプレゼントをもらえることに変わりはありません。日本のように、サンタさんに手紙を書く子どももいます。クリスマスが終わったあとにも、大切な仕事があります。プレゼントをくれた人たちにお礼のカードを書くことです。小さなワクワクはサンタさんが持ってきますが、大興奮するようなプレゼントは家族や親戚からやってくるのです。両親からのプレゼントには必要ありませんが、おじさんやおばさん、祖父母から来たものにはちゃんとお礼をしなくてはいけません。一生懸命 “Thank you” と書くことになります。心を込めて家族にプレゼントを用意したり、欲しい物リストを作ったり、サンタさんに手紙を書いたり、親戚に感謝状を書いたり。子どもたちが何日も楽しみに待つクリスマスは、さまざまなアクティビティの宝庫なのです。
2019年12月19日共働き世帯の増加に伴って利用者が増えている「延長保育」。延長保育に子どもを預けることに対して、子どもを心配すると同時に、「申し訳ない」という気持ちを持っている親も少なくないようです。ただ、東京・久我山幼稚園の運営に携わる一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希先生は、「心配する必要も『申し訳ない』という気持ちを持つ必要もない」といいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)延長保育にもいろいろなケースがあるひとことで延長保育といっても、じつはいろいろなケースが考えられます。幼稚園で通常保育が終わるのは13時半頃ですが、保育所の場合は18時半頃。終了時刻が5時間ほどちがいますから、延長保育の時間も大きく異なります。また、延長保育を常時利用する共働き世帯もあれば、外せない用事があるときにときどき利用するというケースもあるでしょう。それぞれに対応はちがいますが、子どもに与える影響が大きいということで、ここでは幼稚園で延長保育を常時利用するケースを想定してお話しましょう。幼稚園の延長保育は通常保育が終わる13時半頃からはじまります。延長保育の時間はそこから4、5時間にもなりますから、同じ年齢の子どもでも、延長保育に預けられる子どもとそうではない子どもでは、まったくちがう毎日を送ることになります。もちろん、とくに年少など幼い子どもの場合は、延長保育を嫌がるケースもあります。13時半になると友だちはお迎えに来たママと一緒に帰るのに、自分はそこから5時間もママを待たなくてはいけない。幼い子どもなら、自分も家に帰ってママと一緒におやつを食べてほっとしたいと思って当然でしょう。そういうふうにナイーブになる子がいるのも事実です。子どもは親が考えている以上に延長保育を楽しんでいるとはいえ、子どもの順応性は親が思う以上に高いですから、それも最初だけというケースがほとんどで、たいていは慣れていきます。もちろん、園としても、子どもが楽しめるように、そしてより有意義な時間を送れるように工夫をしています。通常保育の時間には自由時間もあるとはいえ、基本的には園が決めたカリキュラムをこなしていくことが多くなるものです。子どもとしてはある程度緊張している時間といえるかもしれません。一方の延長保育はというと、時間はたっぷりあるのですから、子どもたちが自分で選んだ遊びを徹底的にやり込んだり、積み木を使ってみんなで大きな城をつくるようなダイナミックな遊びをしたりすることができるのです。ほかには、わたしが運営に携わっている久我山幼稚園の場合なら、季節のイベントも積極的に行なっています。たとえば、年長さんなら冬に向けてマフラーを編むということもします。これは、時間がたっぷりある延長保育だからできることでしょう。このような、通常保育の時間とはまったくちがう活動を経験するなかで、子どもたちは延長保育をどんどん楽しめるようになっていきます。延長保育が持ついくつものメリットまた、延長保育には延長保育だけが持つメリットがあるとわたしは考えています。たとえば、延長保育の特徴である縦割りのコミュニティーに身を置くということもそう。同い年の子どもと過ごすことの良さと、年齢のちがう子どもがいる縦割り社会で過ごすことの良さの両方を味わうことが、子どもの幅を大きく広げることになるはずですからね。また、先のマフラーをつくる例なら、自宅でマフラーを編もうとした場合には、幼い子どもならすぐに飽きてしまうかもしれません。でも、友だちが頑張っているから頑張れるということもあるのではないでしょうか。そして、友だちがつくっているマフラーがすてきに見えたら、真似したり自分で工夫をしたりすることもあるでしょう。そうして、ひとりだったら手を出さないような遊びや活動も、友だちがやっているからとやってみる。やってみて楽しかったら「もっとやってみたい」と新しいことに対する意欲を持つということにもつながるはずです。毎日早くに家に帰っていると、テレビを観たりおやつを食べたりと、ついだらだらとなにもしない時間を過ごしがちです。それはそれで子どもにとって大事な時間だとは思いますが、延長保育のなかで友だちと遊びながらさまざまな経験を得られることは、子どもにとって非常に大きな意味があるのではないでしょうか。また、通常保育と延長保育では担当する先生が変わることもメリットのひとつでしょう。子どもというのは、環境によってまったくちがった一面を見せるものです。通常保育の時間に決められたことをするのはすごく苦手なのに、延長保育の時間に自由に遊びを見つけて発展させることはすごく得意だという子どももいます。通常保育と延長保育、両方の先生に子どもの様子をヒアリングして子どものさまざまな面を知れることは、親からすれば子どもの見方が変わり、安心できるということにもつながると思います。親子一緒に過ごせる時間が短いから強い絆を築けるここまで、延長保育のメリットばかりを挙げてきましたが、もちろんデメリットもあります。ひとついえるのは、子どもが幼いほど身体的なストレスになるということ。年少など幼い子どもの場合、どうしても体力がありませんから、長い時間、家ではない場所で過ごすことは大きなストレスになります。疲れが残って、午前中に眠くなってしまったり集中力がなくなったりということがあるのです。ですが、そういうことも体が成長するにつれてなくなっていきますから、あまり心配しすぎる必要はありません。延長保育を利用している保護者の多くが、子どもを心配すると同時に、子どもに対して「申し訳ない」という気持ちを持っています。でも、子どもは親が思う以上に延長保育の時間を楽しんでいます。そしてなにより、親が「申し訳ない」なんて気持ちを持っていれば、せっかく子どもと過ごせる大切な時間もいいものにはなりづらいのではないかと思うのです。変に心配したり「申し訳ない」気持ちを持ったりするのではなく、延長保育のなかでしか味わえない経験や気持ちを、子どもからどんどん聞き出してみてください。そうすれば、一緒に過ごせる時間がたとえ短くても、あるいは短いからこそ大切な時間としてとらえられ、親子の絆をより濃密なものにできるのではないでしょうか。■一般社団法人キッズコンサルタント協会■ 一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事・野上美希先生インタビュー一覧第1回:子どもの順応性は親が思う以上に高い。「申し訳ない」という気持ちは不要です第2回:「小1の壁」を乗り越えるために――子どもの言葉の裏にある本心とは?第3回:放課後や長期休みに「非認知能力」を高めよう。学童でさまざまな経験を第4回:自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる【プロフィール】野上美希(のがみ・みき)1977年3月21日、千葉県出身。一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事。東北大学工学部卒業後、日本総合研究所にてコンサルティング、事業企画、採用、営業と多岐にわたる経験をした後、株式会社マイナビで人材紹介事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメント。その後、自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わり、産後母の孤独を解消すべく、子育てひろば開設を皮切りに、働く母の支援のため、幼児教育をベースとした民間学童や6つの認可保育園を開設。また、民間学童指導員資格であるキッズコンサルタント資格を認定する一般社団法人キッズコンサルタント協会を立ち上げ、代表理事を務めている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月19日親であれば、誰もが子どもには幸せになってほしいと願っています。では、その幸せとはどんなことであり、どうすれば子どもは幸せになれるのでしょうか。イタリア生まれの教育手法「レッジョ・エミリア・アプローチ」をベースとするインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」の伊原尚郎理事長は、「幸せは他者とのかかわりのなかでこそ生まれる」といいます。その真意を聞く前に、東京チルドレンズガーデンの1日のスケジュールについての話からはじめてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)決まった1日のスケジュールは存在しない「レッジョ・エミリア・アプローチ」では、誰かが指示をしたり目標を与えたりするのではなく、基本的に子どものなかから湧き出る興味に従って活動します。ということは、決まった1日のスケジュールもないということ。当校のホームページには、登園から降園までのスケジュールを掲載していますが、それも便宜上のものであり、だいたいの目安でしかありません。決まっているのは、8:30の登園時間くらいのものでしょうか。もちろん、なにをやるかは子どもたち次第。たとえば、明日(取材日の翌日)は、わたしにはあるひとりの子どもとの約束があります。それは、電車に乗ってふたりで上野の博物館に行くこと。いま、その子がいちばん興味を持っているのが博物館だからです。帰りの予定も、「だいたいお昼頃には帰ってこようかな」くらいのものです。理想は、子どもたちみんなが自分なりの課題を持った独立系研究者のようになることです。朝、登園してきて「おはようございます」といったら、「それでは、研究をはじめます」という感じで、なにかをやらされるのではなく、自分の興味を持っていることに没頭してほしい。そして、わたしたちの役割は子どもの研究のサポートです。自分の子どもがアインシュタインだったとしたら、研究中の彼に向かって「はい、時間がきたから研究はやめて散歩に行きましょう」なんてことをいう人はいないでしょう?やることは、「なにか必要なものはある?」と聞いて、研究のサポートをすることしかありません。子どもを信じることが、子どもの本来の力を引き出すこの自由度の高さは、GoogleやYahoo! などに見られるフリーアドレスのオフィスに通じるものがあると思います。フリーアドレスは、チームのメンバーの誰もが自発的に仕事をすることが前提となっているシステムです。「ちょっとカフェで仕事をしてきます」というメンバーに対して、マネジャーが「あいつはちゃんと仕事をしているのか」と考えていたら成立しません。同じように、「子どもにはすごい能力がある」という観点に立って子どもたちを信じることこそ、子どもが本来持っている能力を引き出し、伸ばすことになるのです。でも、残念ながら多くの親は子どもに対して「この子はなにも知らないから、わたしが教えてあげなければならない」と思い込んでいます。少し話はそれますが、このことの要因のひとつは、「教育」という言葉そのものだとわたしは考えています。教育を意味する英語の「education」の語源は「educe」。本来、その意味は「引き出す」です。ところが、福沢諭吉は、「education」を「教え育てる」として「教育」と訳してしまった。このことに対して、福沢諭吉自身ものちに「誤訳だった」と振り返っています。でも、日本では「教育」という言葉が浸透してしまいました。漢字は表意文字ですから、わたしたち日本人は漢字を見るだけで意味を受け取ります。そうして、「education」は、本来の「力を引き出す」ではなく「教え育てる」という意味として日本人には感じられるようになりました。このことの影響は非常に大きいとわたしは見ています。親であるみなさんには、「子どもは教えてあげなければならない存在だ」という思い込みをもう一度見直してほしいのです。もともと有能な子どもが集まれば、素晴らしいものができる!話を戻しましょう。わたしの理想は子どもたちが独立系研究者のようになることだと述べました。でもそれは、自分勝手な人間になるということではありません。優れた研究者――つまり子どもたちが集まれば、それぞれが持っている力を結集して思いもよらない大きな成果を生むということもあります。たとえば、絵を描く場面もそうです。子どもたちが絵を描くとき、一般的な幼稚園では、子どもたちそれぞれに1枚の紙を用意します。一方、わたしたちの学校では、大きな紙にみんなで絵を描くのです。すると、友だちの描き方を見て「あれ、いいな」と思った子が、その描き方を真似するということもあります。