佐倉自然農園(所在地:千葉県佐倉市、事業主:高橋 睦)では、GX推進法の成立で脱炭素に向けて取り組む企業のために、植物の光合成を活用しビルからの二酸化炭素を効果的に削減方法を提供するサービスについて本格始動を開始、特許ライセンス契約を開始します。【カーボンニュートラルへ向けて進む法整備】政府は2050年迄にカーボンニュートラルの実現を公約しており、実現に向けた法整備が進められている。昨年の国会で脱炭素と競争力強化を両立させるGX推進法が成立。二酸化炭素を排出する企業に対し、金銭的な負担を求めるカーボンプライシングの導入が2028年度から実施されることが決まっています。脱炭素に向けた取り組みは企業の存続や成長のカギとなります。【植物の光合成がビルの排気二酸化炭素を削減】佐倉自然農園では、企業に向けて二酸化炭素削減方法を提供するサービスを本格的に開始します。これは特定建築物(床面積3,000m2以上の建物)から排出される濃度の高い二酸化炭素を屋上に設置した温室内に導き植物の光合成により消費、削減するという方法です。ビルからは日常的に二酸化炭素濃度の高い空気が排出されている一方で、施設栽培(温室)では二酸化炭素が不足して二酸化炭素を供給しているという事実があります。この2つを組み合わせビルの排気を施設栽培の温室へ供給することにより、大気に放出する二酸化炭素を植物の光合成で削減することができます。商業施設の場合、栽培された農産物を収穫後すぐに販売出来るため最適です。本方法は2022年11月に特許取得しました。【ビル管理と農家、二つの経験が開発のきっかけに】開発者は空調設備やビル管理の業務に携わった際に、特定建築物から1,000ppmに近い二酸化炭素を含む空気が排出されていることを知りました。その後50歳で農地を借りて果樹栽培を開始、その後脱サラして農家になり農地を広げていきました。ある日、農業雑誌から施設栽培におけるハウス内では二酸化炭素が減少するため、わざわざ二酸化炭素を供給して光合成を促している事を知りました。一方では濃度の高い二酸化炭素が排出され、一方では不足しているという事から、ビルの屋上で施設栽培を行いそこへ二酸化炭素を供給すれば効率的ではないかと考えこの仕組みを開発しました。■開発者コメント建物からの排気は環境基準により1,000ppm程度の濃度になります。この濃度は光合成が最大化する濃度とほぼ同じであり最適な組み合わせになります。本方法で少しでも温暖化に歯止めが掛かれば良いと願っています。【二酸化炭素削減の仕組み】二酸化炭素削減方法 概念図特許証【農園概要】農園名 : 佐倉自然農園(園主:高橋 睦)所在地 : 〒285-0005 千葉県佐倉市宮前2-21-3電話/FAX : 043-483-0239事業内容 : ブルーベリー他果樹栽培、養鶏ホームページ: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年04月17日昆布やわかめ、海苔など海藻類は私たちの普段の食事にとって欠かせない食材ですよね。海藻は、出汁をとったり、お味噌汁に入れたり、サラダにのせたりと幅広い料理で活躍します。海藻を食べるのが大好きという方もいらっしゃると思いますが、意外と海藻の生態などについては、知らない方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、意外と知られていない海藻の生態や、海草との違い、海藻に含まれる栄養とその効能などについてご紹介します。■海藻とは「海藻って、海に生息していることは知っているけど、どんな生態なんだろう?」「生態系でどんな役割があるのかなあ」という方に向けて、まずは海藻の生態や海藻が自然界で担っている役割について簡単にご紹介します。・海藻の生態そもそも、海藻とは、「海の中で育つ藻類」のことを指します。特徴のひとつは、樹木や野草のような地上に育っている植物と同じように、海の中で光合成を行っていること。海に注ぎ込む太陽の光と、海水に溶けている二酸化炭素を使って、自分の体に必要な栄養と酸素を作り出しているのです。このように海藻が育つためには太陽の光が必要なので、海藻は、太陽光が海底に注ぎこむ海の浅瀬から数10メートルの水深までの沿岸部に生息しています。海藻の体の特徴としては、葉・茎・根の区別がつかないということが挙げられます。植物は土にはやした根から栄養を吸収しますが、海藻には根のような器官はなく、岩場に体をくっつけるため固着の機能しか持っていません。