ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の過去戯曲を様々な演出家たちが新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」。そのラストをKERA自身が新作を書き下ろして手掛ける。登場するのは女性7人のみ。そのひとりとなる宮沢りえにKERAとの創作について聞いた。KERAさんの作品には両極端なものを感じます──これまでKERAさんとは、『三人姉妹』(15年)、『ワーニャ伯父さん』(17年)、『桜の園』(20年/稽古のみで全公演中止)のチェーホフシリーズでご一緒されてきました。KERAさんの作品にはどんな印象をお持ちですか。演じても観ていても、両極端なものを感じます。痛いけれど笑っちゃう、笑っちゃうけど悲しいというようなところがあるなと。それを演じるのは大変ではありますけど。ある生々しさみたいなものも要求されますから。──気づきや刺激なども多い現場でしたか。広いイメージを私たちにくれることもあれば、具体的におっしゃることもありました。『三人姉妹』では、「空気をどんどん壊すような女でいてほしい」とおっしゃったり、「宮沢りえが出したことのない音で高笑いしてください」と言われたり。そうやって毎日くれる課題に応えていくことにワクワクしましたし、自分が出したアイデアを採用されるのも嬉しかったです。──今度の『骨と軽蔑』では、初めてKERAさんの新作に出演されることになります。現時点ではキャストだけが決まっていて、「手練れの女優7人と一緒に辛辣なコメディを作ってみたい。会話劇だ」とのコメントを寄せておられます。手練れのおひとりとして、今、どんな心持ちでいらっしゃいますか。私は全然ダメですけど(苦笑)、本当にいい役者さんが揃っているので、その個性の中で自分がいかに届くような芝居ができるかというのは、大きな課題だなと思っています。──宮沢さんご自身がいいな、素敵だなと思われるのはどんな役者さんですか。今回ご一緒する役者さんは皆さん、自分が担っているものを理解して、惜しまずやっていらっしゃるイメージが強くあります。その意味で破壊力しかない(笑)。それから私は、チェーホフシリーズですごく勉強になったことがあって。チェーホフの戯曲には喋らなくてもその空間にいる人物がいて、その話を聞いているだけの人を見ると物語がわかってくるんですね。その人がいい居方をしていると喋っている人も生きてくる。そんな“主”もできるし“脇”もできるという私の憧れるスタイルを持っていらっしゃるところも、今回の皆さんの強さだろうなと思っています。2024年は舞台の年になりそう──KERAさんの作品も、誰もが主で誰もが脇という印象があります。今回もそうなりそうな気がしますが、『骨と軽蔑』というタイトルからどんな想像をされていますか。私はこのタイトルを見たときに、「好き!」って思ったんです。骨というのは命が果てた後に剥き出てくるものなので、それがどんなふうに出てくるのか。きっと楽しい会話劇ではないだろうなと思いますけど(笑)。強さと弱さとか、美しさと醜さとか、怖さと面白さとか、さっきお話したような両極に振れる世界観なのかなとは思っています。──これが2024年の最初の舞台になります。ご自身に期待するのはどんなことでしょう。24年は舞台の年になりそうなんです。どれもすごく飛躍をしなければ成立しないような作品や役ばかりなので、常に今までの自分ではダメだと思っていますけど、それをより強く感じる1年になるのではないかなと。だから、できるだけ高いところに飛べる力を鍛えながら、誠実に一つひとつ乗り越えていけたらなと思っています。取材・文:大内弓子撮影:石阪大輔<公演情報>KERA CROSS第五弾『骨と軽蔑』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子【東京公演】2024年2月23日(金・祝) 〜3月23日(土)会場:日比谷・シアタークリエほか、福岡・大阪公演ありチケット情報:()公式サイト:
2024年01月25日劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんと俳優の緒川たまきさんによるユニット、ケムリ研究室。これまで、どこかほの暗く非現実的でありながら、ポップさも感じさせる独特の世界に、シニカルな笑いを交えた作品を上演してきた。その最新作で第3弾となる舞台『眠くなっちゃった』に音尾琢真さんが出演する。「KERAさんの作品というと、どこかトリッキーなイメージがあると思うんです。でも実際に出演してみると、演技の組み立て方というのはすごくベーシック。自分の役をしっかり立ち上げて、その人と人とが会話をしているという土台をしっかり作っておかないと、あのKERAさん独特の世界は生まれないんです」KERAさんの演出作は、’19年の舞台『ドクター・ホフマンのサナトリウム』以来2度目の出演となる。「正直、僕は何もしていません。僕が無理にああだこうだとしなくても、台本が緻密に書かれているから、KERAさんに委ねれば自然と面白くなるんです。ただ、シーンによって、この場面のこのセリフではお客さんにこういう印象を抱いてほしいと言われるので、それに忠実に応えようとしているくらいです」“いつか見た懐かしい未来”を舞台に不可思議なSF劇が展開される。「もともとファンでもあるんですが、KERAさんの作品って物語の中に入り込んで、何が起こるかわからない“何か”を追いかけている間に終わるっていう印象があって、観ている間ずっと集中が途切れないんです。しかもそれが複雑な迷路のように見えるのに、ひとつひとつ矢印が付いているようにスイスイ進んでいけるのが面白いんですよね」ただ、その複雑な迷路を、毎日突っかかることなく同じペースで歩くのはやはり大変なようで…。「毎日綱渡りをし続けている感覚ではあります(笑)。その日の気持ちに任せてやれれば、毎回達成感は得られると思いますが、この現場はそういうわけにはいかない。毎回、あるハードルを越えたその先のレベルで、出演者全員が抑制をきかせた芝居で、狭い通路を通り続けなければいけないんですよね。その通り方を少しでも間違うと、棘が刺さって痛ッてことになってしまう。KERA作品に出ている方というのは、その日その日の自分のコンディションを調整しながら、ブレなくやり続けられるタイプの人ばかりな気がします。僕も日々精神統一して、仙人のような気持ちで臨んでいます」しかし、「そうやって迷路の中を歩き続けるくらいじゃないと、芝居って面白くないと思ってしまうところがある」のだとか。そして苦笑いしながら、「逆に言えば、そうじゃない舞台にはあまり興味がないともいえるんですけど」と付け加えた。「KERAさんの作品には知性を感じるんですよね。その知性が非常に探究心を煽るというか、観ていて、自分の中の何かが刺激されている感じがするのが好きなんですよね」音尾さんといえば、出演はわずかながら、妙な存在感を残したドラマ『VIVANT』が記憶に新しい。「完全に演出のおかげです。あえてもったいぶった出し方をして、視聴者の方にそう思わせる。まさに福澤(克雄)監督の思惑通り。そうやって、見る方の意識を思い通りに誘導できる方でないと、作れないものっていうのがあるんですよね。それはKERAさんも同じなんですけど」笑いながら語るその言葉の奥に流れるのは、深い信頼とリスペクト。「これは白石(和彌)監督にもいえるんですが、信頼している監督の作品ならば、どんなにちょっとでも、いつでも出させていただきたい。『そんなわけにいかないよ』って言われますけど、信頼できる方となら、どんな役でもやりたいです」ケムリ研究室 no.3『眠くなっちゃった』いつか見た懐かしい未来、どこかの国の話。娼婦のノーラ(緒川)。今は、夫のヨルコ(音尾)と一見、穏やかな日々を過ごしているが…。ほろ苦い異色のSF劇。10月1日(日)~15日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/緒川たまき、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、近藤公園、松永玲子、福田転球、平田敦子、永田崇人、小野寺修二、斉藤悠、藤田桃子、依田朋子、山内圭哉、野間口徹、犬山イヌコ、篠井英介、木野花S席1万2800円A席8800円U‐25チケット6000円キューブ TEL:03・5485・2252北九州、兵庫、新潟公演あり。おとお・たくま1976年3月21日生まれ、北海道出身。TEAM NACSのメンバーとして人気を博し、ドラマ、映画、舞台などで活躍。10月24日深夜スタートのドラマ『マイホームヒーロー』(TBS系)への出演が控える。※『anan』2023年10月4日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2023年10月03日2022年11月から12月にかけて下北沢・本多劇場ほか各地で上演されたKERA・MAP #010『しびれ雲』のDVDが、本日9月22日にリリースされた。『しびれ雲』は、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、主宰劇団「ナイロン100℃」以外の演劇活動の場として2001年にスタートした「KERA・MAP」の第10回公演。KERA・MAP『キネマと恋人』(2016、2019年) の舞台となった“梟島(ふくろうじま)”を舞台に描かれる、まったく新たなストーリーで、静かで穏やかな暮らしの中で描かれる“小津作品”への憧憬のようなKERA作品では“異色作”となっている。出演者は、下北沢・本多劇場初出演となる井上芳雄を始め、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、石住昭彦、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人など多彩な俳優陣が集結した。『しびれ雲』ビジュアルDVDの特典には、井上芳雄とKERAの新録対談、KERA念願の『しびれ雲』本編モノクロバージョン全編収録、オリジナル曲「ああ幸せの波はそよいでる」の大合唱となった新潟大千穐楽のダイジェスト映像、犬山イヌコとKERAによるトークイベント「INU-KERA」の井上芳雄ゲスト回ダイジェスト映像、萩原聖人・松尾諭・菅原永二が3時間語り尽くす充実の副音声コメンタリー、と特典満載のパッケージとなっている。<リリース情報>KERA・MAP#010『しびれ雲』DVD発売中価格:8,800円(税込)『しびれ雲』DVDジャケット【仕様】DVD片面2層2枚組DISC 1:本編104分・特典映像132分DISC 2:本編90分・特典映像114分COLOR/MPEG-2/ステレオ/16:9/ALL NTSC/複製不能/トールクリアケース仕様収録日:2022年11月16日(水) 下北沢・本多劇場作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人【特典映像】・井上芳雄 × ケラリーノ・サンドロヴィッチ対談(新録)・『しびれ雲』モノクロバージョン(limited for DVD)・新潟大千穐楽カーテンコールダイジェスト・INU-KERA vol.88 ダイジェスト映像(2023年2月4日(土) 開催 at ロフトプラスワン/犬山イヌコ×ケラリーノ・サンドロヴィッチ×井上芳雄)【特典】・副音声コメンタリー収録(萩原聖人×松尾諭×菅原永二)詳細はこちら:
2023年09月22日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が作・演出を手がけた舞台『世界は笑う』のDVDの一般発売が、本日6月21日(水) 正午よりスタートした。2022年8月から9月に東京・京都で上演された本作では、昭和32年の東京・新宿にある軽演劇の劇団「三角座」を舞台に、喜劇人と彼らを取り巻く人々が織りなす哀しくて可笑しい群像劇が繰り広げられる。出演者は、瀬戸康史、松雪泰子、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶といったキャストが集結。喜劇に取り憑かれた人々の悲喜劇を描き切り、話題となった。映像には、KERA自ら監修したこだわりの編集により、総勢17名のキャストのあふれる魅力がしっかりと収められている。“手紙”のシーンも瀬戸が直筆で書き添え、映像ならではの編集がされている。また、特典には昭和の喜劇を愛するラサールとKERAによる作品背景を深掘りする対談、京都公演大千穐楽カーテンコールの模様、瀬戸、マギー、犬山イヌコによる副音声コメンタリーと、作品をより楽しめるコンテンツが収録されている。<リリース情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』DVD発売中価格:8,800円(税込)COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』DVDジャケット作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子【収録日】2022年8月24日(水) Bunkamuraシアターコクーン【特典映像】・対談「昭和30年代の喜劇について」ラサール石井×ケラリーノ・サンドロヴィッチ・京都大千穐楽カーテンコールダイジェスト【特典】・副音声コメンタリー収録:瀬戸康史×マギー×犬山イヌコ詳細はこちら:
