【La BOMBANCE】の岡元信さん発・「日本酒×和食のペアリング」『白瓜と数の子の和え物・とうもろこし揚げ・牛ロースの焼きおにぎり、サマートリュフを器に見立てたほおずきに盛り付けてほおずきトマト』 × 「東洋美人」『素麺酸・苦・辛・旨などさまざまな香りや味わいとともに』 × 「十四代」『いちじくの胡麻味噌ソース・焼きごま豆腐、カニと空豆のあんかけ』 × 「紀土」『焼き魚や煮魚』 × 「磯自慢」『クリアな魚介のスープ』 × 「林」【La BOMBANCE】「ジャンルを超越した日本料理を楽しんでほしい」という思いから、フランス語で「ご馳走」という意味の『La BOMBANCE』という店名でオープンしたのが17年前のこと。紀尾井町の高級料亭『福田家』で腕を磨いたオーナーシェフ・岡元信さんが生み出す料理は、和の伝統、技法を大切にしながらも、フォアグラやトリュフなど西洋の高級食材をも取り込み、魚の出汁をムースにするなど、自由奔放だ。こういったスタイルも今でこそ当たり前になったが、まだイノベーティブ・フュージョンというジャンル名がなかった時代だけに、日本料理の新しいスタイルを追求するまさに先駆け店として一斉を風靡し、ミシュランの星も獲得。今もなお唯一無二の独創性で常連客を飽きさせず、また新規客を驚かせている。店内の内装、器使いもモダンでアーティスティック。それでいてどこか可愛らしさを感じる抜け感も独特だ。常に時代を先取りしていく岡元信さん。オープン当初はワインに力を入れていたが、近年は日本酒も充実させている。特に、東洋美人の造り手・澄川氏、十四代の髙木氏をリスペクトし、料理も造り手の個性からインスパイアされペアリングを考えているとのこと。「飲み疲れない、飲み飽きない」が僕のおいしいお酒の基準。一杯、二杯はおいしくてもだんだん重たくなってくるものは苦手です。香り華やかで味がきちんとありながら、雑味など余計なもの、ネガティブな要素がなく、軽やかで、きれいにすーっと体に溶け込んでいく。はかないけれど余韻は長く、「ああ、また飲みたい」とう印象を深く残してくれる奥深い魅力をもったお酒に惹かれます。でも、これはあくまでも僕の好み。美味しさの基準は人それぞれです。おいしいお酒も沢山あります。どうやって自分の料理に合うお酒を選べば良いのか迷ってしまいますよね。僕の場合、お酒の味や造り云々ではなく、お酒を造っている人で選んでいます。お酒に対する哲学、考え方に共感できる、リスペクトできる、深く知りたいと思う、「自分と気が合うだろうな」と思う造り手のお酒を選んでいるのです。そして、ペアリングを頼まれた場合は、造り手のルーツをたどり、その人が育った風土や時代など、生み出された作品のバックグランドを想像し、造り手自身を描くような料理を作ります。また、日本酒は提供温度も重要です。管理は低温貯蔵できる冷蔵庫で保管し、提供するときは、少しずつを心がけています。1.『白瓜と数の子の和え物・とうもろこし揚げ・牛ロースの焼きおにぎり、サマートリュフを器に見立てたほおずきに盛り付けてほおずきトマト』 × 「東洋美人」蔵元杜氏の澄川宜史さんはとても華やか、あでやかでスター性があります。反面素朴なところも見受けられ、どんなに人気酒蔵になっても奢ることなく、一つひとつのディテールを大切にきちんと整ったものを作り上げています。華やかさ、艶やかさはオレンジ色のほおずきで表現。色の鮮やかさがより際立つように白い器を使いました。そして、白瓜と数の子、焼きおにぎりと牛ロースやトリュフといった具合に、素朴なものと高級感を感じるものを合わせています。2.『素麺酸・苦・辛・旨などさまざまな香りや味わいとともに』 × 「十四代」十四代の髙木顕統さんが造るお酒は、地軸となって世界を動かす魔法のようなエネルギーがあります。その視野は、地域、日本を超え、世界を巻き込んでもなおぶれないパワー。味わいの厚みは複雑すぎて解明できないくらい天才的です。こういうお酒には、一個人の思索でピンポイントで何かを合わせるという必要はありません。何を合わせようとも、酸、旨味、コクでカバーして包みこんでくれるくらいの包容力があるからです。十四代のお酒にはもうおんぶにだっこで遊んでもらうしかない。頼りっぱなしですがそれが楽しいのです。