海のなかでは、この固着機能を使って主に岩場にひっついています。そのほかにも陸上の植物との違いがあります。植物は種によって繁殖しますが、海藻は海の中を泳ぐ「胞子」が繁殖に使われ、子孫を増やします。普段食べるいろいろな海藻は、その色によって大きく「紅藻類(こうそうるい)」・「褐藻類(かっそうるい)」・「緑藻類(りょくそうるい)」の3種類に分類されます。普段の食事で見かける海藻の種類はそれほど多くはありませんが、実は海藻の種類はとても多く、日本近海だけでも1,500種類以上もの海藻が生息しているそうです。また、昆布などの大型の海藻類は東北や北海道などの寒い地域で特によく育ちます。逆に沖縄などの暖かい海では、大型の海藻類などはみられません。もちろん、沖縄の有名な食べ物「海ぶどう」のように、暖かい海でも小型の海藻類は豊富に採られています。・海藻が担う役割なんといっても海藻は、沿岸部の「生産者」として大きな役割を持っています。海藻は太陽の光と二酸化炭素を使って、無機物から有機物を作り出して自分の体を作り上げ、さまざまな海の生物のごはんになっているのです。そのほか、海藻が海底の岩場に育ち、森のようにしげることで、魚やほかの小さな海の生き物の生息地を提供するという大切な役割も持っています。魚の産卵場所になったり、小さな生き物たちが天敵から身を隠す場所としても役立っているのです。海藻は、生産者として生態系を回していくのに必須な栄養分を作り出したり、生態系の維持にとって大切な生物の多様性を支えるという大きな役割を持っているんですね。■海藻の種類次は、意外と知られていない海藻の種類についてご紹介します。前述したとおり、海藻はその色の違いから大きく「紅藻類」・「褐藻類」・「緑藻類」の3種類に分類されます。ここでは、それぞれの種類について解説します。・紅藻類その名の通り、海藻の色が赤みがかっているのが紅藻類の特徴で、水深が比較的深いところに生育しています。水深が深いところは、太陽の光が届きにくいのですが、そんな少ない光でも効率的に光合成を行うために、赤色の体を持っています。紅藻類に分類される海藻のうち、食用になっている代表的なものは、ふりかけなどで人気のゆかり、江戸時代から有名な高級品であるアサクサノリ、ところてんや寒天の材料になるテングサなどがあります。・褐藻類次は、多くの食用藻類が分類される褐藻類についてご紹介します。こちらには、褐色の藻類が含まれます。特に1mを超えるような昆布などの大型海藻は、主に褐藻類にみられます。食用になっている褐藻類には、昆布・わかめ・もずく・ひじきなどが挙げられます。わかめは、緑色の見た目なのになんで褐藻類なの? と思われるかもしれませんが、火を通す前のわかめの色は、実は褐色なんです。昆布はお出汁をとったり、和え物やお煮しめとして幅広く和食に使われていますし、わかめはお味噌汁の具材やサラダに入れると、とてもおいしいですよね。もずくはお酢でさっぱりと食べたり、お醤油・砂糖で味付けしたひじきの煮物も人気です。このように日々の食事に欠かせない多くの海藻が、褐藻類に含まれています。・緑藻類最後にご紹介するのは、緑色の海藻が含まれる緑藻類です。主に浅瀬に生育しています。佃煮やお好み焼きにかける青のり粉に使われるアオノリ類や、沖縄名物の海ぶどう、お味噌汁の具材として人気のアオサなどが緑藻類に含まれます。・食用だけでも100種類以上!このように大きく3つに分類され、豊富な種類を持つ海藻。日本だけでも1,500種以上の海藻が生息していて、食用にしている海藻は100種類以上にものぼります。海藻を食べるのは日本だけという話を聞いたことがあるかもしれませんが、実は、日本以外にもアイルランドやスコットランドなどでも海藻を食べる文化があるそうです。■海藻と海草の違いここまで海藻の生態や種類について紹介してきましたが、海藻と似た「海草」という言葉がありますよね? 「かいそう」や「うみくさ」と読まれる海草ですが、海藻と海草には、どのような違いがあるのでしょうか。このふたつの言葉、似ているようで異なる生物群のことを指しています。ちなみに英語では海草は「sea grass」、海藻は「sea weed」という別の単語が当てられています。そこで、海藻と海草の違いについて解説します。・『花』が咲くかどうか海藻と海草の大きな違いは、「花」が咲くかどうかです。海藻は花をつけず、胞子によって子孫を増やしています。一方海草は、海の中で育つ種子植物なんです。