一方、真似された子も別の子の絵を見て、「あの色ってどうやってつくっているんだろう」なんて思って真似しようとする。こうして、互いに影響を与えたり与えられたりしながら、それぞれが学び、壮大なコラボレーションともいえる絵ができ上がります。そして、それこそが人間の社会にとって大切なことです。他人を出し抜いた誰かひとりがお金持ちになればいいということではないでしょう?わたしは、子どもたちみんながそれぞれに自分なりの幸せを手にしてほしいと願っています。その幸せとは、愛する人と出会っていい家庭を築くことかもしれないし、気の合う同僚とやりがいのある仕事をすることかもしれません。いずれにせよ、幸せというものの多くは、他者とのかかわりのなかで生まれるものであるはずです。そして、少なくともわたしたちの学校を巣立った子どもたちなら、そういう幸せな人間になってくれるのではないかという期待を抱いているのです。■東京チルドレンズガーデン■ 東京チルドレンズガーデン・伊原尚郎理事長インタビュー一覧第1回:いまの時代にマッチする「レッジョ・エミリア・アプローチ」の教育第2回:もしも子どもがアインシュタインだったら?子どもに対して親が取るべき姿勢第3回:グローバルな人間に――生まれ育った地域や国を知る「レッジョ・エミリア・アプローチ」第4回:信じることで本来の力を引き出す。すごい能力を持つ子どもたち【プロフィール】伊原尚郎(いはら・ひさお)東京チルドレンズガーデン理事長、共同創設者。米国ニューヨーク州立大学メディアアート科修士課程修了。ビデオアーティストとしてニューヨークで多方面に活躍。約20年の在米ののち帰国し、幼稚園の園長に就任。国際幼児教育の理解を深め、クリエイティブ思考を育てるための研究に従事。2017年に共同創設者の西ヶ谷アンとともにレッジョ・エミリア・アプローチをベースとするインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」をオープンし、理事長に就任。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月18日イタリアで生まれ、欧米はもちろん日本でも注目度が上がっている教育手法「レッジョ・エミリア・アプローチ」。その教育手法をベースとしたインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」の伊原尚郎理事長は、「子どもをグローバルな人間に育てるためにも、地域を大事にすることが大切」と語ります。一般的な幼稚園や学校にはいない、レッジョ・エミリア・アプローチの学校に特徴的な専門的な先生の存在意義と併せて、その言葉の真意を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもたちの活動や考え方を広げる「アトリエリスタ」当校のような「レッジョ・エミリア・アプローチ」の学校には、一般の先生とは別に、ちょっと特殊な専門の先生がかかわるという特徴があります。そのひとつは、「アトリエリスタ」と呼ばれる先生。言葉の響きからなんとなく想像できるかもしれませんが、アトリエリスタは芸術の先生です。とはいっても、一般的な学校における美術の教科を担当する先生とはちがって、絵を専門にしている人もいれば、音楽家もいますしダンサーのアトリエリスタもいます。アトリエリスタがかかわる目的は、学校教育の幅を広げるということ。いくらレッジョ・エミリアが通常の教育とはちがうといっても、教育というものをバックグラウンドにしている先生だけだった場合、どうしてもその考え方は狭まってしまいます。そこにアトリエリスタという芸術をバックグラウンドにした異質の人間を入れることで化学反応を起こし、学校における活動や考え方を広げようというわけです。つまり、芸術の先生だといっても、アトリエリスタは子どもたちに絵の描き方を手取り足取り教えたり、楽器の演奏やダンスを教えたりするわけではありません。あくまでも、子どもたちを一般の先生とはちがった芸術家らしい視点で見て、子どもたちの活動や考え方の幅を広げていくための存在なのです。子どもの活動や考え方に意味づけをする「ペダゴジスタ」子どもたちにとって、一般の先生に加えてアトリエリスタがいることは、ビジネスパーソンにたとえれば、まわりにいろいろな同僚がいるような状況といえます。ひとつの考えに凝り固まった同僚ばかりがいるような状態だと、本人もその考えに染まってしまいますよね。でも、タイプが異なるいろいろな同僚がいたらどうでしょうか。ある仕事に対して、「それ、いいね!」といってくれる同僚もいれば、「こういう考え方もあるんじゃない?」と指摘してくれる別の同僚もいる。そういう状況なら、本人の自分の仕事に対する視点や考え方は大きく広がっていくはずです。ただ、アトリエリスタはあくまでも芸術家。そのため、教育の理論にはそれほど詳しくないという場合もあります。そこで活躍するのが、また別の専門的な先生である「ペダゴジスタ」です。ペダゴジスタは教育理論の専門家です。アトリエリスタによって広がった活動も、そのままではぼんやりしたものになるということもある。そこで、それらの活動に、ペダゴジスタが教育的な意味づけをするのです。アトリエリスタやペダゴジスタは、一般企業におけるアドバイザーやコンサルタントのようなものといえます。なにかのプロジェクトを進めるというとき、メンバーがその企業で育った社員ばかりでは、同質すぎて目新しい内容にすることはそう簡単ではありません。そこで、ちがった観点でものごとを見られるアドバイザーやコンサルタントをメンバーに入れるということがありますよね。こうして、子どもたちの活動やその見方を広げ、一方できちんと意味づけをしていく。子どもたちにとっても、一般の先生にとっても、アトリエリスタとペダゴジスタの存在は大きな意味があるものなのです。本場では先生と保護者がワインを飲みながら語り合うこのように、さまざまな人とかかわるということもレッジョ・エミリアの特徴です。そのかかわりは、学校の外にも向かいます。たとえば、保護者とのかかわりもそう。一般的な幼稚園やそれこそ保育所には「子どもは守られるべき存在」という認識があり、子どもの安全を確保していくというような、「サービスを提供する」という考え方があります。でも、レッジョ・エミリアには「子どもたちはものすごく有能な存在だ」という認識があるのです。そして、どうすれば「この有能な人のサポートをできるのか」と、保護者と一緒に考えます。もちろん、サービスを提供する場合と比べれば、保護者とのかかわりは濃いものになります。本場のイタリアでは、夜の9時くらいから深夜2時くらいまで、先生と保護者たちがワインを飲みながら語り合うということもあるようです。しかも、その場には地域の代表も同席している。というのも、レッジョ・エミリアは基本的にローカルの教育だからです。そういう意味では、わたしたちの学校にも「どんどん地域に出て行く」という特徴があります。たとえば、人がたくさんいる状況に子どもが興味を持ったなら、学校を飛び出して雑踏を観察しに行くわけです。いま、教育現場では「グローバルな人間を育てることが重要だ」と盛んに叫ばれていますが、ただ英語を学んでもグローバルな人間になれるわけではありません。そうではなくて、まずは自らが生まれ育った地域や国のことをよく知る必要があります。そうでなければ、外の世界とのさまざまなちがいを感じることもできないのですから、グローバルな人間になれるわけもないのです。■東京チルドレンズガーデン■ 東京チルドレンズガーデン・伊原尚郎理事長インタビュー一覧第1回:いまの時代にマッチする「レッジョ・エミリア・アプローチ」の教育第2回:もしも子どもがアインシュタインだったら?子どもに対して親が取るべき姿勢第3回:グローバルな人間に――生まれ育った地域や国を知る「レッジョ・エミリア・アプローチ」第4回:信じることで本来の力を引き出す。すごい能力を持つ子どもたち【プロフィール】伊原尚郎(いはら・ひさお)東京チルドレンズガーデン理事長、共同創設者。米国ニューヨーク州立大学メディアアート科修士課程修了。ビデオアーティストとしてニューヨークで多方面に活躍。約20年の在米ののち帰国し、幼稚園の園長に就任。国際幼児教育の理解を深め、クリエイティブ思考を育てるための研究に従事。2017年に共同創設者の西ヶ谷アンとともにレッジョ・エミリア・アプローチをベースとするインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」をオープンし、理事長に就任。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月17日ただでさえ忙しい朝。親は自分の準備もそこそこに、子どもを起こして朝食を用意したり、身支度を手伝ったりと、毎日めまぐるしく過ごしています。それでも、そんな親の気持ちなどおかまいなしに、子どもはテキパキ準備してくれず、ついイライラして叱ってしまうことも。今回は、子どもの朝の準備が遅くて困っている親御さんに向けて、いくつかの解決法をご紹介します。朝忙しいのは “大人の都合”ひと言で“朝の準備が遅い”と言っても、その原因はさまざまです。スッキリ目覚めることができず、ぼ~っとした頭でゆっくり朝ごはんを食べる、何度注意されてもなかなか歯を磨こうとしない、自分で洋服を選びたがるのに決めるまでに時間がかかる……。細かく分類すると、各家庭それぞれのお子さんによって「朝の困りごと」に違いがあるのではないでしょうか。しかしそれは、子どもだけが原因とは限りません。たとえば親御さんも朝の時間に余裕がなく、自分自身が焦るあまり、子どもがモタモタ準備しているように見えたり、「せっかく朝ごはんを作ったのに全然食べてくれない」「言った通りに動いてくれない」など、自分のペースを乱されたように感じたりして勝手にイライラしていませんか?心理学とコーチングを使った独自のアプローチ法を提唱している東ちひろさんは、「“朝が忙しい” のは『大人の都合』です」と断言しています。つい忘れてしまいがちですが、たとえ毎朝のことであっても、小さな子どもが大人と同じペースで物事をこなすのは難しいはず。東さんは、「子どもはなんでも大人の2~3倍は時間がかかる、と心得るべき」といいます。それを踏まえたうえで、朝の時間の使い方を見直してみましょう。子どもの行動は、親のちょっとした工夫で劇的に変わることもあります。まずは「こうあるべき」「ここまでやったんだから応えてほしい」といった理想や期待を捨てて、わが子がなぜ朝の準備に時間がかかるのか、という問題を冷静に分析してみましょう。その結果、具体的な解決策や効果的な親の対応策が見えてくるはずです。朝の悩み別・対策と解決法子どもの朝時間にまつわる悩みは、大きく3つに分けられるのではないでしょうか。ここでは、具体的な解決策をいくつか提案していきます。1.朝ごはんを食べるのに時間がかかる!1日を元気いっぱいに過ごすためにも、朝ごはんは毎日しっかり食べてほしいですよね。文部科学省の学力調査では、「朝ごはんを毎日食べている子どもほど学力が高くなる」という結果が出ています。また、東北大学加齢医学研究所と農林水産省が共同で行なった調査によると、「『朝ごはんをほぼ毎日とり続けた人』たちは高収入層に固まりやすく、『朝ごはんを毎日は食べていなかった人』たちは低収入層に固まりやすい」ということが判明したそう。このように、朝ごはんを食べる習慣は、子どもの将来にまで影響及ぼすのです。そう考えると、ますます朝食の重要性を実感しますよね。株式会社明治の管理栄養士・高梨麗さんは、「子どもが朝食欲がないのは、前日の夜の過ごし方や夕食の内容などが影響しています」と指摘しています。夜更かしをしたり、遅い時間に消化に悪い油っぽい食事を摂っていたりすると、朝になっても食欲がわきません。文教大学教育学部教授で小児科専門医の成田奈緒子先生は、「『親が用意するから食べる』ではなく、『自発的に朝食を食べること』が大事」だと述べています。そのためには、まず子どもが食べやすいもの・好きなものを楽しく食べられる工夫が必要です。「ごはんがいい?パンがいい?」「パンに塗るのはバターがいい?ジャムがいい?」と、子どものリクエストを聞いてあげるなど、些細なことでも自分の意見が反映されたら、子どもの食への興味が増します。フルーツが好きなら、バナナやりんごなどをヨーグルトを和えるだけでも「食べる習慣」を身につけさせることはできるはず。また管理栄養士の新生暁子先生によると、「朝からたくさんの料理がテーブルに並んでいると、子どもにとってはかえってプレッシャーになり、食欲が減退してしまう」こともあるそう。品数は少なめでも多くの栄養を摂取してもらいたいなら、具だくさんのスープがおすすめです。前日の夜にたくさん作っておけば、朝の準備も楽ですよ。2.歯磨きに時間がかかる!朝、ダラダラと時間をかけて歯を磨いている子どもの様子を見ると、ついイライラしてしまうものです。「早く!」「急いで!」と急かす気持ちもわかりますが、それでは一向に現状は改善されません。『12歳までに「自信ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)の著者で、子育てセミナーを主催している楠本佳子さんは、“あるモノ” を洗面所に置くことで解決できるといいます。それは時計。楠本さんいわく、どんなに「早くしなさい!」