2023年06月21日2022年11月から12月に東京・本多劇場ほかで上演されたKERA・MAP #010『しびれ雲』の模様が、1月23日(月) 12時よりオンデマンド配信されることが決定した。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が主宰するユニット「KERA・MAP」の第10回公演となった今作は、KERA・MAP『キネマと恋人』(2016年、2019年)の舞台となった“梟島(ふくろうじま)”を舞台に新たに描かれた物語。ある地方の小さな島、独特な方言を持つ小さなコミュニティで、未亡人の波子(緒川たまき)、妹の千夏(ともさかりえ)、その夫の文吉(萩原聖人)をはじめ、住人それぞれが友人、恋人、家族、親戚と人間関係を育くみ、慎ましく日々を送る。そんな島に、ある日忽然と謎の男(井上芳雄)が現れ……。井上にとって本多劇場に出演するのは本作が初。ささやかなかつての“日本の暮らし”が味わい深く描き出されたKERAにとっては異色の一作となっている。視聴チケットは現在一般発売中。なお1月29日(日) までアーカイブ配信が予定されている。<配信情報>KERA・MAP #010『しびれ雲』オンデマンド配信1月23日(月) 12:00 配信開始アーカイブ配信:1月29日(日) 23:59までKERA・MAP #010『しびれ雲』キービジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:井上芳雄緒川たまきともさかりえ松尾 諭安澤千草菅原永二清水葉月富田望生尾方宣久森 準人石住昭彦三宅弘城三上市朗萩原聖人配信内容:本編(2022年11月16日(水) 収録映像。配信限定編集版)視聴チケット料金:イベント割適用価格:2,800円(税込)(通常価格:3,500円(税込))発売期間:1月29日(日) 20:30までキューブ オフィシャルサイト:
2023年01月13日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が作・演出を手がけた舞台『世界は笑う』の模様が、2023年2月11日(土) にWOWOWで放送・配信されることが決定した。今作でKERAが題材にしたのは“昭和の喜劇人”。昭和の東京をモチーフにした「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から“昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、敗戦から10年強の月日が流れた東京・新宿を舞台に、決して喜劇とは言い切れない人間ドラマを描く。出演は、KERAとは3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目の松雪泰子をはじめ、KERA作品は初となる千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶ら総勢17人。“全員主役の群像劇”というKERAの言葉通り、俳優陣の魅力的なキャラクターが息づき、登場人物それぞれが抱える人間ドラマを重層的に堪能できる作品となっている。<番組情報>『世界は笑う』2023年2月11日(土) 18:15WOWOWライブ / WOWOWオンデマンド収録日:2022年8月24日(水)収録場所:東京・Bunkamuraシアターコクーン【スタッフ・キャスト】作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子番組HP:
2022年12月26日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作、KERA・MAP #010『しびれ雲』が、11月12日(土) 下北沢・本多劇場で開幕し、舞台写真とコメントが到着した。本作は、本来11月6日(日) が初日であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕延期に加え7公演が中止となり、準備期間を経て開幕の運びとなった。『しびれ雲』は、KERA・MAP『キネマと恋人』(2016、2019年) の舞台となった“梟島(ふくろうじま)”を舞台に描かれる、まったく新たなストーリー。ある地方の小さな島。少しとぼけた響きが微笑ましい独特な方言を持つ小さなコミュニティには、未亡人の波子やその妹の千夏、その夫の文吉をはじめとした人々が住み、家族、友人、恋人……それぞれに人間関係を育む人々の日常が繰り広げられている。そんな島に、ある日忽然と謎の男が現れて……。本多劇場初登場となる井上芳雄をはじめ、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人など華やかな出演陣が、小さな梟島に生きる個性豊かな人々を演じる姿に時間を忘れて、いつまでも梟島弁と潮の香りと波の音に包まれていたいような気持になる。どこか自らの日々の暮らしとも重なるような、KERAが公演前に公言していた“小津作品”への憧憬のような、懐かしさも感じさせる手触りもある。KERAにとっては“異色”とも言える新たな色の作品が誕生した。■井上芳雄 コメント通常でも、新作ですしギリギリの状態でドキドキしながら迎える初日、今回開幕が少し伸びてしまい、お客様に申し訳なかったのですが、遂に迎えられた初日は最高でした。今回は大爆笑を狙うような芝居ではありませんが、最初お客様がどっと笑った時、感動して少し涙が出ました。ここまでの道のりを経て、初日の幕が開いて、良い芝居をやらせてもらっていて心底嬉しいです。また、僕は本多劇場に立つのが初めてですが、客席との距離感や温度感を感じながら、お客様がしっかり観て反応してくださっていることが伝わって来て、教えてもらう事だらけです。KERAさんと前回ご一緒した『陥没』、そしてコロナ禍で本番が出来なかった『桜の園』以来、KERAさんの作品で芝居をするのはやっぱり楽しいな、と改めて感じました。『しびれ雲』は演じながら、笑いながらも心に染みるものがあって、KERAさんは作りたいと仰っていた通りのものを作られ、本当に凄いなと思ってます。「また明日やるのが楽しみだ」と思えるのが幸せな事だし、お客様には胸を張って「良い作品ができました」とお伝えしたいです。最後まで無事にできるようにと祈りつつ、皆様の健康も祈っています。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント今回は珍しく、姑息に笑わせようとか無闇に緊張させようとかいった狙いが全く無い、真っ直ぐで暖かでささやかな群像劇です。普遍的な人間の営みを描いていて、登場する人々もどこにでもいる平凡な人達。一方、失われてしまった「家族」と言う制度とか型みたいなものも描いています。お客さんはどこかしら自分と重ねる部分があるのではないでしょうか。そろそろこうした芝居を作っておきたかった。50代最後に皆で創作できたのは幸せです。なので、リラックスして好きに観てもらいたいと思っています。最終稽古の最後に、キャストには、細かいミスがあったとしても、梟島の人として皆が生きてくれていればきっと良い拍手が貰えるだろうからそれを信じて、というようなことを言ったんですけれども、とても良い拍手だった。お客さんはすごく集中して観て下さっていて嬉しかったです。座組も新鮮なバランスでとてもいい感じです。座長の井上芳雄君は、いつもは帝劇みたいな広い劇場でやっている人ですから、本来のスケール感と全く違う会場で演じているわけですけれど、良くこんなにスッと順応できるなと驚きます。今回、チケットを手にしながらも開幕延期でご観劇が叶わなかった7ステージのお客様には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。もう少し早く開けられなかったのかという声も聞こえてきましたが、準備不足の杜撰な状態で開幕してしまうというのは僕の本意では無く、そこを貫かせて頂きました。ご理解ください。『しびれ雲』は、10月から年末にかけてを描いています。少々気が早いですが、ご覧になったお客様に、良い年を越せそうだなあと感じて頂けたら嬉しいです。<公演情報>KERA・MAP #010『しびれ雲』KERA・MAP #010『しびれ雲』ビジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦三宅弘城、三上市朗、萩原聖人【東京公演】11月12日(土)〜12月4日(日) 下北沢 本多劇場【兵庫公演】12月8日(木)〜11日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【北九州公演】12月17日(土)・18日(日) 北九州芸術劇場 中劇場【新潟公演】12月24日(土)・25日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場お問い合わせ:キューブTEL:03-5485-2252(平日12:00~17:00)キューブ オフィシャルサイト:
2022年11月14日さまざまなドラマや映画で活躍する名バイプレイヤー。…だと思っていたら、その半生が『拾われた男』としてドラマ化され、今や国内外で配信されている松尾諭さん。「日常のクスッとしたおかしみを作りたいと言われています」「周りから『見たよ』とか言われるとすごく恥ずかしいんです。一気に毛穴が開く感じがする(笑)。でも、今の稽古場には見てる人、あんまりいないんじゃないかな。みんなそこまで僕に興味がないと思うので」と控えめ。ただ、コメディしかりサスペンスしかり、出演作への期待値を上げてくれる俳優なのは間違いない。その松尾さんが今取り組んでいるのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さん作・演出の舞台『しびれ雲』。小津安二郎や岸田國士をイメージした世界観で書き上げるささやかで静かな芝居。「KERAさんからは、何が起こるわけではないけれど、日常で人が話している中に生まれるクスッとしたおかしみみたいなものを作りたいと言われています。学生時代に小津映画をレンタルして観ることはあったけれど、当時はどこか義務的に観ている感じでした。でも今回、稽古場で参考にみんなで観たんですけれど、こんなに面白かったんやって思ったんです。ようやく面白さに気づける年齢になったのかもしれないです。僕の役で言うと、佐分利信(さぶり・しん)みたいな感じでと言われています。まだ探りながらですけれど、KERAさんは演出が的確で、ここをどう見せたいのかがわかりやすいし、どう言えば僕たちに伝わるかをすごく考えてしゃべってくれるので、いちいち全部、なるほどって思えて楽しいです」物語の舞台は、架空の地方の島。それゆえ登場人物たちはKERAさん考案の創作方言をしゃべることに。「“~だり”とか“~がっさ”って語尾があるんです。実在していない方言なので結構適当なのかと思って、楽なのかなって思っていたけれど、間違えると言い直させられるし、ナメてました(笑)。ただ方言でしゃべる芝居自体は好きなんですよ。方言があるだけでキャラクターが一個できるし、これは僕の実感ですが、セリフ回しが方言になっていることで、小津作品のあの独特の空気感が自然と醸し出されている気がして、あれは発見だなと思います」活動の場は映像が多いが、舞台は「毎回やるたびに発見があって、息遣いが変わるだけで何かが変わるライブ感が楽しい」と話す。「セリフを体で表現するので肉体派の僕の性には合っています。…肉体派かはわからないですけど(笑)」KERA・MAP #010『しびれ雲』昭和初期、海に囲まれた孤島・梟島。海に浮かぶ舟の上に、頭から血を流した謎の男(井上芳雄)が見つかった。男はフジオと呼ばれ、島で暮らし始めるが…。11月6日(日)~12月4日(日)下北沢・本多劇場作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人全席指定8500円ほかキューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~17:00)兵庫、北九州、新潟公演あり。まつお・さとる1975年12月7日生まれ、兵庫県出身。2007年のドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』で注目される。放送中のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』に出演。※『anan』2022年11月2日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年11月01日今夏8月から9月にかけてBunkamura シアターコクーン、京都劇場で上演された、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作舞台『世界は笑う』のオンデマンド配信が決定した。本作は、昭和32年の東京・新宿で活動する軽演劇の劇団「三角座」を舞台に、混沌とした時代を生きる喜劇人と彼らを取り巻く人々が高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす哀しくて可笑しい群像劇。瀬戸康史、千葉雄大、勝地 涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子ほか、若手からベテランまで多彩な実力派キャストが結集し、喜劇に取り憑かれた人々の様々な人生の悲喜劇を描いた作品だ。配信期間は、Bunkamuraの動画配信サービス「Bunkamura STREAMING」で11月11日から25日まで、「PIA LIVE STREAM」で11月11日から18日までとなっている。視聴チケットは、配信開始時間と同時の11月11日12時より販売がスタートする。<配信情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』『世界は笑う』メインビジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史 / 千葉雄大 / 勝地 涼 / 伊藤沙莉大倉孝二 / 緒川たまき / 山内圭哉 / マギー / 伊勢志摩 / 廣川三憲 / 神谷圭介犬山イヌコ / 温水洋一 / 山西 惇 / ラサール石井 / 銀粉蝶 / 松雪泰子【配信期間】■Bunkamura STREAMING2022年11月11日(金) 12:00~11月25日(金) 23:59チケットはこちら:購入・視聴ガイド:■ぴあ「PIA LIVE STREAM」2022年11月11日(金) 12:00~11月18日(金) 23:59チケットはこちら:ご利用ガイド:■視聴券料金:3,500円(税込)※配信される舞台映像は、Bunkamura シアターコクーンにて収録された映像を配信用に編集した“配信限定編集版”となります。Bunkamura シアターコクーン『世界は笑う』特集ページ:
2022年10月28日ミュージカルのみならず、様々なジャンルの舞台作品への出演が続く井上芳雄。次に登場するのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)によるKERA・MAP#010『しびれ雲』である。作品について今わかっている情報はほとんどない。でも、「未知だから面白い」と井上の表情はほころぶ。この頼もしい俳優から飛び出す言葉は、KERAの新作への期待を高めていく。井上がKERA作品に参加するのは、『陥没』(17年)、舞台稽古まで終えながら全公演中止となった『桜の園』(20年)に続いて3度目。その創作を「魔法のようだ」と表現する。「KERAさんは稽古をしながら台本を書かれることが多いと聞いていたんですが、徐々に上がってくるものが本当に面白くて。これは他のKERAさんの作品にも言えることですけど、最終的にものすごく高いクオリティで、観たことのない世界ができあがり、お客さんに喜んでもらえる。こんなことができる人がいるんだと、初めてご一緒したときはびっくりしました」。今回の『しびれ雲』も、現時点でわかっているのは、KERA・MAP#007/#009『キネマと恋人』(16年/19年)の架空の島が舞台になるということくらい。しかし、井上は楽しそうに語る。「『陥没』のときも予想とは全然違う話になりましたし(笑)。僕自身は、全くわからないで始まるなんてこんな楽しいことはないと思うんです。わからないから下準備もいらないし(笑)。『キネマと恋人』で緒川たまきさんが話されていた島の架空の方言をやらなきゃいけないかもしれませんけど、それもそのときになって頑張れば何とかなると思っています」。KERAのコメントには、小津安二郎、岸田國士、アキ・カウリスマキの名前が並ぶ。「小さな、喜び、悲しみ、驚き、嫉妬、幸せ、不幸、ぼんやりした時間を描きたい」ともある。ビジュアル写真からも、「昭和の映画みたいな匂いは感じる」とか。「なので、必要であれば小津安二郎さんの映画なども観たいと思いますし。KERAさんの作品って、ニュアンスの強弱とかちょっとしたことの積み重ねでできあがっていくイメージで、誰一人欠けてもその世界が成立しない感じがするので。カンパニーの皆さんと一緒にただただその世界に入り込んで、そこで右往左往して泣いたり笑ったりできたらと思います」。しかも、東京公演が上演されるのは、井上にとって初となる本多劇場。ミュージカルで帝劇などの大劇場に立つことの多い井上の繊細な芝居が目撃できるはず。「小劇場の下北沢のお客様と、ミュージカルの日比谷のお客様が、行き来するきっかけにもなったら嬉しいです」。舞台を愛する俳優の心からの言葉だ。(取材・文:大内弓子)
2022年08月30日8月11日にBunkamuraシアターコクーンにて、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作・演出の新作舞台COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』の上演がスタートした。KERAが自身の“昭和”という時代への愛着を込め、初めて“昭和の喜劇人”を題材に描いた作品であり、5年ぶりのBunkamuraシアターコクーンでの新作となる今作。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当初予定されていた初日8月7日から5公演の中止を経て、満を持しての上演となった。戦後の色を残しながらも活気づいていた昭和32年の東京・新宿。その一角に常打小屋を持つ軽演劇の一座「三角座」があった。彦造(瀬戸康史)は三角座で喜劇俳優をしている弟の是也(千葉雄大)を訪ね上京する。劇団には、若手俳優・大和(勝地涼)や、踊り子・撫子(伊藤沙莉)、古株俳優のトーキー(ラサール石井)、興行主の蛇之目(銀粉蝶)、貸本屋で働きながら劇団を手伝う初子(松雪泰子)など……様々な人々が交差し、高度経済成長期前夜の新宿で、哀しくも可笑しい人間群像が描かれていく。本作は“全員主役の群像劇”というKERAの言葉通り、俳優陣の魅力的なキャラクターが息づき、重層的な人間ドラマを堪能できる一作となっている。また開幕に際し、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチよりコメントが届いている。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント初日の幕が開き、ほっとしています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で初日が伸びてしまい、また周囲でも公演が中止になったり延期になったりしている中、ともかく一回目を終えられて、本当に良かったと思っています。そういった特殊な環境下での“安心”にも少し慣れてきてしまった感もありますが、そんな安心はしないで済む状況に早くなってくれることを願います。通常初日を観劇して下さるお客様は前のめりに見てくださる印象があります。今日は本来初日ではなかった日ですので、ニュートラルな客層かなと思っていたのですが、非常に熱と集中力を持ってご覧になって下さり、ありがたかったです。本当にキャストとスタッフとお客様に感謝の気持ちで一杯です。作者としては、喜劇人達への個人的なラブレターというか、落とし前というか、そういった意味で、非常に特殊な、この作品にしかない思いがあります。こんな芝居を創ることが出来たのは幸せです。<公演情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』『世界は笑う』メインビジュアル【東京公演】2022年8月11日(木・祝)~8月28日(日) Bunkamuraシアターコクーン※8月7日(日) 18:30~11日(木・祝) 13:00の5公演は中止となりました。【京都公演】2022年9月3日(土)~9月6日(火) 京都劇場作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ■出演瀬戸康史 / 千葉雄大 / 勝地 涼 / 伊藤沙莉大倉孝二 / 緒川たまき / 山内圭哉 / マギー / 伊勢志摩 / 廣川三憲 / 神谷圭介犬山イヌコ / 温水洋一 / 山西 惇 / ラサール石井 / 銀粉蝶 / 松雪泰子公式サイト:
2022年08月16日舞台『世界は笑う』は、昭和30年代初頭の混沌とした時代に生きる喜劇人たちと、彼らを取り巻く人々との群像劇。これまでもさまざまな形で喜劇や喜劇人に焦点を当ててきたケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんが描く今作に、伊藤沙莉さんが参加する。KERAさんの笑いの間を知って、自分の新たな世界が切り拓かれたら。「KERAさんの作品は、わかりやすいコメディというわけじゃないのに、すごく笑った記憶だけがあるんですよね。何がと言われるとうまく説明できないけれど、コメディでもシリアスでも、会話の言葉とかテンポとか…間で何かを語るところが結構あって、その独特の世界観がすごく面白い。1回じゃ味わい尽くせない何かがあって、どんなに追いかけても追いつかない感じが、いつか中毒性に変わっていく。その不思議な世界に迷い込む感覚が、とても気持ちいいんですよね」今回、伊藤さん、瀬戸康史さん、千葉雄大さん、勝地涼さんらリアルな昭和を知らない俳優陣に向け、KERAさんによる当時の時代性や喜劇を学ぶワークショップも催された。「基本的にほぼ座学で、昔のアチャラカとか寅さん、それに藤山寛美さんの映像などを見ながら、KERAさんが『ここの間が…』とか、副音声のように解説してくださる。なんて贅沢な時間なんだと思いましたし、KERAさんの笑いに対する底なしの探究心や好奇心も感じました」そこで触れた半世紀以上前の笑いは、「一周回って新しかった」そう。「いわばコテコテの、わかって予測できる流れにある笑いにもかかわらず、それを超えて笑わせられるってすごいこと。新しい笑いが次々生まれている中で、じつはコテコテこそ一番難しいかもしれない。笑いの初級でありながら、追究し始めたら一番難解な場所なんじゃないかって」とはいえ、伊藤さんといえばドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』のナレーションなど、絶妙なセリフの間でクスッと笑いをもたらす俳優だ。「笑いって、悲劇以上に人によって差があると思うんです。たとえば私がベストだと思う間はKERAさんの世界観に合わないかもしれないですよね。今はそのことへの恐怖や緊張もあるけれど、KERAさんの間を知って、自分の新たな世界が切り拓かれるのがすごく楽しみです」舞台出演は約1年ぶり。「お芝居という意味では映像と何ら変わらず好きで楽しいけれど、まだ演出をつけてもらわないと舞台上で自由に動けない難しさは感じています。それをKERAさんに相談させてもらったら、『動きたいと思ったときに動くのが正解で、そこから始めると意外とスムーズかもしれない』と言ってくださって、すごくホッとしたんですよね」子役から積み上げたキャリアゆえか、肝が据わっているように見えるけれど、意外にも心配性?「心配性です。でも緊張していると、稽古場でKERAさんの言葉にほぐされる…の繰り返し。まるでお芝居の筋トレをしている気持ちです」COCOON PRODUCTION 2022+ CUBE 25th PRESENTS, 2022『世界は笑う』戦後から10年強が経ち、世相の変化と自身の衰え、若手の台頭に、不安を抱えるベテラン喜劇俳優たち。一方、新しい笑いを求める若手コメディアンたちも、ままならない思いを抱え…。8月7日(日)~8月28日(日)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子S席1万1000円A席9000円コクーンシート5500円Bunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00)京都公演あり。いとう・さいり1994年5月4日生まれ、千葉県出身。ドラマ『拾われた男』(Disney+・NHK BSプレミアム)に出演中。8月20日に主演ドラマ『ももさんと7人のパパゲーノ』(NHK総合)が放送。ロングカーディガン¥41,800ワンピース¥66,000(共にHaat/イッセイ ミヤケ TEL:03・5454・1705)リング¥15,400(nanaguinfo@nanagu.co.jp)イヤーカフ¥6,600(torcjapan.torc@gmail.com)※『anan』2022年8月3日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・吉田あかねヘア&メイク・AIKOインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年07月31日KERA・MAP #010『しびれ雲』が、11月6日から12月4日にかけて東京・本多劇場で上演されることが決定した。劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、主宰劇団「ナイロン100℃」以外の演劇活動の場として2001年にスタートした「KERA・MAP」。その第10回公演となる本作は、#009として世田谷パブリックシアターで上演された『キネマと恋人』の再演以来、KERA・MAPとしては約3年ぶりの新作公演となる。出演者は、本多劇場初出演となる井上芳雄を始め、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人など、多方面で活躍する幅の広い俳優陣が集結。併せて、昭和の雰囲気漂うレトロな映画のポスターのようなビジュアルも公開された。本作は本多劇場で上演後、12月8日から11日にかけて兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、12月17日・18日に福岡・北九州芸術劇場 中劇場、12月24日・25日に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場で上演される。■作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント『キネマと恋人』以来、久しぶりのKERA・MAP。これが50代最後の戯曲、最後の公演になる。『キネマ~』の舞台にもなったあの島を舞台に、全く異なるトーンの作品を書く。まだコレの前作を執筆しているので実際にはないが、きっと私の書斎の机には小津安二郎や岸田國士やアキ・カウリスマキの諸作が積み上げられることだろう。小さな、喜び、悲しみ、驚き、嫉妬、幸せ、不幸、ぼんやりした時間を描きたい。またもや素敵なキャストが集まってくれた。かつて小津は「僕は豆腐屋だ。せいぜいガンモドキしか作れぬ。トンカツやビフテキはその専門の人々に任せる」と言ったが、なんでも屋の私は今回、豆腐を作ってみる。還暦を前にして豆腐を作りたくなるのも、自然なことのように感じる。美味い豆腐が出来ますように。<公演情報>KERA・MAP #010『しびれ雲』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦三宅弘城、三上市朗、萩原聖人【東京公演】11月6日(日)〜12月4日(日) 下北沢 本多劇場チケット一般発売日:9月24日(土)【兵庫公演】12月8日(木)〜11日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【北九州公演】12月17日(土)・18日(日) 北九州芸術劇場 中劇場【新潟公演】12月24日(土)・25日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場お問い合わせ:キューブTEL:03-5485-2252(平日12:00~17:00)キューブ オフィシャルサイト:
2022年07月15日2001年に初演されたケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)作の舞台『室温~夜の音楽~』は、12年前に起きた殺人事件を軸に物語が展開され、次第に過去の真相が明らかにされていくホラー・コメディ。初演時、作品のダークでどこか浮遊感漂うムードを牽引していたのが、たまの楽曲と生演奏。今回の上演にあたり、音楽の刷新を決めた演出の河原雅彦さんが白羽の矢を立てたのが在日ファンクだった。「最初はもちろん尻込みしました。でも初演時の台本を読ませていただいたら、物語が歌の世界観と一体になって進行していく構成にものすごくそそられたんです。僕らとたまさんとではスタイルが全然違うというのもあったし。なにより、河原さんが一緒にやりたいと言ってきてくださったことが、ワクワクと同時にすごく嬉しかったんですよね」浜野謙太さんはにこやかに話した後、真面目な表情になり「メンバーのモチベーションを大事にしているから…」と続けた。「バンドが作品の賑やかしのためのコンテンツとして弄ばれる…みたいなことがあんまり好きじゃないんです。でも今回、河原さんは本当に在日ファンクを気に入ってくださっていたし、音楽全体に対する深い愛も感じて、メンバーを説得しました」当初は既存曲を使用したいとの依頼だったが、なんと今作のために新曲を多数書き下ろしている。「マネージャーが促してくれたんです(笑)。メンバーにも振って個々に作り始めたんですが、自然と普段にはない目的意識で違うアプローチになるわけじゃないですか。それがすごく作曲のバリエーションにつながったし、作品の世界観から掻き立てられるものもありました。僕の曲だけじゃなく、いつもアーバンなかっこいい曲を作ってくるギターの仰木(亮彦)の曲も、この作品に当てはめると、不思議と不気味に感じられたのも新感覚でしたね」物語が展開されるのは、12年前に殺害された少女の双子の姉と父である作家が暮らす家。そこに集まってきたバラバラな人々が絡み合い、かつての事件の真相が明らかにされていく。俳優としても出演する浜野さんの役は、タクシー運転手・木村。「じつは学生のときにKERAさんのホンを上演させてもらったことがあって、変なテンポで進んでいく会話とか、そのズレで笑いが起きる感じがすごく好きだったんです。僕は音楽をやっているからか、KERAさんのテンポってたぶんこうだろうなって思って木村を演じちゃうんですが、河原さんは、この場面のズレの面白さはなぜ起こるのか、というところから木村の性格を導き出してリズムに反映する…みたいな本当に細かい部分から“逆”逆算しながら作っていく感じが面白いですね」コメディリリーフ的な役割も担う。「場を乱していく奴なんで、バンドでの僕の立ち位置とあまり変わらない」と笑いを交えて語るが、後々とんでもないことを引き起こす人物だ。「やればやるほど懐がすごく深くて、すごいホンだなと思うことがいっぱいあるんです。ホラーかサスペンスか、コメディか…と油断していると胸を掴まれる部分があったりするので、油断して観に来てほしいですね」『室温~夜の音楽~』12年前、集団暴行を受け殺害されたサオリ。彼女の十三回忌、父であるホラー作家の海老沢(堀部)とサオリの双子の姉・キオリ(平野)の暮らす家に、加害少年のひとり、間宮(古川)が訪ねてくる。6月25日(土)~7月10日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出/河原雅彦音楽・演奏/在日ファンク出演/古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮ほかS席9500円A席7500円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)兵庫公演あり。はまの・けんた1981年8月5日生まれ、神奈川県出身。在日ファンクのボーカル兼リーダーで、俳優としても活躍。最近の出演作に映画『劇場版ラジエーションハウス』など。Tシャツ¥19,800パンツ¥44,000(共に71MICHAELcontact@71michael.jp)※『anan』2022年6月29日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・森川雅代(1994)ヘア&メイク・阿部孝介(traffic)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年06月26日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が作演出を手がけた『室温~夜の音楽~』を21年ぶりに上演。河原雅彦が演出を担う。そこで河原と共に、音楽と出演を兼ねる在日ファンクの浜野謙太、主演の古川雄輝が出席した取材会に参加。その模様をレポートする。KERA作品を手がける上で、真っ先に浮かんだのがこの『室温』だったと言う河原。「僕はとても音楽が好きで、この『室温』は副題にもあるように音楽と共にある作品。で、前作の“たま”の音楽の土着感から考えてファンクだ…“在日ファンク”だ!って(笑)。実際すごくハマっていますし、いい芝居を作らないと音楽に持ってかれちゃうなってくらい、ハマっていると思います(笑)」だが当のバンドメンバーは、本作への参加に当初懐疑的だったと浜野は言う。「ただ河原さんと本当に一から組み立てさせてもらったので、今ではある意味、共犯みたいな気持ちが強いです。何曲か書き下ろしもあって、ライブだけでは表現出来なかったことが、今引き出されている感じ。バンドとしても新しい一歩を踏み出させてもらって、とても感謝しています」双子の妹を拉致・監禁、集団暴行された上に殺された、キオリとその父。妹の命日、親子の家にはさまざまな人々が訪れて――。浜野演じる木村と古川演じる間宮も“さまざまな人々”のひとりだが、その役どころの説明は難しく、古川自身「稽古が進むにつれ、今まで思っていた人物像とはちょっと違ってきていて…。どういう役かと聞かれても、なかなか難しくて答えられないんです」と顔を曇らせる。そんな不安げな古川に河原から、「でも素敵ですよ」とひと言。さらに「わからないことをわからないという俳優は、とても誠実だと思います」との言葉に、浜野も「わからない時のポカーンって顔が、僕にとってはまさに間宮。だからもう出来てるじゃんって思います」と笑う。すると古川も、「役としっかり向き合えるのは舞台ならでは。そういう意味でいい時間を過ごせているなと思います」と語る顔は、少し明るくなったように見えた。最後に河原は、作品の魅力について改めてこう語る。「僕が好きなのは、いろんな感情を持って帰れる多面的な作品。KERAさんはそういうものを書ける作家さんで、この『室温』もどこまでも真っ黒で、どこまでも真っ白な作品なんですよね。ただそのホンを預かる以上、初演にはない面白さを出せなければ、やっぱり僕らの負け。だから勝てるように頑張ります!」取材・文:野上瑠美子
2022年06月10日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の新作は、KERA自身愛してやまない昭和を生きた喜劇人たちの物語。昭和30年代初頭の新宿を舞台に、総勢17名のキャストが入り乱れる群像劇だ。そこで演出も担うKERAと、KERA作品への出演は3作目となる瀬戸康史、初めての千葉雄大に、現段階での本作にかける想いを語ってもらった。笑いがなければ演劇も続けてこられなかった――昭和の喜劇人に対するKERAさんの想いはこれまでも度々お聞きしてきましたが、改めてKERAさんが喜劇人たちに心惹かれる理由とは?KERA自分がコメディを作り続けてきたそもそものきっかけが、そういう人たちへの興味だったと思うんです。やっぱり笑いが好きだし、笑いにたくさん救われてきたし、笑いがなかったらここまで演劇も続けてこられなかったと思うので。あとは父親の関係で、幼少期に喜劇人たちが偶然周りにいたってことも大きいと思いますね。――昭和30年代初頭の喜劇人たちの群像劇とのことですが、現段階での構想は?KERA当初は『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』(19年) のような、理屈では説明出来ない、不条理な作品にしようかと考えていたんです。1幕は人間ドラマで、2幕にかけて思いもよらない展開をしていく、みたいな。でもそれはちょっと欲張り過ぎかなと。20人近い登場人物をそれぞれ着地させようと思ったら、5時間半ぐらいはかかってしまう(笑)。だから人間を描くってところだけにとどまっていても、書いていてある意味弾んでしまうところはあるだろうし、自分では普通の人間ドラマを書いているつもりでも、そうではないものになるに違いない(笑)。だったらそれでいいのかな、と思っているんです。笑いってものの表現の幅がすごく広がっている――瀬戸さんがKERAさん作品に参加されるのは、『陥没』(17年) 、『ドクター・ホフマン~』に続いて3作目ですね。瀬戸ほかの現場と比べても、KERAさんとは“一緒に作っている感”が強いんです。KERAそれは嬉しいな。瀬戸あと僕はKERAさんに感謝しかなくて。僕自身知らない扉を開けてくださいましたし、KERAさんのおかげで僕に対する周りの見方が変わったと思っていて。だからまたこうやって一緒に作品を作れるってことが、ただただ嬉しいです。――千葉さんはKERAさん作品への参加は初ですが、上京後に初めて観た舞台が、KERAさん演出の『どん底』(08年) だったそうですね。千葉はい。今回この中に入れていただけるってことが、まずは本当に嬉しかったです。それと物語の舞台が昭和30年代ということで、知らないことを知れる機会をいただけたってこともありがたいなと。あと以前から「KERAさんの頭の中ってどうなっているんだろう?」と気になっていたので、KERAさんの手によって自分がどうなっていくのか。それも今から楽しみです。――お稽古はこれからとのことですが、瀬戸さん、千葉さんはすでに2度、KERAさんのワークショップを受けられたと伺いました。KERA昭和に最も縁遠いであろう瀬戸くんと千葉くん、あと(伊藤)沙莉ちゃんと勝地(涼)くんに、ちょっと昭和30年代を勉強してもらいたいなと思って。岸田國士の『かんしゃく玉』を読んだり、過去の映像を見たりしました。主眼はやっぱり、稽古が始まった時点でその時代の人になってもらうこと。ただ昭和を知っているほかのキャストに比べて、どうしてもスタートが遅くなってしまう分、焦りもあると思うんです。そのために少し心に余裕を持ってもらう、そのためのワークショップですね。瀬戸まずはみんなで集まってなにかをやる、っていう時間がとても楽しかったです。稽古を前に、さらにワクワクした気持ちになったというか。あと改めて、笑いって進化しているんだなと感じました。例えば海外の、ニール・サイモンのジョークとかを聞いても、「これはジョークなのか?」とわからなかったりするんですが、時代は違えども、そこは同じ日本人なのでやっぱりわかる。ただレパートリーが増えているというか、笑いってものの表現の幅がすごく広がっているんだなと。それは非常に面白いなと思いました。千葉拝見した映像の中には、喜劇人の方たちのドキュメンタリーなどもありました。舞台上ではこんなに面白いことをやっているのに、プライベートでは実はこんな壮絶なことがあって……みたいなことも初めて知れて。そのギャップというか、一筋縄ではいかないみたいな部分は、自分が演じる上でも意識していきたいなと思っています。瀬戸と千葉がまったく性格の異なる兄弟役に――おふたりの役どころのイメージは?KERAまだ全然決まっていないです。ほかのパズルを組み立てていく中でのバランスなので。ただ瀬戸くんと千葉くんは、9割方兄弟にしようと思っています。見た目が似ているふたりなので、いっそのこと兄弟っていうのも面白いかなと。しかもまったく性格の違う兄弟。もともとは瀬戸くんが兄貴かなと思っていたんですが、千葉くんが兄貴っていう線も面白いかもしれないですね。瀬戸・千葉(笑)。瀬戸千葉くんとは同い年で、顔も似ていると言われて、10年前ぐらいからお互い知ってはいました。当時はすごくキャピキャピした印象でしたが(笑)、数年前に映画で久しぶりに会った時、すごく芯が太くなった印象に変わっていて。ただガッツリお芝居をするのは、今回が初めて。千葉くんがなにを隠し持っているのか、すごくワクワクした気持ちです。千葉別になにも隠し持ってはいませんが……(笑)。僕も瀬戸さんとガッツリお芝居出来ることがすごく楽しみですし、KERAさんの舞台の先輩でもあるので、いろいろ見て、学ばせてもらいたいなと思っています。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己スタイリスト=小林洋治郎(Yolken)(瀬戸康史)、寒河江健(千葉雄大)ヘアメイク=RYO(瀬戸康史)、堤 紗也香(千葉雄大)、山本絵里子(KERA)衣裳(瀬戸康史)ジャケット:¥35,200(UNDECORATED/UNDECORATED)パンツ:¥36,300(UNDECORATED/UNDECORATED)シャツ:¥30,800(SEVEN BY SEVEN/Sakas PR)【問合せ先】UNDECORATED〒153-0061東京都目黒区中目黒1-8-1 VORT中目黒1 2FTEL:03-3794-4037Sakas PR東京都渋谷区神宮前3-15-21 ヒルトップ原宿301TEL:03-6447-2762『世界は笑う』チケット情報:★6月19日(日) 10:00よりチケット一般発売開始