特定の時期がくると海の中でも花を咲かせ、そして種子を作って、子孫を増やします。そのほか、海藻と海草は、その体の作りにも違いがあります。海草は、葉・根・茎の違いがはっきりしている一方で、海藻はこの根や茎の区別がはっきりしていません。陸上の植物は、もとは海藻から進化した生物といわれており、陸上の植物が再び海のなかで生きられるように進化したのが、海草なんです。・海草は食用ではないまた、食用かどうかも海藻と海草の大きな違いです。これまでに紹介したように、100種類以上もの海藻が食用になっている一方で、人が食用にしている海草はありません。ちなみに、海に住む哺乳類ジュゴンは、海草を好んで食べるそうです。有名な海草としては「アマモ」が知られていますが、アマモを含めても海草は、世界で60種類くらいしかないそうです。海藻は日本だけで1,500種類も知られていますので、種類の多さも海藻と海草では大きく異なるんですね。・共通点もあるもちろん、海藻と海草の共通点もあります。まずは、両方ともに海に生育し、光合成を行う生産者であるということ。また海藻や海草が、魚や海の生物の生息場所や産卵場所を提供したり、天敵から小さな生物が身を守る隠れ家になっているというところも共通点です。■海藻の利用用途【食材以外】わたしたちは、さまざまな種類の海藻を食材として口にしていますが、海藻は食用以外にも幅広い用途で使われています。そこで、食材以外の海藻の利用用途についてもご紹介します。・肉加工品にまずは、肉加工にも海藻が使われてることがあります。たとえばソーセージやハムといった加工肉製品を作るときに、海藻由来の成分を使うと、製品に弾力を持たせる効果があるそうです。・シャンプーやコンディショナーにそのほか、紅藻類からとれるカラギーナンという成分は、シャンプーやコンディショナーに含まれています。海藻は髪の毛にいいと言われているのも、納得ですよね。・肥料になるもの海岸地域で田畑を耕す地域では、海藻が古くから肥料として使われてきました。海藻はカリウムなどのミネラル分が多く含まれることや、オーキシンと呼ばれる植物に大切なホルモンが豊富に入っていることで、植物の成長を促してくれるのです。古くからは、ローマ時代にも海藻が肥料として利用されてきたそうですよ。・科学技術の研究も進められている海藻の中には、バイオエタノールを生成する種類があり、バイオエタノールの安価な供給のために海藻に関する研究が進められていいます。そのほかテングサからつくられる寒天の培地が細胞培養に使われたり、織物の糸として海藻が使われている地域もあるそうです。■海藻の栄養と効能海藻というと、栄養がたっぷりで、健康にもいいというイメージがある食材のひとつですよね。そこで、海藻が持っている健康に嬉しい栄養とその効能についてご紹介します。・海藻の栄養海藻には、評判通りさまざまな栄養素が含まれています。特に豊富なのが水溶性の食物繊維。そのほかマグネシウム・カルシウム・鉄などのミネラルが豊富に含まれます。人気の海藻であるわかめには、カリウムが豊富ですし、昆布にはマグネシウムやヨウ素がたっぷりと入っています。また煮物にするとおいしいひじきには、カルシウムが多く含まれているんです。くわえて海藻自体のカロリーは低く、脂肪分も少ないので、まさに私たちの健康にとってはメリットだらけの食べ物といえます。でも海藻を食べるときに気をつけてほしいことが一点だけ。それは海藻の加工食品に含まれる塩分です。人気の海苔や佃煮には、塩分が多く入っているものがありますので、そういった加工食品を食べすぎると、塩分過多になってしまう可能性もあります。・海藻の効能なんといっても私たちの健康にとって嬉しいのは、海藻に含まれる水溶性の食物繊維です。この食物繊維によって、一緒に食べた炭水化物や脂肪などの吸収がゆっくりとなり、食後の血糖値の上昇が緩やかになるという効果が期待できます。また便秘解消効果ものぞめます。そのほか、カリウムには血圧を下げる効果、カルシウムには骨粗相症予防などにも良い効果が期待できるのです。最近の研究では、昆布やわかめを食べると内臓脂肪が減少するという成果も明らかになりつつあるようです。■海藻をおいしく食べて健康に以上、意外と知られていない海藻の生態やその種類、海草との違い、海藻に含まれる栄養などについてご紹介しました。私たちの身体に嬉しい栄養がたっぷりで、味もおいしく、ヘルシーな海藻。多くの種類の海藻を食べて、いろいろな栄養をバランス良く吸収したいですね。