と言われたところで、子どもはまだ時間の感覚がつかめないので、理解が難しいそう。そこで洗面所にも時計を置いてあげて、「長い針が10のところにくるまでに、歯磨きを終わらせようね」と伝えると、目で見て理解できるので、行動に移しやすいのです。もちろん洗面所だけではなく、家の中のあらゆる場所に時計を置いて時間を意識させるようにすると、朝の準備全般に役立ちます。「早く!」ではなく、具体的に「○分までに終わらせようね」と伝えるのがポイントです。3.着替え・身支度に時間がかかる!朝の身支度は、大人でも時間がかかるもの。子どもなら、なおさら親のサポートが必要です。東ちひろさんによると、子どもは2歳くらいから「自分でやりたい!」が強くなるそうです。けれどもちろん、技術が伴わないので時間がかかります。そこで、親ができるサポートは、ボタンなどの難しい部分だけをさりげなく手伝ってあげること。自分でできることは自分でさせると、子どもは満足感を得られるので、その後の準備もスムーズになります。また、「どうしても自分で服を選びたい!」というお子さんには、余計な口出しをせずにすべて任せてあげましょう。もし心配なら、どれを選んでもそれなりにまとまりが出るような洋服だけをタンスに入れておくと、ちぐはぐな組み合わせにならないはずです。ほかにも、事前にできることはたくさんあります。たとえば、幼稚園や学校に持っていく荷物や小物は、一箇所にまとめて収納するようにするといいでしょう。毎朝あちこちから荷物を取り出すよりも、身支度セットとしてまとめて置いておけば、忘れ物防止にもつながりますよ。ちょっとの工夫で朝の準備が劇的に変わる!ほかにも、朝の準備をスムーズにするコツをご紹介します。■「朝のしたく表」をつくる何度注意しても、言葉で伝えるだけでは子どもはすぐに忘れてしまうもの。そんなとき、自分がやるべきことが可視化できれば、パッと行動に移しやすくなります。『子どもの「困った」が才能に変わる本』(青春出版社)の著者で “お母さんサポートの専門家” として活躍中の田嶋英子さんがすすめるのは、「朝のしたく表」を作って壁に貼っておくこと。「朝のしたく表」は、やることを “見える化” するのが目的なので、見栄えを良くしたり厳密に書いたりする必要はありません。シンプルに「○時◯分までにごはん」「○時◯分までにきがえ」と書くだけでもいいですし、まだ小さいお子さんならば、時計の絵を描いてあげるとよりわかりやすくなります。表を作成するときは、ぜひお子さんと話し合いながら一緒に作ってください。朝の手順や、やるべきことの全体像が把握できれば、よりスムーズに実行できます。貼る位置は子どもの目線に合わせて、できれば時計と同時に視界に入るように貼ってあげるといいですね。■声かけの工夫朝バタバタしているときは、つい「早く早く!」と急かしてしまいますが、声かけを少し変えるだけでサッと動きだすことも。前出の東ちひろさんは、子どもの競争心をうまく利用する声かけ法を提案しています。たとえば、ちゃんとできるのにどうしてもモタモタしてしまう場合、「お母さんが食器を洗い終わるのと、○○くんがお着替えするの、どっちが早いか競争だよ!」と誘ってみるといいそう。または「10数えるうちに終わるかな〜?」とタイムリミットを伝えるのもいいですね。コツは、毎回子どもに勝たせてあげること。勝つことで気分が良くなり、その流れに乗って次の行動に進みやすくなります。■起きる楽しみを用意する成田奈緒子先生は、「朝子どもの機嫌を良くするとっておきの方法がある」といいます。それは、子どもが大好きなものを朝に持ってくること。そもそも、朝なかなか起きられず不機嫌になってしまうのは、睡眠時間が足りていない=夜寝る時間が遅いことが原因です。そして、寝る時間が遅くなる子は、テレビ番組やゲームや動画など、その時間まで夢中になれるような大好きなものがあるということ。成田先生は、それらを朝に持ってくると、朝の楽しみができて不機嫌が軽減されるといいます。実際に、子どもがハマっている戦隊モノのテーマソングを大音量でかけたり、大好きなりんごを朝食にしたりしたことで改善された例もあるそう。朝の楽しみができる→夜早く寝る→ワクワクしながら起きる→見たいもの・やりたいことがあるから準備をテキパキする……このような良いサイクルができてしまえば、あとはグンと楽になりますよ。***一度習慣づいてしまうと、それを急に変えるのは大人でも苦戦します。朝の習慣を変えたいのなら、すべてを急に変えるのではなく、少しずつ、できる範囲から改善していきましょう。まずはお子さんの「朝の準備で困っていること」を分析して、親子で「どうしたらもっと簡単に、楽しくできるか」を話し合ってみるといいですね。(参考)あんふぁんWeb|急かさない!怒らない!平日の朝時間スムーズ乗り切り術StudyHackerこどもまなび☆ラボ|朝食で子どもの未来が決まる!?恐ろしい……ウソのような「朝ごはん」の事実「早寝早起き朝ごはん」全国協議会|「早寝早起き朝ごはん」運動について週刊女性PRIME|あの“脳トレ”の川島隆太教授が力説!脳を見てわかった「頭のよい子の朝食、教えます」StudyHackerこどもまなび☆ラボ|不足しがちな「タンパク質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.StudyHackerこどもまなび☆ラボ|親子で学ぶ おいしい食育学【第3回】朝ごはん編ぎゅってweb|毎朝準備が遅い子どもにイライラ「早くして!」よりも効果的な方法はPHPのびのび子育て 2019年10月号,PHP研究所.Studyhackerこどもまなび☆ラボ|「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法
2019年12月17日東京の高級住宅街・池田山に、イタリア発祥の「レッジョ・エミリア・アプローチ」という教育手法をベースとしたインターナショナルプレスクールがあります。その「東京チルドレンズガーデン」の伊原尚郎理事長によると、レッジョ・エミリア・アプローチの大きな特徴として「プロジェクト活動」が挙げられるそう。いったい、どんな活動なのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「プロジェクト活動」の具体的手法とその目的わたしたちの学校で行っている「レッジョ・エミリア・アプローチ」の特徴的なものに、「プロジェクト活動」があります。たとえば、散歩中に道端の石に興味を持った子どもがいたなら、石を集めたり観察したりすることがプロジェクトになります。一方、先生は子どもが石のなにに興味を持っているのかということをつぶさに見ていく。それは、石が地面に落ちたときの音なのかもしれないし、石の手触りや色、重さかもしれません。そして、子どもが石を拾ってなにをしていたのか、その様子をドキュメント――記録していくのです。これは、保護者と情報を共有するということもありますが、それよりもコラボレーターとして子どもに対して働きかけることが最大の目的です。日々、どんどん成長している子どもというのは、前の日のことをすぐに忘れてしまうものですよね。そこで、翌日に先生がドキュメントをもとに子どもに語りかけるのです。「昨日のこと、覚えてる?」「あなたはこの石を拾ってずっと見てたよね」「『この模様が面白いんだよ』って言ってたよ」「わたしにはこう見えたよ」といった具合です。このことにはさまざまな目的があります。たとえば、その語りかけによって、言語を手渡していくということもそのひとつ。まだ語彙が少ない子どもに対して、「あのことはこう説明すればいいんだ」「あの感情はこういう言葉で表現するんだ」というふうに、子ども自身の体験や感情の言語化を助けてあげるのです。あるいは、「こういう見方をしても面白いかもしれないよ」というふうに、子どもは気づかなかったものごとの別の見方を提供することもドキュメントの目的のひとつです。そのようにして、子ども自身の学びを深めていくことがプロジェクト活動なのです。プロジェクト活動を通じて身につける自ら学ぶ姿勢プロジェクトと聞くと、なにか大きなテーマがあり、ある程度の長い期間にわたって行うようなものをイメージした人もいるかもしれません。もちろん、そういうプロジェクト活動をする教育手法もあります。でも、いろいろなものに次々に興味を持っていく子どもにとっては、そういうプロジェクト活動をすることはなかなか難しいですよね。しかも、大人が設定したなんらかの「正解」を求めるというようなものは、子どもには面白く感じられません。そこで、レッジョ・エミリアにおけるプロジェクト活動では、決められたゴールがあるようなテーマを与えることなく、子どもの興味から発するものをプロジェクトにします。ですから、大人からすれば、無謀と思えるようなものも出てきます。たとえば、過去には「影をつかまえる方法を考える」というプロジェクトもありました(笑)。その子どもは、最初は影に布をかけてみた。当然、影はつかまえられません。すると、友だちが「布をかけるのが遅いから逃げちゃうんだよ」といって今度は素早く布をかけてみる。今度はまた別の子が「布は軽過ぎるんだ」といって石を使ってみる。もちろん、失敗の連続です。でも、このプロジェクト活動においては、影をつかまえることやその過程で得る知識が重要なのではありません。友だち同士で相談してアイデアを出し合いながら、子どもたちが自ら学ぶ姿勢を身につけていくこと――それこそが重要なのです。その学ぶ姿勢は間違いなく次の学びに生きてきますし、友だちとの話し合いを通じて身につけた他者とのかかわり方は、社会に出たときにも強力なスキルになるはずです。親こそ思い込みを捨てて子どもの本当の声を聴いてほしい先に、レッジョ・エミリアの先生は子どものプロジェクトをしっかりと見て記録すると述べました。その際、もっとも大切となるのは、子どもがなにを考えているのか、なにに興味を持っているのか、たとえそれを子どもが言葉にできなかったとしても感じてあげる力です。では、どうすればそうできるようになるのでしょうか?このことは、学校の先生だけではなく、子どもたちの親にこそ身につけてほしい姿勢です。それは、「子どもに対して尊敬の念を持つ」ということ。子どもは子どもなりに自分で学んでいく力を持っています。それなのに、親は子どもに対して「教えてあげなければいけない」「指示してあげないといけない」という思い込みを持ちがちです。でも、もし子どもではなくアインシュタインが相手だったらどうですか?「あれをやりなさい」なんていったり、まして「教えてあげよう」なんて思ったりしないでしょう。代わりに「なにを考えているんだろう」「絶対にすごいことを考えているぞ」と思って、じっくりその様子を観察するのではないでしょうか。それと同じ姿勢で子どもに接してほしいのです。そうすれば、子どもがいままさに学んでいることをしっかりと感じることができるはずです。■東京チルドレンズガーデン■ 東京チルドレンズガーデン・伊原尚郎理事長インタビュー一覧第1回:いまの時代にマッチする「レッジョ・エミリア・アプローチ」の教育第2回:もしも子どもがアインシュタインだったら?子どもに対して親が取るべき姿勢第3回:グローバルな人間に――生まれ育った地域や国を知る「レッジョ・エミリア・アプローチ」第4回:信じることで本来の力を引き出す。すごい能力を持つ子どもたち【プロフィール】伊原尚郎(いはら・ひさお)東京チルドレンズガーデン理事長、共同創設者。米国ニューヨーク州立大学メディアアート科修士課程修了。ビデオアーティストとしてニューヨークで多方面に活躍。約20年の在米ののち帰国し、幼稚園の園長に就任。国際幼児教育の理解を深め、クリエイティブ思考を育てるための研究に従事。2017年に共同創設者の西ヶ谷アンとともにレッジョ・エミリア・アプローチをベースとするインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」をオープンし、理事長に就任。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月16日「レッジョ・エミリア」という言葉を耳にしたことがある人はいるでしょうか。本来、レッジョ・エミリアはイタリアの都市の名前です。レッジョ・エミリアは、町を挙げての幼児教育と芸術教育により、欧米はもちろん近年は日本でも注目度が上がっており、その教育手法は「レッジョ・エミリア・アプローチ」として広まりつつあります。レッジョ・エミリア・アプローチをベースにしたインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」の伊原尚郎理事長に、その教育の特徴を聞いてみました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもには子ども自身で学べる力が備わっている当校の教育について具体的にお話する前に、先にお伝えしておきたいことがあります。読者のみなさんのなかには、わたしたちの教育が「子どもにどんな効果を生むのか」という「答え」のようなものを求めている人がいるのではないでしょうか。取材を受けるときにも、「どのように創造性を高めているのか」「どうすれば勉強ができるようになるのか」といった質問をされることがとても多いものです。でも、わたしたちは基本的に、そんな大人の意志で子どもを誘導するようなスタンスを取っていません。