2022年06月10日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、5年ぶりにBunkamuraシアターコクーンで新作公演「世界は笑う」を上演することが決定。KERAとの3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目となる松雪泰子、KERA作品初出演となる千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉らが出演する。舞台は、昭和30年代初頭の東京・新宿。敗戦から10年強の月日が流れ、巷に「もはや戦後ではない」というフレーズが飛び交い、“太陽族”と呼ばれる若者の出現など解放感に活気づく人々の一方で、戦争の傷跡から立ち上がれぬ人間がそこかしこに蠢く…。そんな殺伐と喧騒を背景にKERAが描くのは、笑いに取り憑かれた人々の決して喜劇とは言い切れない人間ドラマ。戦前から舞台や映画で人気を博しながらも、時代の流れによる世相の変化と自身の衰え、そして若手の台頭に、内心不安を抱えるベテラン喜劇俳優たち。新しい笑いを求めながらもままならぬ若手コメディアンたちなど、混沌とした時代を生きる喜劇人と、彼らを取り巻く人々が、高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす、哀しくて可笑しい群像劇。出演は瀬戸さん、千葉さん、勝地さん、伊藤さん、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪さんと、勢いのある若手から存在感が際立つベテランまで多彩な実力派キャストが集結。初参加に向け、伊藤さんは「KERAさんの舞台は過去いくつも観劇させて頂いていてオーディションも受けたことがあります。やっと立てるんだ。と、喜びに溢れる中、それに勝る緊張でソワソワしています」と喜びをコメント、「自分にとって、KERAさんの舞台演出を受けるのが、長年の夢だった」と勝地さんも明かす。千葉さんは「世の中で起きている事と自分の足並みが揃わない感覚は僕も感じることがあり、その時代ならではのものではありますが、令和にも通じる部分はあるのかなと思います」と期待を込めて語っている。2009年より昭和の東京をモチーフに発表してきた「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から“昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、“昭和の喜劇人”を作品の題材とするのは今回が初めて。その挑戦に期待が高まる。作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチコメント日本の喜劇人たちを描きたいというのは、十年どころではない、二十年以上前から切望していたことだ。もちろん例外はあろうが、かつて、昭和のあの頃、笑いを生業にしていた人なんてのは、皆どこか常軌を逸していた。などと知ったようなことを言うのは、私がそうした人たちに囲まれて幼少期を過ごしたからだ。ジャズマンだった私の父親には、同じヤクザな稼業だったからだろうか、喜劇俳優の知人友人が沢山いた。テレビの中では愉快な面白いオジちゃんオバちゃんだったその人たちは、例えば私の父と雀卓を囲んでいる時、どこか普通じゃなかった。怖かった。そして、時たま、ホッとさせてくれるかのように可笑しかった。評伝劇ではないし、実在の人物は出てこない予定だが、半分はフィクションになるかと思う。普通じゃなくて、怖くて、可笑しな人たちと、彼らを取り巻く人々を巡る群像悲喜劇。全員がメインキャスト、みたいなキャストが集まってくれました。ご期待あれ。ケラリーノ・サンドロヴィッチCOCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022「世界は笑う」【東京公演】は8月7日(日)~8月28日(日)全26回Bunkamuraシアターコクーンにて、【京都公演】9月3日(土)~9月6日(火)京都劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2022年04月04日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作、三浦直之演出により、KERA CROSS第四弾として上演される舞台『SLAPSTICKS』のレクチャーレポートが到着した。本作の舞台は、サイレント映画からトーキーへ、転換期を迎えるハリウッド。激動の時代に映画作りに情熱を注ぐ人々を、映画への愛と希望に溢れる一人の青年を通じて描くロマンチック・コメディ。ケラリーノ・サンドロヴィッチにより、1993年にナイロン100℃で初演され、2003年にはオダギリジョー主演で再演された。今回、主人公の若き助監督ビリー・ハーロックを演じるのは、『プロデューサーズ』や『ジャック・ザ・リッパー』など舞台での活躍に加え、大河ドラマ『青天を衝け』に出演するなど活躍の場を広げる木村達成。ビリーの初恋の人であるアリス・ターナー役には、乃木坂46を卒業し、ミュージカル『GHOST』や『ダンス・オブ・ヴァンパイア』などでその存在感を示す桜井玲香。そして、18後のビリーを小西遼生。さらに、壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギーといった個性豊かな実力派が集結した。晩秋のある日、稽古場にKERAが登場。今回の上演にあたり設定考証・協力をしている喜劇映画研究会の新野敏也と共に、20年代前後のサイレント映画の名場面をキャスト・スタッフらで揃って視聴し、ふたりに解説してもらうというスペシャル・レクチャーが決行された。実はKERAと新野は高校時代の先輩・後輩の仲(新野が2年先輩だとのこと)。まずはそんなふたりの関係、そして今作の登場人物でもあるロスコー・アーバックルやマック・セネットのこと、そのセネットが映画という文化にとっては大変に重要な人物であること、「その役を演じるマギーはそのことを肝に銘じていてほしい」といったことなどが、KERAの口から語られた。今回の上演にあたって演出の三浦直之は「『SLAPSTICKS』はサイレント・コメディを偏愛するひとたちの物語です。そして、KERAさんのサイレント・コメディに対する偏愛の物語でもあるとおもっています」とオフィシャルでコメントしているのだが「まさに、その通り」だとKERAは頷き、今作が30歳の時に自らの映画への偏愛が書かせた芝居だということを認めた上で、「だからこそせっかくなら、少しでもみなさんに興味を持っていただき、作品を楽しんでもらいながら演じてほしいと思い、こういう時間を設けてもらった次第です」と挨拶。左:三浦直之、右:新野敏也このレクチャーのためにVTRだけでなく私物のプロジェクターも持参してくれたという新野も「当時はメディアといえば新聞と雑誌しかない時代、映画誕生と共に“娯楽”というものを発明したのが、マック・セネットです。彼の演出により今のアメリカ映画のさまざまな撮影方法が築かれ、さまざまな映画人の人脈の礎ともなった人でもあります。これから流す映像に出てくるのは100年前の人たちで、とにかく映画に対する熱量が今と全然違うんだという点も参考になるかもしれません。おそらく初めて観る映像がほとんどだと思いますが、まずは楽しむ感覚で、肩の力を抜いてご覧いただければ」と語り、いよいよ珠玉のサイレント・コメディの名場面集の上映がスタートした。稽古場に設置された小型スクリーンに映し出されたのは、劇中に登場するロスコー・アーバックルやメーベル・ノーマンドだけでなく、ハロルド・ロイドやチャールズ・チャップリンやバスター・キートンといった有名どころだけでもなく、チャップリンの兄がいたり、キートンの妹や妻がいたり、さらには「この人は美術監督」「これは脚本家」「この役は途中から実はキートンがバイクアクションだけ吹き替えてる」等々、“一コマずつ止めて確認しながら観てきた”新野ならではのツッコミコメントが入り、そのたびに参加者一同は笑い声に加えて「へえ~!」「うわあ、すごい!」「コワッ!!」などと感嘆の声も響かせている。用意されたオムニバス集3本のVTR上映の合間には、キャストからそれぞれ質問も受け付け、中でもマギーは興味津々だったようで、ハロルド・ロイドの映像でビルの高層階で行われたアクションのからくりを聞いたり(新野によれば、ビルの屋上に高さのあるセットを組み、カメラアングルを工夫して撮影しているとのこと)、自分が演じるマック・セネットの人となりについて聞いたり。他にもヴァージニア・ラップを演じる黒沢ともよら、実在の人物を演じるキャストは、この物語には実際に起きた事件や当時の映画人たちの普段のふるまいなどが盛り込まれていることもあって、どこまでが現実にあった出来事でどこからがKERAの創作なのかが気になるようで、それぞれのキャラクターについてや、「自転車を食べる女優は本当にいたんですか?」(KERAからの答えは「創作です!」)、「白塗り男は誰をイメージしたんですか?」(「確かハリー・ラングドンだったと思う」とKERA)、「あの当時の映画界には男女差別や人種差別はあったか」(立場は対等だったように見える、ギャラも男女差というより売れた人がより大切にされていた、男か女かというよりもコメディアンもコメディエンヌも同じように笑いのためには相当に激しいことを要求されていた)、などなど活発な質疑応答が行われていた。また、物語の大きなモチーフのひとつでもあり、いまだに謎が多く残る“アーバックル事件”についても「結局は今も想像するしかないけれど」と前置きしながらも新野が長い時間をかけて解説。「実際のアーバックルはどんな笑いをとるタイプだったんですか」という質問には、KERAが「明るくて完全に“陽”な人。とにかくあの体重であれだけ動ける人はいないし、ちょっとした足さばき、手さばきが流麗。そもそも日本で今みたいに太った人を“デブ”と全国区で表現するようになったのは、アーバックルに覚えやすい通名をつけるにあたって、江戸時代に一時流行った“でぶでぶ”という言葉をあて“デブくん”としたことからなんだよ」というトリビア的な事実を明かしたところで、ラストはそのアーバックル主演の1916年の短編『デブの料理番』をピアノ演奏の音声も入ったフルバージョンで上映。その上映終了後には「個人的な自分の想いを話しておきます」と、KERAから締めのコメントとして「忘れもしない小学4年生の12月に父親と一緒に観たチャップリンの『モダンタイムス』、その翌年にキートンを観て、すっかり魅せられてしまった」という子供時代のこと、小学6年生の卒業アルバムに「将来なりたいのは喜劇映画の監督」と書き、明らかにそれが今の自分の出発点となったこと、8ミリカメラを買ってもらって本人はチャップリンやキートンみたいなことをやっていたつもりだったが、その後高校に入って似たような映像を撮っていた人が同じ映画部にいてそれが新野だったこと……。「今、考えるとある意味狂っていたとしか思えないくらいだけれど、本当に映画が好きだったんです。だけど周囲の人々はそこまで映画好きではないわけで。そういう人たちに向けて、サイレント・コメディのような“忘れ去られたもの”をなんとか自分なりに、昔こういうことがあったんですよということを創作や捏造をも交えて伝えたいと思った、“運動”みたいな作品なんです」と話した上に、さらに『SLAPSTICKS』と複数形の“S”が付いていることについては「幾多のコメディアン、コメディエンヌ、クリエイターに対する敬意を、あえて複数形にすることによって、全員分の『SLAPSTICK』があるという意味で複数形にしています」とタイトルに込めた想いも打ち明けた。「自分も若かったし、当時は理屈でないところで動かされていたところもあった。異常な熱量で生きていただろうサイレント時代の登場人物を演じる時に、まったくクールな状態でクリエイトしてもなかなか伝わらないかもしれないな、と思うんです。なので、ほんの数カ月でいいので、今ならYouTubeでも観られる映像もあってホント恵まれた環境にありますから、それほどゲラゲラ笑えるものではないですがまたいろいろと観てみてほしい。そして実在の人を演じる方も、創作の人物を演じる方も、当時の世界の住人として存在する説得力を持って演じていただければ。今、台本を読み直すと“随分フツーのことを言ってる!”と思うし、若書きでストレートなこともいっぱい書いていて恥ずかしくなるんですけどね。ですので三浦くんの解釈で、どんな風に変えていただいても構いません。実際の出来事をフィクションにしてもらってもいいので、その時代の人たちをぜひみなさんで楽しみながら再現してもらえたらと思います!」と改めて、キャスト・スタッフに向けてエールを送った。キャスト陣もみなすっかりサイレント映画に魅惑されたのか、挨拶のあとも何人も手を挙げて質問コーナーは続き、作品や演じるキャラクターへの想い、その登場人物たちで構築する映画愛たっぷりのこの物語世界への想いはかなり増幅した模様だ。よりリアルに、より深くなるはずのニューバージョン『SLAPSTICKS』に期待は高まるばかり、初日の幕が上がるのが今から楽しみでならない。取材・文田中里津子写真提供:東宝演劇部■公演概要KERA CROSS 第4弾『SLAPSTICKS』2021年12月25日(土)・26日(日)会場:東京・シアター10102022年1月8日(土)~10日(月・祝)会場:大阪・サンケイホールブリーゼ2022年1月14日(金)~16日(日)会場:福岡・博多座2022年1月28日(金)会場:愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール2022年2月3日(木)~17日(木)会場:東京・シアタークリエ作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:三浦直之出演:木村達成、桜井玲香、小西遼生 / 壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギー / 亀島一徳、篠崎大悟、島田桃子、望月綾乃、森本華