2020年08月14日一貫して《光》の探究を続け、本年6月に惜しまれつつ世を去った写真家・田原桂一と、世界的に活躍するダンサー・田中泯とのコラボレーションとなる展覧会「光合成」が、原美術館で開催されます。2017年9月9日(土)~12月24日(日)の会期中には、田中泯によるパフォーマンス「オドリ」が、3回にわたって実施されます。写真家・田原桂一とダンサー・田中泯の、たぐいまれなるコラボレーションその《場》の光や空気を受け止め自らの身体で表現する田中泯。その姿を、色彩を一切排して純粋に光と影の織り成す鮮烈なイメージへと昇華させる田原桂一。二人の表現者が切り結んで創り出した、緊張感あふれる美しさは、見る人を圧倒します。今回の展覧会では、1978~80年に撮影したものから41点、2016年撮影の新作から5点、計・写真作品46点の作品が展示されます(すべてモノクローム)。●田原桂一(たはら けいいち)1951年京都府出身。フランス・アルル国際写真フェスティバル新人大賞(1977)、木村伊兵衛写真賞(1985)、フランス芸術文化勲章シュバリエ(1993)など受賞多数。写真だけでなく、《光》を探究する延長で彫刻・環境造形も手がけ、2004年に東京都庭園美術館で「田原桂一 光の彫刻」展を開催。2017年、チェコ・プラハ国立美術館で個展「Photosynthesis1978-1980」を開催。2017年没。●田中泯(たなか みん)1945年東京都出身。クラシックバレエとモダンダンスを学び、1974年から独自のダンス・身体表現を追究。1978年以降海外でも活躍、高い評価を得る。1985年山村へ移り住み、農業を礎とした舞踊活動を継続中。映画「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督、2002)以降、俳優としても活動。著書に「僕はずっと裸だった」(2011)、「意身伝心」(2013)など。フランス芸術文化勲章シュバリエ(1990)他受賞多数。●ふたりの出逢い~今回の展覧会開催に至るまでIsland-11 1980159×105 cm©Keiichi Tahara1971年、20歳で渡仏した田原桂一は、日本の光とは異質なヨーロッパの光に出会い、衝撃を受けました。そして《光》そのものを探究するため、パリを拠点に写真(=Photography 直訳:光で描く絵)を撮り続け、高い評価を得ました。一方、1960年代にモダン・ダンサーとして活動を始めた田中泯は、1974年、独自の舞踊を求めて活動の幅を広げ、そのユニークな身体表現で注目されました。Paris-4 197831×47 cm©Keiichi Tahara1978年秋、パリで邂逅した二人は《光と身体の関係性》の探究を始めます。ヨーロッパ、アメリカ、そして日本。さまざまな都市や大自然の場と切り結び、異なる光や大気や季節に反応するダンサーを、写真家がイメージに焼き付ける――この濃密なフォトセッションは、1980年まで続きます。しかし、生み出された写真は何故か発表されることなく、筐底に秘められたまま歳月が流れました。New York-1 1978 31×47 cm©Keiichi Tahara2016年、それぞれキャリアを積み重ねてきた二人は《原点回帰》を決め、過去のコラボレーションを写真集「Photosynthesis 1978-1980」(発行:スーパーラボ)にまとめると同時に、36年ぶりにフォトセッションを再開、新作を撮りはじめました。2017年6月、田原桂一は病のため他界。亡くなる直前まで、本展の準備に力を注いでいたといいます。今回展示する写真作品46点は、田中泯との類まれなコラボレーション(1978~80年および2016年)の中から選び抜いたもので、展覧会という形としては、日本初公開となります。●コラボレーションの締めくくりとしての、ソロパフォーマンス本展の会期中、田中泯は二人のコラボレーションの締めくくりとして、ダンスパフォーマンスをおこないます。原美術館でのパフォーマンスは、「第5回ハラアニュアル展」(1985)以来。実に32年ぶりとなります。