2022年8月4日 15:50
アルツハイマー研究の第一人者語る「論文捏造問題と治療薬開発の最前線」
これをラットの脳に注入したところ、認知機能の著しい低下が認められたとしている。
つまり、このオリゴマーが原因で認知症が起きたことを実験で証明したということになる。だが、この実験を記録した画像に、複数の加工の痕跡が発見され、実験結果のみならず、Aβ*56の存在にも疑義が生じているのだ。
これまで「アミロイドβ仮説」を前提に、アミロイドβを脳から取り除く治療薬が開発されてきたが、認知症を改善する目立った成果が出てこなかった。論文の捏造をうけて、開発の前提となっている「アミロイドβ仮説」が誤っているためではないかと指摘する声も多いという。
■治療薬は予防にこそ効果を発揮する可能性
しかし、原因は別のところにあると指摘する専門家もいる。日本のアルツハイマー型認知症研究の第一人者で、アルツクリニック東京院長の新井平伊さんだ。「溜まり始める原因は不明だが、アミロイドβが脳にダメージを与えていることは間違いない」としたうえでこう語る。
「捏造論文と治療薬の臨床試験(治験)の結果に因果関係はありません。まず、オリゴマーには他にもたくさんの優れた研究成果があります。一方、これまでの治験は発病後の初期患者が対象で、神経細胞がすでにダメージを受けた段階でした。