2021年12月09日コメディ、とはいえ大声で笑うのとは少し違う。クスッもしくはククッくらいか。シニカルなのになんだかオカシくて、くだらないのにちょっと粋。ナイロン100°Cの新作舞台『イモンドの勝負』は、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さん曰く「ナンセンスの、或いは、不条理の極北に行ってみる覚悟」。となれば欠かせないのは、大倉孝二さんの存在だ。「僕にとってはくだらないことが一番。やれる場があるってありがたいです」「日々台本が少しずつ上がってきて、そこを稽古していってる訳ですけど…。やりながらも、いまだどんな芝居になるのかわからないんです。たぶん意図的に、シーンごとに笑いの質とか芝居の質が違っていて訳がわからない。ただ間違いなくコメディではある…というか、ほぼ意味なんてない内容になるのではないかと」劇団員の大倉さんからすれば、これぞ真骨頂というところだろうか。「僕はもともとKERAさんのナンセンスが好きで入ってきたんで。昨今は別の作風のものもやっていますが、僕にとってはくだらないことが一番で、この歳になってもそれをやれる場があるってありがたいです」近年は、名バイプレイヤーとして、ドラマや映画でも重要な役柄を任されることが増えている。しかし、大倉さん自身は「くだらないこともしていないと、自分の中で整合性がとれないんです」と苦笑する。「ちょっとしたセリフにKERAさんがつけてくれた演出が、たまらなく面白いときがあるんです。唐突に訳のわからないセリフを言ったり、行動したり。全然理屈に合わないし、理由もないけど、そういう場面を見るのもやるのもすごく楽しい」つい先頃には、放送中の大河ドラマ『青天を衝け』での、渋沢栄一を新政府に請うため熱弁をふるう、大倉さん扮する大隈重信の軽妙かつ説得力のある演技が注目を集めた。しかし、当の本人は複雑な表情。「自分ではいまだにうまくできないって思ってしまうんです。大隈も、現場で監督さんの意向にできるだけ沿うようにとやっていましたが、うまくできないなって思っていたんです。それが予想外に評判がよくて、むしろ戸惑いの方が大きいです」自分自身に対してもシニカルな人なのだ。それでも舞台、そしてコメディへの思いは強い。「今回の作品は、このまま訳のわからない方向に突き進んでいくんだと思います。お客さんがゲラゲラ笑えるものになるかは、あまり保証できないんですけど(笑)、喜んでもらえたらいいなと思います。でも、そうならなかったとしても、それがナイロンのあり方だと思うんです。KERAさんと劇団員、客演陣にとって、後悔のない作り方ができればそれが一番かな」『イモンドの勝負』11月20日(土)~12月12日(日)下北沢・本多劇場作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、峯村リエ、赤堀雅秋、山内圭哉、池谷のぶえほか全席指定7600円ほかキューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~18:00)兵庫、広島、北九州公演あり。おおくら・こうじ1974年7月18日生まれ、東京都出身。ナイロン100°C所属。最近の出演作にドラマ『コタローは1人暮らし』、舞台『マシーン日記』など。ドラマ『青天を衝け』(NHK)出演中。シャツ¥25,300パンツ¥18,700(共にサノバチーズ TEL:03・6427・1986)その他はスタイリスト私物※『anan』2021年11月24日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・JOE(JOE TOKYO/TRAVOLTA)ヘア&メイク・山本絵里子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年11月23日ケムリ研究室vol.2『砂の女』が8月22日(日)、シアタートラムにて開幕する。ケムリ研究室はケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と緒川たまきが立ち上げたユニット。その一作目、昨年9月に上演された『ベイジルタウンの女神」は緒川演じるお金持ちの女社長がふとしたきっかけから貧民街で暮らすことになり、そこで新たな出会いを経験し、やがて街のために立ち上がるという極上のコメディだった。ユニット立ち上げの際、KERAが「作風は公演ごとにバラバラになると思う」と語っていたとおり、彼らが2作目に選んだのは安部公房『砂の女』。昆虫採集のために砂丘へ出かけた男が、砂に埋もれた一軒家に住まう女と出会う。男はそこからの脱出を試みるが、村の人々の邪魔もありなかなか抜け出せない、という物語。女を岸田今日子が演じた1964年の映画が印象深い。「安部公房氏の長編小説『砂の女』が、読者のその後の空想の中で自由に育ち続けているように、ケムリ研究室による舞台『砂の女』もまた、妄想と実験精神たくましく育てあげる所存です」とコメントを出していたケムリ研究室のふたり。公演に先立ち、6月には緒川による原作小説のリーディング、主宰ふたりによるトークのイベントも開催。そんなふうにして制作過程も開示しつつ、地道に丁寧に練り上げてきた作品をようやく目にすることができる。女は緒川たまき、そして男には『ベイジルタウンの女神』をはじめ、KERA作品に多数出演している仲村トオルが扮する。その他、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲が共演に名を連ねる。この骨太なキャストたちがあの砂にまみれた世界をどのように表現していくのか、どんな演出と美術であの空気が再現されるのか。閉塞感にからめとられそうな2021年の夏、うだるような暑い陽射しの中を劇場に向かった記憶ごと、忘れられない作品になりそうだ。文:釣木文恵ケムリ研究室no.2『砂の女』原作:安部公房上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ音楽・演奏:上野洋子振付:小野寺修二出演:緒川たまき / 仲村トオルオクイシュージ / 武谷公雄 / 吉増裕士 / 廣川三憲
2021年08月20日KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』に出演する、生駒里奈さんにお話を伺いました。ズレたまま進んでねじれていく会話、トボけたキャラクターに、リアルと非リアルの間をたゆたうような世界観。ナンセンスコメディの旗手、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが2004年に書き下ろした戯曲『カメレオンズ・リップ』。かつて堤真一さんや深津絵里さんにより上演された人気作が、今回、新たな演出家の手により17年ぶりに蘇る。「これまでやってきた舞台とはまったく違うテイストだし、役も、台本に書かれた通りにストレートに演じるということが通用しない。本格的にお芝居をやり始めたのが乃木坂46を卒業してからの私にとって、ほぼ初めてのような感覚の作品です」20世紀初頭のヨーロッパらしき場所の古びた邸宅を舞台に繰り広げられる、互いが互いを騙し騙され、混乱が混乱を呼んでゆくコメディ。「セリフのやり取りのなかにクスッとくる面白さがあるんですけど、なかには、普段笑っちゃいけないと言われるようなブラックな笑いも織り交ぜられていて、絶妙なバランスの作品だなと思います。演出の河原(雅彦)さんは、『普通にやってるだけじゃ面白さは伝わらないから、このキャラが何を思って行動したかをはっきり見せていこう』とおっしゃっていて、『セリフが流れないよう、きちんと言葉を立てて伝えないと』と。稽古していくなかで気づいたのは、私の場合は笑わせにいったらダメなんだってこと。役を普通にやることで、観た人が笑ってくれる。そこを目指せばいいんだな、と一昨日くらいに気づいたところです(笑)」演じるのは、松下洸平さん演じるルーファスの死んだ姉・ドナと、彼女にそっくりな使用人のエレンデイラの二役。人を煙に巻く発言ばかりで一向に真意が読めないキャラクターゆえの難しさも。「私は構築とか計算とかが苦手で、“役を作る”というより稽古場に立ってみて、その時の感情や直感で動くタイプなんです。でも今回の役は、日本に住んでるのにいきなりここはアメリカですと言われているくらい、求められているものが違う。難しいですけれど、お芝居にもいろんな種類があってやり方があるわけで、いろんなことをできるようになっていかなくちゃと思っています」生駒さんには目指すものがある。それは「いろんなワクワクが詰まったエンターテインメント」だ。「一番の理想型が堂本光一さんの『Endless SHOCK』です。カッコいい歌もダンスもあって、衣装も演出も華やかで、宙を飛んだりもして。去年初めて観て、『なんだこれは!?』ってずっと口を開けっぱなし(笑)。観て励まされたし、自分もこんなキラキラしたものになりたいと思ったんですよね。芝居はもちろんダンスも歌も磨かなきゃいけないし、立っているだけでサマになる華も身につけなきゃいけない。そのためにも、いま目の前のものを必死でやっていくだけです」『カメレオンズ・リップ』ルーファス(松下)は、死んだ姉に瓜二つの使用人・エレンデイラ(生駒)と郊外の谷間にある古い邸宅に暮らしている。その邸宅をさまざまな人が訪ねてくるが、どの人も虚実入り交じり…。はたして真実はどこにあるのか。4月2日(金)~4日(日)北千住・シアター1010全席指定1万円4月14日(水)~26日(月)日比谷・シアタークリエ全席指定1万500円作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出/河原雅彦出演/松下洸平、生駒里奈、ファーストサマーウイカ、坪倉由幸(我が家)、野口かおる、森準人、シルビア・グラブ、岡本健一キューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~17:00)福島、大阪、愛知、新潟公演あり。いこま・りな1995年12月29日生まれ、秋田県出身。乃木坂46を2018年に卒業。8月には主演舞台『‐4D‐imetor』も控える。出演映画『光を追いかけて』は今年公開予定。ポンチョ¥40,700 カットソー¥24,200パンツ¥41,800(以上Ground Y/ヨウジヤマモト プレスルーム TEL:03・5463・1500)シューズ¥63,800(Y’s/ワイズ プレスルーム TEL:03・5463・1540)ピアス各¥13,200リング¥38,500(以上CHERRY BROWN TEL:03・3409・9227)※『anan』2021年4月7日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・津野真吾(impiger)ヘア&メイク・スズキユウジ(MAXSTAR)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年04月06日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の過去の戯曲を、新たなる演出家が異なる味わいに創り上げる人気企画「KERA CROSS」。その第3弾『カメレオンズ・リップ』を、河原雅彦が手がける。そこで河原と主演の松下洸平のふたりに話を聞いた。17年前、気鋭の劇作家として注目を集めていたKERAが、Bunkamuraシアターコクーン初進出作として上演したのが、この『カメレオンズ・リップ』。河原は本作を選んだ理由について、「まだ若かったKERAさんの、しかもコクーン初進出だっていう筆の勢いのある作品ですよね。たぶんKERAさん自身、整合性や分かりやすさをあえて気にせず書いていた部分もあるんじゃないかなと。その煙に巻くような、わけわからなさに僕は惹かれたんだと思います」と説明する。松下はDVDで初演を見た印象を、「作品全体からはもちろん、俳優の皆さん一人ひとりのエネルギーがバシバシ伝わってきて!すごくカッコいいなと思いました」と目を輝かせ、さらに「その『カメレオンズ・リップ』を今度僕がやる時、どれだけのエネルギーを作品に対して注ぎ込むことが出来るのか。自分自身すごく楽しみですし、それが作品の面白さに繋がればいいなと思います」と意気込む。まるで呼吸するかのように嘘をつき続ける姉のドナと、そんな姉を心から慕う弟のルーファス。前回堤真一が演じたこのルーファス役を任された松下は、「僕が見た『カメレオンズ・リップ』は、ものすごく完成度の高い素晴らしい舞台でした。だからこそ僕は、いかにそこに縛られず、今回集まったキャストの人たちと、芝居を通して感じたことをそのまま素直に出せるのか。とにかくそれに尽きると思います」と、役へのシンプルな想いを吐露する。ドナと、ドナにうりふたつのエレンデイラを演じる生駒里奈について、「ずっとお仕事したいと思っていて」と河原。続けて、「洸平くんがすごく弟感のある人である一方、すごくお姉さんで、しっかりしていて面白いのが生駒ちゃん。だから年齢的には逆ですけど、もうこのふたりでやっちゃえと思ったんです(笑)」と、姉弟役のキャスティング意図を明かした。また河原は、「初演を初めてみた時、いろんな意味であまりに贅沢過ぎて、あっこのままじゃ出来ないなと思ったんです」と驚きの告白。「でも美術プランから何から、一から考えられるという意味で、逆によかったなと。今回集まってくれたメンバーは皆さんデタラメに魅力的だし、音楽を担当してくれる伊澤一葉さん(東京事変・the HIATUS)もとても作品にマッチしている才能なので、なにかと刺激の嵐ですよ」と笑うその顔には、本作にかける河原の強い決意と自信が滲み出ていた。取材・文:野上瑠美子スタイリスト:渡邊圭祐ヘアメイク:五十嵐将寿衣装:中綿シャツ¥36,000、パンツ¥33,000/ともにエドウィナホール
2021年02月12日劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と、妻で俳優の緒川たまきが、「ケムリ研究室」なるプロデュース・ユニットを旗揚げ。その第一回公演となる『ベイジルタウンの女神』が、9月13日(日)に開幕する。コロナ禍に揉まれた春、開幕寸前に公演中止となった『桜の園』の無念も記憶に新しいKERA。だからといって、歩みをゆるめる彼ではまるでない。KERA作品常連俳優陣によるコントムービーの製作や、あらゆる工夫をこらしたリーディングアクトの配信公演の敢行など、実に彼らしい創作のいくつかを観客に届けた。そんな彼の次なる一歩は、パートナーである緒川たまきとの連名で立ち上げる新ユニット「ケムリ研究室」の始動である。「ケムリ研究室」ロゴKERAの作品作りにはもはや欠かせない存在である緒川。出演者としてのみならず、作り手同士としての意見交換も大いに行われてきたという。そんな彼女が満を持して、共作者として操縦桿を握る本作。KERAのSNSを見ていると、その稽古が上演の実現に向けて、祈るように重ねられていることがわかる。稽古しながら上演が叶わないことの悔しさを、知っている人による言葉たちだ。その旗揚げ作は、KERAの書き下ろし新作『ベイジルタウンの女神』。仲村トオルや水野美紀、犬山イヌコら常連組と、吉岡里帆や松下洸平、高田聖子ら初参加組が入り乱れる布陣だ。山内圭哉や菅原永二、温水洋一ら、小劇場で磨き抜かれた個性派の参戦にもにんまりさせられる。もちろん、小野寺修二のステージングや、上田大樹による映像とのコラボレーションはここでも万全。始まりの予感と熟練の仕事が入り交じる舞台だ。9月22(火祝)18時の回は「PIA LIVE STREAM」での生配信が決定。本編休憩時間と終了後には、キャストによる座談会も予定されている。公演は9月27日(日)まで世田谷パブリックシアター。兵庫、北九州公演あり。文:小川志津子