そこで、いろいろな味わい、香りを散りばめた一皿にしました。香ばしく焼いた鮎の香り、身の柔らかさの中にほのかに潜む苦味、出汁の旨みが染み渡った冬瓜、生ハムの熟成した香り、甘酸っぱいほおずきトマト、茗荷や生姜など薬味を加える素麺などすべてを受け止めてくれる十四代。宇宙的なスケールなので、天体を思わせる器を使いました。3.『いちじくの胡麻味噌ソース・焼きごま豆腐、カニと空豆のあんかけ』 × 「紀土」海あり山ありの風光明媚な和歌山、海南にある酒蔵。“風土”をテーマにするという強い思いから“紀土”という名前にしたそうです。その風土を思い浮かべれば、単に景色が良いというのではなく、荒々しさもあれば静けさ、のどかさもある。温暖かと思いきや冷たい風が吹く、強い光と漆黒の陰など緩急のある町。確かに紀土を飲むと、「えっ、こうくる?」という嬉しい裏切りに感動させられます。だから、料理も食材や温度、食感で「なるほど、こうきたか」と感じてもらえるような想像を超える対比を考えました。まずひとつのお盆に2つの対比。ひとつは冷たく、ひとつは温かい。いちじくに甘辛ソースとナッツの食感。焼いた胡麻豆腐にあんかけ、というあまりない組み合わせ。緩急でペアリングというわけです。4.『焼き魚や煮魚』 × 「磯自慢」磯自慢は、伊勢志摩サミットでは乾杯酒として採用された日本を代表する銘柄の一つになっています。八代目の寺岡洋司さんは、大変真面目で几帳面な方、という印象です。知識をきちんと積み上げ、技を駆使して、一つひとつ根拠のある造りを目指していらっしゃる。業界ではパイオニア的な発信力もあり、尊敬を集める人物。透明感のあるすっきりとした味わいながらも奥行きや、柔らかな厚みを感じます。十四代と同じく、誰が飲んでも美味しいと感じる正統な酒造りは本当に素晴らしい。イメージするのは、やはり正統な日本料理。信楽焼、篠焼などどっしりとしながらも美しい伝統的な和食器が似合うと思うので、そこに、焼き魚や煮魚をシンプルに盛り付けたいですね。5.『クリアな魚介のスープ』 × 「林」富山に『La BOMBANCE 環水公園』を出店し、現地へ行く機会が増え、出合ったのが「林」です。料理店で初めて飲んだ時、味わいから富山の冬を思い浮かべることができました。雪が積もりしーんと静まりかえった風景の中、真面目に一生懸命働く蔵人‥‥。林さんにはまだお会いしたことがありませんが、今一番興味を持っている方です。富山は一級河川が5本も流れ、海から山までの高低差が4000m。水に恵まれているだけでなく、U字に深くえぐれた富山湾は世界でも珍しい地形と聞いています。美しい水が育むお酒と魚介。実は僕は日本酒のつまみとして一番おいしいつまみは、ダシだと思っています。「旨い」と「旨い」の最たる相乗効果。その醍醐味をこの「林」で味わうことができると思いました。富山湾で揚がった魚介でクリアな出汁を取りそこに少しの塩を加えただけのシンプルなスープで。春は桜鯛、夏は牡蠣、冬はタラ‥‥、秋は魚介ではなくキノコが良いかもしれません。九谷の器でお出ししたいですね。「香りが華やかすぎず、辛口であればたいていの料理に寄り添ってくれるものなので、もっとおおらかに楽しんでいい」と話す岡元さん。試飲会、あるいは食事に行った時に出会ったお酒で「どんな場所で、どんな人が造っているのだう?」という興味が湧いたものは、造り手の育った環境、つまり、地形、気候、特産物や郷土料理、陶磁器類のことなどまで調べ尽くす。さらに造り手が生きてきた時代背景、土地の歴史なども掘り下げていくという。「幅広く知識を得て、食材、料理法を合わせていけば間違いなく寄り添ってくれると僕は信じています」と強い信念のもと、あまり種類は増やさず、造り手とのつきあいを深めた上で料理を考え、「合って当然」という飲み合わせで提供している。また、「造り手への礼儀として、味わいが落ちないように管理することはもちろん、個性を伝えるための酒質にあった酒器選びもできる限りの努力をしたい」と岡元さん。酒蔵直送、-5度で貯蔵など品質にも気を配り、酒器も多種多様に揃えているのもさすがだ。ラ・ボンバンスLaBOMBANCE【エリア】西麻布【ジャンル】創作和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】18000円【アクセス】六本木駅 徒歩10分日本酒情報サイト「Sakenomy」では、「日本酒×料理」のフードペアリング情報を随時発信しております。その他にも、酒蔵おすすめの逸品おつまみや、酒蔵がSakenomyだけに教えてくれたおすすめの飲食店情報など、"食好き日本酒好き"の方必見の情報満載です!