【展覧会概要】展覧会名:田原桂一「光合成」with 田中泯会期:2017年9月9日(土)~12月24日(日)会場:原美術館所在地:東京都品川区北品川4-7-25開館時間:11:00~17:00(祝日を除く水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)休館日:月曜(祝日にあたる9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日入館料::一般 1,100円、大高生 700円、小中生 500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20 名以上の団体は一人 100円引電話:03-3445-0651(代表)公式サイト:【関連イベント】田中泯オドリ第1回9月30日(土)予約受付開始9月12日(火)11:00~第2回11月18日(土)予約受付開始10月31日(火)11:00~第3回12月23日(土・祝)予約受付開始12月5日(火)11:00~*各回共通会場:原美術館中庭(晴雨にかかわらず)開場:18:00(開演まで展示を鑑賞できます/17:00 ~18:00は準備のため閉館)開演:19:00参加費:3,000円(1人1回・入館料込)、原美術館メンバー及び同伴者1名まで2,000円event@haramuseum.or.jpにメールにて申し込み:※件名に「イベント申込み:●月●日田中泯 オドリ」、本文に氏名、連絡先電話番号、同伴者数。美術館からの返信をもって、予約完了となります。※申し込み先着順。定員になり次第締め切り。※複数の公演への一括申し込みは出来ません、各回個別に申しこんでください。※晴天・雨天いずれの場合も屋外(中庭)で行います。屋外オールスタンディング(立ち見)での鑑賞となります。
2017年08月31日展覧会『田原桂一「光合成」with 田中泯』が、2017年9月9日(土)から12月24日(日)まで、東京・品川の原美術館で開催される。1970年代から一貫して“光”の探究を続け、国際的な評価を得た写真家・田原桂一。本展は、世界的に活躍するダンサー・田中泯との長きに渡るコラボレーション(1978〜80年および 2016年)によって生まれた作品を展示するもので、展覧会の形では日本初公開となる。1978年秋にパリで出会い、”光と身体の関係性”の探究を始めた二人。ヨーロッパ、アメリカ、日本など、さまざまな都市や大自然を舞台に、異なる光や大気や季節に反応するダンサーを、写真家がイメージに焼き付けるという濃密なフォトセッションで生まれたのは、緊張感あふれる美しさが印象的な写真作品だ。その場の光や空気を受け止め自らの身体で表現する田中泯と、その姿を、色彩を一切排して純粋に光と影の織り成す鮮烈なイメージへと昇華させる田原桂一。会場には、1978〜80年に撮影されたものから41点、2016年撮影の新作から5点、計46点のモノクロームによる写真作品が展示される。【開催概要】田原桂一「光合成」with 田中泯会期:2017年9月9日(土)〜12月24日(日)会場:原美術館開館時間:11:00〜17:00※祝日を除く水曜は20:00まで。入館は閉館時刻の30分前まで)休館日:月曜日、9月19日(火)、10月10日(火)※祝日にあたる9/18、10/9は開館。入館料:一般 1,100円、大高生 700円、小中生 500円※原美術館メンバーは無料。※学期中の土曜日は小中高生の入館無料。※20名以上の団体は一人100円引。<作家プロフィール>■田原桂一(たはら けいいち)1951年京都府出身。フランス・アルル国際写真フェスティバル新人大賞(1977)、木村伊兵衛写真賞(1985)、フランス芸術文化勲章シュバリエ(1993)など受賞多数。写真だけでなく、《光》を探究する延長で彫刻・環境造形も手がけ、2004年に東京都庭園美術館で「田原桂一 光の彫刻」展を開催。2017年、チェコ・プラハ国立美術館で個展「Photosynthesis1978-1980」を開催。2017年没。■田中泯(たなか みん)1945年東京都出身。クラシックバレエとモダンダンスを学び、1974年から独自のダンス・身体表現を追究。1978年以降海外でも活躍、高い評価を得る。1985年山村へ移り住み、農業を礎とした舞踊活動を継続中。映画「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督、2002)以降、俳優としても活動。著書に「僕はずっと裸だった」(2011)、「意身伝心」(2013)など。フランス芸術文化勲章シュバリエ(1990)他受賞多数。