2020年09月12日何気ない会話に思わずクスッとしたりニヤリとしたり。ナンセンスでシュールな笑いを紡ぎ出す劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さん。そのKERAさんが女優・緒川たまきさんと共に、新ユニット「ケムリ研究室」を立ち上げた。旗揚げ公演の『ベイジルタウンの女神』に出演するのは、いまやすっかりKERA作品の常連女優となった水野美紀さん。「針の穴に糸を通す難しさ。だけどすごく楽しいです」「10数年前に初めてKERAさんの舞台を観た時、頭では何がどう面白いのかわからないのにすごく面白いという体験をしたんです。この面白さをちゃんと理解したくて、KERAさんが影響を受けたという別役実さんとか、その別役さんが影響を受けたベケットにまで興味が広がって、その周辺の本をいっぱい読みました。シュールな笑いの歴史と奥深さを知って、さらにハマりました(笑)」しかし、その水野さんをして、会話の微妙な間のズレや空気感で笑いを起こす作品は、まるで「針の穴に糸を通すような感覚」とか。「とにかく細かく計算してセリフが書かれているから、脚本を読むだけでも十分面白い。でも本当のすごさは、文字以外の透明なところにあるんですよね。たとえば、子供っぽいキャラクターのセリフに『相手にバレてないと思っているんだけれど、無意識に心が大きく動いて、それが表に出てしまう感じで』と演出をつけられる。すっごい繊細なところまで大事にされて作り込んでいる。ちょっとした声の音量やトーンでニュアンスがガラッと変わって、面白さが蘇ってこなくなることもあるので、毎回がすごいプレッシャーです」それでも「やっててすっごい楽しいですよ」と笑顔を見せる。いまやすっかり“演劇人”だ。「たぶん、自分の本来の資質には舞台が合うんだと思います。でも2か月近くコツコツ稽古して本番をやると、今度は映像の作品も楽しくなる。映像は瞬発力が必要な現場ですが、意識しなくても体に染み込んだものが感覚的に出せるようになっていて、舞台で鍛えられてるんだなと」近頃はドラマ『浦安鉄筋家族』などでの振り切った演技も話題だ。「監督の意向にもよりますが、毎回台本をいただいてから、これをベースにどれくらい遊べるかを考えるようにしています。頭の中で練って、リハーサルでいろんなパターンを出してみる。それも舞台で培ってきたもの。ただ最近、“面白くしてくれるんでしょ”っていう現場の無言の期待を感じて、それが辛い。まあ自分で蒔いた種なんですけれど(笑)」ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』上流階級の家庭に生まれ育ち、現在は大企業の女社長を務めるマーガレット(緒川)。貧民街の再開発計画を進めていた彼女は、ひょんなことからそこで暮らす羽目になってしまい…。9月13日(日)~27日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子ほかS席1万2000円A席8800円ほか(すべて税込み)キューブ TEL03・5485・2252(月~金曜12:00~18:00)兵庫、北九州公演あり。みずの・みき1974年6月28日生まれ、三重県出身。ドラマ『踊る大捜査線』シリーズで注目され、数々のドラマや映画で活躍。2002年に劇団新感線『アテルイ』で初舞台を踏む。現在放送中のドラマ『真夏の少年~19452020』に出演。※『anan』2020年9月9日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2020年09月05日演劇界を牽引する劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と女優・緒川たまきが立ち上げたユニット「ケムリ研究室」の旗揚げ公演、新作『ベイジルタウンの女神』が、9月13日(日)より、世田谷パブリックシアターで初日を迎える。この度、本舞台の9月22日(火・祝)18時開演回(追加公演)が生中継配信されることが決定した。出演は、緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子など。新作ごとに異なる魅力を放つKERAの待望の新作とあって、チケットは争奪戦必至だ。この度の生中継配信は、コロナ禍の影響で今年既に2本の舞台の中止を経たKERAの「来場できない状況の方にもご観劇頂ける機会を」という思いが発端となった。配信は、「PIA LIVE STREAM」と「WOWOWオンデマンド」で視聴可能。「PIA LIVE STREAM」は、チケットぴあの購入ページより視聴チケットを購入し視聴。「PIA LIVE STREAM」配信では、公演生配信に加え、キャスト座談会映像を併せて収録配信予定だ。「WOWOWオンデマンド」は本編配信のみ、WOWOWの加入者対象の配信となる。「PIA LIVE STREAM」配信のチケットは、9月5日(土)より、チケットぴあ にて発売開始。なお、この日は、『ベイジルタウンの女神』東京公演の後半日程の一般チケット発売日であり、9月22日(火)の追加公演の劇場の観劇チケットもこの日に同時発売される。物語は、ふとした事から貧民街で暮らすことになった、俗世知らずの女社長を巡るロマンティック・コメディ。実力派のキャスト陣がどんな群像劇を繰り広げるのか。幅広い層の観客が楽しく笑えるコメディ作品になるとのことだが、「ケムリ研究室」が届ける笑顔の時間を、劇場で、それぞれの場所で、ひととき共有できればと思う。『ベイジルタウンの女神』9月22日(火・祝)18時開演公演中継生配信「PIA LIVE STREAM」※本編休憩時間&終了後にキャスト座談会付き(予定)予定キャスト・緒川たまき×仲村トオル×水野美紀・温水洋一×犬山イヌコ×高田聖子・山内圭哉×吉岡里帆×松下洸平視聴チケット料金:¥4,000(税込)※生配信のみ。アーカイブ視聴無し視聴チケット販売期:2020年9月5日(土)10:00〜9月22日(火・祝)19:30まで(要チケットぴあ会員登録)※公演の途中からご視聴頂く場合でも、巻き戻し再生はできませんので予めご了承ください。チケット販売ページ ※ご視聴方法、推奨環境、等詳細、お問い合わせにつきましては、 PIA LIVE STREAM( ) のページにてご確認ください。「WOWOWメンバーズオンデマンド」※本編生配信のみ。アーカイブ視聴無し詳細 ■『ベイジルタウンの女神』公演詳細情報ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』公演概要●スタッフ作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ振付:小野寺修二映像:上田大樹音楽:鈴木光介●キャスト緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、望月綾乃、大場みなみ、斉藤悠、渡邊絵理、荒悠平、高橋美帆、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子(※高橋美帆の「高」は、はしご高)公演日程【東京公演】9月13日(日)〜27日(日) 世田谷パブリックシアター※未就学児の入場はご遠慮ください。※車椅子でのご来場は事前にキューブまでご連絡ください。●チケット料金S席12,000円A席 8,800円学生割引席6000円●チケット一般発売日9/13(日)〜20(日)の公演→8/22(土)発売9/21(月)〜27(日)の公演→9/5(土) 発売●お問合せ(東京公演)株式会社キューブ03-5485-2252(平日12:00〜18:00)
2020年09月04日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が、パートナーでもある緒川たまきと共に、新たなユニット「ケムリ研究室」を立ち上げ。その第1回公演『ベイジルタウンの女神』の本格始動を前に、KERAに現在の構想を聞いた。【チケット情報はこちら】緒川とのユニットについて、「8、9年前から考えていたこと」と振り返るKERA。というのも緒川は、すでに数々の作品で、KERAのブレーン的役割を担ってきている。「『百年の秘密』とか、ちょっとヘビー目な人間ドラマに関しては、彼女の力がかなり大きいです。でもこれまではすべてノンクレジット。だから共作しているって部分をもっと堂々と打ち出せるものがあってもいいんじゃないかなと。緒川さんからは、『将来的には野外劇やテント芝居もやるぐらいの挑戦的なユニットになれれば』なんて話も出ていますし、ともかくフレキシブルに動けるユニットでありたいんです。」今回緒川が演じるのは、父親の会社を成り行き上継ぐことになった女社長。そんな彼女がなぜか貧民窟で暮らすことになり……というファンタジック・コメディだ。「これまで僕が緒川さんに当てて書いた役って、もともと彼女の中にあるものを拡大していたんですよね。でも今回に関しては、本人にとって若干やり難いところにも踏み込んでもらおうかなと。その方がやりがいもあると思いますし。コメディとしては、ニヤニヤ、クスクス、そしてたまにゲラゲラみたいなところを狙っていけたらと思っています」第1回公演ということで、「幅広い人に受け止めてもらえるような、賑やかで、明るくて、観た後にハッピーな気分になれる作品に仕上げたい」とも語るKERA。その想いは、仲村トオルや水野美紀、吉岡里帆に松下洸平といった、豪華なキャスト陣からも伺うことが出来る。だがこの時期の上演で何よりも気がかりなのは、やはりコロナ問題。「台本を書くとか、その前の段階ですよね。もし台本をフルに書いて上演中止なんてことになったら、今回はちょっと立ち直れないかも……。でも中途半端なものには出来ませんし、自己暗示をかけてでも「やれる」と信じてやっていかないと。もちろん安全第一でね。」また現在、『ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集1・2』が発売中のKERA。「印刷物フェチ」を自称する彼のこだわりが詰まった2冊で、「自分の仕事が紙で残せることが個人的にすごく嬉しい」と笑みを浮かべる。旧作の戯曲を読みつつ、新作舞台の無事の開幕を、一ファンとしても切に願いたい。9月13日(日)から27日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演後、兵庫、北九州を巡演予定。チケットぴあでは8月10日(月・祝) 23:59まで東京公演の先行抽選プレリザーブ受付中。取材・文:野上瑠美子
2020年08月04日劇作家、演出家、映画監督、音楽家としてマルチかつ精力的に活躍しているケラリーノ・サンドロヴィッチ(以降、KERA)さんによる、新しいエンタメの形を紹介します。文・anan編集部緊急事態宣言以降、その影響でこの春から数々の公演が中止を余儀なくされている演劇界。KERAさんも、2作品が残念ながら公演中止に。そのうちのひとつ『欲望のみ』は、2007年から2016年にかけて伝説的なナンセンスコメディを送り出してきた古田新太さんと再度タッグを組んで、これまでとは違う挑戦になるはずでした。そんななかKERAさんが、この時代、この状況だからこそできる新しいエンターテインメントを模索し、緊急企画、CUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』が実現することに!劇場でのリーディングアクト『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』の無観客上演生配信と、コント映像作品『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』配信という2つのコンテンツがその内容。ここに、古田新太さんをはじめ、大倉孝二さん、入江雅人さん、八十田勇一さん、犬山イヌコさん、山西惇さんという過去3作のレギュラーメンバーが集結します。さらに映像作品には、超豪華シークレットゲストも多数登場するというサプライズも!?KERAさん曰く、「我々が2020年の春〜夏にどんな風に足掻いていたかの記録でもあります」とのこと。いま演劇人がさまざまな形でリモート演劇にチャレンジしていますが、現代演劇界を牽引するひとりで、毎回まったく異なった作風、味わいの笑いを繰り出し続けているKERAさんが、ただのリモート演劇で収まるわけはなく、どんな“足掻き”を見せてくれるのか、期待が高まります。配信前日に行われる公開ゲネプロがチケット発売と同時に即完した今作。モヤモヤした世の中を軽やかに、毒たっぷりに笑いとばしてくれること間違いなし!InformationCUBE produce PRE AFTER CORONA SHOW presentsリーディングアクト『プラン変更 〜名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険〜』7月12日(日)15:00開演 料金¥3500『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』配信7月12日(日)17:00配信スタート 料金¥2500どちらもPIA LIVE STREAMより配信。7月19日(日)までアーカイブ販売あり。