2022年03月04日【うぶか】の加藤邦彦さん発・「日本酒×海老・蟹料理のペアリング」1.『縞海老 葡萄酢のジュレ』 × 「風の森 愛山 807」2.『酔っぱらい海老』 × 「手取川 純米大吟醸 古酒 梅舞花 -1996-」3.『花咲ガニ 椀物』 × 「鄙願 大吟醸」4.『ズワイガニ 焼き茄子 万願寺唐辛子』 × 「満寿泉 R-KIMOTO 純米大吟醸」5.『車海老味噌フライ』 × 「今錦 年輪 純米大吟醸」【うぶか】「日本人は甲殻類が好き」と言われるのは、海老や蟹を使った料理の種類の豊富さからもみてとれる。海老フライやピラフ、蟹クリームコロッケは洋食の“スタメン”ともいえる存在で、老若男女を問わずに大人気。中華でも上海蟹のシーズンを心待ちにしているファンは多いし、旬の蟹を目当てに地方へ足を運ぶ人もいる。甲殻類には、それだけ人の心を熱狂させる魅力があるのは間違いないが【うぶか】をオープンさせた10年前のことを、店主の加藤さんはこう振り返る。「とにかく僕が蟹と海老が大好きで、自分でお店を始めるならその二本柱でいくとずっと決めていました。専門性の高さは武器になるけれど、リスクにもなり得るとアドバイスをくださった方もいて、それでも自分が好きな食材とどこまで向き合っていけるか挑戦してみたかったんです。蟹は国内だけでも800種が生息していると言われていて、海老も昔から日本人になじみが深い。自分にとって、こんなに深掘りしがいのある食材はほかにはないと思いました」。来る日も来る日も甲殻類と向き合う日々。甲殻類は食べ手が“格闘”する食材というイメージを持つ人も多いが【うぶか】では、加藤さんが厨房で朝早くから海老や蟹の“攻略法”をじっくりと練っている。加藤さんが日本酒に夢中になったのは、そんな「好きになったらとことん一途」という性格もあってのこと。そんな生まれもっての“性分”と親交の深い四谷【鎮守の森】(現在閉店)の店主との出会いが「日本酒をもっと知りたい」という思いに拍車をかけた。「同じお酒でも温度がわずかでも違うとガラリと味が変わることに驚きました。そのまま飲んで美味しいお酒もあれば、お燗にすることでびっくりするくらい味がふくらむお酒もある。温度帯によって風味がまったく変わるのは出汁と同じと気づいたときには日本酒にすっかり魅了されていました。海老も、たとえば、牡丹海老は1~2日寝かせることで旨みを引き出すのですが、車海老は活きたのを1時間以内に捌かないと風味がどんどん落ちていくんです。料理も日本酒も、経験を重ねると見えてくることがあるのは似ていると思います」と加藤さん。「当たり前とされてきたことがずっと変わらずにいいということはたぶんなくて、もっと別の方法はあるんじゃないかな、と考えてしまうのは自分の性分なのだと思います(笑)。カニを茹でるのも、普通は2~30分かけるところを僕は大体10分くらい。そんなに短時間でいいの? と聞かれることもありますが、高温短時間で茹でると味の締まりが違ってくると気付いたときがあって。日本酒も固定観念にとらわれない造り手の方が増えてきて、その多様性が新しい日本酒のファンを生んでいると思うんです。僕は香りも料理、だと思っているのであまり香りの主張が強いタイプより、味に透明感があって、旨みや酸味のバランスがいいお酒に惹かれます。この料理に合わせるなら、ちょっと温度を変えてみようとか、試行錯誤しながら料理と日本酒のベストな相性を見つけたいです」。1.『縞海老 葡萄酢のジュレ』 × 「風の森 愛山 807」「新鮮なうちに殻からはずし、塩をして2日寝かせた縞海老に巨峰やピオーネ、デラウェアなどを合わせたひと皿。甲州ぶどうのワインビネガーで作ったジュレを添えているので、フルーティでさわやかな酸味を感じるお酒と相性がいいと思っていたのですが「風の森 愛山 807」は、余韻の重なりかたもイメージ通りでした。