2022年5月13日 11:00
広がる認知症予防薬への夢 東大研究チームが解明「脳のゴミ除去の仕組み」
「“脳のゴミ”を除去するメカニズムがわかってきたことで、認知症の治療法の開発につながる可能性が出てきました」
こう語るのは、東京大学大学院医学系研究科の山田薫助教(脳神経医学)。
今もって根本的な治療薬がない認知症は、’25年には65歳以上の5人に1人がなるといわれている。
とりわけ認知症の6割以上を占める「アルツハイマー型」は、異常タンパク質「アミロイドβ」の脳内への蓄積が引き金となって、神経細胞の中に「タウタンパク質」(以下、タウ)がたまり、神経細胞が死んでしまい発症することが知られている。
ところが、タウはどんな人の脳内でも絶えず作られている。認知症を発症する人と、しない人がいることが謎のままだったーー。
今年2月、山田先生ら東京大学の研究チームが、タウが除去される仕組みを解明したと発表した。
■“脳のゴミ”排出の仕組みを解明か
山田先生が解説する。
「体の老廃物はリンパ管を通って最終的に尿とともに排出されますが、脳の内部にはリンパ管がありません。
その代わりに、脳の大部分を占めるグリア細胞の働きによって老廃物を排出する独自のシステムがあり、その流れによってタウが、脳脊髄液を経由して、脳の外へと押し出されていくことがわかりました」