2020年07月10日KERA×古田新太企画のレギュラーメンバーが結集し、本多劇場でCUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』の公開ゲネプロを実施する。新型コロナウイルスの影響により、日本の演劇は上演が軒並みストップになり、劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が手掛ける予定であった作品も中止を余儀なくされた。そんなコロナ禍の中でも、KERA は新しい試みとしてCUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』を実施する。2007年から2016年の間に、 ケラリーノ・サンドロヴィッチと俳優・古田新太のタッグで上演してきた舞台のレギュラーメンバーが集結。劇場でのリーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』の無観客上演生配信と、 コント映像作品『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』配信という2つのコンテンツで構成された『PRE AFTER CORONA SHOW』に挑む。リーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8 番目の冒険~』は、7月12日に無観客生配信の形で本公演上演するとともに、 前日の7月11日に、 下北沢本多劇場にて一般観客を入れた形での公開ゲネプロを実施。上演前には『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』を、 配信開始に先駆け先行上映される。ゲネプロ中は舞台上のソーシャルディスタンスにも配慮し、「多彩な動きがありつつも俳優同士が常に距離を保ちながら進行するリーディング」というこの時代ならではの演出的工夫を取り入れた上演形式で行うとのことだ。CUBE produce『PRE AFTER CORONA SHOW』【配信舞台上演作品】●CUBE produce PRE AFTER CORONA SHOW presents リーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8 番目の冒険~』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:古田新太・大倉孝二・入江雅人・八十田勇一・犬山イヌコ・山西惇 / 奥菜恵配信映像作品●『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』脚本・構成・総合演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ共同脚本:ブルー&スカイ・他出演:古田新太・大倉孝二・入江雅人・八十田勇一・犬山イヌコ・山西惇 / 他【公演&配信日程詳細】<公開ゲネプロ> (配信無し)日時:2020 年 7月11日(土)15:30開場16:00〜17:40/『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』上映17:40〜18:00/休憩18:00〜/CUBE producePRE AFTER CORONA SHOW presentsリーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8 番目の冒険~』上演劇場:下北沢本多劇場料金:12,000円(上映・上演込み、 特製 T シャツ・缶バッヂ付)チケットスケジュール:7月1日(水)正午より cubit club 会員(キューブ無料メルマガ会員)先行受付スタート7月7日(火)チケットぴあ先行予約7月8日(水)より一般発売開始(チケットぴあのみ)チケット購入&詳細→ < 無観客生配信 本公演 >CUBE producePRE AFTER CORONA SHOW presentsリーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8 番目の冒険~』上演日時:2020 年 7 月 12 日(日)15:00 開演PIA LIVE STREAMより配信料金:3,500円7月19日(日)までアーカイブ販売有7月2日(木)10 時よりチケットぴあにて視聴券販売開始視聴券購入&詳細→ <コント映像作品 配信>『 PRE AFTER CORONA SHOW The Movie 』日時:2020年7月12日(日)17:00配信スタートPIA LIVE STREAMより配信料金:2,500円7月19日(日)までアーカイブ販売有7月2日(木)10時よりチケットぴあにて視聴券販売開始視聴券購入&詳細→ 公演についての詳細→キューブオフィシャルサイト: <ケラリーノ・サンドロヴィッチコメント>(1)少々長いコメントになりますので興味ある方にだけお読み頂ければ。新型コロナウィルスがあれして中止になった『欲望のみ』。 古田新太を座長としたチームに新たなメンバーを加え、 2007 年~2016 年に同チームで上演した「ナンセンス三部作」とは異なるタイプのコメディを創ろうとした公演でした。4 月下旬に中止が申し渡され、 自粛で悶々としていた私は、 このチームで「公演の代わりの何か」ができないものかと画策しましたが、 コロナ渦の制約の中、 頭に浮かぶ案はどれもこれも、 時間と労力を費やしてまで実行しようと思えるものではありませんでしたし、 それ以前に、 自分の仕事ではないように感じました。 周囲の演劇人達が早々に発信を連打した様々な試み、 すなわちリモートを使った演劇。 しかしそれを私が試みたところで、 面白いと思えるモノが創れるとは思えなかったのです。 それらは演劇のようでいて、 決して演劇ではない。 「演劇のようなもの」です。 「演劇のようなもの」は「演劇のよう」でありながら、 私が感じている「演劇の魅力」を何ひとつ擁しない。この度「PRE AFTER CORONA SHOW」の旗印の下にお届けする 2 つの作品も「演劇のようなもの」でしかなく、「演劇」と較べられちゃあたまらないのですが、「演劇」ができない時期、「何もしない」という選択肢もある中で、 これならやってもよいのではないだろうかと思えた企画であります。 やってみました。 我々が 2020 年の春~夏にどんな風に足掻いていたかの記録でもあります。(2)映像作品『PRE AFTER CORONA SHOW The Movie』は、 ザックリ言うと「コント集」です。 どう反応して良いのか戸惑わせるようなスケッチも混じってますが、 これもコントなのです。 私が書いたコントと盟友ブルー&スカイが書いたコント、 それから太田毅くんと飯田ゆかりさんの書いたコント一本ずつ(別役実氏編纂のコント本に収録)を私が脚色したもの、 そして、 大倉孝二とブルー&スカイのユニット、 ジョンソン&ジャクソンが、 やはり中止になってしまった彼ら の公演に於いて上演するはずだったコント(大倉が脚本提供クレジットに名を連ねているのはこの為です)。 注目の若手ナンセンス劇団「地蔵中毒」主宰の大谷皿屋敷くんにも参加してもらうはずだったのですが、 ある大人の事情で叶わず、 彼の既製台本から二言だけ台詞を使わせてもらってます、 記念に。コント達は、 劇場で収録したり、 ロケで映画やドラマのように撮影したり。 全 6 日間の強行撮影でしたが、 まさに制約だらけの中、 ゲスト出演者含め 20 名近いキャストとスタッフの皆様の尽力のお陰でヘンテコなモノが出来あがりました。 アニメは上田大樹くん、 音楽は鈴木光介くんと、 いつものメンバーが集結してくれました。 上映時間は約 100 分であります。(3)『プラン変更~名探偵アラータ探偵最後から 7、 8 番目の冒険~』は所謂リーディング公演。 6 月 29 日現在、 台本を書き始めたばかりでどんな作品になるか、 まだわかりませんが、 リーディングという形態を逆手にとってくだらなくできまいかなぁ、 と。 サブタイトル通り、 変質者であり多重人格者でもある探偵アラータが、 助手のアルジャーノンと共に、 事件かどうかすらも曖昧な事件を解決するナンセンス・コメディ。 つまりお馴染みのやつです。 ナンセンス三部作の第四弾。 新しいコメディに挑もうとした『欲望のみ』に代わる公演が、 結局いつものやつになっちゃうというのも皮肉ですが、 おかげでまたあのキャラクター達に会えるのは、 書き手にとっても大きな悦びであります。台本書き始めて数回の稽古を経て初日まで、 二週間しかないので、 40 分~60 分ぐらいの小さな作品になると予想します。 『The Movie』の方もそうですが、 はるか昔に書いた自作にネタを探ったり、 中学時代に私をナンセンスの世界に誘い導いてくれて、 健康~ナイロン初期に散々マネしたモンティパイソンの模倣も久々にしていることも白状しておきましょう。 今我々がやるとこんな風になります。ともかく、 安全第一、 くだらなさ第二に、 楽しんで作ろうと思います。赤字必至の試みなので、 お気に召したら口コミ、 SNS 等でワーワー騒いでくれろ。 以上、 よろしくお願い。2020 年 6 月末ケラリーノ ・サンドロヴィッチ
2020年06月30日作・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と古田新太による壮大な悪だくみ企画が、今夏またも演劇界を揺るがせそうだ。2007年の『犯さん哉』から始まったナンセンス3部作に続き、新作『欲望のみ』で見せるのは、イヤ~な感じのブラックコメディ。【チケット情報はこちら】もともとナンセンスは大好物なKERAと古田。だがナンセンスをやるには、「たゆまない努力が必要(笑)」とふたりは声をそろえる。そこで“演劇的なコメディ”に立ち返ることになってみたもののも、KERAは「昨今の状況に身を晒されていると、緻密によく出来たコメディをつくっている場合でもないなって気持ちになっちゃうんですよね。世の中が非常にでたらめだから」と明かし、「2006年にやった『噂の男』みたいな作品になるかも」と現段階での構想を語る。それを聞いた古田は、「(池田)成志さんは『噂の男』みたいな露悪な芝居が嫌いなんです」と続け、「逆にオイラは成志さんが嫌がる芝居が大好き」と笑う。硬軟どんな芝居もお手のものの古田だが、「劇団は押し芸なんですけど、やっぱりオイラは引き芸が好き。そういう意味で、KERAさんとやる時はホッとするんですよね」と、KERAへの信頼の強さをうかがわせる。一方のKERAも、「やっぱり古ちん(=古田)にしかないものってありますからね。この身体性というか、それは動けるという意味だけではなく、野蛮な感じっていうのかな(笑)。古ちんと定期的に一緒にやることで、演劇ってのは何でもアリなんだということを再確認できる」と語り、KERAにとって古田が、ものづくりにおける指針のような存在だということがわかる。キャストには大倉孝二や犬山イヌコ、山西惇といった3部作に引き続きのメンツから、小池栄子や秋山菜津子など幅広い顔ぶれがそろう。古田は「この企画は大倉が生き生きしているのが嬉しい」とニヤリ。またKERAは秋山に関して、「彼女は高校の演劇部の後輩でして、もともと僕が小劇場に連れてきたようなものですけど、松尾(スズキ)さんが『キレイ』(2000年)で彼女のベスト・プレイを引き出しちゃって。正直ずっと悔しくて。最近はキツめの高圧的なキャラを求められることも多いようだし、またそれとは別の面も見せられたらいいなと思っているんですよね」と抱負を語る。近年は舞台の創作においても、「意地悪しちゃダメっていう風潮がある」と古田。だがKERAは「つくるものに関してはフィクションなんだから、文句言われたくない」と言い放つ。その刺激的な舞台で、またも観客を大いに驚かせてくれるはずだ。チケットぴあでは3月29日(日)までプレリザーブ受付中。取材・文:野上瑠美子
2020年03月26日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の戯曲を、さまざまな演出家がそれぞれの色合いで上演するプロジェクト「KERA CROSS」。2019年に鈴木裕美が『フローズン・ビーチ』を上演したのに引き続き、第二弾となる今回は生瀬勝久が『グッドバイ』を手がける。『グッドバイ』はもともと、太宰治による未完の遺作『グッド・バイ』をもとにKERAが描き出した作品。2015年に仲村トオル、小池栄子らをキャストに迎えて上演され、読売演劇大賞の最優秀作品賞等も獲得している。コミカルでスピーディな会話の応酬とスタイリッシュな美術や振付。演劇の面白さが詰まった名作舞台だ。さらに今年2月には成島出監督による今作の映画化作品も公開を控えている。闇の商売で儲け、たくさんの愛人をもつ色男の雑誌編集者・田島は、心を入れ替えて愛人たちと別れる決意をする。そのために怪力で大食いの美女・キヌ子と手を組むが……。今作では藤木直人が田島を、ソニンがキヌ子を演じる。さらに真飛聖や入野自由、小松和重といったバラエティに富んだキャストが顔を揃え、生瀬自身も出演する。『橋を渡ったら泣け』『楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき〜』といった作品で演出を務めてきた生瀬。KERA作品には『祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜』や『陥没』など、いくつも出演している。役者として体感してきたKERAの作品を、演出家としてどのように料理するのか、その手腕に期待したい。本日1月11日・12日(日)に東京・かめありリリオホール、1月16日(木)に山形市民会館 大ホール、1月18日(土)に新潟・長岡市立劇場 大ホール、1月21日(火)に広島JMSアステールプラザ 大ホール、1月23日(木)に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、1月28日(火)に香川・レクザムホール 小ホール、1月30日(木)・31日(金)に愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、2月2日(日)に福島・パルセいいざか、2月4日(火)から16日(日)まで東京・シアタークリエにて上演。文:釣木文恵
2020年01月11日