なぜかというと、子どもには子ども自身で学べる力が備わっているからです。その力がしっかり発揮できるような環境を整えることが、わたしたちの役割なのです。ですから、先のような質問に対して、求められているようなわかりやすい答えを提示することはできないということを、まずはお断りしておきます。さて、当校の教育のベースにあるのは、イタリア発祥の「レッジョ・エミリア・アプローチ」です。その特徴というと、「子どもは有能で知的な学習者」ということを前提としていることがまず挙げられます。これは、「構成主義」と呼ばれる考え方です。みなさんのなかにも、「モンテッソーリ教育」について聞いたことがある人は多いでしょう。モンテッソーリなど、いま注目されているほかの新教育なども、同様に構成主義の教育手法です。ただ、レッジョ・エミリアは、構成主義のなかでも「社会構成主義」だという点で、ほかの新教育とは異なります。同じ構成主義でも、レッジョ・エミリア以外の多くの教育手法は、「人間が個人としてどのように学んでいくのか」という観点で研究がされてきました。でも、人間はひとりで生きていくわけではないですよね?なにかを学ぶ場面というのは、ひとりで机に向かって勉強するときだけではありません。人間は周囲のさまざまな他者とかかわり、影響を受けたり与えたりしながら学んでいくもの――。そういう考え方から出発しているのが、レッジョ・エミリアの中核的な考え方である社会構成主義なのです。大人が決めた分野に縛られず、子どもは広く学ぼうとするその他にも、レッジョ・エミリアには他の新教育と異なる点があります。多数の他の新教育は、さまざまな教具を用意しておき、「この教具を使えばこういう学びが深まる」というようなメソッド方式をとっています。でき上がっている教具などの学びの条件を用意し、環境から引き離し、学びは直線的に獲得されるとの観念のうえに実践があります。学びは、教科・発達分野というかたちの分類をされ、理解されています。しかし、人間の学びというものは、そんな教科・発達分野に縛られないもっと広い興味からはじまり、もっといろいろな可能性を秘めたもののはずです。それがレッジョ・エミリアの考え方なのです。レッジョ・エミリアの実践は子どもの興味・関心からはじまり、ゆっくりとジグザグに、ときには後退などしながらも学んでいくという考え方を大事にするアプローチ方式で行われます。それだけに、少しわかりにくいということころもあるのですが……(苦笑)。子どもには、大人が考える教科のような分野に縛られることなく、あらゆることを学びたいという欲求があります。それは、本能的に持っている欲求です。たとえば、いまなら『パプリカ』という子どもに人気の曲を聴けば、子どもたちは自然に歌ってダンスをはじめます。子どもたちはなにも意識的にアートを学ぼうとしているわけではありませんが、大人の目には、先の教科のように、それがアートという分野を学んでいるように映るということに過ぎないのです。子どもたちは、ごく自然な欲求として歌って踊っているだけのこと。だったら、そうできる環境を用意していくというのが、わたしたちの考え方です。指示や目標を与えないからこそ、社会で活躍できるようになるわたしたちは、一般の学校のように「あれをしなさい」「これは駄目」というふうな指示は極力しません。もしかしたら、わたしたちの学校で育った子どもたちが一般の学校に行くことがあれば、ちょっと変わった子どものように見られてしまうかもしれません。でも、実社会に出たときのことを考えてみてください。誰かから指示をされたり目標を与えられたりしなければ行動できない人間が社会で活躍できるでしょうか?いま、世界を牽引しているGoogleのような企業の場合、基本的にはなにをつくるといった目標はありません。社員の自由な発想により、これまでになかった画期的なサービスをいくつも生み出しているのが、新しい時代の企業です。そして、それらの発想は、他者との関係性のなかから「こういうサービスがあったら、すばらしい社会になるにちがいない」と生まれてきます。当校の子どもたちがやっていることも、それと似ているかもしれません。誰かから指示をされたり目標を与えられたりすることなく、友だちや先生など他者とのかかわりのなかで自由な発想で学んでいきます。そういう点で、いまの時代とレッジョ・エミリアの親和性は非常に高いと思うのです。■東京チルドレンズガーデン■ 東京チルドレンズガーデン・伊原尚郎理事長インタビュー一覧第1回:いまの時代にマッチする「レッジョ・エミリア・アプローチ」の教育第2回:もしも子どもがアインシュタインだったら?子どもに対して親が取るべき姿勢第3回:グローバルな人間に――生まれ育った地域や国を知る「レッジョ・エミリア・アプローチ」第4回:信じることで本来の力を引き出す。すごい能力を持つ子どもたち【プロフィール】伊原尚郎(いはら・ひさお)東京チルドレンズガーデン理事長、共同創設者。米国ニューヨーク州立大学メディアアート科修士課程修了。ビデオアーティストとしてニューヨークで多方面に活躍。約20年の在米ののち帰国し、幼稚園の園長に就任。国際幼児教育の理解を深め、クリエイティブ思考を育てるための研究に従事。2017年に共同創設者の西ヶ谷アンとともにレッジョ・エミリア・アプローチをベースとするインターナショナルプレスクール「東京チルドレンズガーデン」をオープンし、理事長に就任。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月15日慶應義塾中等部の家庭学習としても活用されている、英検 Jr. オンライン版。自宅のパソコンで受験可能なので、「初めての会場で落ち着いていられるかな」「親と離れて、ひとりで受験できるだろうか」などの心配もなく、お子さんの初めてのテストとしてもぴったりです。そんな英検 Jr. には、英検やほかの試験にはない特徴がたくさんあります。今回は、第二言語習得研究や言語教育の専門家の意見をもとに、英検 Jr. のメリットをご紹介します。英検 Jr.の5つのメリット1. 幼児期にぴったりの「リスニング特化型」英語4技能試験が注目されるなか、「なぜリスニング1技能だけなの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。ですが、英語のプロトレーナーである田畑翔子さんは、小学生までの子どもには、音声中心の学習がいいと語っています。子どもの場合、まずは英語にふれる機会を多く持ち、英語を「聞く」という大量のインプットを確保することが必要になります。(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ|「10歳」を境に最適な英語学習法が変わる?)特に、幼児期の子どもの英語学習において一番重要なのは、他人との英語でのやりとり=「インタラクション」を通した自然なインプット。英検 Jr.のリスニング内容を軸に、親子で簡単な英語でのやり取りを楽しんでもいいですね。慶應義塾大学名誉教授・ココネ言語教育研究所所長の田中茂範さんも、幼児は「音への感受性が高い」と述べています。音への感受性が高い時期に、英語をたくさん「聞く」こと。リスニングから始めるのは、理にかなっていることなのです。2. テストを通して学習を促進できる子どもの年齢が上がるとともに、どんどん重要性を増す「テスト」の存在。つい結果に目がいってしまいますが、学習の定着度を確認すること以上に重要な効果があるのだとか。ペンシルベニア大学准教授のバトラー後藤裕子さんは「テストを受けて学習を促進させる効果」が期待できると語ります。テストには、そもそも2つの大きな役割があります。1つは、どれくらい学習が進んだかを把握すること、もう1つは、テストを受けること自体で学習を促進させること。私たちはテストというと、すぐに最初の役割ばかりに気を取られがちですが、実は2番目の役割が非常に大切なのです。英検 Jr.オンライン版に付属した学習コンテンツでは、ゲーム感覚で、英語をたくさん聞いているうちに、生活に密着した単語や表現を身につけられるようになっています。前回はできなかったアイテムが、次に学習するときには優先的に出てくるなど、コンピューターの特長を十分に生かした学習コンテンツになっています。身についたことを実感するためにテストをやりたくなってしまう―英検 Jr.オンライン版はこんな魅力を備えているといえます。(引用元:英検 Jr.「オンライン版」がスタート!|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)「テストを受けること自体で学習を促進できるのなら、ほかのテストでもいいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。ですが、そもそも低年齢の子どもを対象にした英語テスト自体、数少ないのです。そんななか、英語学習を始めたばかりの子どもたちのために開発された英検 Jr.の存在は貴重だと言えます。3. 小学校の外国語活動とリンク!今後の英語学習に役立つ2020年度から小学校中学年で「外国語活動」が導入され、小学校高学年からは「外国語科」として成績対象になります。新しい英語教育改革に向けて、2018年度から移行期間が始まっています。新学習指導要領で定められている外国語活動の目標のための3つの柱のひとつ、「知識及び技能」面では、以下のように示されています。外国語を通して、言語や文化について体験的に理解を深め、日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。(引用元:文部科学省|外国語教育|新学習指導要領(令和2年度以降順次実施~)|小学校学習指導要領(平成29年告示)解説外国語活動・外国語編)つまり、高学年以降の外国語学習における聞く力や話す力につながるものとして、子どもの柔軟な適応力を生かし、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむことが求められているのです。英検 Jr.のBRONZEのテスト内容は、小学校の外国語活動に対応しているので、学校での授業の成果検証としても使えます。テスト準備は学校での学習内容の予習にもなるでしょう。特に小学5・6年生の授業では成績がつくことを考えると、低学年のうちからしっかり準備しておきたいところです。テスト終了後すぐに結果がわかるのも、英検 Jr. の大きな特徴。忘れないうちに間違えたところを確認できるので、自然な流れで復習できます。さらに、カラフルで可愛らしいデザインの個人成績表には、成績だけでなく学習アドバイスも書かれています。お子さんの今のレベルに合わせた助言となっているので、今後の学習にも役立ちますね。(画像出典:REPORT CARD(個人成績表)|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)4. 「動機づけ」でやる気アップ!立命館大学大学院教授の田浦秀幸さんは、小学生の英語学習を考えるうえで最も重要な点は「動機付け」だと語っています。小学生に一番大事なのは動機付けです。(中略)小さいお子さんに対しては特に、周りがうまく動機づけをしてあげることが重要です。(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ|【田浦教授インタビュー 第5回】子ども向けオンライン英会話の学習効果――英語学習を成功に導くための活用術)英検 Jr.には、子どもの動機付けを支えるさまざまな工夫が施されています。ゲームのように取り組めるテスト内容や教材そのもののおもしろさ、テスト直後の結果発表と、かわいらしいデザインのレポートカード、子どもが達成感を味わえる成績証明書……。特に、テストの約3週間後に送付される成績証明書は賞状のようで、とってもかっこいいんです!お子さん自身がそれぞれのグレードのシールを貼ることができる仕様になっており、学習意欲向上につながります。合否はなく、結果は「正答率」で表示されるので、全員がこちらの成績証明書を受け取ることができるのも嬉しいポイント。不合格となりお子さんが落ち込んだり、自信をなくしたり……という恐れがなく、子どもが喜ぶアイテムが必ず手に入るのはありがたいですね。(画像出典:CERTIFICATE(成績証明書)|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)ただ、周囲がいくらうまく動機付けをしてあげても、小さいお子さんのやる気を維持するのは難しいもの。特に、幼児はまだ時間や日にちの概念を大人のように正確に理解できていないので、「1ヶ月後にテストだよ!」「来週本番だから頑張ろうね」と言われてもピンとこないこともあります。子どものやる気が出たとき、気分がのっているときに、ピンポイントでテストを受けることで、よりスムーズに進むはずです。英検 Jr.は申し込み直後から3ヶ月の間いつでもテストを受けることができるので、お子さんが「やりたい!」と思ったタイミングを見計らって挑戦できますよ。5. 楽しい=タスクモチベーション↑英語のプロトレーナー・田畑翔子さんは、「動機付け」の中でも、特に「タスクモチベーション」という概念に注目するといいと語っています。特に子どもの場合、自分から「英語の成績を上げていい学校に行きたい」とか「英語ができれば将来の仕事に役立つ」といったモチベーションを持つことはあまりありませんから、「タスクモチベーション」という概念に注目するといいでしょう。