心地の良い発泡感のなかにとてもきれいな果実の風味があり、鼻を抜ける香りは、ジューシィな葡萄そのもの。キレのよさも魅力で、寝かせたことによって引き出した縞海老の甘みを上品に引きたててくれます」(加藤さん)2. 『酔っぱらい海老』 × 「手取川 純米大吟醸 古酒 梅舞花 -1996-」「中華料理では紹興酒漬けにする酔っぱらい海老を日本酒でアレンジ。「今錦」の特別純米生原酒に半日漬けた牡丹海老に、20年かけて熟成させた手取川の古酒、「手取川 純米大吟醸 古酒 梅舞花 -1996-」を合わせると、豊かな旨みと甘やかな香りが口いっぱいに広がります。熟成酒と聞くとどっしりした味をイメージしがちですが、このお酒は単体で飲んでもはっとするほど美しく、透明感のある味わい。卵を抱いたメスの牡丹海老はプリッとした食感と甘みの強さが特徴。豊かな旨みと楚々としたキレのよさを兼ね備えた「手取川」と「今錦」。牡丹海老の相性の良さは格別です」(加藤さん)3. 『花咲ガニ 椀物』 × 「鄙願 大吟醸」「漁獲量が少ないことから幻とも言われる花咲ガニは、繊細な旨みを楽しんでいただきたいので、羅臼昆布と鮪節からとった一番出汁でお椀に。香りが立ちすぎず、それでいてふくよさかのあるお酒を合わせたいと思ったときに真っ先に「鄙願 大吟醸」が思い浮かびました。味に丸みがありながらほどよく酸がのっていて、お酒単体で飲んでもしみじみと美味しい。ずっと飲んでいたいと思う心地よさがあります。鮮度のよい花咲ガニは身がシャキシャキと小気味がよく、咀嚼するたびに口の中に柔らかい旨みが広がるのですが、出汁と蟹の旨みにやさしく寄り添ってくれるようなお酒だと思います」(加藤さん)4. 『ズワイガニ 焼き茄子 万願寺唐辛子』 × 「満寿泉 R-KIMOTO 純米大吟醸」「シャンパンに使用される酵母を使った「満寿泉 R-KIMOTO 純米大吟醸」は、単体で飲むと果実のようなフルーティさと喉にダイレクトに伝わるキレがあります。キンキンに冷やしてグラスで飲むのももちろん美味しいですが、焼物に合わせるに合わせるなら、あえてのぬる燗も面白いかもと思い、45度くらいの上燗にしてみたら大正解でした。燗冷ましの段階で温度が下がることによってキレ感が落ち着いて味に丸みが出るので、焼いたズワイガニの香ばしさや甘みがいっそう膨らみます」(加藤さん)5. 『車海老味噌フライ』 × 「今錦 年輪 純米大吟醸」「コースで通年お出ししている車海老味噌フライに合わせるお酒は、同じ銘柄の温度を変えてお出ししています。尾の部分は15度前後、味噌の部分は80度くらいまでお燗につけて、60度前後まで温度が下がったタイミングで召し上がっていただきます。海老フライは食べる部分によって香ばしさであったり、身のぷりっとした食感や甘みだったり、海老味噌の濃厚な旨みだったり、さまざまな“味”があるので、お酒も温度を変えてみたらどうだろと思ってお客様にお出ししたらとても喜んでいただけて。「今錦 年輪 純米大吟醸」は柔らかな旨みがあり、キレがいいので揚げ物にも素晴らしくよく合います。温度が下がる段階で飲むと出汁のような風味がじんわりと感じられて、味噌の味がより濃厚に。まずは尾のほうから、味噌が出てきたらお燗でというふうに楽しんでいただけたら嬉しいです」(加藤さん)「お燗にするならしっかりと骨格のあるお酒、冷や常温ならすっきりと透明感のあるお酒、と基本的な選びのポイントはありますが、実際にいろいろと飲み比べてみると意外な発見があるのも日本酒のおもしろさであり、魅力だと思います。甲殻類を専門にあつかう店として、海老や蟹特有の風味に寄り添う組み合わせや、温度によって味の印象が変わる日本酒のデリケートさと柔軟性を感じていただけるようなペアリングをお客様にお届けしていきたいです」うぶか【エリア】四谷【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】15000円【アクセス】四谷三丁目駅 徒歩3分日本酒情報サイト「Sakenomy」では、「日本酒×料理」のフードペアリング情報を随時発信しております。その他にも、酒蔵おすすめの逸品おつまみや、酒蔵がSakenomyだけに教えてくれたおすすめの飲食店情報など、"食好き日本酒好き"の方必見の情報満載です!
2022年02月25日