2017年08月18日分子科学研究所(分子研)は2月12日、植物の光合成よりも高い効率で水から酸素を発生する化合物を開発したと発表した。同成果は分子研の正岡重行 准教授(総合研究大学院大学 構造分子科学専攻 准教授)、近藤美欧 助教、総合研究大学院大学の岡村将也氏らの研究グループによるもので、2月10日付の英科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開された。エネルギーおよび環境問題を解決する方策として、太陽光のエネルギーを貯蔵可能な化学エネルギーへと変換する人工光合成技術が注目を集めているが、酸素発生反応の効率の低いことが実現の障害となっている。酸素発生反応では、水分子が酸素分子、水素イオン、電子に分解されるが、この反応は非常に起こりにくいため、これを促進して酸素を効率よく発生させる高活性な触媒の開発が課題となっている。植物の光合成では、タンパク質複合体である光化学系IIに存在する酸素発生錯体が高活性な酸素発生触媒として機能することが知られている。この酸素発生錯体を生体から取り出して触媒として使用することは非常に難しいため、人工的にデザインされた金属錯体を用いた酸素発生触媒の開発が試みられてきた。しかし、人工光合成の実現に必要とされる、天然の光合成に匹敵する高い活性、高耐久性、安価という3つの条件を満たす酸素発生触媒の開発は報告されていない。今回の研究では、植物の光合成で酸素発生触媒の役割を持つタンパク質複合体の中に存在する錯体の構造に注目し、その機能を人工的に模倣して、鉄イオンと有機分子を組み合わせた鉄錯体を新たな触媒分子としてデザインした。検証の結果、この鉄錯体は触媒として高い酸素発生速度と高い耐久性を示し、植物の光合成よりも良好な触媒性能を持つことがわかった。同成果について研究グループは「人工光合成技術の進展に向けた大きな一歩です。さらに、植物に学ぶ触媒分子のデザイン戦略は、人工光合成の反応を含めた物質変換反応における触媒開発に重要な指針を与えうるものです。今後、触媒分子をさらに最適化することにより、エネルギーや環境問題の解決に貢献する高性能な触媒の開発につながると期待されます。」とコメントしている。
2016年02月12日岡山大学は5月29日、光化学系Iというタンパク質複合体の構造を解明したと発表した。同成果は同大大学院自然科学研究科(理)の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、菅倫寛 助教と中国科学院植物学研究所の共同研究グループによるもので、5月29日付け(現地時間)の米科学誌「Science」に掲載される。光化学系Iタンパク質複合体は、酸素発生型光合成において、太陽光を生物が利用可能な化学エネルギーに変換する役割を担い、水からの電子と光エネルギーを利用して、二酸化炭素を糖に変換するために必要な還元力を作り出している。高等植物の光化学系I複合体は14個のタンパク質と90個以上のクロロフィル(葉緑素)、22個のカロテノイドなどで構成されており、外側に光エネルギーを集める集光性アンテナタンパク質が4つ結合し光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体が形成されている。光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体における光エネルギーの高効率吸収・伝達の機構を明らかにするためには、同複合体の立体構造を解明する必要がある。同研究グループは、エンドウ豆の葉から精製・結晶化した光化学系I複合体を、大型放射光施設SPring-8を利用することで2.8 Å分解能で立体構造を解析。その結果、155個のクロロフィル分子を同定し、これまで分かっていなかった多くのカロテノイド、脂質分子などの配置を解明した。さらに、詳細な構造が分かっていなかった多くのタンパク質サブユニットの構造を明らかにし、光エネルギーを吸収し、反応中心へ伝達する経路を同定することに成功した。同研究グループは今回の研究成果について、光合成の機構解明や人工光合成での光エネルギー利用効率の向上だけでなく、他の巨大膜タンパク質の結晶構造解析にも重要な知見を提供することになるとしている。