これは、面白いと思える学習法ならやる気が高まるということ。(中略)学習者が興味を持てる部分をうまく刺激して、学習方法自体を動機づけにするのです。子どもは、楽しめる活動でなければ続きません。特に英語を学び始めるときは、面白いと思える学習活動を用意する必要があります。(引用元:StudyHacker こどもまなび☆ラボ|「10歳」を境に最適な英語学習法が変わる?)英検 Jr.の問題はオールカラーでイラストが中心となっており、ゲーム感覚でチャレンジできます。白黒で文字が中心のほかの試験とは違い、子どもも楽しんで取り組める内容です。試験時間も短めなので、途中で飽きずに最後まで続けやすくなっています。(画像出典:英検 Jr.オンライン版の紹介|英検 Jr.「オンライン版」がスタート!|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)テストを受ける際の負担を最小限に抑えつつ、学校以外のテストを受ける経験を積むことができる英検 Jr.。お子さんのモチベーションを上手にあげながら、音声の学習を中心に、テストによる学習促進効果を狙ってみてはいかがでしょうか。【関連記事】■慶應義塾中等部でも導入! 英検の準備としても優秀な「英検 Jr.」■幼児〜小学生にぴったり! 英検との比較と「英検 Jr.」おすすめ勉強法■「はじめての検定試験」デビュー!小学生の英検受験の3つのメリットと注意点■小学生以下の受験が25%アップ!子どもに合った英検の級の選び方とおすすめ学習法■小学1年生は55%、2年生は43%アップ!?増える「小学生の英検受験」■あなたのお子さんの年は移行期?全面実施期?3分でわかる「小学校英語教育」■授業のスピーキングは5倍、英語入試実施中学は8倍!現代の小学生にマストな「英語力」■知らないと損をする!親世代の感覚では危険な、現代の子どもの英語学習事情(参考)公益財団法人 日本英語検定協会|英検Jr.公益財団法人 日本英語検定協会|英検 Jr.「オンライン版」がスタート!|公益財団法人 日本英語検定協会|検定・テストの特徴と比較公益財団法人 日本英語検定協会|英検 受験の状況文部科学省|小学校学習指導要領(平成29年告示)解説外国語活動・外国語編こどもまなび☆ラボ|「10歳」を境に最適な英語学習法が変わる?こどもまなび☆ラボ|【田浦教授インタビュー 第5回】子ども向けオンライン英会話の学習効果――英語学習を成功に導くための活用術
2019年12月14日英語なんてまだ早い……。検定試験なんて、うちの子にはまだ無理!そう考えている親御さんも多いかもしれません。しかし今、小学生以下の英検志願者数がどんどん増えているのをご存じでしょうか?公益財団法人 日本英語検定協会によると、英検、英検 Jr.、英検IBAの志願者は毎年のように拡大しています。なかでも、小学生以下の志願者数は、2014年から2018年にかけて、約25%も増えているのです。(受験の状況|英検|公益財団法人 日本英語検定協会を元に筆者が作成)小学生以下の子どもたちの間での英検の拡大に伴い、英検を受ける前の導入として注目を集めているのが「英検 Jr.」。いったい、どのようなテストなのでしょう?英検 Jr.とは?一番多く受験しているのは◯歳英検 Jr.とは、公益財団法人 日本英語検定協会が主催する、子どものための「育成型」英語テストです。英語学習を始めたばかりの子どもたちが、英語や異文化への興味・関心を広げ、英語でコミュニケーションすることへの親しみや楽しさを知ることを目的としています。1994年に作られ、その後2009年に「オンライン版」がスタートしました。当初は「児童英検」と呼ばれていましたが、2015年に「英検 Jr.」という名称に変わっています。幼児から小学生を対象としたテストですが、小学生の志願者が中心で、一番多く受けているのは8歳(小学2年生)です。英検 Jr. 3つのレベルと6つの特徴英検 Jr.には、ペーパー版・オンライン版・学校版がありますが、個人で受ける場合は「オンライン版」を利用します。そのため、本記事でもオンライン版についてお話ししましょう。オンライン版は、児童向けの英語テスト「英検 Jr. 」とテスト対策のための学習教材が一体となった、日本英語検定協会公式のサービス。子どものための英語リスニング教材も豊富で、試験の枠を超えておうちでの英語学習にも活用できます。ブロンズ、シルバー、ゴールドの3つのグレードが用意され、学習レベルに合わせて受けることができるようになっています。英検 Jr. オンライン版の特徴はこの6つ。リスニング特化型オールカラー!イラストが豊富で、ゲーム感覚で取り組める好きなときに好きな場所でテストを受けられる小学校の外国語活動に対応合否のない育成型カラフルで可愛らしい個人成績表とかっこいい成績証明書がもらえる(画像出典:REPORT CARD(個人成績表)|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)(画像出典:CERTIFICATE(成績証明書)|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)慶應義塾中等部でも導入!テスト一体型のリスニング教材英検 Jr.オンライン版は、慶應義塾中等部の中学1年生の英語学習にも導入されています。音声学習の補完、そして家庭学習の活性化を目的に採用されました。慶應義塾中等部英語科の江波戸愼先生は、次のように語っています。英検 Jr.オンライン版の利用は、語彙力アップに間違いなく貢献すると思います。ドリルでたくさんの語彙や表現を聞き、ゲームできちんとかつ楽しく点検をすることで、計画的に確実に学習が進んでいきます。結果、学習の効率があがり、特に音声での語彙の習得スピードはかなり早いと思われます。(中略)しっかりとした語彙の基盤をつくる手助けになっており、生徒もそれを実感しているようです。(引用元:特集 オンライン版の活用事例(4)|英検 Jr.|公益財団法人 日本英語検定協会)名門中学でも導入されている「英検 Jr.」ですが、レベルに合わせて幼児から小学生まで楽しく挑戦できますよ。ご家庭での英語学習の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。【関連記事】■子どもには○○中心の学習が一番! 専門家に聞いた、英検 Jr. の5つのメリット■幼児〜小学生にぴったり! 英検との比較と「英検 Jr.」おすすめ勉強法■「はじめての検定試験」デビュー!小学生の英検受験の3つのメリットと注意点■小学生以下の受験が25%アップ!子どもに合った英検の級の選び方とおすすめ学習法■小学1年生は55%、2年生は43%アップ!?増える「小学生の英検受験」■あなたのお子さんの年は移行期?全面実施期?3分でわかる「小学校英語教育」■授業のスピーキングは5倍、英語入試実施中学は8倍!現代の小学生にマストな「英語力」■知らないと損をする!親世代の感覚では危険な、現代の子どもの英語学習事情(参考)公益財団法人 日本英語検定協会|英検Jr.公益財団法人 日本英語検定協会|英検 Jr.「オンライン版」がスタート!公益財団法人 日本英語検定協会|検定・テストの特徴と比較公益財団法人 日本英語検定協会|受験の状況こどもまなびラボ|小学1年生は55%、2年生は43%アップ!?増える「小学生の英検受験」
2019年12月13日親であれば、自分なりの「理想の子育て」というものを考えているでしょう。もちろん、それぞれにちがっていいものですが、子育てには不安がつきものです。自分の理想に自信を持てない人もいるかもしれません。そこで、著書の『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)で注目を集める脳科学者・西剛志先生に、先生ご自身の「理想の子育て」とはどんなものなのかを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/和知明(インタビューカットのみ)自立するために必要な「困難を乗り越える力」脳科学をベースとして子育ての研究を続けるなかでわたしがいきついたのは、子育ての最終目標は「子どもを自立できる人間に育てること」です。どんなに勉強ができても、どんなにスポーツで優れた力を発揮できても、他人に依存しなければならない人間は、将来的にしっかり生きていくことができないからです。では、自立するためにはなにが必要なのかというと、そのひとつは「困難を乗り越える力」だと考えています。人は人生を歩むうえでいくつもの困難にぶつかります。それらを乗り越えられなければ、その先の人生を歩むことができません。ところが、いまの子育てを見ていると、その大切な「困難を乗り越える力」を育む場面をわざわざ奪っているように思えるのです。それはきっと、子どもに対する愛情からなのでしょう。子どもがつまずく前から困難を排除する――。そういう親が増えているのではないでしょうか。その場合、子どもは、親のそばにいるときには一度も挫折を味わうことなく成長していきます。でも、その子どもが親元を離れて社会に出たとしたらどうなるでしょうか。人生には困難にぶつかる場面が必ず訪れます。それが人生ではじめての困難だったとしたら……?過去に困難を乗り越えた経験が一度もないのですから、たった一度の挫折で心が折れてしまうということになりかねません。チャレンジに対してしっかり褒めることが大切子どもの「困難を乗り越える力」を育むには、大ケガをするといった本当に危険なこと以外の小さな困難を乗り越える経験を、小さい頃からどんどんさせてほしいと思います。そして、そのチャレンジに対してしっかり褒めてほしい。わたしには幼い息子がいます。わたし自身は子どもの頃からチャレンジ精神旺盛なタイプでしたが、息子は不思議なほど慎重派でした。そこで、妻とも話し合って水泳教室に通わせることにしたのです。通いはじめたばかりの頃、教室の先生は息子を抱いて5秒間くらい水のなかに潜らせました。もちろん、水から顔を出した息子はすごくびっくりしている。じつは、先生はちょっとこわもて……(笑)。でも、その先生が、息子が水から顔を出した瞬間、「すごいね!」「よく我慢できたね!」と、こわもての見た目からは考えられないくらいに褒めちぎってくれたのです。すると、息子はいまでいう「ドヤ顔」というか、まんざらでもない表情を見せました。おかげさまで、それ以降、すごく慎重派だった息子は新しいことにチャレンジしていくようになったのです。夫婦喧嘩が絶えなければ、子どもの対人スキルが育たないでも、いくら自立できる人間に育てることが大切だといっても、人はひとりでは生きていけません。他人の心がわかり、周囲といい関係を築いていけることも大切な力です。子どもをそういう人間に育てるには、なによりも夫婦関係を良好なものにすることを心がけましょう。それには、脳科学的なエビデンスがあります。どんなエビデンスかというと、人間の脳にあるミラーニューロンという神経細胞の働きです。みなさんの目の前に笑っている人がいたらどんな気持ちになるでしょうか。あるいは怒っている人ならどうでしょう。前者なら幸せな気持ちになって、後者なら嫌な気持ちになるはずです。つまり、目の前の人間の行動を見て、自分も同じ行動を取っているかのように反応するわけです。これがミラーニューロンの働きです。では、両親が子どもの前でつねに喧嘩をしていたとしたら?子ども自身は喧嘩をしていなくとも、心はつねに誰かと喧嘩をしているときと同じ影響を受けるのです。そして、その子どもは、将来的に人間関係の問題を起こしやすくなるというわけです。また、ニューヨーク大学の研究によれば、両親が暴力的な家庭に育った子どもは、他人の感情を読む力が衰えるということもわかっています。心を閉ざし、暴力的な親など他人の感情を読まないことで自分を守ろうとしているのです。これでは、大人になったときに周囲と良好な関係を築けるはずもありません。子どもの長所に目を向けて自信を持たせるそれから、夫婦喧嘩をしないことのほかに、子どもの長所に目を向けてあげることも親の大切な役割です。謙虚であることがいいとされる日本文化の影響なのか、「うちの子はなにをやらせても駄目で……」といったことをいう親も多いものです。でも、考えてみてください。あなたの目の前につねにあなたに駄目出しをする人がいたらどうでしょうか。嫌な気持ちになるし、どんどん自信を失っていくでしょう。「うちの子はなにをやらせても駄目」という親は、自分の子どもに対してそれと同じことをしているわけです。そうではなく、子どもの長所に目を向けて、その長所を子どもに伝えてあげる。それこそが、親がやるべきことです。わたしが講演会で親御さんたちによくやってもらうのが、「10分間で20個の子どもの長所を書き出す」ということ。これをやると、子どもの見方がまったく変わります。最初は、勉強やスポーツに関することなど、わかりやすいところに目が向くのですが、20個を書き出すとなると、「嫌な顔をせずにお手伝いをしてくれる」「友だちと仲良くできる」というふうに、普段はあまり意識していない点についても目を向けることになります。そして、その長所を子どもに伝えてあげるのです。直接話してもいいですし、書き出したものを子どもの目につくところに貼ってもいいでしょう。それを見た子どもは、それこそ自立して生きていくために必要な自信を身につけてくれるはずです。『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』西剛志 著/ダイヤモンド社(2019)■ 脳科学者・西剛志先生インタビュー一覧第1回:家のなかに生活感を!子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること第2回:お手伝いで子どもの「自制心」が育つ“脳科学的メカニズム”第3回:集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?第4回:子どもを自立できる人間に育てる――脳科学者が考える「理想の子育て」【プロフィール】西剛志(にし・たけゆき)1975年4月8日、鹿児島県出身。脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、(一財)知的財産研究所に入所。2003年に特許庁入庁。大学非常勤講師を兼任しながら、書籍出版、雑誌掲載、ノーベル賞受賞者との対談、世界旅行、結婚、当時日本に1100人しかいない難病の克服など、多くの夢を実現。その自身の夢をかなえてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、いい人生を歩むための脳科学的ノウハウを企業や個人向けに提供するT&Rセルフイメージデザインを2008年に設立。現在は、脳科学を生かした子育ての研究も行う。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月12日子どもが成長するにつれ、徐々にそれぞれの性格がはっきりしてきます。でも、なかには、親からすれば「困った」と思うような性格もあるでしょう。そんな子どもの性格の「困った」に答えてくれるのは、著書の『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』(ダイヤモンド社)で注目を集める脳科学者・西剛志先生です。「集中力がない」「聞き分けがない」「内気」という3つのケースについて、親がどうするべきかというアドバイスをしてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/和知明(インタビューカットのみ)脳が未発達の子どもは集中力がなくてあたりまえ多くの親御さんから寄せられる悩みとして、「子どもの集中力がない」というものがあります。集中力を司る脳の前頭前野という部分は28歳くらいまでの長い時間をかけて発達していくものですから、子どもの前頭前野はそもそも未発達です。つまり、子どもは集中力がなくてあたりまえなのです。でも、そうはいっても、すごい集中力を発揮する子どももいますよね?電車が好きな子どもなら、飽きずにずっと電車を眺め続けます。そういう子どもがなにに集中しているかというと、間違いなく自分が好きなことなのです。つまり、たとえ前頭前野は未発達の子どもでも、自分の好きなことならしっかり集中できる。そうして集中することが、集中力を育む最適なトレーニングとなります。であるならば、親としては子どもの好きなこと、やりたいことをきちんと見つけて、没頭させてあげることが大切になります。逆にいうと、子どもがやりたくもない習い事を親のエゴで無理やりやらせるようなことはNGだということです。それから、親のNG行為としては、子どもにむやみに介入することも挙げられます。せっかく子どもが自分の好きな遊びに集中しているのに、つい「面白そうだね」なんて一緒に遊ぼうとしてはいませんか?その都度、子どもの脳の集中は途切れますから、これは、わざわざ親が子どもの集中力を育む邪魔をしているということなのです。子どもがなにかに黙々と取り組んでいるときは、親はそっと見守るように心がけてください。また、集中力がなく飽きっぽい子どものなかには、単純に頭がいいという可能性もあります。おもちゃを与えてみてもすぐに飽きてしまう。それは、頭がいいためにそのおもちゃでの遊び方をすぐに学習してしまうからということも考えられるわけです。聞き分けがない子どもほど社会的に成功しやすいまた、「うちの子は聞き分けがない」というのもよく寄せられる悩みです。親の立場からすれば、聞き分けがない子どもはわがままに映って困ってしまうものですよね。ですが、ちょっと意外な研究データがあります。ドイツのヘッツァーという心理学者の研究なのですが、「聞き分けがない子どもほど社会的に成功しやすい」というのです。親の目にはただのわがままに映っているような子どもも、子ども本人からすればそうではない場合もあります。それは、子どもが自分の考えをきちんと持っていて、親の話に納得していないという場合です。自分でしっかり考えることができるのですから、将来的に成功を収める可能性が高いというのも納得できる話ですよね。そういう子どもに対しては、親の考えをしっかり伝えることが大切です。なにかを禁止するにしても、「○○しちゃ駄目」というだけではなく、なぜ駄目なのか、その理由をきちんと伝える。そうすれば、自分の考えを持っているような頭のいい子なのですから、しっかり理解してくれるはずです。とにかく、「聞き分けがないことは悪いことだ」と決めつけてはいけません。ただ、そうはいっても、聞き分けがないことで家族以外の他人に迷惑をかけるようなことは問題ですから、その点だけはきちんとしつける必要があるでしょう。もうひとつの注意点は、先の話を受けて、「うちの子は聞き分けがないから成功する」と早合点してはいけないということ。聞き分けがない子どもになることの要因として、カロリー不足、睡眠不足、愛情不足の3つの不足が挙げられます。もしかしたら、自分の考えをしっかり持っているのではなく、それら3つが不足しているだけかもしれません。しっかりご飯を食べさせて、睡眠時間を確保し、親子のスキンシップを取ってください。内気な子どもほど内的なエネルギーに満ちている最後に、「内気な子ども」のケースを取り上げておきましょう。いつからか「明るいことがいい」「ポジティブであることがいい」という時代になったことで、子どもが内気なことを心配している親は意外なほど多いものです。ただ、これも聞き分けがないことと同じように、心配しすぎる必要はありません。内気な子どもは、「内面的才能」が高い可能性が考えられるからです。内面的才能とは、「自分の心を深く掘り下げる能力」のこと。そんな子どもは、幼少期のときには口数も少なくてひとりで遊ぶようなことが多いという傾向があります。そして、そのなかで高い創造力を身につけ、将来はクリエイティブな仕事で力を発揮するということもある。あるいは、自分の心を深く掘り下げられると同時に他人の気持ちもわかるので、カウンセラーなどの仕事に向いているということもあります。また、内気な子どもほど内的なエネルギーが強いという研究もあります。ひとりで遊んでも十分に楽しめるというのは、エネルギーに満ちていると見ることもできます。一方、明るく外交的な人はどうかというと、他人と会って他人からエネルギーをもらってはじめて楽しいと思える。自分自身で楽しみを生み出すような強いエネルギーを持っていないのです。たとえ内気であっても、そんなエネルギーに満ちた子どもなら、内面的才能によって自分の心を掘り下げ、「これだ!」と思う目標を見つけたときには、それに向かって力強く進んでいけるでしょう。いずれにせよ、「内気なことは良くないこと」という先入観を親はいますぐに捨てるべきです。内気な子どもには内気な子どもだからこそ持つ力があるのです。『脳科学的に正しい 一流の子育てQ&A』西剛志 著/ダイヤモンド社(2019)■ 脳科学者・西剛志先生インタビュー一覧第1回:家のなかに生活感を!子どもの「創造力」を伸ばすために親ができること第2回:お手伝いで子どもの「自制心」が育つ“脳科学的メカニズム”第3回:集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?第4回:子どもを自立できる人間に育てる――脳科学者が考える「理想の子育て」【プロフィール】西剛志(にし・たけゆき)1975年4月8日、鹿児島県出身。脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、(一財)知的財産研究所に入所。2003年に特許庁入庁。大学非常勤講師を兼任しながら、書籍出版、雑誌掲載、ノーベル賞受賞者との対談、世界旅行、結婚、当時日本に1100人しかいない難病の克服など、多くの夢を実現。その自身の夢をかなえてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、いい人生を歩むための脳科学的ノウハウを企業や個人向けに提供するT&Rセルフイメージデザインを2008年に設立。現在は、脳科学を生かした子育ての研究も行う。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年12月11日『ヘリコプターペアレント』という言葉、ご存じでしょうか?「モンスターペアレント」や「毒親」ほど広く知れわたってはいないものの、小さな子どもを育てる親にとって、決して人ごとではない問題をはらんでいるのです。今回は、真剣に子どもと向き合う親であれば、だれもがその予備軍となりうる『ヘリコプターペアレント』についてお伝えします。子どもの成功を無意識に阻む “ヘリコプターペアレント” の恐ろしさヘリコプターペアレントとは?まるでヘリコプターがホバリングをしているように、親が子どもの頭上で旋回し、目を光らせている様子から名づけられた “過保護かつ過干渉な親” の総称。わが子が失敗しないように上空で見張り続け、困難に遭遇しようものなら、すぐさま飛んでいって助ける親のことを指す。アメリカなどでは社会問題にもなっている。 親であれば、わが子を心配する気持ちは充分理解できます。程度の差こそあれ、誰もが子どもの幸せや成功を願って手助けをしてあげたいと思うもの。では、『ヘリコプターペアレント』は、いったい何が問題なのでしょうか?心理学に基づいた育児メソッドを提唱している佐藤めぐみさんによると、「過保護は “わが子への愛情ゆえ” と好意的にとらえていた時期もありますが、最近のアメリカの研究では、その傾向が否定されつつあるといいます」とのこと。研究の結果わかったことは、次の通りです。1. 親としての温かみがないうえに過保護だと、子どもはのちのち、自己否定感に悩み、問題行動のリスクも高まる。2. 親としての温かみを保った過保護の場合、1のケースと比べれば確率は減るが、自己否定感や問題行動のリスクはなおも残る。つまり「いくら愛情あふれる温かい接し方をしていても、決して過保護による悪影響がなくなるわけではない」らしいのです。結論として、子どもへの “愛情ゆえに” 過保護が容認されていた時代は、確実に変わりつつあるのだといえます。ヘリコプターペアレントに育てられた子どもたちの将来ワシントンポスト紙によれば、「ヘリコプターペアレントに育てられた大学生は、うつの割合が高い」と報告されています(2013年)。そこには「過剰な親の干渉は、子どもの自主性と能力の発達を阻害する。そのため、ヘリコプターペアレントは依存を促し、保護的な管理なしに仕事を完遂する能力を阻害する」とも書かれています。その理由として、「過保護に育った子どもは、喪失や失敗、さらに失望といった、誰の人生でも避けられない状況に対処する方法を、まったく学ぶことがない」ということが挙げられています。失敗から学ぶ教訓や、ひとりで問題を解決する力、試行錯誤しながら周囲とコミュニケーションを図る努力など、どれも生きていくうえで必要不可欠です。これらの力が身についていない若者にとって、社会の厳しさは相当なものなのではないでしょうか。子どもをすべての困難や失敗から遠ざけて、傷つかないように守るヘリコプターペアレントの過剰な愛情は、じつは子どもが成長するきっかけや将来の成功の機会を奪っているのです。また、ヘリコプターペアレントはわが子の人生や経験の多くを決めてしまうので、その子どもは圧倒的に『決断する機会』が減ります。決断力が欠如した状態で育つと、自分のことなのに何も決められないまま生きていかなければなりません。さらに、幼少期に失敗を重ねなかったことから、“完璧な自分” しか認められない、自分を好きになれない、などのネガティブな価値観形成や精神的な不安定さを引き起こす可能性も出てくるといわれています。誰もがヘリコプターペアレント予備軍!?「うちは子どもを甘やかしてしないし、厳しくしているから大丈夫」と自信があっても、安心はできません。「どんな親でもヘリコプターペアレントになる可能性がある」と述べるのは、『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』(日本実業出版社)の著者・立石美津子さん。ヘリコプターペアレントになりやすい人には、次のような特徴が見られるそうです。1. 完璧主義子どもに対して “理想の子ども像” を求めるだけでなく、自分自身にも “理想の母親・父親像” を追い求めてしまうのが特徴です。それがやがて、「子どもの評価=自分自身に対する評価」となり、子どもの失敗を自分の失敗としてとらえてしまうのです。