2015年05月29日岡山大学は5月8日、光合成水分解反応の触媒であるMn4CaO5クラスターと類似のモデル化合物を人工的に合成することに成功したと発表した。同成果は岡山大学大学院自然研究科(理)の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、中国科学院化学研究所、ドイツベルリン自由大学らの共同研究グループによるもの。5月8日付の米科学誌「Science」に掲載された。光合成における水分解・酸素発生反応は藻類や植物の葉の中の葉緑体にある光化学系II複合体と呼ばれるタンパク質で行われており、同タンパク質中で触媒として水分解・酸素発生反応を実際に進めているのがMn4CaO5クラスターだ。今回、沈教授らが合成したMn4CaO5クラスターは、タンパク質の代わりに有機化合物に結合しており、天然のものと同じ化学組成と歪んだ椅子型構造を有している。さらに、人工的な酸化剤によって天然の触媒と同じように1電子ずつ酸化され、天然の触媒と同じような反応中間体を取ることが判明した。一方、このモデル化合物は水を酸化することができない。これは構造上の歪みの位置が原因と考えられており、天然触媒と人工化合物の間で異なった歪みの部位が水分解の触媒活性を発現するのに重要であることを示しているという。今回の研究成果は、天然触媒の反応機構を研究するためのモデルシステムを提供しただけでなく、天然触媒における特殊な歪みを人工的に再現することで、水分解活性を持つ人工化合物の合成に一歩近づくものとなった。今後、水分解の人工触媒の合成に成功すれば「人工光合成」の実現も期待される。
2015年05月11日岡山大学は、光合成による水分解反応を触媒する光化学系II複合体の構造を1.95Åの分解能で突き止めることに成功したと発表した。同成果は、岡山大学大学院自然科学研究科の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、菅倫寛 助教、秋田総理 助教、理化学研究所 放射光科学総合研究センター利用システム開発研究部門ビームライン基盤研究部の山本雅貴 部長、同生命系放射光利用システム開発ユニットの吾郷日出夫 専任研究員らによるもの。詳細は11月26日(英国時間)に、英国の科学雑誌「Nature」に掲載された。藻類や植物が行う光合成の酸素発生反応は、葉緑体にある「光化学系II複合体」と呼ばれる19個のタンパク質から構成されるタンパク質複合体によって行われている。これまで研究グループは日本の温泉由来のラン藻の一種から取り出した光化学系II複合体の結晶を作成し、その構造をSPring-8の放射光X線を用いて1.9Åの分解能で解析を行い、その成果を報告していたが、X線結晶構造解析で使用するX線回折写真の撮影に必要な数秒間のX線照射の間に、水分解反応を担う触媒中心の一部がX線による放射線損傷を受け、本来の構造とわずかに異なっている可能性があったという。そこで今回の研究では、X線による放射線損傷の影響のない光化学系IIの本来の構造の解析を目指し、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて実験が行われた。XFELは1パルスでX線回折写真を撮影でき、かつ、1パルスの継続時間が10フェムト秒と短いため、X線による放射線損傷で分子の構造変化が起こる前に、X線回折写真を撮影することが可能という特徴がある。具体的にはSACLAで開発した「フェムト秒X線結晶構造解析法」と世界最高品質の光化学系IIの結晶を作成する技術を組み合わせることで、光化学系II複合体の放射線損傷を受けていない本来の構造を、1.95Å分解能で解析することに成功。その結果、これまでSPring-8の放射光を用いて得られた構造よりも原子間の距離が0.1~0.3Å程度短くなっていることが判明したという。光化学系IIの触媒中心である「Mn4CaO5クラスター」は周りのアミノ酸が協調的に構造変化することで、周期的な5つの中間状態を経て高効率の水分解反応が行われるが、その動的メカニズムの詳細は不明となっている。研究グループでは、今回の成果について、光化学系IIの反応周期の第一状態について反応性を維持したままの本来のMn4CaO5クラスターと周辺の構造を明らかにしたものであり、太陽の可視光エネルギーを利用した水分解反応を人工的に実現するための触媒の構造基盤を提供することにつながるとしており、この反応を模倣した「人工光合成」が実現すれば、光エネルギーを高効率で電気エネルギーや化学エネルギーに変換することにつながり、エネルギー問題や環境問題、食糧問題など解決につながることが期待されるとコメントしている。
2014年11月27日