その結果、失敗する前に手や口を出すようになります。2. 気が利きすぎるよく気が利いて察しがいい人も要注意です。子どもが何も言わないのに「のど乾いたんじゃない?」と、しょっちゅう声をかけていませんか?子どもの自主的な行動よりも前に「あれやったの?」「忘れ物は?」など、四六時中注意喚起するのは明らかに過干渉です。3. せっかちなんでも早く、合理的に終わらせてしまいたいタイプもヘリコプターペアレント予備軍だといえるでしょう。確かに、あれこれと指示を出してその通りに行動させれば、無駄を省き最短でゴールにたどり着くことができます。しかし、結果として子どもは自分でSOSを出せなくなり、指示待ち人間になってしまうのです。共通しているのは、子どもの失敗の機会を奪っているということ。自分で考えて、自発的に行動した結果、成功の喜びも失敗の悔しさも身体で覚えることができます。そのような体験の機会を奪うことは、子どもが大きく飛躍するきっかけを失うことにもつながるのです。適切な距離感は子どもが知っているヘリコプターペアレントの危険性は理解できたとしても、「それでもつい過保護になってしまう……」「放任になるわけにもいかないし、どの程度子どもを手助けすればいいかわからない」と、悩んでしまいますよね。前出の佐藤さんは、親が過保護になる背景に「子どもにイヤな思いをさせたくない」という親心があるのなら、「子どもが持つ “負の感情” を恐れないことが大事」だといいます。「イヤだな」という気持ちは子どもの成長に不可欠です。それを自ら乗り越える力をつけさせることのほうが、その場限りの「イヤなことからの回避」よりも、何倍も子どものためになると思いませんか?では、親子として適切な距離感はどれくらいなのでしょうか。佐藤さんは、「基本的には、子どもが “適切な距離” を知っています」といいます。たとえば、公園で親と離れた場所で友だちと遊ぶような子でも、転んだり嫌なことあったりすると、すぐに親のところに飛んできますよね。つまり状況に応じて子どもが示した距離が、その子の心の状態に合った距離感というわけです。親はあれこれ考えずに、子どもが求めている距離に応じて見守ってあげるといいでしょう。もし普段の親子の会話の中で、子どもの発言に「ママ、これどう思う?」「パパが決めて」などが多いようであれば注意が必要。できるだけ子どもが自分の行動に主体性を持つようにはたらきかけましょう。何気ない日々の会話にも、「あなたはどう思う?」という質問を盛り込むように心がけるといいですね。子どもの自立をサポートするのが親の役目幼児教室を経営していた立石さんは、次のような光景が印象に残っているそう。ある子がハンカチを忘れたので、「忘れ物をしないようにね」と保育士が注意すると、「だってママが入れてくれなかったんだもん!」と親のせいにしたそうです。帰宅後、子どもは「ママ、どうしてハンカチ入れてくれなかったの?」と親を責め、母親は「ごめんね、ママが入れ忘れちゃって……」と子どもに謝ったそう。そして次回、また忘れたときには母親が保育園に慌てて飛んできて届けたといいます。「子どものために」と親が起こしたこの行動は、子どもにどんな影響を及ぼすのでしょうか?結果的に、“自分のものを自分で準備する習慣がいつまでもつかない” “忘れ物をしても人のせいにして、自分のことを反省しない” 人間に成長してしまいますよね。そして、なにかにつけて「親がなんとかしてくれる」と考える子どもは、忘れ物をしても親が届けてくれると思っているので、忘れ物に注意しなくなります。そして先生や友だちに、「鉛筆を忘れたので今日1日貸してください」といった簡単なSOSすら出せなくなってしまうのです。困っているときに、自分から他者への助けを求めるのは自立への一歩です。子育ての最終目標が「子どもの自立」だとしたら、ヘリコプターペアレントはそれを阻むことにより、永遠に子育てをし続けなければならないでしょう。幼児期に失敗したり、困ったりする経験を積ませて、自分で考えて決断して行動する力をつけることは、成長後の自立をスムーズに促します。子どもを心配する気持ち、大切に思う気持ちは誰もが持っているものですが、行きすぎた干渉は百害あって一利なしだと覚えておきましょう。***自分では気づきにくい「過保護・過干渉」。お子さんの様子をよく観察して、「自分で何にも決められないようだ」「すぐに人のせいにしているように見える」と感じたら、親子関係の距離感を見直すチャンスです。(参考)Yahoo!ニュース|子どもの自立を奪う“ヘリコプターペアレンツ”その驚きのエピソードとはAll About|ヘリコプターペアレントとは?親の過保護が仇になるHUFFPOST|「ヘリコプターペアレント」とは?行きづらい子どもに育つ親の存在excite ニュース|「ヘリコプターペアレント」になりやすい親の特徴サイゾーウーマン|厄介な「ヘリコプターペアレント」の実態と対策ーー何も決められない子どもが育つ!?excite ニュース|過保護・過干渉の「ヘリコプターペアレント育児」子どもへの影響は…?
2019年09月06日夏休み明けは不登校が増える――。そう聞いたことがある親御さんは多いでしょう。今月のテーマは 「不登校」です。かつては「登校拒否」と言っていましたが、学校に行っていない子どもたちの中には「拒否する子ども」だけでなく「行きたくても行けない子どもたち」もいるということで、「不登校」と呼び方が変わりました。世界中には「学校に行きたくても行けない子どもたち」がたくさんいますが(かつての日本にもそんな状況がありました)、なぜいまの日本でそんな現象が起きてしまっているのか、皆さんと一緒に考えたいと思います。「不登校」とは「学校に行きたくない」と思ったことなら、だれしも一度や二度はあるでしょう。ではそもそも「不登校」とはどういうことでしょうか。文部科学省は次のように規定しています。「不登校児童生徒」とは……「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいは登校したくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」(文部科学省|平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について 参照)理由や背景はいろいろですが、「学校に行きたくても行けない」子どもや「行きたくないから行かない」子どもたちが不登校の状態にあると言えます。文部科学省の平成29年度の調査では、全国で約14万人(小学生3万5千人・中学生10万9千人)の不登校児童生徒がいることがわかっています 。ただし、フリースクールや適応教室などに通っている子どもたちは出席扱いになりますから、この数字の中には入っていません。また、これとは別に、不登園の幼稚園児や不登校の高校生もいます。そう考えると、子ども全体で見れば、不登校の人はもっと多いと言えますね。児童生徒数は年々減少してきていますが、逆に不登校児童生徒は増えてきていますので、千人当たりという比率で見るとさらに多くなっています。(文部科学省|平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてを参照し、筆者にてグラフを作成)小学生の不登校児童数を学年別で見ると、学年が上がるにつれて増加していきますが、もっとも少ない低学年(小学1・2年生)でも全国にいる不登校児童は約4千人。低学年のうちから学校に行けなくなる子どもが数千人はいるのです。(同上)どうして「夏休み明け」に不登校が増えるのか「夏休み明けに不登校になりやすい」ということは、以前からよく言われています。実際にいつと比べてどのくらい多いのかという調査は見当たりません。ですが、私の養護教諭時代の実感でも、1学期なんとか頑張ってきていた子どもたちの中に、とうとう息切れしてしまい休み明けには登校できなくなる子どもたちが少なくなかったことは確かです。1学期の間頑張って頑張って登校していた子どもたちは、夏休みになると「これでやっと一息つける」と思いリラックスします。夏休みがいい充電期間になって、2学期を元気よくスタートできるだけのエネルギーが貯められればいいのですが、頑張った疲れがどっと出てしまい不活発な生活になってしまう子どもや、「あの空間にまた戻るのはきついな」と実感している子どもは、相当なエネルギーがないと9月になってもすぐには立ち上がれません。夏休みは、ホッとして生活リズムが変わったり、学習への規制が少なくなったりしますから、それを元に戻すにはとても大きなエネルギーが必要になります。夏休み明けに不登校になる子どもたちは、このエネルギーが十分にたまっていないとも言えるのです。これは夏休みだけでなく、ゴールデンウィークの後や、冬休み明けなどにもみられます。ですが、夏休みほどお休みの期間が長くないので「ホッとする」ほど休めませんし、生活リズムも大きくは崩れないでしょう。また、春休み明けの新学期はクラス替えや新しい担任など今までと大きく環境が変わります。これをきっかけに「行ってみようかな?」と思う子どもたちもいるため、新年度のスタートは不登校や登校しぶりをしていた子どもが登校するきっかけにもなっています。子どもが発する「不登校のサイン」に気づきましょう不登校のサインは、子どもによっても年齢によっても、またそのきっかけになったことによっても異なります。「学校に行きたくない」「学校にはもう行かない」などとはっきり宣言する子どもはほとんどいません。ですから、親は子どもが出す「サイン」に気づいてあげることが大切です。最もよく見られるサインは、体の不調です。夏休みが終わりに近づくと元気がなくなったり、食欲がなくなったりする。新学期が始まって朝の登校時間が近づくとおなかが痛くなったり、頭が痛くなったりする。こういったような症状が挙げられます。このような体の不調は、1週間が終わる金曜日の夜あたりにはなくなり、学校が休みの日はあまり症状がでません。「これは偽病ではないか」と相談に訪れる保護者の方もいますが、偽病ではなくて、子どもは本当に頭が痛かったりおなかが痛かったりするのです。年齢が低ければ低いほど脳の機能が未分化なので、心にかかったストレスが体の症状として現れやすいと言えます。他にも、だんだん話をしなくなる、朝起きられなくなる、夜になっても眠れなくなるなどがサインのこともあります。自分にとって何がストレスなのかわからないことも子どもの大きな特徴です。「とても嫌なことがあった」とか「困ったことがあったのに誰もにも応援してもらえない」など、不安を言語化できる場合もあるでしょう。ですが、子どもが漠然とした不安を抱えている場合には、それをどう表現してよいのかわからず、口数が減ってしまうのです。「不登校のサイン」が見られたとき、親が絶対にすべきことお子さんに上記のようなサインが見られたら、親御さんに必ずしてほしいことがあります。それは、子どもが何も言わなくても、子どもの話をよく聞いたり子どもの様子をよく観察したりすることです。以前私も保健室でよく経験しました。入ってきてもただ黙っていて何も言わない子どもがいたときには、熱を測ったり頭に手を当てたりとまさに「手当」をしながら、「具合が悪いんだね」という気持ちを子どもに伝えると、ホッとした顔をして話し始めたものです。「昨日、お父さんとお母さんがリコン、リコンといってたけど、先生『リコン』ってなあに?」と聞いた1年生の男の子。リコンの意味は解らないけれど、その場の雰囲気から胸の中は不安でいっぱいだったことでしょう。その子は、お母さんから離れるのが不安で(母子分離不安)で、登校しぶりをしていました。子どもの気持ちを汲み取れるまでには時間がかかりますが、子どもに心を向けてじっくり待つことが必要です。先に述べましたように、学校生活のストレスはその程度にもよりますが誰しも持っています。いじめや、学習上の大きなつまずき、人間関係など、何が問題かによって対処方法は変わりますが、基本的には何がストレスになっているのかがつかめると、対処の方法も見えてきます。ここで1つだけ注意したいことがあります。体の訴えがでたら、まずは病院を受診し体に異常がないかどうかを確認してあげてください。「頭が痛い」と訴える背景に思いがけない病気が隠れている場合もあるからです。逆に、病院で特に体の問題がないといわれても、「どこも悪くないといわれたから大丈夫」とか「少しぐらい我慢していってみよう!」などの励ましや無理強いはやめましょう。子どもはその言葉によってますます精神的に追い詰められてしまうこともあります。親も子どもも、少し「いい加減」に子どもに不登校の兆候が見られると、親としてはとても心配になりますね。その不安を少しでも解消できるよう、いくつかアドバイスをしましょう。【親御さんからの質問 1】夏休みが明けて1週間たっても、まだ日常のペースを取り戻せません。学校に行くのだけで精神的にも肉体的にも疲れてしまうようで、帰宅しても宿題すら手につかない様子です。心と体が元気で、かつメリハリある生活でシャキッとさせるには、どうしたらいいでしょうか?夏休み明け、すぐに日常のペースに戻せるお子さんと、戻るまで時間のかかるお子さんがいます。学校が楽しくて「早く新学期が始まってお友達や先生に会いたいなー」と思っているお子さんは、少々生活リズムが崩れていても、すぐに元の生活に戻せるエネルギーをもっています。しかし、エネルギー不足の子どもたちは、元に戻すのに時間がかかったり、なかなか疲れが取れなかったりする場合もあります。少しゆっくりなペースでも焦らないで、「早く寝かせる、早く起こす」程度で様子を見ましょう。ここで気を付けたいのは、「いい子」たちです。どんなことにも「がんばらなければいけない!」と思っている子どもは、自分の力量を超えて頑張ってしまう、いわゆる無理をしてしまう過剰適応のお子さんたちです。逆に、少し「いい加減」にできる子どもは、できないことがあっても「まあいいや……」と力を抜くことができます。元気を取り戻すには、子どもの心にのしかかっている「〇〇をしなければならない」という負担をとってあげることが大切です。親御さんの「なんでもきちんとやらせなくては」という思いも、子どもにとっては負担になることがありますので、親も一緒にいい加減になることも必要です。なにより大事なのは「親子間の信頼関係」【親御さんからの質問 2】子どもが「○○ちゃんがいるから」「明日は苦手な教科があるから」などの理由で学校に行きたくないと言うことがあります。親としては負けない気持ちを持ってほしいので、つい強く送り出してしまいますが、大丈夫でしょうか?子どもが「休みたい」と言ったとしても、1回でも休んだら癖になってしまいそうで、少し怖いです。適切な対処法を知りたいです。親御さんの気持ちはとてもよくわかりますし、実際励ますことで乗り越えられるお子さんもたくさんいます。でも注意しなければいけないのは、「○○ちゃんがいるから」とか「苦手な教科があるから」などという理由は単なるきっかけに過ぎず、その背景に小さいながらも乗り越えられない“何か”がある場合です。これを、心理学者エリク・H・エリクソンが提唱した発達段階の理論では「発達課題」 と表現しています。例えば、幼少期のうちに「基本的信頼感=親子の愛着関係」がしっかり築けていない場合。幼いうちに親との信頼関係が作れていない子どもは、自分を支えてくれるものがないまま、大きな不安の中で生きることになります。この「不安状態=安全基地がない状態」では、人との関わりをうまく創り出していくことはできませんし、ほんの些細なことでも不安になり動けないのです。子どもは心の中に、それぞれの年齢で必要な発達課題を獲得していかないと、子どもは次に向かって進めず立ち止まってしまいます。立ち止まるきっかけは「友だち」だったり「勉強」だったりと人それぞれですが、次へ進めなくなってしまった際には専門家の手助けが必要です。まずはスクールカウンセラーに相談しましょう。それ以外には教育委員会の相談センターや児童精神科医など、行きやすい場所を選ぶといいと思います。学校の保健室に行けば紹介してもらえますよ。不登校も保健室登校も、子どもを学校や教室に返すことを目的とするのではなく、子どもの発達課題を見つけてその子のペースでクリアさせながら、将来の自立を目指すことが大切なのです。(筆者にて作図)自然体験には人を癒す力がある【親御さんからの質問 3】子どもが学校生活にストレスを抱えているようで、何日か学校を休んでいます。でも、家にいる分には元気なので、親としてどう接したらいいかが分かりません。休みの間はゲームでも漫画でも、好きにさせて問題ないでしょうか?家で好きなことをさせるのも心の休養にはなりますが、ゲームでは脳は解放されません。おすすめは、自然体験など体を動かす活動です。体が動くと心も動きます。親子で自然と触れ合いながら、一緒に体を動かしましょう。学校を休んでも罪悪感を持たないよう「疲れたんだから、少し休もう」と休むこともよしとしてください。かつて、保健室登校をしていた子どもたちと、学校の畑で一緒に栽培活動をしたことがあります。土や水に触れ野菜を育てて、収穫して調理して食べる。こんな活動をする中で、子どもたちが元気になり、友だちと関われるようになったり学習に取り組むようになったりしました。自然には人を癒す大きな力があるのです。心の病は、自然と触れ合いながら体を動かすことでかなり回復すると考えています。辛くても焦らないで。じっくり子どもと向き合おう「不登校」は、子どもにとっても親御さんにとっても辛いことです。でも、焦って子どもをますます追い詰めるような言動は逆効果。考え方を変えてみて、「今この子どもにどんな力をつけてあげようかな」という見方で、「やった!」「できた!」というような体験活動をさせてみましょう。また、親御さんが一人で悩まないで相談できる場所や人を見つけることも大切です。仲間がいると元気が出ます。焦らず、じっくり子どもと向き合えるといいですね。(参考)文部科学省|平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(平成30年10月25日)
2019年09月06日ビジネスの世界では広く知れ渡るコーチングですが、近年、子育てや教育にもその効果を期待して取り入れる動きが出てきています。しかし、具体的にどういったことを意味するのか、そしてコーチングの効果とはどのようなものなのか、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?今回は、親子のコミュニケーションに取り入れることで“ある力”をぐんぐん伸ばす『コーチング』について、くわしく説明していきましょう。コーチはあくまでもサポート役ビジネスでの「コーチング」は、コミュニケーションを通じて目標達成や問題解決の道筋を見出してあげることを意味します。欧米では政治・ビジネス界のトップ層の8割近くが、自分専用のコーチ(マイコーチ)を雇っているとも。ここで重要なのが、コーチの役割です。コーチはあくまでも個人の自己実現や目標達成の“サポート”であり、指示を出して行動させるわけではありません。子育てにコーチングを取り入れる場合も同様です。親子でのコミュニケーションを通じて、子ども自身に自分の中にある答えに気づかせることを目的としています。その結果、自分の目標を見つけたり、やる気を引き出したりする効果が期待できることから、現在「子育てコーチング」は多くの保護者たちに支持されているのです。国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチの石川尚子さんは、講演会などで簡単な質問や感想を投げかけた際に、「わかりません」と答える子どもがいるのを目にするたびに、自分で考える習慣がない子の多さに驚くといいます。その質問とは、正しい答えがあるものではありません。「どう感じた?」「どうしたらいいと思う?」といった、本人の率直な考えや意見をたずねる質問でも、「わからない」というのです。考える力がまだ備わっていない子、恥ずかしくて自分の意見を口に出せない子、周りの目を気にして発言を控えてしまう子、それぞれに抱えている問題は異なるかもしれません。しかし、普段から会話の中にコーチングの手法を取り入れることで、いざというときの発表の場で必ず役に立つでしょう。コーチングで身につくものでは実際にコーチングを実践することで、子どもにとってどんな良い変化が期待できるのでしょうか。たとえば、毎日「忘れ物はない?」「宿題はやったの?」と何度言い聞かせても、一向に改善しないどころか、本人も言われることに慣れてしまって聞き流す始末……という状況にぐったりしている親御さんも多いはず。しかし子どもは大人が思っているよりも、頭の中ではいろいろ考えを巡らせています。ただ思考を整理できないために優先順位がつけられず、「自分が何をやらなければならないのか」ということがわからなくなっているのです。そこでコーチングの手法を取り入れて、親が子どもの話をしっかりと聞いて、子どもが自分で考えるよう質問をしてあげることで、自分から「やろう!」と思えるようになるというわけです。もちろん実践してすぐにうまくいくとは限りません。親も子も、試行錯誤しながら時間をかけて取り組むことで、必ず子どもは「自分で考えるクセ」を身につけられるようになるので、長い目で見守ってあげることが大切です。またほかにも、口下手で自分の考えを言葉で表現するのが苦手な子や、「どうせ私なんて」と思考がネガティブになりがちな子も、コーチングによって自分に自信がつき、前向きな気持ちを手に入れることができます。コーチングによって身につくもの。それは次のようなものです。・自分で考える力・自分から行動する力・自らやる気を出すことができる力・前向きな心・自己肯定感これらはこれからの時代、どんな道に進んでも必ず求められます。だからこそ、小さいうちから親子で協力して高めていく必要があるのです。コーチングの基本は「聞くこと」と「質問すること」まず、コーチングの基本は“聞くこと”。それもただ“聞く”だけではありません。大切なのは、子どもの話に100%意識を集中し、本人の気持ちを尊重することです。ここでの目的は、「どんな話でも聞いてもらえる」という安心感や信頼感を抱かせることなので、適当に聞き流したり、話の先を急いだりしないように気をつけましょう。もちろん「ちゃんと聞いているよ」という合図にもなる“相づち”は欠かさないようにしてください。次は、“質問”です。子どもの話に対して、「なぜそう思うの?」「どうしてそうしたいの?」と、積極的に質問しましょう。その際に気をつけなければならないのは、「はい・いいえ」で答えられる質問をしないこと。「いるの?いらないの?」「やるの?やらないの?」といった「はい・いいえ」で答えられる質問は『クローズドクエスチョン』といいます。これでは会話がそこで途切れてしまい、子どもの心の奥まで踏み込むことができなくなってしまいます。ですので、自由に返答できる『オープンクエスチョン』を意識して質問内容を考えるようにしましょう。また、質問して返ってきた子どもの答えが、自分の意図から外れるものだったとしても、決して否定してはいけません。いきなり「○○のほうがいいと思うけど」と返答してしまうと、子どもは「言ってもしょうがない」と思ってますます口を閉ざすようになります。まずは一度受け止めるのが正解です。「なるほど。そう思ったんだね。なんでそう思ったの?」と最初に共感してから理由を聞いてみると、意外と納得できるかもしれませんよ。もしくは、「なるほどね、そう考えたんだね。もしも、そのままやってケガをしそうになったらどう対応する?」といった質問を返して、子ども自身がリスク回避策を考えるよう促すのもテクニックのひとつです。ネガティブ発言ばかりでも共感してあげておしゃべりが好きで、こちらの質問にもポンポンと答えてくれる子がいる一方で、自分の発言に自信を持てずに口数が少なくなってしまう子もいます。「どうせぼくなんて」「どうせ私なんて」お子さんがそうつぶやいていたら、どのような言葉を返しますか?おそらくほとんどの親御さんは、「そんなことないよ。あなたはやればできるんだから大丈夫!自信もって」と励ますはず。しかし、「コーチングという視点から見ると、この対応は正しくありません」と指摘するのは、『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)の著者で、NPO法人 ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さんです。その理由は、「そんなことないよ」と子どもの言葉を否定していること。最初に否定されてしまったら、こどもは自分の気持ちをわかってくれないと感じてしまいます。たとえネガティブな発言ばかりが目立っていても、「そうなの。それはつらいよね。何があったの?」と同じ目線で会話をスタートさせることが大事です。子どもが前向きな気持ちを取り戻せるように支援するのが、コーチングのスタンスだと覚えておきましょう。また、前出の石川さんによると、「こちらが言いたいことや聞きたいことのみ焦点を当てるのではなく、子どもが話したいことにアンテナを立ててて、子どものペースに合わせて対話を重ねることが大事です」とのこと。「うちの子は話さない」と決めつけないで、子どものペースやタイミングに合わせて話すように心がけると、子どもの内側の深い部分に触れることができるはずです。日頃から子どもに対してつい言ってしまう言葉にも注意が必要です。『男の子のやる気を伸ばす お母さんの子育てコーチング術』(メイツ出版)の著者・東ちひろさんは、「なぜできないの?」「なんで片づけないの?」といった、「なぜ~~なの?」は、子どもを責めている口調になるのでNGだといいます。そんなときは、「何」に言い換えるといいそうです。「何から片づけられる?」「何をしたらいいと思う?」と質問することで、子どもは一生懸命どうしたらよいかを考えるようになるでしょう。***『コーチング』と聞くと難しいことのように感じますが、実際にやってみると、親子のコミュニケーションがさらに深まり、親にとってもいいことばかりです。いつもとは違う視点で会話を楽しむことができれば、子どもの“考える力”も自然と身についていきますよ。(参考)JCF 日本コーチ連盟|コーチングを学びたい方のために|24の質問で知る「コーチングとは」KUMON|子育てコーチング「やる☆キッズ」ベネッセ教育情報サイト|子どもが「自分で考える」習慣をつけるには[やる気を引き出すコーチング]ベネッセ教育情報サイト|家庭内で話さない子どもとどう関わる?[やる気を引き出すコーチング]ベネッセ 教育情報サイト|コーチング専門家の菅原裕子さんに聞く、思春期への対応(1)東ちひろ(2017),『男の子のやる気を伸ばす お母さんの子育てコーチング術』,メイツ出版.
2019年09月06日